ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第九十二話 激戦! ベンガーナ!

 

超魔生物と化したザングレイが纏う魔炎気の火勢が凄まじい。

まるで地獄の炎を顕現させたかのような、天をも焼き尽くさんとする、

恐ろしい勢いの火柱だ。

 

炎を纏ったザングレイが、大上段に振りかぶった異形の斧を、

クロコダインに対して凄まじい勢いで叩きつける。

 

踏み込んだザングレイの足が凹むほどの威力で、

受けたクロコダインの足元も陥没し、亀裂が走っている。

 

ミシッ!

 

まともに受けた鳳凰の戦斧に、ヒビが入ってしまった。

いや、まさか、あれはオリハルコンの斧だぞ。

自己修復機能があるから、戦闘中に修復されるだろうが。

ザングレイの力がクロコダインを上回っているという事か⁉︎

 

 

「ぬうっ!?」

 

「こいつはエビルメタルの斧だ! こいつ自身の憎しみが硬度を高めてゆく!」

 

 

エビルメタル?

アイテム物語の、"黄金の爪"を書いた話で出てきた鉱物だったが……。

しかし、ザングレイが振るうあの異形の斧は一体……?

 

 

「旦那! 危ねぇから戦いに集中してくれ!!」

 

 

私を呼ぶグランナードの声に振り向く。

いかん……よそ見をしていられる状況ではなかった。

 

百獣魔団の魔物たちが我々を囲んでいるからである。

 

グレンデル、モヒカント、キマイラロード、バッファロン……かなり凶悪な魔物が揃っていた。

さらにキラーリカント、オークキング、ヒババンゴ、キラータイガー、

ゴートドン、ダースリカント、コング、マントゴーア……。

あばれザルやリカント、おばけキノコなどがいた、

原作の百獣魔団より格上の魔物が揃っている。

 

追い立てられるように、何故か檻から解放されたクルテマッカVII世と、

戦士達が十名ほどこちらへ走ってきた。

 

怪我は少ないがしょんぼりした雰囲気のクルテマッカ王が、

私に声をかけてくる。

 

 

「ザボエラ殿……。

せっかく貴殿に助言を幾度も貰ったというのにこの有様だ……」

 

「肩を落とされるなクルテマッカ王。

百獣魔団は六大軍団でも精強で知られた軍勢です。

まずはご自身の無事を喜びましょうぞ」

 

 

そう言うと王の顔が少し明るくなる。

私は怪我人に回復呪文(ベホイミ)をかけ、

治療を施したが、ほとんどの者が軽傷ですぐ癒えた。

 

ガルダンディーがわざとらしい拍手をして、口笛を吹く。

 

 

「感動的な再会だなザボエラ。

捕虜を解放してやる心優しいオレたちに感謝して欲しいぜ」

 

 

ニヤリと小馬鹿にした笑みを浮かべたガルダンディーから、

サディスティックな気配を感じ、私は一つの可能性を思いついた。

まさかと思いたいが、彼の反応からすると当たりだろう。

 

ガルダンディーがパチンと指を鳴らすと、

百獣魔団の魔物達がこちらを振り向く。

 

 

「足手まといともども、我が百獣魔団に処刑されるがいいぜ!

アイツらを八つ裂きにしろ! クワーックワックワックワッ!!」

 

 

六大軍団の正規軍は、一軍で四千程度の兵数がいるということだ。

全軍が殺到してくるわけではないが、地響きを轟かせながら、

数百の魔獣たちが我々に迫る。

 

私はまず唱えておいた地爆呪文(ジバリカ)の呪文で、

土槍の柵を幾つも作り上げ、彼らの進撃を邪魔した。

すぐにクルテマッカ王たちに硬化呪文(スクルト)を施す。

 

片手でグランナードに魔法の筒を放り投げ、解放させた。

その中には幾つもロン・ベルク殿が仕損じた武器や、

ギュータ工房の職人が作った武器が入っている。

 

素手ではあれだけの魔獣達と戦えないだろう。

グランナードは、クルテマッカ王たちにそれを配った。

 

先頭のヒババンゴを、何匹も窮鼠包包拳で吹っ飛ばすチウ。

彼は既に闘気を身につけているので、この体当たりは強力な技だ。

 

突っ込んでくるゴートドンをケインが爪でいなし、ジャンプして回避する。

着地点にいたヒババンゴに火炎呪文(メラゾーマ)を食らわして、

怯んだ瞬間に閃熱呪文(ベギラマ)でとどめを刺した。

 

