ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
魔界、
大魔王が軍勢の閲兵を行うため、ひときわ高い城が建てられた宮である。
荘厳で豪華なテラスは地上から遙か高い位置にあり、
近衛師団長たるマキシマムも
大魔王を守るべく周囲を油断なく監視し、護衛の任に就いている。
如何なる悪意もこの
自称守護神であったキング・マキシマムの過去を知る者がこの場にいたら、
感慨深かったであろう。
かつては虚名であった"最大最強の守護神"という名が、
名実ともに彼に相応しい栄誉であると再確認できるからだ。
だが、その資格を持つミストバーンは現在このテラスにはいない。
なぜなら彼も、眼下に現れる魔王軍、六大軍団を率いる軍団長なのであるから……。
大魔王の鎮座するテラスから遙か下の地上に、
魔軍司令ハドラーが現れて彼の主バーンに一礼する。
「大魔王様のご威光の下に、魔界最強の戦闘集団たる魔王軍六大軍団……。
本日ここに、集結致します」
「ふふっ……大義であるぞ、ハドラー。
さあ、余の最強の軍団たる
「ハハッ!! まずは不死騎団! 不死将軍デスカール!!」
ハドラーの言葉に応じて、不死騎団の者達が現れた。
一礼と共にデスカールが恭しく大魔王に頭を下げながら入場してくる。
その背後にはハドラーの見知った三者の顔があった。
ガンガディア、キギロ、バルトスの三名だ。
ハドラーはその姿を複雑な気持ちで見ている。
かつて己が生み出した禁呪法生命体であるバルトスとは、魔力の繋がりがあった。
眼前にいるバルトスにはそれが感じられない。
最早自分の部下では無いことを百も承知していながら、
割り切れない感情を押し殺しつつ魔軍司令として不死騎団を紹介する。
「死をも超越したアンデッドの戦士達の軍団! 人間達を地獄に送り込む殺戮の使徒達。
冥府への案内人たるもの達でございます!」
マミー、リビングデッド、死霊の騎士、ボーンナイトなどに加えてヴァルハラー、
ロードコープスなどの高位アンデッドもやってくる。
勿論、不死騎団全軍では無い。
六個の軍団が全て勢揃いできるほどの場所は流石に用意できない。
他の軍勢もそうだが、精鋭を選りすぐっているのだ。
「氷炎魔団! 軍団長、氷炎将軍フレイザード!」
不敵な笑顔と共に、氷と炎の半身を兼ね備えたフレイザードが軍勢を率いてきた。
フレイザードは旧知のマキシマムに手を振り、それにマキシマムが軽くサムズアップして答える。
それに喜んだフレイザードが両手を振るが、ハドラーがギロリと睨む。
肩をすくめたフレイザードが、"おお怖い"と言った風に行進を続けた。
ハドラーが複雑な思惑から緊張して、固くなっているのに対して、
あくまでもどこまでもフレイザードは力みが無く自然体なのが対照的である。
氷炎将軍フレイザード。
現在の魔王軍では、ザングレイと並ぶ猛者として魔界に名が轟いている。
原作より生み出されたのが早く、猛将ザングレイと共に魔界を駆け巡った
その速攻の戦闘行動と、軍勢の進撃速度には同僚のザングレイも舌を巻き、
"お前こそ、魔王軍の切り込み隊長だな"と評され、本人も気に入ってそれを名乗っている。
ザングレイに並ぶ戦功をあげており、良きライバルとして競い合う仲であった。
「灼熱の猛火と氷点下の吹雪!! すべてを焼きつくし、魂すら凍らせる恐怖の破壊者。
如何なる敵も焼き尽くし、凍え死にさせることは必定!」
フレイム、ブリザード、溶岩魔人、氷河魔人、炎の戦士、ブリザードマン、ヘルプラネット……。
小柄なモノもいれば、巨大な存在もいる。
ホークブリザードなどもおり、空の戦力も確保していた。
炎に強い者もいるだろう。氷に耐える者もいるはずだ。
だが、その両者を克服した存在はそうそういない。
相反する属性を兼ね備えた軍勢の強さは計り知れないものがある。
「妖魔士団! 軍団長、妖魔将軍メネロ!」
メネロも遙か高みの御簾からこちらを見下ろしている大魔王に一礼し、
軍勢を引き連れてたおやかに歩いてくる。
魔王軍は長年、悪魔の目玉の情報網を重用してきていた。
それが先年、情報網をまとめあげていたインスペクターがザボエラたちに倒されてしまい、
魔王軍は重要な情報網を失うという危機に陥った。
その際、メネロが代替案として浮遊樹を提案。
名前の通り浮遊しているため、悪魔の目玉より行動範囲が広く、
現在、魔王軍の情報網は引き続き妖魔士団が一手に担っている。
デスカールの背後に居たキギロが、メネロを見て怪訝な顔をした後、
手をポンと叩き、納得したようにニヤリと笑った。
「絶大な魔法力を誇る魔道士の軍団!
