ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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ちょっと風邪を引いてしまいまして、
次回は再来週1月29日の木曜日23時頃を予定しております。

寒さが増してきましたのでみなさまもお気をつけ下さい。





第九十一話 百獣魔団

私とケインは、グレゴリーアたちが先行したテランへ急行した。

王城の前でフォルケン王とグレゴリーアたちが話している姿を確認し、

その側にふわりと降り立つ。

 

重症者を治療し終えたからか、グレゴリーアには安堵と疲労感が見えた。

話を聞くとアギロ王以下、体力の消耗が著しいので、

みな城の中に収容して厳重に守っているそうだ。

部屋が足りないので、グランナードが急増で石壁を出し、

城の仮増築をしているらしい。

 

 

「フォルケン王。王の間へ行きませぬか?

流石に王がおられると、作業がしづらいでしょう」

 

「確かに。お伝えすることもございます。中へ参りましょう」

 

 

さっきから行き交う文官や兵士達の目が気になっていたところだ。

フォルケン王もそうだが私も肩書持ちであるし、

我々が険しい顔で話し合っていると、何事かと思うだろう。

 

 

私たちはテラン城の王の間に移動し、情報を交換して状況を整理した。

まず、テランに猛禽旅団という軍団が攻めてきた話を聞く。

猛禽旅団? 初めて耳にする名前だ。

……六大軍団にいなかったはずだが……。

 

その猛禽旅団との戦いは、ほぼ完勝だったそうだ。

ギュータの民もおり、フォルケン王や戦士団に拳士団、チョコマやボリクス。

さらにロン・ベルク殿も迎撃に参加したので、戦闘終了も早かったらしい。

 

ボリクスは私がヨミカイン魔導図書館に戻っていると思ったらしく、

テランから移動してしまったらしい。

フォルケン王との情報交換が終わったら、メタッピーを借りて、

ボリクスと連絡を取った方が良いだろう。

 

テランへ攻めてきた猛禽旅団は二千ほどの軍勢だと聞く。

オーザムを陥落させた氷炎魔団は四千ほどの勢力である。

原作に存在しない猛禽旅団の存在は、私に警戒心を呼び起こした。

もしかすると、軍団に格上げされる前の、予備のような軍勢が幾つかあり、

それらが攻撃してくる可能性も考えに入れねばならないだろう。

 

しかし、ジャミラスが死んでしまっては、

オーザムにピラァ・オブ・バーンを落とした際、

凍結を防ぐ魔物がいなくなるが良いのだろうか?

それとも、別種の炎の魔物を置くことを考えているのか。

まぁ、それは私が心配する類いの話ではないな。

 

フォルケン王は、緊急時の場合に動ける、精鋭部隊を稼働させているという。

何かあった際に、国内を瞬間移動呪文(ルーラ)で移動して、

戦えるように訓練されているらしい。

今回の襲撃の際、最初に戦ったメンバーがその者達だということだ。

どうも隊長がチョコマというのが気になるが……。

 

王がカナル殿から受け取った書状を読みながら説明してくれる。

 

 

「カールから手紙が届きまして、

魔影軍団の偵察部隊およそ四百を撃退したということです」

 

「兵力を小出しにするやり方は、悪手ですな。

魔影軍団の将は、カールを侮っていると見えますぞ」

 

「精強なカール相手に良い手ではありません。

魔影軍団がこのような戦い方をするなら、

カールは優勢に戦えるのではありませんか?」

 

 

原作でもミストバーンはカールに手を焼いていた。

 

"カール王国がなかなかの手練れぞろいで手こずっておるのだ"

 

ハドラーがそう語っているシーンが原作にはある。

そのため、途中から魔影軍団から、

超竜軍団へ侵攻をバトンタッチしていた。

 

原作のカール王国でもそうだったのだ。

いまのカールは原作よりかなり強い。

 

だとしても、ミストバーン一人の参戦で、

戦況が覆る可能性は大きい。

今後、彼がどう動くかは注意が必要だろう。

 