私はクルテマッカ王に声をかける。

 

 

「いまから岩石獣化呪文(レゴール)で岩の蛇を召喚いたします。

攻撃は受けさせますので、壁として使ってくだされ!」

 

「心得た! みな一人で戦うなよ。三人一組で敵を迎え撃て!」

 

 

グランナードが敵の前面に無数の岩の壁を出現させる。

腹を打たれたキラータイガー、突進を遮られてぶつかったバッファロンなどが多数出た。

私はまず、敵が密集している辺りに極大爆烈呪文(イオナズン)を叩き込む。

ついで、逆方向に水流呪文(ザバラーン)で水浸しにした後、

氷結呪文(マヒャド)氷結呪文(ヒャダイン)を叩き込み地面を凍らせる。

 

そこへ走ってきた百獣魔団の魔獣達が転んだのを、

クルテマッカ王や護衛の兵士達がとどめを刺し、

私がピンポイントの閃熱呪文(ギラ)で攻撃をした。

これで、容易く近づいてはこれないだろう。

 

賢い魔獣達の内、呪文を使える者が私を狙ってくる。

火炎呪文(メラミ)閃熱呪文(ベギラマ)氷結呪文(ヒャダイン)などの呪文で攻撃してきた。

 

それが読めていたので呪文返し(マホカンタ)で全て叩き返す。

恐らくは震え上がった獲物を処刑するつもりでいたのだろう。

殺戮を愉しむために突っ込んできた魔物を数百屠ったところで、

彼らの目が獲物では無く、戦士と相対した警戒心を秘めたものになった。

 

 

「その程度の人数に情けない! このワシが埒をあけてくれるわ!」

 

 

ボラホーンが鋼鉄の錨を手に構えた。

彼を中心にして、地面が凍り付き吹雪が巻き起こる。

振り回す鋼鉄の錨が凍り付いていた。

あれは魔冷気(まれいき)というやつか?

死の大地でダブルドーラが使っていた技に似ているが……。

いきなり知らない技が来たな。

 

 

「ザングレイの大将が炎の暗黒闘気を極められた!

ゆえにワシは氷の暗黒闘気を極め、大将を支えんと身につけた技だ!

くらえい! アイスクラッシュ!」

 

 

凍り付いた錨が凄まじい速度で飛んでくる。

ホームランバッターのように、石で出来たメイスを振り回すグランナード。

だが、死の大地で戦ったダブルドーラの魔冷気(まれいき)は、

危険なものだったはず……。

 

 

「ふざけやがって! 叩き落としてやるぜ!」

 

「避けるのじゃグランナード! 受けてはいかんぞ!」

 

 

グランナードが私の声を聞いて、五連の岩の壁を作り、

その上で回避した。

 

岩の壁を全て砕き、なおかつ直撃した地面に巨大な穴を穿つ。

その穴の中心にウニのような、巨大な氷の結晶が生じ砕け散る。

まともに食らっていたら、こうなっていたということだ……。

 

"マジかよ……"と呟きながらそれを見ているグランナード。

ボラホーンは鎖を軽々と手元で操り、慣れた様子で錨を戻した。

 

 

「フン……良い判断だな。

受けていたら貴様は氷の彫像になって砕け散っていただろうよ」

 

 

使い手がいなかったが、恐ろしい力だな魔冷気(まれいき)

ボラホーンも原作よりかなり強くなっているようだ。

だが、私とグランナードが戦えば、なんとかなりそうだが……。

 

逆方向からチウの悲鳴が聞こえた。

 

 

「ギャーッ! ぬ、抜けないぞこの羽根!」

 

「チッ……なんだテメェ呪文は使えねぇのかよ」

 

「うるさい! ぼくは武闘家だ!」

 

「これが呪文だよ雑魚が! 火炎呪文(メラミ)!」

 

 

背中の翼を羽ばたかせ、大空に舞ったガルダンディーが、

地上のチウに火炎呪文(メラミ)を何発も叩きつけてきている。

チウは必死にそれを回避している。

動きが速く、身体が小さいから避け続けていられるのだろう。

 

チウは私がここへ来るまでの間に説明した、

ガルダンディーの技については覚えていてくれただろうか。

白い羽根の攻撃は魔力を減らす。

武闘家であるチウにとっては痛いだけで、魔力が減ることはない。

だが、赤い羽根は体力を減らしていくのだ。

 

