ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
仕事が忙しい事と急に寒くなりまして、関節の痛みが来ましたので、
一ヶ月ほどお休みを頂きます。
今月の勇者アバンと獄炎の魔王が楽しみですが、来週なんですよね。
次回は11月20日(木)頃に投稿させていただきます。
私とグランナードはバラン殿の
バラン殿が
グランナードは地面から壁を出す準備をして控えている。
バラン殿の
アバン殿は落ち着いている様子だ……。
何か考えがあってのことだろうが、きちんと言葉にして聞いておきたい。
「アバン殿、これは一体どういうことですかな?」
「ザボエラさん。話し合ってのことです。
それに、あなたが来てくれれば、死者が出ることはないでしょう」
その言葉にバラン殿がまじまじと見て、
アバン殿が目をしっかり見据えて頷く。
「なるほど……。分かりました。アバン殿の良いように」
「無理を言って申し訳ありません」
「なに、ザボエラ殿がいるのでな。私も慌てずに済むというもの」
バラン殿は
二人から距離を取って見守ることにした。
バラン殿が私に声をかけてくる。
「怪我人が出たら回復呪文をお願いします。
恐らく大丈夫でしょうが、致命的な事態に至りそうな場合、私が全力で止めます」
「分かりましたが……。この戦いは必要なのでしょうか?」
「時には言葉では理解し合えないこともあるのです。
特に感情的な部分は……」
ため息をついて言葉を続けるバラン殿。
「あなたのおかげでダイに早く出会えましたが……。
そうでなければ私も憎悪の化身として、人間と世界を憎んでいたことでしょう」
「バラン殿……。
分かりました。では、見守るとしましょう」
バラン殿はアバン殿とヒュンケルを静かに見つめる。
私とグランナードは事態の成り行きを固唾を飲んで見守った。
ヒュンケルは鎧の魔剣の剣だけを抜いて構えている。
アバン殿がヒュンケルに話しかけた。
「ヒュンケル。その鞘はロン・ベルク殿の鎧の魔剣でしょう。
きちんと鎧として纏ってもらって構わないのですよ」
「ふざけるな。これは呪文の類いをすべて無効化する鎧だ。
これをまとったら、貴様の戦いに使える手段は剣技だけではないか!」
「いえ、私もこのガイアの剣の力を全て使うつもりです。
それに、鎧の魔剣を使っていれば勝てた……と後で思って貰っては困ります」
「なに!?」
これは……倒すなら鎧を纏わせない方が良いが、
もしも私が予想している事だったら、鎧を纏わせた方が、
アバン殿も全力で攻撃できるか……。
いまは原作より二年前であり、アバン殿は29歳。
過酷な戦いに身を置いているので、恐らくは
いまのアバン殿がいたらかなり戦いが楽になったのでは無いだろうか。
奥の手もあり、それを使うとは思えないが、総合的な強さはかなりのものだ。
「いいだろう……吠え面をかくなよアバン!
魔剣を鞘に収め、真上に掲げて鎧を身に纏うヒュンケル。
実際、ラーハルトの鎧の魔槍を見ているので、
別にアバン殿はこの鎧のシリーズについて知らないわけでは無い。
むしろ、手合わせをしているのを見ているので、よく理解しているだろう。
「……さて。始めましょうかヒュンケル」
「この十四年の間に、オレが貴様を超えたことを思い知らせてやる!」
真っ向勝負だ。
大上段からの大地斬をアバン殿が受け流して、海破斬でヒュンケルを攻撃した。
そして、ガイアの剣の能力を解放する。
「……!? 馬鹿な! 剣が槍に……」
「アバン流槍殺法──海鳴閃!」
いきなり剣から槍のリーチになったのだ。
よけきれないヒュンケルの鎧に傷がつく。
バラン殿が私に解説をする。
「ガイアの剣の能力は非常に厄介です。
近接戦闘で武器のリーチが変わるのは、それだけで戦闘の主導権がアバン殿の物になる」
「剣で戦っていたと思ったら槍になり、槍と戦っていたと思っていたら鎖になれば、
確かにまともに戦えませぬな」
「アバン殿に勝つなら遠距離から極大呪文クラスで攻撃するか、
私やボリクスのように近接戦闘で、正面から吹き飛ばす火力を持つ事が必要ですな」
付け加えるとその弱点も、アバン殿が奥の手を出せば帳消しにすることができる。