それに魔影軍団は、倒してもあまり意味が無いのも困りものである。

生命体ではないので、兵站を考える必要は無い。

鬼岩城があれば(ラング)の間で幾らでも、

さまようよろいなどの、兵力を補充することが可能なのだ。

 

事前に送った書状に、魔影軍団の長所については認めて送ってある。

ミストバーンが本気にならなければ、いまのカールなら問題はないだろうが……。

 

フォルケン王が地図を開き、戦況を説明してくれる。

 

 

「リンガイアには超竜軍団。パプニカには不死騎団。ロモスには妖魔士団。

そして、ベンガーナには百獣魔団が攻め寄せているという報告がありました」

 

 

グレゴリーアが私にニヤリとしながら話しかけてきた。

 

 

「アンタの予想、ロモスとベンガーナが逆だったようさね」

 

「ふむ……そのようじゃな」

 

「ですが、他の国へ侵攻した軍団を、

ザボエラ様は当ててらっしゃいます。

さすがの先見の明だとみな驚いておりますよ」

 

 

テラン戦士団の団長になったカナル殿がそう言ってくれるが、

私の場合は解答を見たようなものだからあまり喜べないところがある。

 

しかし、ロモスとベンガーナが逆ということは、

クロコダインを呼び戻した方が良いのか?

ザングレイは真正面から叩き潰すような、

パワーにおいて比類無い戦いぶりを魔界で見せつけてきた。

 

圧倒的なパワーと魔炎気を誇るザングレイに対抗するには、

クロコダイン以外では竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を用いるバラン殿か、

ボリクスしか戦えないだろうと私は考えた。

それゆえに、クロコダインにはロモスへ向かって貰ったのだが……。

 

しかし、ロモスへ妖魔士団が侵攻しているという事に、嫌な予感がしてしまう。

原作ではザボエラが妖魔士団団長だったが、いまはメネロが団長だ。

彼女は植物系の能力を使う。

 

そして、ロモスは緑豊かな国だ。

かつて亜人面樹のキギロが支配した魔の森がある。

急いでクロコダインに連絡を取らねば、そう思った所、

廊下がなにやら騒がしい。

 

 

カナル殿が一礼して見に行くと、慌てた様子ですぐに戻ってきた。

 

 

「く、クロコダイン殿とチウ殿が戻られました。二人とも大怪我を負っています!

ザボエラ様、どうか治療をお願い致します!」

 

 

入ってきたクロコダインは肩に木の枝が刺さっており、

背負っているチウは全身に細かい切り傷があった。

 

私とグレゴリーアで手分けして二人を治療する。

 

 

「なんだいこりゃ……? まるで鋼鉄のような葉かい?」

 

「何百も飛んできて避けられなかったんです……」

 

 

グレゴリーアに治療されながら状況を話すチウ。

クロコダインが、彼女に話しかけた。

 

 

「チウが持っていた薬草を全部ガルーダに使ってしまった。

一番傷が深くてな。彼の治療もお願いしたい」

 

「任せときな」

 

 

グレゴリーアが城の外で待っているガルーダの治療に向かう。

何があったのかと尋ねるとクロコダインは、神妙な顔で話を始めた。

 

 

「ロモスは……。

魔の森が広がっており、ネイル村やロモス城を飲み込んでいた」

 

「それはどういうことじゃ?」

 

「実際に戦ったオレにもよくわからぬのだ……」

 

 

元々ロモス王国が存在する、ラインリバー大陸は緑豊かだ。

魔の森が大陸最大ではあるが、各地に森が存在しており、

ロモスは材木の産出国としても有名だ。

 

私が用意した水を飲み干し、一息ついたクロコダインは、

その時の状況を説明した。

 

 

「ガルーダに運ばれて空から見ていたのだが、魔の森が広がりすぎていて、

まったく場所が分からなくてな。

恐らく、ロモス城だった辺りを見当をつけて降りようとしたのだ」

 

 

その瞬間、伸びてくる巨木の枝や数百の刃物のような葉、

蟲系の魔物などの襲撃を受けたという。

 

ロモスは森に覆われて完全に支配されてしまったのか?

