ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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第十一話 解呪の検討と大魔王バーンの目的

ボリクスが寝ている間、呪いについての文献を当たったのだが、

現状、私ができる範囲では打てる手がない事が理解できた。

研究者としてのザボエラは実に緻密で正確。

そんな彼が長年かけて解呪できなかったのだ。

如何にヨミカイン魔導図書館と言えども、容易く解呪の方法が見つかれば世話はない……。

 

ザボエラの日記には、呪いを解くために試した方法が何通りも書かれていた。

例えば、解呪呪文(シャナク)という呪文がある。

呪いの武具を装備してしまった際、呪いを解き、

装備者が武具を外せるようにしてくれるのだ。

もっとも、外せるというよりは、呪いを解呪呪文(シャナク)で解いた時に、

解呪呪文(シャナク)と呪いの過負荷で武具それ自体が破壊されるのだが。

 

ザボエラ自身は解呪呪文(シャナク)を使えず、シャナクの巻物というアイテムに頼った。

巻物を使用した直後、解呪呪文(シャナク)の呪文が、

ザボエラにかけられた呪いに弾かれたらしい。

巻物は瞬時に焼失。

巻物を乗せていたテーブルも一緒に焼失した。

つまり、誰でも思いつくような範囲の解呪は、不可能だという事だ。

 

ドラクエ10で呪いを解く"おはらい"というスキルがあったが、

あれも作中イベントで解呪呪文(シャナク)の下位互換だと判明した。

解呪呪文(シャナク)が通じない以上、"おはらい"も通じようはずもない。

 

私も呪文や呪法についてはヨミカイン魔導図書館で十分に学んだので、

現在はそれなりの知識を蓄えてはいる。

 

この世界において呪文や呪法は、"呪"の文字だけは一致するが、

怨念であるとか怨みであるとかの、いわゆる禍々しい呪いとは違う。

 

"呪文"とは精霊との契約によって定められた力を、

魔法力を対価にして引き出し制御する技法である。

"呪法"は形式通りに加工した素材に対して、

一定の魔法力を注ぐことで呪文の効果を付与する技術だ。

 

翻って"呪い"というのは、何某(なにがし)かの代償を支払う事で、

相手に対してマイナスの状態異常を付与する術となる。

ごくごく簡単なものは相手に呪いをかけて、

短時間身体の不自由を与えるものが初歩の初歩に存在する。

強い呪いとしては生け贄を代償にして、

相手の姿を変えてしまう呪いなども存在する。

さらに呪いの本を紐解くと、費やした年月と代償が重いほどに、

呪いの効果はあがると書かれている。

 

数百年生きた魔女(グレゴリーア)が命を代償にしたザボエラへの呪い。

つまりそれは、呪いとしては最上級のモノなのだろう。

簡単に対処できる類の話ではない。

 

あとはカールの破邪の洞窟に頼るしかないが、

"破邪"系は本来賢者にしか使えない呪文だと作中で言及されていた。

破邪の"秘法"の方もそうなのだろうか?

恐らくは魔法使いにカテゴリー分けされる私が使えるのか?

原作で語られていない部分なので、試してみる必要がある。

そうなると、アバン先生との初対面は悪印象を抱かれないように、

慎重の上にも慎重を期す必要があるだろうな。

原作の知識範囲では、破邪系呪文を修め、破邪の秘法を習得した、

作中でも数少ない人物の一人なのだから。

 

 

朝から気が滅入る事実を再確認したわけだが、

急にクロコダインが訪ねてきた。

ケインがボリクスを看ているので、私が茶を用意する。

昨日話していた、修行をして自分を高めたいという話だろうか。

いつまでも引き止められないかもしれないなと思い、緊張する。

 

元々、彼が恩を重く感じてくれる人物だからこそ、

魔界まで付き合い、ドラゴン・ウーと死闘を繰り広げてくれたのだ。

真空の斧を強化したことで、報酬として釣り合いがとれるのか微妙な所ではある。

そう考えていたら、クロコダインが口を開いた。

 

 

「ザボエラ。あまり気に病むな。

呪いを解く方法はきっと見つかる。幾らでも言ってくれ。力になるぞ」

 

 

私を見ながら心から心配している顔でこちらを見ている。

……もしかして、私が呪いを解く方法を見つけるために魔界へ行き、

成果がなかったから気落ちしていると勘違いして励ましに来てくれたのか……?

