(法を)お菓子屋さんへようこそ!   作:新田トニー

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第93話 丁度良い所に奴が来た

 

「危ねぇ!」

 

 俺は腹から声を出して全員に警告をした。

 アルカンカスは俺より一瞬遅れて気づき、ライトブレードを起動し、防御の構えを取った。

 アリーシアはヌンチャクを取り出し、両手で構え、タマリは防御魔法を発動し、一か八かでアルカンカスとアリーシアを守ろうと防御魔法の透明な膜を広げていた。

 

 俺は俺の胸に抱き着いていて、死角となって後ろ銃を持った傭兵達に全く気付いていなかったセアノサスと向きを変えた。

 

 その次の瞬間には、弾丸を掃射するけたたましい音が響いた。

 何重にも重なった光線とも呼べる弾丸の雨が最上階の壁や床を飲み込むように削り取り、全てを破壊していく。

 

 圧倒的な暴力の波に俺達はただ耐え続けた。

 やがて弾が尽き、耳を劈く発砲音は刹那の静寂をもたらした。

 未だ響く残響、崩れる瓦礫、立ち込める硝煙、それが一緒くたに交わり、混沌を生み出していた。

 

「げほっげほっ……サビター!?大丈夫!?」

 

 セアノサスが咳をしながら俺を呼ぶ。

 

「ああ。俺は無事だ。お前は?」

 

 俺は弾丸の雨を浴びて背中はめちゃくちゃだったが、身体に力を入れていたおかげで弾丸は貫通する事はなく、セアノサスには傷一つ付いていなかった。

 

「あなたが守ってくれたおかげで私も大丈夫。他の皆は!?」

 

 俺とセアノサスは辺りを見回し、仲間の生存を確かめる。

 枯れ木の誇りや煙と共に見えづらくはあったが、煙が晴れ、彼等の姿を視認することができた。

 三人は無事だった。

 タマリの防御魔法が三人を覆っていたおかげで弾丸は彼等には当たっていなかった。

 

「ビフ!ビフしっかりして頂戴!」

 

 だが、もう一方は無事ではなかった。

 ビフがビリオネとアルバアムに覆いかぶさって守ろうとして銃弾を彼等二人の代わりに受け止めていた。

 

「ビフ!?何故俺を守ったんだ!?俺の身体は耐えられた。なのに何故……」

「……主人を見捨てて、逃げる執事がどこにいましょうか……うぅ……」

 

 ビフは瀕死の重傷を負っていた。

 このまま放置していれば数分も経たないうちにすぐに死んでしまう。

 

「セアノサス、お前あの髭面の執事のとこ行って回復魔法で治してやれ」

「え!?」

「俺が前に出て奴らの注目を引き付ける。錬金術士の前にお前は上級の回復術士だろ?頼むぞ」

「わ、分かった……!無茶しないでよ!?」

 

 セアノサスはそう言って煙の間を掻い潜ってアルバアム達の所に走って行った。

 無茶をするなだと?無茶をするのは俺の専売特許だぜ。

 

 俺はそう心の中で呟くと土煙の中を進んでいく。

 煙はまだ俺達の周りを漂い、中々晴れない。

 普通ならもう霧散して晴れる所だが、恐らくタマリが風魔法と土魔法を合わせて煙を作り循環させ、視界を遮ってるのだろう。

 ガキのクセに律儀で賢い奴だ、と俺は口元に笑みを浮かべながら前へと進む。

 

 俺が前へ前へと歩を進めると、俺の姿を確認したのか傭兵が「一人で出てくるぞ」と味方に声を掛けているのが聞こえた。

 

 さて、また死んでくるか。

 

「お~い」

 

 俺は煙の中から一歩を踏み出し、煙の外から身体を出す。

 その瞬間一斉に傭兵達が銃を構える音が聞こえた。

 

 その姿は俺達が殺したのと同じ装備を身に着けた傭兵達だ。

 

「おいおいおい!銃を向けるのは辞めてくれ!落ち着いて、話し合おう!」

 

 俺は両手を上げて降参のポーズで言った。

 

「お前らが俺達に銃を向ける理由は分かる!復讐だ、そうだろ?俺がお前らの仲間を殺したのは謝るよ!ごめん!でもお前ら傭兵共は死ぬのも仕事の内なんだから別に悪くねぇよな?じゃあなんで俺が悪いみたいになってんだ!?ふざけんじゃねぇぞ没個性のおもちゃの兵隊野郎!」