準備が必要だがガイアドラゴンを出せば、戦局は一気に有利になるだろう。
槍を持ったアバン殿に翻弄されるヒュンケル。
戦いの主導権を握ったアバン殿が、ヒュンケルに語りかけた。
「覚えていますかヒュンケル。リンガイアの西部に位置するチュゴナ村。
あの村で我々はベルクスの一人、魔槍のフーガと戦った……」
「……!!」
力強い大上段からの槍撃。
アバン流槍殺法、力の技である地雷閃だ。
ヒュンケルは両手で受けて、飛び退いた。
槍にとって有利なリーチで、剣にとって不利な間合い。
それを一旦リセットしようという考えか。
アバン殿が更にヒュンケルに話しかける。
「数年ぶりにノエルに会いました。いま、彼女は村の自警団の団長をやっています」
「……なに!?」
「リンガイアの戦士団にも、数年籍を置いていたらしいですよ。
立派な
あの時のホウキを槍に変え、振るっています」
「……アイツが……」
ふむ。思った通りだ。
これは果たし合いでは無い。
ただ、素直になりきれていないヒュンケルに対して、
アバン殿が彼に付き合って、心の氷を砕くための、
ヒュンケルの感情を解き放つための戦いだ。
「ヒュンケル、中段に構えなさい!」
「それはまさか……!!」
アバン殿の手にあるガイアの剣が鎖の形になっていた。
先端には鋭い爪のようなモノがついている。
それを巧みに操りながら、アバン殿が攻撃を仕掛ける。
「アバン流
「くっ!?」
大蛇のように鎌首をもたげた鎖が、凄まじい勢いでヒュンケルに叩きつけられる。
両手持ちをした鎧の魔剣で、鎖を受けたヒュンケルだが、
技の威力でふらついていた。
そんなヒュンケルに、アバン殿は話しかけ続ける。
「覚えていますか、ヒュンケル。魔鎖のタークスと戦った時のことを……」
「む、昔話をペラペラと……アバン!!」
緩急をつけた変幻自在の動きに、ヒュンケルは翻弄されている。
だが、籠手を削られながら、鎖の先端を剣に引っかけて動きを絡め取る。
「鎖の武器の弱点は、絡め取れば動きを止めることができる点だ。
タークスとの戦いで、それを披露していたのは失敗だったなアバン!」
「よく覚えているじゃないですかヒュンケル」
「ほざけ!」
鎖から力を抜くことで、力みが抜けて鎖が自由になる。
その隙をついてアバン殿が手首で動かし、鎖を手元に戻した。
「おのれ……こしゃくな真似をする!」
「弱点は克服しておくモノです。では、行きますよ。
アバン流
アバン殿の手首の動きで鎖が操作され、直前で動きを変える。
不規則な動きから、様々な角度で放たれる剣圧。
ヒュンケルは対応しきれぬと、大きく後方へ飛び、間合いを空けた。
「攻撃をいなすにしろ、回避するにしろ、籠手や武具で防御するにしろ、
それぞれ己の次に攻撃動作につなげることができるわけです」
「つまり、あのヒュンケルの間合いを大きく開けた行動は……」
「打つ手なしですな。だから、戦いの仕切り直しを図ったわけです」
ヒュンケルの表情にまったく余裕がなく、片膝をついている。
冷や汗をかきながらアバン殿のガイアの剣……鎖に視線が釘付けだ。
「グノータさんたちはいまベンガーナに住んでいます。
シュプレさんは結婚されて、グノータさんは孫第一の好々爺になっていましたよ」
「……あの爺さんが……シュプレも……そうか……」
魔剣を支えに立ち上がったヒュンケルの目には迷いがなかった。
「ほぅ……これはもしや……」
バラン殿はヒュンケルの変化に気づいたのか。
私は恐らく事態はよい方向へ転ぶだろうという期待を持ちながら見守った。
穏やかな表情で、魔剣を構えてアバン殿に語りかけるヒュンケル。
「
右手を引いて左手を前に出す。
見得を切るような構えは……おそらくブラッディースクライド。
私は小声でグランナードに、危なかったらアバン殿の前に石の壁を作るように頼んだ。
頷いて腰を低くし、いつでも動ける体勢を作るグランナード。
「いいでしょう。
私もその技を克服しなければと考えていました」
ガイアの剣の形状を鎖から剣に戻し、アバン殿はアバンストラッシュの構え。
張り詰めた空気の中、誰一人動かない浜辺で、波の音だけが響いていた。
「ブラッディースクライド!」
「アバンストラッシュ!!」
