ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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ダイの大冒険魔界編の漫画化を待っています。


第十話 知られざる過去

 

ザボエラの日記を閉じて、机の上に置く。

 

 

「ふぅ~む……これはまた……」

 

 

溜め息と共に力が抜ける思いがした。

情報量が多い事もあるが、まさしく人に歴史ありである。

ヨミカイン魔導図書館内部にいると、外の時間経過が分からなくなる。

時計を見ると、どうやら夜になっているらしい。

ザボエラの日記をほぼ一日がかりで読み解いたことになる。

 

幾度かケインが食事を用意してくれたが、断って読み進めた。

読後、流石に腹が減ったので、

ケインに頼むと軽食とワインを持ってきてくれた。

礼を言いつつ、話を聞いてみる。

 

 

「一つ聞きたいのじゃが、

おぬしはワシの姿が違う事に違和感は覚えんかったのか?」

 

「単純に年齢を経て、老化が進まれたのかと判断しておりました。

大分、縮まれたので、ご苦労なさったのだろうと推察した次第です」

 

「ふむ……そうか。

お前さんが記憶している250年前のワシはどのような姿じゃったのか?」

 

ケインが腕を組んで考えているように見えるが、

実際に腕を組んでいるわけではない。

爪を伸ばしてはいるのではあるが。

 

 

「羽根ペンをお借りしてよろしいでしょうか?

少々、似姿を描かせて頂ければ幸いでございます」

 

「構わぬよケイン。

もしや、お前さん絵が描けるのかのう?」

 

「魔界での戦闘で(わたくし)も成長したようでして、出来る事が増えたのでございますよ」

 

 

そういいつつ、紙にさらさらと絵姿を描いてくれている。

10分ほどだろうか。

私がザボエラの日記の重要な箇所にしおりを挟んでいる間に、

ケインが見事なザボエラの肖像画を仕上げてくれていた。

 

 

「このような御姿であったと記憶しております。

それほど上手い絵ではございませんが、参考になれば幸いでございます」

 

「いやいや……見事なものじゃよ」

 

 

ケインに渡した紙に、250年前のザボエラの姿が緻密なタッチで描かれていた。

どのような姿かと言うと、恐らく身長が180cm強ありそうな立派な体格だ。

頭髪がちゃんとある。よかったなザムザ。

現在の意地悪爺さん的なザボエラではなく、

きちんと年齢を重ねた立派な老魔族の姿が描かれていた。

 

 

御主人様(マスター)。日記には相当に衝撃的な事が書かれていたご様子。

(わたくし)でよろしければ話を伺いましょうか?」

 

「気が回るのう。少し長くなるが、聞いてもらえるかケイン。

一応、話し終わった後、おぬしの知る範囲で意見があれば教えてくれぬか?」

 

「畏まりました。お任せくださいませ、御主人様(マスター)

 

 

日記は250年前の記述から始まる。

大魔王バーン、冥竜王ヴェルザー。

両者の対決が収まってから月日が経ち、魔界の強豪たちが相争っている時代。

ザボエラは情報を持っていなかったようだが、

原作を読んでいるとこの時期、バーンとヴェルザーは密約を結んでいたはずだ。

それは、各々が地上侵攻の戦略を練っている頃合いであったのだろう。

 

ここからが私の知らない情報だったのだが、

その二者の領地を囲む形で八大実力者という存在があった。

それぞれが強力な魔族・魔物であり、精強な軍勢を抱えた魔界の猛者たちである。

 

その中に、絶大な魔法力を誇る、深緑の枢機卿という人物がいたのだ。

大層な名がついているが、実はザボエラ自身の事である。

独自の宝石魔術で空間に魔法陣を描き、様々な呪文をアレンジし使いこなす。

魔族の中でも屈指の魔法力を誇り、恐らくは大魔王バーンその人以外、

魔法力で比肩する存在はいないのではないかと囁かれていた。

 

この時期、ザボエラは自分の名を隠して、

公の場では仮面を被り、異名だけで活動していたらしい。

何故かと言うと、若い頃に虚栄心が溢れすぎて、

──本人曰く、慎重さが何処かへ揮発してしまっていた間抜けな時期──

に大失敗をしてしまった為だということだ。

 

