(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第79話 後継者

 

「ったくアイツ等ちょっと戦ったくらいでへばりやがって。俺を見習えよ、ピンピンしてるぜ?」

 

 サビターは自慢げに笑いながら言う。

 

 タマリとアリーシアは一時身体を休め、後から合流するらしく、今はサビターとアルカンカスがエレベーターに乗り最上階へと上がっていた。

 

「お前は雑魚とちょっと戦った後は観戦していただけだろう。疲れないのも当然だ」

「おーいおいおい。俺の戦いぶりを見ていなかったのか?華麗に動き、跳躍し、銃弾の雨を降らせて敵は穴あきチーズみてぇに風穴だらけ。多分誰よりも敵を葬ったのは俺だな、間違いない」

「その後お前はどうしてた?タマリとアリーシアが強敵と戦っている間は?ヤジを飛ばしてただけに見えたが?」

 

 アルカンカスがネチネチとサビターに同じ事を言い続けると、サビターは黙り、マスク越しにアルカンカスを睨む。

 

 表情はまるで見えないが、どんな顔をしているかはアルカンカスがよく分かっていた。

 

「お前いちいち小言うるせぇんだよ。ぶっ殺すぞ」

「やってみろ。死にはしないが死ぬほど苦しい痛みを味わわせてやる」

 

 お互いを殺気立った雰囲気で睨み合うと「ぶっ!」と二人は息を漏らして吹き出すと腹を抱えて突然笑い始めた。

 

「ぶわははははは!お前も冗談言うんだなぁ!出来もしない事をあんまり言うもんじゃないぜ?」

「お前も随分ユーモアがある男だ。この俺を殺すなんて言うとは。誰も達成出来たためしがないからつい吹き出してしまった」

 

 一通り笑い終わると、タイミングが合ったのか、丁度エレベーターがチン、という音を鳴らして止まった。

 しかし最上階ではなく、その数階手前であった。

 

「なぁ、俺もうこの後の展開分かんだけど、お前は?」

「…俺もだ」

 

 サビターとアルカンカスは互いの予想が的中したのか、がっくりと項垂れて残念がった。

 

 エレベーターが開くと二人は仕方なくその先を渡る。

 

「んだここ。図書館か?」

 

 サビターは辺りを見渡して呟いた。

 二人が降りた部屋は本棚が並んでいた部屋だった。

 部屋の灯りは本の劣化を防ぐためか薄暗いがぼんやりと明るく、色あせた古めかしい本ばかり並んでいた。

 

「今度はこの部屋で何させようってんだ?ま、大方予想は着くが」

「ああ、そこは俺も同意する」

 

 二人が意見を一致させると、タイミング良く部屋のどこかからスピーカーのノイズがザザ、と走った。

 

『やぁやぁ皆さん楽しんでるかい?僕は凄く楽しめたよ。あの手に汗握る拳法家同士の熾烈を極めた格闘、そして最後は爆発……全くとんだアクション映画だ!』

 

 スピーカー越しの雑草の声にサビターは「あーまたかよコイツ」とうんざりした様子で耳に手を当てて音を遮断していた。

 

「オイ雑草!いつまでお前の天下一武道会に付き合えばいいんだ!?俺ァもう限界だぜ!」

『おぉんサビターさぁん、そんなに焦らないで?気が短い男は女性に嫌われちゃうゾ?』

 

 雑草の軽く神経を逆撫でするような言い方に、サビターは「テメェ……」と怒気の籠った声で呟くと天井を見て叫ぶ。

 

「このクソ野郎が!もうめんどくせぇこのビル爆破しちまうか、なぁアルカンカスゥ!」

「そうだな。俺もそろそろ我慢の限界だ」

『あぁそんな事言わないでくださいよ。これでもう茶番は終わりです。これから戦う相手で最後ですからどうぞ気を落ち着けて、ね?』

 

 雑草はサビターを宥めるように言うと、コツ、コツと誰かが歩く音が彼等の耳に入って来た。

 

