(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第85話 また会ったね

 

 エレベーターには、眠くなりそうな緩い音楽が流れている。

 

 軽い雰囲気の音楽が流れている横で、街は未だ凄惨な光景が続いていた。

 建物に火がつき、街の住人がお互いを罵り合いながら殴り合っている。

 

 だが今の俺にはあまりそれが頭の中に入ってこなかった。

 

 エレベーターの中に搭乗しているのは今や俺だけだった。

 

 4人いたはずがいつの間にか俺1人になっている。

 雑草は決闘だのなんだの適当そうな事を言っていたが、奴は戦力の分散を狙っていたんだろう、目論見は見事達成した。

 

 タマリ、アリーシア、アルカンカス……割と強い奴と戦って疲弊していたが、アイツ等なら心配はいらない。

 なにせ奴等は人格が終わっている代わりに全員が化け物じみた強さを手にしているのだ、少し休んだらすぐに俺を追ってくる。

 

 今アイツ等の事を考える必要はない。

 今俺が考えるべき事は、雑草…奴をどう料理してやるかについてだ。

 

 最初は4人全員で雑草の野郎を袋叩きにして支柱引き摺り回しの上財産を没収するつとりだったが、俺だけで奴と対峙するのか……

 

 なに?怖いの?もしかして1人なっちゃって心細くなっちゃった!?

 

 とでも画面の向こうのお前らは勘繰っちゃってるんだろうが、そりゃあ違う。

 

 はっきり言ってアイツらが途中退場してくれて良かった。

 絵面が最悪な制裁を1人で行えるからな、かえって都合が良い。

 奴がした事のツケはたっぷり払わせてやる。

 

 それ以外にも、俺はアイツに死ぬほどムカついていることがある。

 奴には、特別メニューが必要なようだ。

 

 エレベーターのドアが開き、かつて見た最上階の景色が広がる。

 

 部屋のほとんどがモニターで覆い尽くされ、用途の分からない機械がたくさん設置された、ウィルヒルには似つかわしくないテクノロジーの塊の部屋だった。

 

 ただ一つ違うのは、そこにいた大量の従業員の姿が無かった。

 もぬけの殻とでも言えば良いのか、機械ばかりある部屋に人間の気配がないのは、なんとも違和感があり無機質な印象を抱いた。

 

「従業員達なら帰したよ。これからここは戦場になるからね」

 

 無人と思っていた部屋に、1人の男の声が響いた。

 

「すごかったよ!魔法、格闘、剣と剣がぶつかり合うド派手な戦闘シーン、まるで一本のアクション映画を見ているようだった!」

 

 緑色の髪、レッドワインのスーツを着た男が街をめちゃくちゃにし俺の従業員を無理やり勧誘して連れ去ったクソ野郎が前と同じく上から階段を降って現れ、楽しそうに語っていた。

 

「また会ったね、サビターさん」

 

 雑草は爽やかな雰囲気で俺に声を掛ける。

 国家転覆罪を起こしているのに、シャワーでも浴びたかのようににこやかに奴は笑っていた。

 

「さんなんてつけなくていいぞ。俺達もう友達だろ?」

「えぇ!?そう思ってくれてたのかい!?そりゃ嬉しいよ!最高だ!君と私は今日からズッ友だ!」

 

 奴が感動して涙目になりながら両手を上げて万歳していると、俺はすかさず奴の頭に肩に付属銃弾をぶち込んだ。

 

「そのズッ友として頼みがあんだけどなぁ、早く死んでくれよクソ野郎」

 

 雑草は銃弾を頭に受け、バタリと音を立てて後ろに倒れ込んだ。

 だが奴があのくらいで死んでない事は理解していた。

 何故ならわざと後ろに倒れ込んだからだ。

 

「……ひどいなぁ」

 

 雑草は腕を使わず、脚の力だけで器用に体を使いながら身を起こすと、俺が放った弾丸を手に取って弄んでいた。

 

「君のその強化アーマー、アトラクナキアだろ。君も中々イカレてるね。欠陥品を纏って戦ってるなんて」

「そーいうお前は弾丸を指で掴んだのかよ。どんな手品だ?」

「そんな分かりきった事きかないでくれたまえよ。見えてるんだろ?キミのそのバイザーで」

 