出る杭は打たれるものであり、更に出過ぎた杭は"みな"に打たれる。

頭角を現し過ぎて、破竹の勢いで勝ち続けた若き日のザボエラは、

彼がこれ以上勢力を増すことを危惧した、当時の強豪に結託され潰された。

築き上げた軍勢は壊滅。城や砦なども破壊しつくされた。

 

失意の日々を過ごした若きザボエラは、

そこから復帰するのに、大変な時間を費やしたらしい。

その失敗の記憶が彼の行動を掣肘しているのか、

この時期のザボエラは大変慎重になっている。

 

鮮血の魔女グレゴリーアを勢力に取り込んだのもその一環だった。

呪いに特化した魔術を使いかつてはザボエラと争いながらも、

ヴェルザーの勢力圏で覇を唱えた強豪であるグレゴリーア。

ある時、さすがにヴェルザー軍の猛攻に滅ぼされそうになった際に、

ザボエラが軍勢と共になだれ込み彼女を救出。

その際、グレゴリーアはザボエラに忠誠を誓い、

生き残った部下と共にザボエラ陣営に加わる。

 

だが、ザボエラはグレゴリーアを前面に押し出し、

自分自身は参謀として彼女を支え続けた。

かなり慎重な判断だ。

その為、スムーズにグレゴリーアの軍勢を加え、

八大実力者の中でも、有力な一人となる事ができたのである。

 

そうして、二大勢力であるバーン・ヴェルザー陣営を囲む勢力、

八大実力者のパワーバランス構造が完成したと記述されていた。

それから八大実力者は70年余り上手くやっており、

バーン・ヴェルザー陣営を引っ張り回した。

 

彼らは連絡を取り合って連携したわけではない。

例えばヴェルザー領に、今日は西の強豪。明日は南の猛者。明後日は北の勢力。

思い思いに侵攻が発生する。

ただでさえバーンと地上侵攻の為、競っている最中だ。

よくないもぐらたたきの要領になってしまっている。

 

大魔王バーンと冥竜王ヴェルザーが苦戦している。

その報が魔界中に伝わり、あわよくば己が最大勢力の首領になれるかも、

そんな野望を抱いた者が集まってきていた。

命知らずが毎日補充される軍隊だ。

全力を出せない以上、大魔王バーンも冥竜王ヴェルザーも苦労した事だろう。

この当時は、バーン・ヴェルザー陣営の領土を大分削る事ができたということだ。

 

なぜ、それが瓦解したのか?

 

それは死神という男の存在であるらしい。

何者かは分からない。

ザボエラも死神という記述しかしていない。

どうやら呪法的な防御が堅固だった、ザボエラ陣営には現れなかったようだ。

 

だが、他の八大実力者の間に疑心暗鬼の種をまき、

同士討ちをさせ、仲違い、誤認による裏切り、罠による謀殺……。

集っていた魔界の猛者たちも一人倒れ、一人去って行き、

戦闘集団としての規模が縮小し、兵力が失われていってしまった。

そんな混乱の極みに達している所を、

バーン・ヴェルザーの軍勢が大挙として押し寄せ──八大実力者は壊滅した。

 

ダイの大冒険の原作知識があると、死神という名と謀略を得手とするやり口。

それから推察される人物は、キルバーンだろう。

いや、この時期はキルと呼ばれていたか。

もしかするとこの一件の功績でヴェルザーに評価され、

大魔王バーンの側近となる任務に送り出されたのかもしれない。

 

その後、ヴェルザーとバーンは魔界の小勢力を潰しつつ、

各々が独自に地上へのアプローチを行っていくことになる。

 

ザボエラはグレゴリーアとの間に一子を設けていた。

勿論のことザムザである。

グレゴリーアはザボエラにとって妻であり、軍勢の指導者として有能な人物でもあった。

ザボエラは八大実力者が瓦解した時点で、

妻とザムザを連れて地上へ脱出する予定があったのである。

 

現時点ならば地上には、大した強者は存在しない。

上手く逃れ拠点を築き、人間の王国を幾つか滅ぼして豊かな土地を奪う。

その上で人間たちを奴隷にし、豊かな地上で力を蓄え、

いつの日かバーン達に対抗できる勢力を築けるのではないかと考えていた。

 

