(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第74話 あーもうハゲの癖にムカつく!

 

 エレベーターが途中で止まり、かご戸が開く。

 

 途中まで順当に上昇していたのに、突然途中で止まり、明らかに意図的に停止されたことが分かる。

 

 私達は誘われている事を承知しつつもかご戸の先へと足を進めた。

 

 進んだ先は真っ暗闇で周りがどうなっているかはっきり知覚する事は出来ない。

 

「サビターさん、何が見えます?」

 

 私はサビターさんに辺りに何があるかを聞いた。

 サビターさんが身に着けているマスクには暗視機能があり、私とアルカンカスさんとは違い暗がりでも昼間のように見えている。

 

「ああバッチリ見えるぜ。成金野郎が好きそうな内装に、薄気味悪いハゲが一人いるなぁ」

「やはり、見えているか」

 

 エレベーターのかご戸はゆっくりと閉まり、漏れていた光が完全に消え去った時、ボッ、と灯りが着き始めた。

 

 灯りは紅い提灯から発され、それを皮切りに壁や天井にあった赤い提灯が続々と点火し灯りを灯し始める。

 

 灯りが点いたことにより、部屋の光景が私達の視界に映る。

 豪勢な異国情緒溢れる金のかかっていそうな部屋だった。

 

 こことは異なる世界、『和』や『中華』の建築様式を取り入れたような部屋だ。

 

 黒と白のみで染められた光沢ある龍の鱗のような床に、近くには木人椿が何個もあり、長刀や青龍刀、棍棒が沢山壁に並べられていた。

 

 そして部屋の中央天井近くには、大きな横型の看板があり、ウィルヒルやこの世界の言葉ではない異国の言葉が書かれていた。

 

「文明の利器は好かん。そんなものを使わずとも適切な修行とメシを喰えばはっきりと見えるのにな」

 

 声の主は光が反射するほどに髪を剃った坊主が特徴的な半裸の男で藍色のぶかぶかなズボンとワラジを履いていた。

 

『あー、あーあー。これ聞こえてる?』

 

 ふとどこかから、私達四人以外の別の男の声が部屋の中に機械音混じりに鳴り響いた。

 

『聞こえてるらしいね、オッケー。えーとそこにいるのはサビターさん達だろ?凄いな、見直したよ。たった四人で我が社の傭兵の過半数を制圧するなんて!本ッ当に凄いよ!』

「あぁん?この気取った紳士気取りのうぜえ声、雑草の野郎か?オイ雑草!こっち来て遊ぼうぜ!キャッチボールでもしようや、テメェの頭蓋でよ!?」

 

 サビターさんが両の中指を立てて「ヒャハハ!」と嗤いながら蛮族みたいな事を言って彼を挑発するけど、雑草は『ハハハ』と機嫌が良さそうに笑って返す。

 

『いやいや、キミ達は本当に退屈しないねぇ!たかが一人の少女一人にここまでするとは。やはり私の目に狂いは無かった。キミ達は私が見て来た人間の中でも最高だよ!』

「あっそ。なら高みの見物決めてないで直接見に来いや!俺達の凄さをお前の身体に直接刻み込んでやるからさぁ!」

『それもいいね。タマリ君とヤーナン君の戦いぶりを見てたんだけど、超盛り上がってたよ!だから今から大会を開こう!ちょうど君達におあつらえ向きの対戦相手が二人いるんだ。せっかくだし相手をしてくれないか?存分に楽しもうじゃない!?』

 

 そう言ってどこから現れたのか分からないけど、道場のような部屋には似つかわしくないキラキラ光る照明が坊主の男を主役のように照らした。

 

「魔法拳法を得意とする殺し屋、チェン・カウロン!世界を廻り、更には異世界を廻り、ありとあらゆる拳法を習得し、己だけの型を見出した格闘家の鑑!さぁ!誰が彼と戦ってくれるかな~?」

 

 雑草は意気揚々で言う。

 なんとなくだが、雑草の声色が私に向けられているように思えた。

 