ロモス城やネイル村の人々は無事なのか分からない状況だ。

 

 

「一本や二本じゃないんです。

クロコダインさんが抱えられないくらいの大木が、バンバン飛んできて!

それをクロコダインさんがボンボン叩き落として! いやぁすごかった!」

 

「ガルーダの翼が切り裂かれては、オレたちはお仕舞いだからな。

チウが体を張って守ってくれた」

 

「うむ……よい判断じゃチウよ。

しかし、そこまでの飽和攻撃をされては、ロモスには近づけぬのう……」

 

 

クロコダインは私がオーザムに向かっていると考えたので、

チウとガルーダがもたないだろうと、治療を頼むためテランへ向かった。

さらに奇怪な状況について、知恵を授けて貰おうと、

フォルケン王を頼って訪れたということだ。

 

 

「フォルケン王は何かご存じですかな?

ロモスでこのような現象に心当たりは……?」

 

「いや……流石に分かりませぬな。

ロモスにある魔の森という呼称も、魔物が多いことからの呼び名です。

森の木々自体が動いて攻撃してくるというのは……見当もつきません」

 

 

まったくだ。ドラクエ11に迷いの森というのがあったが、

あれは登場するモンスターが非常に強い危険な場所だった。

そもそも森そのものが敵対してくるのは……想像もつかない。

 

思考を進めてみるとするなら、勇者アバンと獄炎の魔王において、

キギロが魔の森で巨大なマンイーターを使って森を支配した例はある。

メネロがそれを極めて広範囲で行ったというのか……?

 

考え込んでいると、テラスの方が騒がしい。

カナル殿が会議中だぞと注意する声がするが、

すぐに走って戻ってきた。

 

 

「みなさん、テラスの方へ。見ていただきたいのです!」

 

 

ベンガーナの方角に火の手が上がっていた。

この距離で確認できる火勢だ。

単なる火事ではないだろう。

 

まさか……ベンガーナが陥落したのか……?

戦車部隊は増強されているし、戦士団の人数も増えている。

あの国は豊富な資金を元に、かなり軍備を整えていたのだ。

こんな短時間で落とされるとは考えづらいが……。

 

みながベンガーナの火の手を見て、推測を述べているところに、

息を切らせて走ってきた兵士からの報告があった。

ベンガーナからアキーム殿が単身で参り、王に助けを求めているという。

 

すぐにアキーム殿を通して貰い、まず私が彼の傷を治療する。

 

 

アキーム殿は悔しさをにじませながら、ベンガーナの陥落を告げた。

百獣魔団は想像を絶する強さだったということだ。

 

戦車隊の砲撃、弓兵の矢を団長のザングレイが物ともせず進み、

その後に軍勢が続いてまるで一個の生き物であるかのように食い破ったらしい。

 

王城もザングレイの突撃で粉砕され、王が人質にされてしまったという。

敵将ザングレイは、クロコダインを呼べとアキームに言ったそうだ。

もし逃げたら王都にいる兵士や、住民を皆殺しにすると言っているそうだ。

しかも、期限は三日だというので、困ったアキーム殿はテラン王の知恵を借りに、

隣国の王を頼ったという。

 

話を聞くと、陥落したというが人死にがあまり出ていないらしい。

むろん、抵抗した者は殺されてしまっているが、基本的に人質にするために、

あまり人間を殺さないように百獣魔団が戦っていたそうだ。

 

そのため、陥落という割に被害は驚くほど少ないということである。

だが、それは人質としての価値で、攻められたときに殺されるか、

人質として期限が来たら殺されるかの差だろう。

 

涙を流すアキーム殿は、土下座をしてクロコダインに頭を下げた。

 

 

「ここでお会いできたのは幸運という他はありません!