 

 

「なに、長年かけて取り組んできたことじゃ。

また、別の解決法を探してみる事にするだけのことよ」

 

「そうか……。前向きな考えだな。

オレも正直に話そうか。当分、お前の下で腕を振るいたいのだ」

 

「ありがたい話じゃが……よいのかのクロコダイン?」

 

「魔界だ。あれは鮮烈な体験だった。

正直、お前に魔界行きを打診された時、オレは傲慢だったのだ」

 

 

え、どの辺りがと言いそうになったが抑えた。

最初から最後まで周りを安心させる自信と、

私やケインをカバーしてくれる気づかいを見せてくれていたが。

具体的にどこが傲慢だったのだろうか……?

 

 

「どうせ、魔界へ行っても楽な戦いだけだろう。

地上へ戻ったらハドラー殿を倒した勇者アバンに挑むか、などと考えていた」

 

「ふむ……そうじゃったか。なぜ、心変わりしたのかね?」

 

「魔界のレベルの高さだ。

雑兵のような連中でも手ごわい。最後に戦ったドラゴン・ウー

あの男は傲慢だったが強かった。いままで戦った中で最強だった」

 

 

クロコダインは長年、飽いていた。

誰と戦っても楽勝。自分を手こずらせる相手などいない。

故にせめて最後だけでも、

自分に匹敵する強者と戦い、満足の内に死にたいと願っていた。

 

だが、魔界へ行き衝撃を受けた。

自分程度の強さが驕るのは早い、と。

井の中の蛙大海を知らず。傲慢になるのは早過ぎたのだ。

まだまだ世界は広い。猛者は幾らでもいるのだろう。

ならば、強さの頂に登り詰めてみたくなったのだ。

己がどこまで強くなれるか、生きて見極めたいという欲が出たそうだ。

 

なるほど……そういう考えか。

原作のロモス侵攻の際も、ロモスの兵の弱さにやる気を無くしていたな。

ダイ大本編では魔界へ行くことが無かったクロコダインは、

長い年月の中、歯ごたえのある敵との戦いに飢えるを通り越して、

好敵手との戦いを諦めてしまっていたのかもしれない。

 

コキュードスから始まってヴェルザー軍の部隊、

極めつけはドラゴン・ウーという猛者とのギリギリの戦い。

クロコダインの中の強くなりたいという気持ちに、

ガソリンを撒くような事が立て続けに起こったという事か。

 

 

「真空の斧はお前の力が無くば、手に入らなかったシロモノだ。

そうなると、この斧を振るうのはお前の為であるべきだ」

 

「あの時も言ったが、お前さんの力じゃよクロコダイン。

ワシが手に入れたとしても、重くて振るえぬからなその斧は」

 

「当分厄介になるぞザボエラ。

お前の行く道にはきっと猛者が現れるに違いない。オレには分かる!」

 

 

できれば猛者は現れないで欲しいのだが、

クロコダインの言うとおりになるだろうな。

……そろそろ一つ、秘密を共有しておいた方がいいだろう。

 

 

「お前さんが腹の内を見せてくれたからの。

一つ重大な事を話しておきたいのだが、一笑に付さず聞いてくれんかの?」

 

「言ってみてくれ。笑わんぞ」

 

「ハドラー殿……。

いや、ハドラーが生きていると言ったら、信じるかクロコダインよ」

 

「グハハハハッ~!! ハドラー殿は死んだはずではないかザボエラ!

おっと……すまん。笑わぬと言ったのに失言だった」

 

「なに、信じられぬのも無理はなかろうて」

 

 

元々、ハドラーに魔鉱石を渡したのもザボエラだ。

その縁で勇者が攻めてきたハドラーへ、

陣中見舞いをしようと地底魔城を訪れたという話を作り上げた。

 

そこで見てしまったのだ。

瀕死の魔王ハドラーが地獄の騎士バルトスを粛正するシーンを。

そのハドラーが、自分は大魔王バーンの超魔力によって救われたと。

13年間の眠りに就き、魔力を蓄え復活すると。

新生魔王軍を編成し、再び地上へ侵攻するという話を耳にした。

 

まるで見たように説明ができる。

ダイ大の原作漫画で何度も見たシーンだ。

実際に私が行ったわけではないだけで。

 

 

「あれから5年経過しておるからな。

つまり、あと8年の後、ハドラーが復活してくるわけじゃ」

 