 

だが、彼の妻は違った。

 

 

元々、グレゴリーアの支配地はヴェルザーの勢力圏に接していて、

彼女は自領を攻め滅ぼされる屈辱を受けている。

グレゴリーアはその時の怒りを、ずっと秘め続けていたのだ。

ザボエラと共に戦ってきたのは、いずれヴェルザーを倒し、

その首を掻き切ってやれると信じての事である。

故に地上へ逃げようとするザボエラを口汚く罵り、

ザボエラの勢力のほとんどを連れてヴェルザー領へ攻め込んだのだ。

 

ザボエラ二度目の失敗だった。

自分が前面に立つことで、一度手痛い失敗を被ったザボエラは、

ナンバー2になることで保身を図り、グレゴリーアを操る事で野心を満足させていた。

だが、表向きに見れば、一軍の指導者グレゴリーアと部下のザボエラである。

となれば、グレゴリーアが全軍を率いてゆけば、

みな彼女に従ってしまうのも致し方ない。

止める間もなく、冥竜王の軍勢と戦い壊滅されてしまったのだ。

城も攻められ、十分な準備ができないままに、

ザボエラは地上へ逃げる事になってしまう。

 

そして、脱出の準備を整えたザボエラの前に、

瀕死のグレゴリーアが現れ、その命を費やした呪いをザボエラにかけて死ぬ。

その呪いとは、急速に老いさらばえ、力量(レベル)を大幅に低下させるものである。

ザボエラ本人の計測では、魔法力はかつての半分ほどだという。

多くの呪文を使えなくなったと記されていた。

 

どうやらザボエラは地上へ逃げた後も、

何度もあの研究所に戻っていたようだ。

長く留まるのは危険だが、少しでも研究資料や素材を回収したかったのだ。

日記をつけていたのも、どの薬品や魔法の品を持ち帰ったか、

備忘録にしておこうという事だったのかもしれない。

後半の記述はほとんどがグレゴリーアの呪いを解くために、

様々な手段を試しつくしたという事が記されている。

 

その最後の記述が100年ほど前で止まっている。

そこでザボエラは以前の姿に戻るのは諦めてしまい、

現在の魔法力と姿でなんとかするべく地上で研究を進めていたのだ。

どうやら肉体を強化する方法を探し、超魔生物の研究にのめりこんだのも、

上手く改造すれば以前とは別種の力を手に入れられるのでは……?

という考えからの事だったようだが。

 

その辺りから思考の歪みが見られる。

明らかにザムザの手柄である超魔生物の研究を、

自分のものであるかのように書き連ねていたり。

以後はあまり意味のない研究や、

自画自賛の文章が記載されており流し読みだけに留めた。

 

 

(わたくし)が眠っている間にそのような事がありましたか……

ところで、ご子息はどうされているのですか御主人様(マスター)?」

 

 

聞かれると思ったが、

自分の正体がバレる危険性から置き手紙をして逃げたとは言えない。

日記にあったようにザムザの研究成果を横取りしたりしていたので、

それを詫びて好きな研究をするようにと言って彼の下を去ったと言っておいた。

 

「左様でしたか御主人様(マスター)

少しご子息とは冷却期間を設けた方がいいでしょうね。

ところで、これからはどういたしますか?

元の姿に戻る方法を探されますか?」

 

そう、元の姿だ。

実際、880歳の老人が630歳に戻ってどの程度の変化があるかは謎だ。

別に80代の老人が、20代の青年に返り咲くわけではない。

大魔王バーンが老人の姿から、真大魔王バーンの青年の姿になり、

隔絶した力を発揮したようにはなれないだろう。

恐らくだが。

 

ただ、それ以上に見過ごせない部分がある。

日記の記述によると、現在の魔法力が以前の半分ほどであるという事だ。

 

ハドラーに全魔族の中でも、

自分を除けば最強だろうと言われるほどなのにも関わらずだ。

そうハドラーに言われた時よりは、私も修行して魔法力を高めて、

極大呪文を使えるようになってはいるのだが……。

250年前はそれよりも遥かに強大な魔法力を誇っていたわけだ。

 