先に仕掛けたのはヒュンケルで、それを受ける形でアバン殿は、
直線的に進むブラッディースクライドを下から上方向に切り払い、
技の威力を逸らす。
そして、次の踏み込みからの突きでヒュンケルの魔剣を巻き上げ、
落ちてきた魔剣をひょいと拾い、アバン殿は深いため息をついた。
それは、嘆息ではなく、やり遂げた安堵からだろう。
「お見事」
バラン殿の感嘆と共に漏れ出た言葉が、アバン殿の技量を示す最大限の賛辞だろう。
放心したヒュンケルは、信じられないといった感じで膝をついた。
「あなたの技に不覚を取ったのは事実。
二度の不覚は取らないよう、この十四年の間、研究していました」
「ハハ……まったく、そうか……そんなやり方が……」
アバン殿が差し伸べた手を、ヒュンケルが握り返し立ち上がったのはその時だった。
「お帰りなさいヒュンケル」
「先生……いま、戻りました……」
魔王軍の魔剣戦士ヒュンケルが、アバン殿の最初の弟子に戻った瞬間だった。
バラン殿の家へ戻り、無礼を詫びたヒュンケルは食事を勧められたが断り、
何が魔王軍で起こっているか全てをつぶさに話してくれた。
「ガンガディアに、父さんが勇者アバンにヒュンケルを託して未練はないと……。
そう言ったと聞き、先生に罪はないと頭では理解していたのに……」
魂の貝殻のメッセージもそうだが、実際にアバン殿に会って、
納得いくまで問いただしたいと思ったが、会うと言葉にはならない。
だからこそ、剣を合わせたという。
私にはよく分からないが、やはり剣を合わせる事は、
その太刀筋が如実に内面を語ってくれるという。
二人の関係が修復し、ヒュンケルが魔王軍を離れてくれたのは良かったが、
彼が齎してくれた情報は非常に重いものだった。
魔王軍六大軍団が既に閲兵式を行っており、
いつでも地上へ進軍できる状態であること。
多少の予測はしていたが、既にいつ侵略の手が伸びてもおかしくないというのは、
予想よりも事態が早く進みすぎていて驚くばかりだ。
まだ原作まで二年あるから、猶予があるのだ。
そんな気持ちが私のどこかにあったのだろう。
甘えを払拭して、すぐにでも周知して、
魔王軍の地上侵攻に備えるべき事態だ。
そして、デスカールが反英霊として蘇らせ、より強力になって復活した、
かつてのハドラー魔王軍三幹部、ガンガディア、キギロ、バルトス……。
「……バルトス殿の変貌ですか……」
「はい……。父はオレを遙かに上回る強さを誇っていました。
そして、冷酷で無慈悲に……あの……優しい父が……」
悔しそうに語るヒュンケル。
私は実際に出会って話はしていないが、
地獄の騎士バルトスが実直で穏やかな性格だとは知っている。
一体、何が彼の身に降りかかったのか……?
アバン殿はヒュンケルを励ました上で、
彼が気になった部分を弟子に尋ねた。
「ガンガディアはあなたを助け、叱咤してくれた、と」
「今になって考えれば、ガンガディアには恩があります」
……地獄の騎士バルトスは確かに強かったが、
ヒュンケルを圧倒するほどの力ではなかったはずだ。
つまり、デスカールは何か強力な呪法を使ったのだろうな……。
キギロが強くなっているのは分かる。
彼は作中で最も成長したというか、変化していったのだから。
あと、ガンガディアが使ったという敵軍を消し飛ばした呪文。
つまり、それは
一応、私とマトリフ殿、アバン殿、グレゴリーア、グランナード、竜水晶は、
ただ、相手が相手だ。
ガンガディアはマトリフ殿との戦いで、大体、上を行かれているイメージがある。
だが、アバン殿たちのパーティーが最初の遭遇で、
マトリフ殿の介入がなければ手も足も出なかったのは確かだ。
実際、あそこまで色々と策を講じて戦うガンガディアは危険だろう。
ヨミカイン魔導図書館に戻り次第、すぐにマトリフ殿に手紙を書いて知らせねば。
そう考えていると、ヒュンケルはアバン殿に話をしていた。
「先生、虫の良いことを言っているのは分かっている。
だが、オレは空の技を身につけねばならない。もう一度……修行をさせてほしい!」
「父上と戦う為、ですか? ヒュンケル」
「……避けられぬのなら。
だが、父の高潔な魂を邪悪に染めたデスカール!