『かつて、ゲンジと呼ばれる戦闘集団が居た。少数精鋭にも関わらず天下無敵の剣を振るって世界を救っていた……』

 

 雑草は演技に力を込めながら抑揚を作りながら語る。

 サビターとアルカンカスは死んだ目をしながら早く時間が過ぎればいいのにとその場で立ち尽くす。

 

『しかぁし!最強の剣士達も集団でいれば内部分裂が起こり、二つの派閥に分かれる!クレインとヴァンガードという二人のゲンジがぶつかり合い、仲間同士が血で血を洗う殺し合い、ゲンジは空中分解してしまう!』

「おい早くしろよ!お前の話ボケたジジイの話より長ぇんだよ!」

 

 サビターが痺れを切らして怒鳴って叫ぶ。

 

『あっそうですか。んじゃ最後の相手は、その中でも覇道を求めた過激派、ヴァンガードの後継者ァ~~~レネゲイドッ!』

 

 雑草の巻き舌と共に奥からゆっくりと現れたのは、黒い軽装の鎧を身に着けた仮面の騎士だった。

 背中には浅い藍色のマントを身に着け、頭部は鉄仮面によって覆われていて顔が見えない。

 

『こっちにはゲンジが一人、そっちにもゲンジが一人、夢のドリームマッチだ!伝説と謳われた戦士同士の戦いだァ!ワクワクしてきたなぁ~!じゃあ試合開始!』

 

 雑草はそう言うとピシャリと口を閉じてもう何も言わなくなった。

 

「お久しぶりですね」

 

 鉄仮面の男、レネゲイドは親しみを込めた声色で喋った。

 

「いや、お前みてぇなコスプレ野郎知らねぇよ。誰だお前」

「お前に言ったわけじゃないぞ。俺に言ったんだろう。それと、お前もお前でコスプレみたいな見た目しているがな」

 

 サビターは「これのどこがコスプレだバカタレが」と言いながら近くにあった全身鏡で確認しながら言った。

 

「俺を知っているようだな。だが俺はただのゲンジの一兵卒だ。お前とは面識がない」

「まぁそうでしょうね。俺もあの頃は何者でもない男だった。あの方に見初められるまでは」

 

 レネゲイドは鉄仮面に手を掛け、それを静かに外し、地面に投げ捨てた。

 

「……!」

 

 彼の顔が露わになり、アルカンカスは表情を一瞬強張らせる。

 

 茶色の瞳、赤い短髪と、顔の無数の数が特徴的な男だった。

 

 彼の姿を見たアルカンカスはまるで因縁の相手に出会ったような苦々しい顔だったが、直ぐに顔を無に戻して平静を繕う。

 

「元ゲンジの一員として言っておく。こんな馬鹿な事はやめて投降しろ」

 

 アルカンカスは説得するようにレネゲイドに語りかける。

 だがレネゲイドは鼻で笑ってアルカンカスを見ながら

 

「俺の部下達にもそう言って温情の言葉をかけた後殺したんですか?」

「皆俺の話を聞かずに向かってきたからだ。お前は違うだろう?」

「俺は違う?随分面白い事を仰いますね……」

 

 そう言ってレネゲイドは腰に掛けていたライトブレードを手に取る。

 

 彼の持っていた剣の柄が深い紫色の光を放ちながらズズズ…とゆっくりと刀身を出現させた。

 

 途端、レネゲイドは地面を蹴って跳躍し、空からアルカンカスを襲った。

 

「!」

 

 アルカンカスはライトブレードを出現させ、レネゲイドの一撃を受け止める。

 

 金色の光と紫色の光の剣が交錯し、激しい金属の摩擦音が鳴った。

 

「一番アンタを殺したいのは俺だよ……!」

 

 レネゲイドは歯軋りしながら血走り見開いた目でアルカンカスを睨みつける。

 

「は!その剣、やっぱり貴方じゃないですか」

「何の話だ」

「惚けるなよ、貴方が俺の師匠、ヴァンガード様を殺したんだろ?クレインさんよォ!!」

 

 

 

 

 

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