 雑草はそう言って俺のマスクに指で示す。

 お互い身体の秘密は分かっているようだ、俺は不死身だからこそ使える強化スーツを着ている。

 それに対して、奴の武器は……

 

「……どんだけ身体を弄ったんだ?もうお前の身体人間じゃねぇぞ」

 

 奴の武器は、()()()だ。

 俺のマスクには、高性能な分析機能がついたバイザーが搭載されている。

 

 これさえあれば好きな女の裸も、敵が隠している武器も、素性も明らかにすることが出来る。

 そして、そのバイザーが俺の頭の中に奴の身体は100パーセント機械で出来ていると告げていた。

 

 雑草はサイボーグ手術を何度も何度も行い、人間の身体を捨て去り、ほぼロボットと遜色が無い程までに手術を施している。

 

 身体を少し弄った者なら皆総じてボーグマンと呼ばれているが、全身をメタルに施し、赤い血と肉を全て削ぎ取り、限りなく機械に近づいた者達は、こう呼ばれ恐れられている、【フルボーグマン】と。

 

「結構お金はかかっちゃったけど、案外良いモノだよ?体は常に快適だし、何よりおしっことうんこをしなくて良いんだ、最高だろ?それに私のメカエレファントくんは女性に大人気なんだ」

 

 そう言って雑草は股間をブン!ブン!と上下に動かし、しつこくアピールをした。

 

「自分の女を満足させられないからってチンコまで改造したのか?機械の力に頼るな!男なら自分のモノで勝負せんかい!」

 

 俺は奴と同じように腰を振って威嚇した。

 すると雑草は突然落ち着いた表情になり、顎に手を当てて「ふぅむ…」思案に耽るような仕草をする。

 

「君は女性を満足させられたのかい?例えば、彼女とか」

 

 そう言うなり、部屋中のモニターが街中の様子から切り替わり、ある人物が映った。

 青髪の女が気絶していた姿が映っていた。

 

「ライラ……」

 

 ライラ、いや、セアノサスだ。

 彼女はこのビルの何処かで監禁されている。

 何をしたか知らんが、下手を打って監禁されていたのか。

 

「彼女には魅力的な提案をしたんだが振られてしまってね、しかも暴れて僕を殺そうとしたものだから仕方ないから少し強引に落ち着いてもらったよ」

「女に振られたら監禁って、お前強姦魔の才能あるな」

「君は彼女に夜這いをかけられたのに断ったそうじゃないか。そんなにズボンの中身に自身が無かったのかい?なんなら私が君の代わりに彼女を満足させてあげようじゃないか!」

 

 雑草は高笑いをしながら俺に向けてそう言った。

 

「…喧嘩、売ってんだよな?」

 

 俺は静かに言った。

 別にセアノサスは俺の女でもなんでもない、ただの後輩で仲間だ。

 だからこそ俺はアイツのために来た。

 なのに、なんだ、この体の中で巡るマグマのような熱は。

 あと少しでも火薬や油を加えられたら、大爆発して収拾がつかなくなるような、そんな予感を感じた。

 

「それくらい理解しろよ。頭はご自慢の能力で治療できないのか?」

 

 雑草は朗らかな雰囲気で薄汚く俺を罵る。

 どうやら向こうも化けの皮が少しずつ剥がれてきたようだな。

 

 土下座して誠心誠意謝罪をし、そしてセアノサスを返すなら、俺も半殺しくらいで済ませてやるところだが、奴は俺の仲間を侮辱した。

 

 そして何よりこの俺を侮辱した。

 

 俺は俺を侮辱する奴を許さない。

 俺と出会ったことを後悔するくらい制裁を加えてやらねぇとな。

 

「生憎頭を吹き飛ばされてから記憶力とかが落ちててな、だから悲しいよ。お前を惨たらしく殺しても覚えてやれないんだから……なぁ!?」

 

 俺はB.B.を両手で構え、肩、両腕、肋骨、胸、膝から銃火器を展開し、奴に一斉掃射の準備をした。

 

 あのクソ野郎はこの場でぶち殺す。

 今の俺は、そのことで頭がいっぱいになった。

 

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