それにデスカールの力でアンデッドになったテムジンたちも、
邪悪な生命を絶つ技でなくては倒せないんだ!」
え、テムジン……。テムジンってあの……。
思わず私が二人の会話に割り込んだ。
「ヒュンケル殿。
そのテムジンとはパプニカで、大司教の地位に就いていた男の事ですかな?」
「知っているのか?」
「ヒュンケル。彼らを倒してテムジンの陰謀を挫いたのが、
当時のザボエラ殿と、クロコダイン、それからボリクスの三名なのですよ」
「そうか……あんたたちが……いや、あなたたちがテムジンを……」
ヒュンケルの眼差しが急に尊敬のそれに変わった気がするが……。
どうやらデスカールはパプニカ攻めの為に内部に精通しているテムジンたちを使い、
何か姑息な手段を企んでいたのだろうとヒュンケルは言っていた。
そこで、話をずっと聞いていたバラン殿がヒュンケルに話しかけた。
「ヒュンケル。私も空裂斬の習得には苦労した。
己の人生において、心安らかに剣を振るうなどということはなかったからだ……」
「バラン……」
「一度、憎しみに取り憑かれた私だからこそ分かる。
いまのお前のわだかまりがない状態なら、空の技に届くのではないか、と……」
それを聞いて合点がゆき、ヒュンケルは剣を持って外へ出た。
半信半疑のヒュンケルをみなで眺めている。
途中、くしゃみをしたチウがグランナードにゲンコツを食らっていたが、
それで力みが取れたのかヒュンケルが放った空裂斬は、見事にデルムリン島の空に届いた。
「お見事です、ヒュンケル!
父上であるバルトス殿を救おうと考えるあなたの心は、邪悪ではありえない。
まっすぐで澄み切っていた……」
「一度は魔道に落ちたオレが……光の技を……」
「アバン流卒業です。いままでは仮免でしたからね。
これからは……師弟ではありません。一緒に戦う仲間としてよろしくお願いします」
「先生……」
アバン殿の手を取り、涙を流すヒュンケルをみなが暖かく見つめる。
なんとも心地よい一件落着かと思われた瞬間、
世界に重苦しい邪気が満ちた……。
「父さんこれ、なに!?」
「大魔王バーン。ついに動き出したか……!」
「バラン様! モンスターが何人か結界の外で魚を捕っています!」
「よし、手分けして
モンスターたちが凶暴化して傷つけあってしまうぞ!」
私も加わり、
暴れていたモンスターたちを結界内部に入れた。
これはつまり、魔王軍の侵攻が始まる予兆なのだ。
私はグランナードとチウを連れて、ヨミカイン魔導図書館へ戻り、
一刻も早くヒュンケルのくれた情報をまとめ上げる必要がある。
その上で、各国へメタッピーを派遣して、その情報を送らねばならない。
なかなかどうして、事態の進みが早い……。
バラン殿たちへの挨拶もそこそこに、
私は魔法力を高めて
ヨミカイン魔導図書館への帰途についた。
独自設定
海遊輪
アバン流鎖殺法の海の技です。
勇者アバンと獄炎の魔王では地の技しか出てきませんでしたので、
オリジナルで名前を作りました。
登場することがあれば、変更します。
ノエル
ヒュンケルから勇気を貰い、自分で戦う力を得るためにリンガイアの戦士団に入団。
戦士団に籍は置いており、有事の際は戦う誓いを立てている。
グノータとシュプレ
怪物島で武具を収集していたグノータと、彼に付き合い武具を装備しては、
性能のテストをしていた孫娘シュプレ。
現在はベンガーナに住んでおり、シュプレは結婚し、
グノータは武具の見極めをしている。