クロコダイン殿! どうか……ベンガーナを救っていだだけませんか!!」

 

「待ってください! クロコダインさんは大怪我を負った後で……」

 

「やめろチウ。男が頭を下げて頼むのだ。

オレは無下にはできんよ」

 

「クロコダイン殿……! ありがとう……ございますッ!」

 

 

頭を下げるアキーム殿の肩をポンと叩き、

クロコダインは立ち上がった。

 

 

「それにザングレイはオレを名指ししたのだ。

ここで逃げるわけにはいかんだろう」

 

 

そして、クロコダインがテラスを見て言う。

 

 

「そこの男も出てくるがいい。ザングレイの使いか?」

 

 

そのクロコダインの言葉に、一人の鳥人が翼を羽ばたかせて降り立った。

こちらを小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、わざとらしく拍手をする。

 

黄色い羽毛を生やし、額の辺りで赤と白の羽根が分かれて生えている。

鎧のデザインは大分異なっており、肩当てと胸当て。

腰鎧だけの軽装だ。

 

身体には傷が何カ所もあり、それを誇るようにしていることで、

歴戦の戦士であることが覗えた。

 

原作での空戦騎ガルダンディーだ。

ヒュンケルに聞いてはいたが、百獣魔団の副団長だったな。

 

 

「クックックック……。

さすがザングレイ様が気にかけてる男ってだけはあるなクロコダイン。

気配を消してたつもりだったが、勘づかれちまった」

 

「お前、何者だ! 悪党の手先か!」

 

「うるせぇな! 雑魚とは話さねぇよ!」

 

 

チウの言葉に羽根手裏剣を投げてくるガルダンディーだが、

手裏剣を闘気を宿した手刀で叩き落とすチウ。

 

 

「甘く見るなよ! その程度の攻撃は通じないぞ!」

 

「へぇ……雑魚かと思ったら使えるんだなお前」

 

 

若干、殺気をにじませたガルダンディーと、

構えるチウの間にクロコダインが立ちはだかった。

 

 

「まず名を名乗れ。

こちらをからかいに来たわけではなかろう?

ザングレイからの用事を果たしたらどうだ」

 

「ちっ……オレは百獣魔団副団長ガルダンディーだ。

その人間がちゃんとあんたを探すかどうか見張ってたんだよ」

 

 

アキーム殿は命拾いをしたのだな。

彼が逃げることはないだろうが、命惜しさに逃げたとしたら、

ガルダンディーに始末されていたに違いない。

アキーム殿の生真面目さが彼の命を救ったのか。

 

ガルダンディーからの言葉はシンプルだった。

クロコダインと一対一で戦いたいザングレイだが、

自分とボラホーンという副将が居る。

だから、同行者を二人まで認めるという。

 

 

「つまり、オレとボラホーンと戦うヤツを二人用意しろって話だ。

もちろんだが、ザングレイの大将とクロコダインの戦いに加勢は認められないぜ。

手を貸したら、すぐ様ベンガーナの人間を殺す」

 

 

そう言ってガルダンディーは肩をすくめた。

 

 

「まぁ、そうは言ってもボラホーンとオレ相手に戦えるヤツいるかぁ?

……フォルケン王はイケそうだが、王がくるわけにゃいかねぇだろ。

あとは魔族の爺さん……あんたザボエラだろ」

 

 

私の方を見ていうガルダンディー。

挑戦的に指を突きつけて言ってくる。

 

 

「魔法使いなんざオレの敵じゃねぇんだが、

大魔王様にも一目置かれた男だよな、あんたは。

あんたを倒せばオレは軍団長にしてもらえるかもしれねぇな……!」

 

 

ガルダンディーは挑発的な言動をしているが、

実際、これに乗って彼の手の内を知らずに戦ったら、

私は敗北する可能性が高いだろう。

 

速度が速く先手をとってきて、機動力があり空中戦を行える戦士。

さらに赤い羽は体力を奪い、白い羽は魔法力を奪う。

動きが鈍く、呪文に頼る魔法使いを、

彼は何人も仕留めてきたのだろう。

 

 

「おいおいおい、どういうことだよ?

なんかしらねぇ間に三下が紛れ込んで、ギャアギャア言ってるじゃんかよ」

 

「グランナードさん!」

 

 

グランナードがこちらへ手を振りながらやってくる。

 

 

「オイ。三下ってのはオレの事か? 石ころ野郎が!」

 

「おやおや。理解できねぇのか?