いかなる人間の魔法使い達もその妖力には太刀打ちできないだろう!」
エビルマージ、祈祷師、悪魔神官、地獄の使いなど魔法使い達が主戦力だ。
銀甲の凶蟲兵団からも、虫系の魔物達を数多く登用。
堅い装甲を誇るおおさそり系の魔物ビネガロンガ。
甲冑アリ系の魔物である砲弾アント。
空から敵を急襲するハチ系魔物のヤケばち。
魔法使い達の前衛を務める彼らのおかげで、戦力を大幅に強化した。
更にメドーサボールやドルイドたちなど妖魔もおり、バラエティに富んでいる。
無論、新たな通信網である浮遊樹を筆頭に、おばけキノコやマンイーター、
人面樹といった樹木系の魔物たちも所属して、各軍団の通信を担っている。
戦闘・非戦闘の魔物を含めれば、軍団の規模は六軍団中最大となっていた。
「百獣魔団! 百獣将軍ザングレイ!!」
ハドラーの声に"おうッ!"と力強く応えたのは彼、ザングレイだけであろう。
真っ赤な鎧と、赤茶の体毛に覆われ、見上げるばかりの偉丈夫だ。
巨大な斧──魔斧グロイサンを携え、猛将ザングレイが堂々たる行進をしている。
大魔王に直訴した件は既に伝説になっており、
ザングレイの豪胆さと彼の直言を許した大魔王の度量を広く伝えていた。
背後に付き従うガルダンディー、ボラホーンといった副将達も、
歴戦の風格に溢れており、仮に六大軍団が八大軍団であるのなら、
将軍たる席を占めていてもおかしくはない存在感があった。
「凶悪きわまりない獣たちの群れ!
底知れぬパワーを振るっての進軍は、まさに無人の野を行くが如し!!」
あばれザル、グリズリー、ライオンヘッド、サブナック、ゲリュオン、オークキングetc……。
並外れた体力とパワーを持った軍勢で、真正面からの衝突で敗北したことは皆無。
軍団長たる猛将ザングレイの指揮の下、
今日は東、明日は西にと魔界中を駆け回り、
大魔王に楯突く勢力を叩き潰してきた歴戦の兵達である。
まさしく、面構えが違う戦績を誇る、魔界の苛烈な戦いを生き残った猛者、
その実戦経験においては六軍団随一を誇るであろう。
「魔影軍団! 魔影参謀ミストバーン!」
いつもと変わらぬ様子で、淡々と入場するのはミストバーンである。
マキシマムがサムズアップしているが、チラリと見て軽く頭を振って応えずにはいた。
しかし、内心は嬉しさを隠せずに、足取りが軽くなっているのを、
ハドラーは見逃さなかった。
「実体を見せずに敵を討つ闇の狩人!