 

 俺は叫んで怒り散らす。

 傭兵共はお互い顔を見合わせながら肩を上下に動かすと、

 

「あー別に気にすんな。顔合わせなんて数回しかしてないし友達ごっこよりもお小遣い稼ぎにしか興味ないからよ」

 

 傭兵の一人が何に気なくそう言った。

 他の皆も笑いながら同調した。

 傭兵の鑑のような奴等だ、殺しても全く罪悪感がない上に社会のゴミ掃除をした良い気分になれそうだ。

 

 しかし、ここで一つ疑問が生まれた。

 何故コイツ等俺達を襲ったんだ?

 しかもコイツ等傭兵の雇い主はアルバアムのはずだ、雇い主を巻き込んで撃つどころか、明確に敵意を持って撃っていた。

 金しか興味がない薄汚ぇハイエナが雇い主を裏切る理由は一つしかない。

 

 となると……

 

「セスペド社長。ちゃんと死にましたかー?」

 

 傭兵の群れの中から、ひときわ異質な男が現れた。

 武器や防具を一切装備しておらず、身に着けているのはスーツ一式と腕時計のみだった。

 ビジネスマンの中でもそれなりに重鎮の雰囲気を帯びた中年の男だ。

 

「あれ?返事がないな。本当に死んじゃったのかな?」

 

 男の問いにアルバアムは答えなかった。

 答えたら間違いなく撃ってくると考えているのだろう。

 

「ああ、俺が代わりに聞いてやるよ!おいアルバアム!お前死んだか!?」

 

 俺は沈黙を貫くアルバアムに死んだかどうか聞いてみた。

 

「しんでるって言えって言ってるよ」

 

 アルバアムの代わりにタマリが答えた。

 何故タマリを通して言ったのかは分からないが、どうやら死んでると思わせたいようだ。

 

「なに!?死んでるって言って欲しいだって!?ああ分かった伝えておくぜ!おいそこのポテトヘッド野郎!アルバアムは死んでるって思い込んでてほしいんだってよ!実際には死んでねぇけど、多分お前に奇襲をかけるために自分は死んだと思って欲しいんじゃねぇかな?アルバアム、安心しろよ!ちゃんとお前が死んだと思わせてやったからな!」

 

 俺は自身を持って親指を立てながら言った。

 

 煙の中からアルバアムが「最高のフォローをありがとう!クソ野郎!」と彼なりの感謝の言葉が聞こえた。

 

「社長~貴方が負けてしまったら困るんですよ。途中まではちゃんと計画通りだったのに、そこのならず者達に絆されてしまうなんて。我々は本気で国盗りをするつもりだったのに途中で放り出されてしまうと計画に大きく支障が出てしまいます。なので死んでくださ~い!」

「君達は相変わらず損切りが早いな。自分に利益が無いと知ると即座に切り捨てる」

「商人はこのくらい取捨選択ができないとまずいでしょう。貴方も娘や妻への情など捨てて金を稼げばよかったのに。大体、この世界じゃ銭を稼がないと生きていけない。家族や仲間なんて金で買えるものですよ」

 

 アルバアムは男の言葉を聞くと「ふっ」と鼻で笑って小馬鹿にするような笑い方をした。

 

「なんだ?何か笑える要素はあったかな?」

「いや、君達は彼等と対極の存在だなと、そう思っただけさ」

 

 アルバアムはそうやって言いながら俺達を目で追った。

 

「この世には…圧倒的な金の力に靡かない、仲間や家族のためならいつでも喧嘩上等のバカ達もいるものだ。そして大体、金の力に魅入られた者達はそのバカ達に滅ぼされる」

 

 アルバアムはそう言って立ち上がると煙の中から姿を見せて現れた。

 俺の隣に並び立ちながらチラリと俺を見やる。

 

「だからごめんよ。()は今から自分で起こした計画を自分で潰す。会社も解体して更地にするから、君達は別の会社で働いてくれ」

「仮に我々が従うとして、我々はどこで働けばいい?」

「さぁ?刑務所の中とか?」

 

 アルバアムの言葉に幹部の男は呆れてため息をつき、右腕上げて合図を出した。

 傭兵達が一斉に俺達に銃を向け、俺達は完全に逃げ場を失う。

 