オレのインテリジェンスがちょっと高度すぎたかい?」

 

 

イタリア人のように肩をすくめて、

相手を小馬鹿にした表情をするグランナード。

 

 

「オレは四賢者であるザボエラの旦那のトコにいるインテリだからよ、

頭の悪いトリには分からねぇ言葉喋っちゃった? 悪いなぁ?」

 

「てめぇ、ペラペラさえずるんじゃねぇ!」

 

 

ガルダンディーが羽根手裏剣を飛ばすが、

グランナードの硬い肉体に遮られ、硬質な音を立てて全て床に落ちる。

 

 

「おいおい、散らかすなよ。お片付けが大変じゃねぇか?」

 

「てめぇ! この場で決着をつけてやる!」

 

「二人とも待たぬか。グランナードもその辺りにしておくのじゃ」

 

 

私はグランナードを窘めつつ、ガルダンディーにも自分の仕事を思い出すよう、

彼の役割を話して聞かせてやる。

 

 

「ガルダンディー殿。

あなたもザングレイ殿からの命令を、守らなければならんじゃろう?」

 

 

ザングレイの名を出したことで、ガルダンディーは落ち着きを取り戻した。

その間にグランナードに状況の説明をする。

 

 

「なるほど、そういうことっすか。

じゃ、オレとザボエラの旦那で決まりですかね。クロコダインさんについていくのは」

 

「ぼ、ぼくもついて行かせてください!」

 

 

ベンガーナの王と国民の命がかかっている。

同行者は二人という条件を守らねば、

到着した途端に誰か見せしめに殺される可能性がある。

そう思っていたところ、ガルダンディーが声をかけてきた。

 

 

「いいぜ。連れてくればいいじゃねぇか。

そのネズミ一匹くらい好きにすりゃいい」

 

「ふふん! 後悔するなよ!」

 

「へっへっへ……するかよ。じゃあ、ついてこい。

行き先は更地になったベンガーナ城の辺りだ」

 

 

そう言って羽根を羽ばたかせて飛び去るガルダンディー。

私はフォルケン王をチラッと見て、恐らく全てを心得た王は深く頷いた。

 

それを確認した後、チウ、クロコダイン、グランナードを連れて瞬間移動呪文(ルーラ)で彼を追う。

 

道中、グランナードから話を聞くと、グレゴリーアが怪我人が多すぎるので、

自分は残ってテランの城でオーザム避難民たちの手当を手伝うという。

それを伝えに上がってきたらガルダンディーがいたそうだ。

 

クロコダインがみなに話をする。

 

 

「オレがザングレイと一騎打ちをするが……。

やつの副将、あのガルダンディーともう一人のボラホーンという男。

お前達に任せていいのだな?」

 

「大丈夫ですクロコダインさん。ぼくらに任せてください!」

 

「なんでおめーが仕切ってんだよチウ」

 

 

グランナードに小突かれているチウ。

思わず私も笑みがこぼれるが、クロコダインは真剣だった。

 

 

「ザングレイとは二度戦ったが、先だっての魔界での彼奴は強かった……」

 

 

クロコダインがその時を思い出すような目をして話す。

 

「オレが勝てたのはギリギリの差だ。実力に差はないだろう。

あれからあの男が更に強くなっているとしたら、お前達が苦戦しても助けにゆけぬ。

そんな余裕がない戦いになるが、その覚悟はあるのか?」

 

 

そう問われチウは黙ってしまったが、すぐ覚悟を決めてクロコダインを見直し、

目をまっすぐに見てこう言い放った。

 

 

「ぼくも武神流の門下の一人です。

クロコダインさんが戦いに集中できるように、アイツと一人で戦って見せます!」

 

「オレはザボエラの旦那の盾にならなきゃならねぇからな。

頑張れよチウ」

 

 