「だが、軍勢がすぐには整わんだろう。

8年経ってハドラー殿……おっと」

 

「構わんよ。ワシは彼とは決別するつもりで、呼び捨てにしておるだけじゃ。

お前さんが敬意を抱くのは別の話じゃよ」

 

「だが、バルトス殿を八つ当たりで殺すのは、武人として礼に反する。

決めた。オレも呼び捨てにするぞ」

 

 

わざわざ宣言するのはずいぶんと律義だなクロコダイン。

と、誰かが走ってくる音がした。

 

 

御主人様(マスター)!! ボリクス様が~~!」

 

「なんや、こんな所におったんか!

なんの話や? うちも混ぜろや」

 

 

一応、先ほどまでの話をする。

最後に大魔王バーンの名前が出た時に、

眉をひそめてこう話した。

 

 

「バーンか。あいつの地上侵攻が現実のものになったんやな」

 

「お前さんは大魔王バーンに会った事があるのかのう?」

 

「何度かな。あんま長話したことはないで。

ただ、瀕死のうちを前にヴェルザーがこう言うとったんや」

 

 

"オレは貴様になぞ関わっている暇はないのだ。

急いで地上に侵攻せねば、バーンの奴めが地上を吹き飛ばしてしまうからな!

オレは地上も欲しいのだ。太陽の光溢れる地上をなっ!!"

 

 

「真竜の戦いやったか? あれでうちが殺される直前の話や。

ま、うちが竜の頃に最期に聞いた言葉やな」

 

 

ボリクスが若干苦い顔でそう言った。

それにしても、ヴェルザーはそんな事をボリクスに話したのか。

だからこそ、その頃から準備していた地上征服をバランに邪魔されて、

自棄になって黒の核晶(くろのコア)を使ってしまったんだろうか。

ボリクスの言葉を聞いてクロコダインが怪訝な顔をする。

 

 

「ボリクス。地上を吹き飛ばすとはどういうことだ?」

 

「ん、なんや?」

 

「その大魔王とやらがハドラーに地上侵攻させるなら、

地上を侵略して己が支配下に組み込むのが常道ではないのか?

吹き飛ばすというのは、意味が分からないのだが」

 

「ああ、そこかいな。ヴェルザーは欲深いから地上欲しがってんねん。

ま、以前のうちもやったけどな」

 

 

そこで私の紅茶を一口飲んで、「苦ッ!」と言い、

横にある角砂糖を6個くらい放り込むボリクス。

あの紅茶、甘すぎてもう私は飲めないな。

 

 

「バーンはちゃうねん。バーンは魔界に直接、地上の太陽が欲しいんよ。

前からバーンは地上の事なんか、鍋のフタくらいにしか思うとらんのや。

吹き飛ばすっちゅーことは、そーゆーこっちゃろ?」

 

「つまり、ヴェルザーの言葉でお前さんはそれに気づいたという事かの」

 

「せやなぁ。うちはヴェルザー嫌いやけど、地上を手に入れるってのは賛成や。

魔界には領土的意味があらへんからな。

地上を吹っ飛ばそうってバーンは、頭おかしんちゃうかと思うで。

ま、どうやって吹き飛ばすのか見当もつかへんけど」

 

 

地上を吹き飛ばして、あの不毛の魔界に陽光を差し込ませる。

これは多分、語られざるバーンの過去にあるのだろうな。

魔族と竜が太陽を奪われ、過酷な魔界に押し込められた。

それがどのように行われたのかは分からない。

もし、神々が強権的なやりかたをしたとしたら?

当時の大魔王バーンが若い、もしくは幼い頃で、

神々の理不尽に対する力をもたなかった。

その際の理不尽に対しての怒りの念が、

地上を吹き飛ばしてしまうという乱暴な結論につながるのだろうか?

何か事情を聞けば同情的になる話があるのだろう。

誇り高い大魔王バーンは同情など求めないだろうが。

 

だが、仮に魔界に太陽の光が降り注いだとして、

あの環境が地上と同様の緑豊かな土地になるのだろうか?

なぜなら、私も魔界へ行って、あそこで暮らすのは厳しいと思ったからだ。

そもそも、どこで農作を行うのか。

峻険な岩とマグマしかない大地で。

 

今後、何らかの形で大魔王バーンと交渉を持つことがあるかもしれない。

やはり、その際に話すべきことは魔界に陽光を降り注いだとして、

魔界が地上のように豊かになるのか?