大魔王様から頂いた魔気を生命とし、世界を暗黒に染める漆黒の軍勢!」
さまようよろい、キラーアーマー、怪しいかげ、ましょうぐも、ホロゴースト、
スモークなどを引き連れた副団長のダブルドーラが、
更にデッドリーアーマーを従えてミストバーンの背後に並ぶ。
先日の不死鳥奪還戦において、ミストバーンを第一に守りに行ったことで、
その忠誠心を買われてさらなる暗黒闘気を与えられパワーアップしたダブルドーラ。
忠誠心を評価されたことで、やる気を出していた。
そんな彼は現在、若干、不敬な事を考えている。
力を増した己の
一瞬で吹雪に閉ざせるなと物騒なことを考えていた。
勿論、己の力に対しての確固たる自信故の想像であり、
上司であるミストバーンや大魔王バーンへの忠誠心は厚い。
最後に入場するのはドラゴンの群れ……超竜軍団である。
無論、巨大なドラゴンを大量に引き連れるのは閲兵式のスペースからすると、
不可能なところがあるため、数体の精鋭ドラゴンとりゅうき兵のみ連れてきていた。
ハドラーの顔に緊張感が増している。
なにせ、魔軍司令ハドラーとしては潜在的なライバルであり、
恐らく明確に自分より遙かに強い相手だからだ。
ミストバーンが大魔王の股肱の臣であり、ハドラーを上回る力を持っていることは、
接触が増えたことで感じてはいた。
だが、この数年で気心がしれたとまでは言わないまでも、
マキシマムを介して、見た目ほど冷血漢ではないことがわかり親交がある。
しかし、冥竜将ヴェルザーはそうはいかない。
ヴェルザーはかつて大魔王バーンと対立しており、一軍勢を率いた王だ。
そんな男を自らの指揮下で扱えるのかという不安がよぎるが、
その弱気をいままでの戦いで培った己の力への信頼でねじ伏せる。
「最後に……超竜軍団! 冥竜将ヴェルザー!」
引き連れたドラゴンたちを遙かに超える大きな肢体を誇る漆黒のドラゴン。
冥竜将ヴェルザー。
「最強の
全てを焼き尽くす炎の
最強の名を欲しいがままにする強さゆえに、
その戦力も我が六大軍団中随一を誇る!!」
よく見ると紫がかっているのだが、紫という色が感じさせる高貴さとは無縁な、
不安感を煽るような色合いをしている。
背後にはドラゴン、そしてかつてのヴェルザー十二魔将の生き残りたる、
ベリアル、バズズ、アトラスの三者が控えている。
「以上! 大魔王様の手足となり地上を侵攻する──魔王軍六大軍団!!
御前にまかり越してございます!!」
魔軍司令ハドラーの背後に、六軍団の軍団長が進み出てその背後に立ち、
大魔王に対し敬意を表して跪いている。
……例外としてヴェルザーは普段と変らぬ様で、テラスの御簾の向こうの大魔王を、
射すくめるが如き視線で見つめていた。
それをまったく意に介することなく、大魔王バーンは嬉しそうな声でハドラーを褒め称えた。
「素晴らしいぞハドラー。
その軍勢は余の物ではあるが、指揮するのはお前だ。
故にいま言葉にしたように、お前の手足として地上への侵攻で使いこなしてみせよ……」
「ハハーーーーッ! お言葉、肝に銘じます!」
ハドラーの返事に嬉しそうに頷く大魔王。
もちろん、御簾の奥にあるので誰も顔を見ることはできない。
そこで、飛びきりの悪戯を思いついたように笑みを浮かべた大魔王は、
合図を送ってマキシマムに御簾を開けるように命じた。
「大魔王様。玉体を晒されましては……」
「よい、よいのだマキシマム。魔界の空はいつも薄暗く淀んでいる。
だが、地上の
この今日の良き日に集まってくれたみなに、一つ褒美を取らせようと思ってな……!」
御簾から姿を現した大魔王に眼下の魔王軍、六大軍団にどよめきが走る。
スカルスパイダーを倒す際に
その超絶の威力を見て畏怖を覚えた者も居る。
初めて目の当たりにする者もいたが、流石にこの場には精鋭が揃っている。
一見、老いた魔族にすぎぬ大魔王から放たれる、
対峙する者を竦ませずにはいられぬ威圧感。
それに気づかぬような者はこの場にはいなかった。
姿を見せた大魔王の伸ばした指に灯る小さな炎。
指先から放たれた火の粉のような炎が、地面に降り立った瞬間、
苛烈な勢いで獰猛な炎の柱がそびえ立った。
炎の柱の中心には魔王軍の紋章が刻まれ、
鎖で繋がれたメダルが火勢に煽られて笑っているように見えた。
「こ、これは……!?」
思わず声をあげたメネロに答えて大魔王が付け加える。
「"暴魔のメダル" ……。
いわばこの余への最大の忠誠心の証だ。
さあ……我にと思わんものは手に取るが良い」
さきほど声を上げたメネロは
"大魔王様に忠誠を見せるチャンス! 魔力を最大に上げれば樹皮で耐えられるはず!"