思い当たる節がある。

ヨミカイン魔導図書館で様々な呪文を契約した際の事だ。

極大閃熱呪文(ベギラゴン)極大爆烈呪文(イオナズン)については、元々契約がされていたのだ。

あの時は、力量(レベル)が足りていないのだと思っていたが、

力量(レベル)ダウンして使えなくなっていたということなのだろう……。

 

日記にあった研究成果としては、

ザボエラにかけられた呪いは、老化の方が強力にかかっている。

老化というのも外見的な話で、

老化促進であったらいまごろザボエラは生きてはいなかっただろう。

 

もう一方の呪いである力量(レベル)ダウンの方は、

呪い自体の効果があまり強くないのではないか?

という研究成果が出ている。

簡単に言えば、修行したり戦う事で力量(レベル)をアップする事はできるのだ。

ゲーム的な表現をするのなら、経験値を失ってレベルダウンしたという状態か。

 

だが、ザボエラは努力を嫌うタイプの男だ。

もしかすると呪いを解こうとする長年の努力で、

いまさら強くなるために修行を試みようという気持ちが、なくなってしまったのかもしれないが。

だからこそ、他者の力を利用する方向へ進んで行ったのだろう……。

 

しかし、呪いを解く研究は着手するべきだ。

放置できる類の話ではない。

 

 

「呪いを解く方法は研究してみるとするかのう。

幸いこのヨミカイン魔導図書館には無数の蔵書があるのじゃ」

 

(わたくし)でお力になれるのでしたら、

なんでもお申し付け下さいませ御主人様(マスター)

 

「ところでケインよ。

この話についてはクロコダインとボリクスには内緒にしておいてくれぬか」

 

「なぜでございましょうか御主人様(マスター)

 

「二人に心配はかけられんじゃろう」

 

 

と言ったところ、ケインが爪を伸ばしてドアから覗いている二人を指し示す。

 

 

「少々、遅うございましたね御主人様(マスター)

 

 

クロコダインとボリクスの二人は異口同音に水臭いといい、

口々に協力すると申し出てくれた。




独自設定
鮮血の魔女グレゴリーア……ファンブックでザボエラの奥さんは
"下手をすれば夫の命とかを狙いかねないレベルの悪女"
という三条先生の説明がありましたので、それを参考にして膨らませてみました。
名前は、息子のザムザがグレゴール・ザムザからなので、
グレゴールを女性形にしてグレゴリーアとしました。

Q.なぜ即死魔法の呪いとか使わなかったの?
A.ザボエラは普段からザラキを躊躇なく使うタイプなので、
即死対策をしていることをグレゴリーアは知っていました。
ザボエラの耐性の隙をつく呪いを自分の死という代償で使った感じになります。


250年前 魔界の二大勢力。大魔王バーン、冥竜王ヴェルザー。
彼らを囲む形で八大実力者という魔界の強豪勢力が結託。
長きに渡って両陣営をかき乱す。

172年前 
ザムザ誕生

170年前
"死神"という男の暗躍で八大実力者の連携が瓦解。
バーン、ヴェルザー陣営に叩き潰される。

ザボエラはザムザと妻グレゴリーアを連れて地上へ行こうとするが、
ヴェルザー憎しのグレゴリーアに背かれる。
瀕死のグレゴリーアに呪いをかけられるザボエラ。
老化&力量(レベル)ダウン。

これから70年の間、ザボエラは魔界にあるかつての居城と、
地上のアジトを行き来して、研究成果や素材etc……を一人で運ぶ。
呪いを解く研究を長らく続ける。

100年前
日記というか研究の備忘録をつけるのを止める。
呪いを解くことができずそれに固執するよりは、
別技術を伸ばす方にベクトルを変更したのだ。


250年前の約630歳くらいのザボエラです。
ケインのスケッチは色がついてません。


【挿絵表示】



宝石魔術……頃合いが来たら説明します。
ドラクエ10で使っている人がいましたが、ポップがマジカルブースターの宝石で、
マホカトールの魔法陣を作ったアレを……という感じです。

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