それとも地上を吹き飛ばしただけで、

神々への恨みを晴らすだけという感情を満足させるだけの話なのか。

そこは聞かなければならないだろう。

 

 

「ザボエラ。それをハドラーに話してみてはどうだ。

ハドラーは地上を征服したいはずだ。吹き飛ばすのは彼の目的にそぐわんだろう」

 

「ワシらが会って話をしても信じぬじゃろう。

なにせ、大魔王バーンはハドラーにとって命を救った大恩人なのじゃから」

 

「むぅ……。どちらの話を信じるかは明白だったか。

つまらんことをいった」

 

 

気を落とすクロコダインだが、そういう常識的な視点を提示してもらうのは助かる。

ダイの大冒険は奇跡が多い話だが、バランス次第で敗北していたという、

かなり厳しい戦いが多いのも確かだ。

 

 

「先ほどのクロコダインの質問に今更ながら答えるかのう。

ワシは大魔王バーンの地上侵攻に抵抗しようと思っておったのじゃ。

折角、地上で呪文や呪法の修行をしようというのに、また戦争など起こされては困る」

 

「その意味ではオレも協力するぞ。

戦争で弱兵と戦うよりは、強者と戦って己を磨きたい」

 

「なぁ? ザボ爺(ざぼじい)って、あれやろ。

極大爆烈呪文(イオナズン)極大閃熱呪文(ベギラゴン)使えるんやろ?」

 

 

ボリクスが急に私に尋ねてきた。その通りだと首肯する。

ところで、ザボ爺(ざぼじい)って私の事だろうか。

 

 

「今はうちは両方使えへん。昔は極大閃熱呪文(ベギラゴン)極大爆烈呪文(イオナズン)も使えたんや。

うちが言いたいのはな、ザボ爺(ざぼじい)な、かなり強い魔法使いちゃう?

魔王軍にスカウトされへんやろか、っちゅーことや」

 

「た、確かに……。ハドラーの側近であるガンガディア殿も亡くなられたと聞く。

そうなると魔法使いであり、参謀がハドラーにはいないのだろう?

オレがハドラーでも、ザボエラに声をかけて麾下へ招くだろうな」

 

 

恐らく原作でのザボエラ登用までの流れはそうだったのだろう。

本来、ガンガディアが生きていれば、ハドラーの側近は彼であっただろうし、

なんなら妖魔士団長はガンガディアが就任していたかもしれない。

だが、彼はマトリフとの戦いで命を落としてしまった。

 

そこで、長年、ハドラーの招聘を断り続けたザボエラに白羽の矢が立つ。

まさしく、ザボエラがザムザに話したように、

 

"さんざん口説いて味方にした男……

最初からそういう格付けにしとかんとな"

 

という自分を高く見せる処世術を徹底し続けた、ザボエラの宣伝戦略の勝利だ。

実際、それで妖魔司教ザボエラとして、

魔王軍六大軍団妖魔士団長に就任したのだから。

 

 

「ワシ自身の呪いの件もあるが、彼らが準備を整える前にこちらも準備をしたいのじゃよ。

それまでに世界を巡って、知識を蓄え様々な技術を学び、力を万全にしたいと思っておる」

 

「うちがもっと強くなったら、ザボ爺(ざぼじい)をスカウトしてもええで。

勿論、クロコダインも一緒やな。強い奴は大歓迎や」

 

「ハハハ、オレはザボエラのついでのようだな」

 

「べ、別にそないなわけやないで!!」

 

ボリクスが怒っている横で考える。

彼らは私に好意的で協力してくれている。

ただ、それを当然のように思い、享受し続けてはいけないだろう。

私のできる範囲で、彼らのやりたいことをサポートしてやらねばならない。

 

取り急ぎ、テランへ赴いて竜水晶にボリクスについて尋ねなければなるまい。

接触できる範囲で、竜の(ドラゴン)騎士について一番詳しいのは彼女だろうからな。

旧アニメ版の声だったら、男性人格だろうから彼かもしれないが。

 

 





竜水晶……旧アニメでは小林通孝さん。
新アニメでは戸田恵子さんが演じられていました。
新アニメは三条先生も参加されているので、
竜水晶は女性人格なのだろうと思って話を進めていきます。

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