グランナードがチウの肩を叩いた。

ガルダンディーの雰囲気からして、ボラホーンも原作より強いのだろう。

だとしてもいまの私にグランナードが前衛についてくれるなら、負けることはないだろう。

そう思いながらベンガーナの王都上空に達したとき、

眼下の町並みの惨状に息を呑んだ。

 

 

「……これは酷いな……」

 

「い、生きてる人がいるんですか……?」

 

「ガルダンディーの話ではそのはずだがのう」

 

 

大陸諸国でも訪れた範囲では最も発展していたベンガーナ。

市場が建ち、デパートがあり、道は綺麗に舗装され、

行き交う人々は豊かな品々を手に取る国だったのだが……。

最早見る影もない。

 

爪や牙で建物が壊され、巨大なモンスターに踏み潰された家々が見える。

先行するガルダンディーが手で合図したので、その場所に降りた。

恐らくは王城のあった場所だろうが、それが分からないほどに破壊されていた。

 

ガルダンディーの合図した場所の中心に、

存在感が分厚い男が腕を組んで立っていた。

百獣魔団長、ザングレイその人だ。

魔界で相まみえた時より、更に激戦をくぐり抜けたのか、

傷が増えておりすごみが増している。

クロコダインに破壊されたザンバーアックスを修復しなかったようで、

新しい武器を手に入れたようだ。

 

サイを思わせる形状の巨大な斧。

長柄がついていて力で振り回す類いの武器だ。

それこそ、ザングレイかクロコダインしか振り回せないだろう。

 

その横に青い肌で重厚な甲冑を身につけた、

こちらも歴戦の雰囲気を感じさせるボラホーンが立っている。

 

更に巨大な檻が置かれており、

クルテマッカVII世王と十人あまりの戦士達が閉じ込められていた。

 

ガルダンディーがザングレイの側に降り立ち、

一礼してからなにか話しており、ザングレイが爆笑して返事をした。

 

 

「好きにするがいい。ネズミが増えてもオレは気にしない。

オレはクロコダインと戦えれば良いのだからな」

 

 

ボラホーンが距離を取れと言って、我々はザングレイから離れた。

こちらを振り向いたザングレイが、傍らの異形の戦斧を手に持って言った。

 

 

「待ってたぞクロコダイン。オレに勝てばここの人間達は自由だ。

他にも一カ所に集めている人間共も逃がしてやる。

尤も勝てれば、だがな……」

 

「人質など取らずオレを呼べば良かったモノを」

 

「仕方なかろう。確実な手を取るさ。

超魔生物と化したオレの寿命は、あまりないからな」

 

 

超魔生物!?

まさか、完成させてしまったのか……デスカールがザムザの研究を。

 

 

「オレは獣人としての生を終えた。

オレの肉体を以て……超魔生物が完成したぞッ!」

 

 

鎧を吹き飛ばし、その肉体を露わにするザングレイ。

体毛が濃くなり、腕が大木のような太さをしている。

さらに背中には炎に包まれた翼のようなものが見えた。

顔はバッファローの面影を残しているが、印象は超魔生物ザムザのようだ。

 

膨れ上がった肉体は、およそ5mくらいの大きさだろうか。

彼の秘めた暴の気配と、まるで百のケモノがいるかのような獣臭が立ちこめた。

それも、すぐに彼の肉体から放たれた炎の暗黒闘気──魔炎気によって、

吹き飛ばされてしまい、距離をとれと言われた意味が分かった。

 

側に居たらあの魔炎気で、我々は焼き尽くされていただろう。

 

 

「行くぞクロコダイン。二度も敗北すれば十分だ。

三度目はオレが勝つ!」

 

「いいだろう。お前の覚悟は受け取った。

だが、三度目もオレが勝たせてもらおう!」

 

 

真正面からぶつかり合う音が響き、ガルダンディーとボラホーンが散った。

私とグランナード、チウで分かれて戦いの火花が切って落とされた。

 

 

 




独自設定

超魔生物ザングレイ

私がモンスターデザインがまったくできないので友人に描いて貰いました。
「超魔生物ザムザを基本デザインで牛っぽく」という程度の説明で、
いい感じのデザインをしてくれてありがとうございました。


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