「サビター君。君なんかフラフラしてるけど大丈夫?まだ戦えるよね?」

「あー?さぁ、どうだろうな。どっかの誰かが不死身の能力を封じる弾丸で俺を撃ちまくったせいで死ぬかもな」

 

 俺はそう言ってホルスターからB.B.を抜き出して両手に構える。

 アルバアムをストレッチをするように手首を動かし、戦闘態勢に入る。

 

「なんだよお前、やる気かよ?どーせお前の身体よぼよぼのジジイ並の動きしか出来ねぇんだから黙って後ろでチアリーディングでもやっとけよ」

「全身毒まみれで死にかけてる君に言われてもね。それよりそんな台詞は君の仲間に言ってあげたらどうだい?彼等やる気満々みたいだけど」

 

 アルバアムの言葉のに俺は後ろをチラリと見ると、怪我や疲労でボロボロのはずのアリーシアやアルカンカスとタマリがにやけたツラで臨戦態勢に入っていた。

 

「追い詰められた獣は数段厄介だという事をあの小太りの男に教えてやりますよ…!」

「いまのぼく、ひさしぶりに力をだせてぜっこーちょーだからね。よゆーよゆー」

「ゲンジの戦士はタダじゃ死なない。まだやれるさ」

 

 顔からすでに疲れの表情が出てるクセに、減らず口だけはまだまだ元気な筋金入りのアホ共を見て、ボスである俺が気遅れするわけにはいかなくなった。

 やってやろうじゃねぇか。不死身のサビター、ここからが真骨頂だ。

 

「……負け犬共が偉そうに。もっと援軍を連れて来い。奴等を窓の網よりも細かい穴だらけにしてやれ」

 

 幹部の男がそう言うと、地上ではエレベーターから、さらには空からもヘリコプターが羽の轟音を鳴り響かせながら続々と傭兵達が現れては俺達を囲い始めた。

 

「アルバアム、おかわりくれるなんてお前のところの会社は随分気前が良いなオイ?」

「安心しなよ。この感じだとまだまだ腹が爆発するほど続々と来るよ」

「んじゃあ第三ラウンド始めっか!」

 

 俺はそう言って真正面の敵に向けて銃を構える。

 俺以外の奴等も、魔法やライトブレード、武器を構えて迎撃をしようとした。

 俺は引き金を引こうとしたが、俺は引き金に掛けた指をピタリと止めて耳を澄ませる。

 

 この直感、悪寒、予感、あらゆる俺の第六感が()()()の存在を検知した。

 

「やっぱやーめた」

 

 俺はそう言って銃をホルスターに収めた。

 アルバアムやアリーシア、タマリ、アルカンカス、ライラ、ビリオネが驚いた表情で俺を見た。

 

「サビターくん!?」

「ちょ!?ここで諦めるんですか!?」

「サビターのなんじゃくもの。じゃくしゃ、むしやろー、ごみ!」

「サビターさん!?」

「嫌ぁ~!私ここで死ぬんですわ~!」

「なんだか知らんが今の内に撃て!撃ちまくれ!」

 

 俺以外が混乱している隙を狙って傭兵達は銃を撃ち放った。

 大量の弾丸の雨嵐が俺達を襲った。

 

「俺、もう疲れたからよ…後は頼むぜ、()()()()()()

 

 頭上から飛来物がズガァン!と音を立てて舞い降りたその瞬間、迫り来る弾丸の雨が急に死んだように床に落下した。

 金属の弾丸は、直ぐにただのその辺に転がる豆と化す。

 

「よお、随分かっこいー登場の仕方じゃねぇの」

「……」

 

 俺の言葉に、野郎は何も反応せず背中だけを見せながら立っていた。

 気高さを感じさせる純白の騎士の制服にマント、鏡のように磨かれた銀色の一本の剣、そして見た者は一目でわかる偉大さを感じさせる特徴的な黄金色の長髪。

 

「な、なんだお前は!?」

 

 幹部の男が唾を飛ばしながら激昂して叫ぶ。

 

「俺か?俺はそこにいるチンピラの元上司さ」

 

 そう言って野郎は無表情で鼻で笑って言った。

 

「あ、ああ……!」

 

 目の前の男の姿を捉えた瞬間、セアノサスは顔をパァ……!と明るくさせながら奴を見つめた。

 

「ジョニー団長ッ!」

 

 俺達の前にウィルヒル王国最強の男、ニーニルハインツギルド団長のジョニー・ニーニルハインツが現れた。

 

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