 確かに相手は私と同じ拳法家……早く上に上がってライラ…セアノサスさんを助けたいのは山々だけど、戦ってみたい気持ちもあった。

 

「私が行きま──」

「ケンポ―だかメンボ―だが知らねぇがかかって来い!殴る蹴るしか能の無ぇハゲが最新兵器に勝てると思ってんのか!?こっちゃテッポー持ってんだテメーなんかすぐに消し炭にしてやんよ!」

 

 私が名乗りを上げる前に完全にキレて周りが見えていないサビターさんが銃を振り回して怒号を発して前に出た。

 

「ちょサビターさん何もない所を撃ちまくらないでください!」

「うるせぇ!俺は高みの見物キメてる偉そうにしてる奴見ると殺したくてたまらなくなるんだ!早く俺に雑草を殺させてくれ!」

「そう興奮しないでくださいよ!?」

 

 白目を向いて完全にキレている。

 油断してるとこっちにまで流れ弾を喰らいそうだ。

 このまま放っておくと私達まで危ない。

 

「いや、サビター。ここはアリーシアに任せよう」

「あ?なんでだよ。俺はさっさと上に上がってあの緑色のタコ野郎を殴りてぇンだけど?」

「彼女を見ろ。やる気満々のようだ」

 

 アルカンカスさんがサビターの肩に手を置いて落ち着かせる。

 

「オイ、アリーシア。お前アイツヤりてぇのか?ハゲだぞ?」

「多分何か勘違いしてると思いますが、頭髪の有無は関係ありませんよ。チェンという男、相当の手練れです。私が相手をするので、サビターさん達は先に行ってください」

『あー残念だけど、ここから先は対戦相手を倒さないと上に行かないように設定してるから階段とかなんか使おうとしても無駄だからな。ちゃんとルールに則って戦ってください』

「え」

 

 私は雑草の予想外な回答に間の抜けた声を出してしまった。

 おそらく顔も相当おバカな顔になっていたと思う。

 

 そ、そんな……私もタマリみたいにカッコよく仲間を先に行かせたかったのに……雑草、貴方は人の心がないのね……!

 

「コイツ絶対俺達先に行かせてカッコつけようとしてしてたよな」

「うむ。態度が表に出過ぎてて分かりやすいな」

 

 サビターさんとアルカンカスさんがヒソヒソとお互い耳打ちしながら私をチラチラ見ながら言っていた。

 

 しかもバレてる!

 ちょっとカッコつけたかっただけなのに、あぁもうなんで私がこんな恥ずかしい思いを……!

 

「さて、戦う相手はその女子(おなご)でいいのか?俺は相手が女子供だろうが戦うとなれば一切の手加減はせんぞ」

 

 私はチェンの言葉を聞いて、耳をピクリと動かした。

 聞き捨てならない言葉を聞いた気がしたから。

 

「女子……?貴方、私を知らないみたいですね」

 

 私はそう言ってジャージの袖を二の腕辺りまで捲り、肌を露出させる。

 

「生憎世界を転々としてきたのでな。地元じゃ負け知らず、なんて奴の事をいちいち覚えてられるほど記憶力はよくないんだ。それにお前は女子だ。怪我をする前に下がって目の前の強そうな男二人に任せたらどうだ?」

 

 ハゲ……もといチェンは私は明らかに小馬鹿にするように言い、彼の言葉に私は眉をピク、と一瞬動かして怒りを表情に出しそうになったが、いつもの営業スマイルを思い出し、完全に顔に出る前に笑顔を作りながら、

 

「私、脳細胞が活性化するツボを知ってるんです。今から貴方の身体の秘孔を突いてすぐに私の事を思い出させてあげますよ」

 

 私はそう言って腰を落とし、両腕を前に構えて戦闘体勢に入った。

 

 このハゲの余裕そうな顔を崩してやる……珍しくも私はムキになって、脚部に魔力を込めて放出し、超スピードでチェンの元へと駆け出した。

 

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