と意気込んでいる。
ザングレイは魔炎気で包めば問題ないだろうと考えた。
もし、焼けただれたとしても自分には強い回復能力があるので、
数分で治癒ができると複雑に考えずに手を伸ばした。
デスカールは大魔王様からの贈り物を余人に渡してなるものか!と考えるものの、
唯一あれが大魔王の
それに触れれば、流石にただではすまぬと焦りと信仰の狭間で苦悩している。
ミストバーンは大魔王様もお戯れが過ぎると思いつつ、手を伸ばすだけはやっておこうと考えた。
ヴェルザーは不機嫌そうに腕を組み、最初から取るつもりは無い。
五軍団の軍団長がそれぞれに考えている間に、炎に包まれた腕が暴魔のメダルを手にしていた。
魔界の切り込み隊長の面目躍如……氷炎将軍フレイザードである。
この男、皆が思案している間に、何も考えずに手を伸ばしたのだ。
「クッ……クックックックッ……!
暴魔のメダル、この氷炎将軍フレイザードがいただいたぜ!」
「ふっふっふっ……見事なりフレイザード!」
炎の半身こそ無事であるが、氷の半身が溶けてしまっているという、
凄惨な姿で暴魔のメダルを掴み喜んでいるフレイザード。
大魔王はハドラーにフレイザードを治してやるように指示し、
マキシマムが御簾をまた閉じた。
そのフレイザードを険しい視線で見つめるのはデスカールだ。
内心、信仰する大魔王からの贈り物を奪われた怒りで、
いますぐにでもフレイザードを八つ裂きにしたい気持ちで一杯だったが、
それは後にするべきだと考え、憤怒を押し殺した。
ハドラーはそのデスカールが率いる三人が気になっていた。
デストロール・ガンガディア。
亜人面樹キギロ。
地獄の騎士バルトス。
いずれも旧魔王軍時代のハドラーの側近、最強の戦士達だ。
デスカールがヨミカイン魔導図書館から盗み出した英霊の書によって、
反英霊として呼び出したのが彼ら三人である。
生前より強化されており、軽く見ただけでもガンガディアの魔法力は自分に匹敵しており、
キギロの邪気は数倍の力を誇り、バルトスの身のこなしは卓越した技量を感じさせた。
思わず欲しい……と心の底からの言葉が漏れかけた。
事実、そう考えたことは嘘偽りが無い。
実際、デスカールから、
"ハドラー殿が所望されるなら三名をお返ししてもよろしいが"
そう申し出があったのだが、そこで思いとどまった。
ハドラー自身、禁呪法生命体を作るほどなので、呪法には精通している。
元々、光の秘法であった英霊召喚を、闇の呪法に反転させて、
見事生前より強い三者を呼び出したデスカールの技量は、想像の範囲を超えていた。
ハドラーには窺い知れない何かが潜んでいる可能性がある。
つまり、デスカールに洗脳されている可能性があり、デスカールの命令一つで、
ハドラーの命を奪う暗殺者に転じるかもしれない、という疑念がつきまとったのだ。
その疑念がかつての部下を取り戻すことに、躊躇いが生じてしまう原因となったのである。
故に喉から手が出るほど欲しかったかつての部下を、ハドラーは諦めることにした。
"禁呪法の苦労はオレも知っている。貴様が呪法を研鑽し、手間をかけて蘇らせたのだ。
それを上役の権限を振りかざし、奪うような真似はできぬ"
"……お心遣い痛み入ります"
デスカールは意外そうな顔をしながらも、恭しく頭を下げてハドラーの前を辞去した。
ここで一つの疑問がわく。
この晴れがましい日に、不死騎団の精鋭の列に、
副団長であるヒュンケルがいないのは何故か……?
その答えは、彼が
研究用の魔物を閉じ込めておく牢に収監されているという事実である。
ヒュンケルが牢へ閉じ込められた罪状は、
不死騎団団長である不死将軍デスカールへの反逆であった……。
余談
"大冒険への旅立ち!!"の巻において、
ハドラーが丁寧に六大軍団を紹介してくれるのですが、
その最後のページに組織図があって六人の軍団長のシルエットがあります。
かろうじて小柄なのがザボエラに見えるんですが、形状はまったく違っていて、
古き良きジャンプ漫画の良さが見られて好きなシーンです。
余談の余談
新アニメではこの六大軍団の紹介を、ダイとポップに出会ったときに、
クロコダインが行っているのが面白い変更点の一つです。