 

クルテマッカ王たちの方は、岩石獣化呪文(レゴール)で呼び出した岩蛇と連携して、

上手く戦ってくれているようだ。

武器が壊れた者には、グランナードが身体から岩の棍棒やメイスを出して渡している。

クルテマッカ王は岩のハンマーが性に合うのか元気に振るっている。

 

だが、十数人で軍勢と戦っているのだ。

流石に限界が来てしまう。

 

グランナードがヒババンゴとコング二頭に抑え込まれてしまう。

私が閃熱呪文(ベギラマ)で攻撃したが、キラータイガーが避けて、

ゴートドンと攻撃してくるのをケインが爪で迎撃してくれている。

そして、岩蛇が粉砕され、グランナードの右肩が砕かれ、

チウが赤い羽根を食らってしまった……。

 

 

「わぁあああ! くっそー! 血が……止まらない!」

 

「クククク! クハハハッ!! ここまでだなぁ! 」

 

 

地面へ降りてきたガルダンディーが腰のサーベルを抜いて、

チウを仕留めようと降りてくる。

助けに行きたいところだが、私が抜けたら確実にクルテマッカ王達が、

百獣魔団の魔獣達に殺されてしまう。

悩む私の内面が分かるわけではないだろうが、

ガルダンディーはこちらを見て小馬鹿にした笑みを浮かべた。

 

そうか……!?

チウに固執しているように見えて、ヒババンゴたち魔獣を倒せる前衛のチウを、

こちらから引き剥がすのがやつの目論みだったか。

 

いかん。表面的に気短な原作通りの性格だと思っていたが、

こちらの戦力を分断する策をとってきたのか。

 

いますぐに取り戻せない失敗は後回しだ。

反省よりも先に現状をなんとかせねば。

私は幻惑呪文(マヌーサ)で力の強い魔獣達を幻影で欺き、

その背後の魔獣達に爆烈呪文(イオラ)を何発も叩き込んだ。

 

オーザムで一戦した後、聖水で魔力を回復してはいるが……。

現状、私の呪文で魔物達が近づくのを防いでいるところがある。

節約して呪文を使わねば。

 

グランナードが身体を治すのを後回しにして、

岩の壁を出現させてみなを守っていてくれている。

 

百獣魔団の魔獣達に命令を下しながら、

ガルダンディーは我々への包囲を狭めていく。

 

 

「クハハハッ!! さて、そろそろお前らは終わりだ!

最後はむごたらしく切り刻んでやるぜ!」

 

「まあ待て、ガルダンディー。よく戦った連中だ。楽に死なせてやれ」

 

「アンタはそういうところが甘いんだよボラホーン!

勝者には敗者を好きにする権利があるんだ!」

 

 

赤い羽根を両手に十数本構えて、投げつけるガルダンディー。

 

 

「噴水みたいに体中の血を吹き出して死ね!

もし、そいつで死ななかったら直接切り刻んでやるぜ!」

 

 

だが、その瞬間、チウの前に降り立った人影が、

投げつけられたガルダンディーの羽根を全て叩き落とした。

 

 

「だ、誰だてめぇは!」

 

「貴様のような外道に名乗る名は持ち合わせておらん。

無事か、チウ?」

 

「ロ、ロン・ベルクさん!」

 

 

チウが声を上げた瞬間、我々の周囲に瞬間移動呪文(ルーラ)で飛んできた者達がいる。

降り立った瞬間、閃熱呪文(ギラ)火炎呪文(メラミ)氷結呪文(ヒャダルコ)で周囲を攻撃した。

チョコマが率いるギュータの達人たちだ。

 

何人か走り寄って、怪我人を回復呪文(ベホイミ)で治療してくれる。

拳足を鍛え上げたテランの拳士たちが、魔獣を真正面から叩きのめす。

フォルケン王をはじめ、テラン拳士団、ギュータの精鋭たちが姿を見せたのだ。

 

こちらを見て頷くフォルケン王。

私が出がけに王へ送った合図に勘づいてくれたようだ。

 

 

「遅くなりましたザボエラ殿」

 

「いや……よいタイミングでした」

 

 

私は一息つく。

すると、カン高いガルダンディーの声が聞こえてくる。

 

 

「ロン・ベルクだと!

ジャミラスの野郎を討ち取ったんだってな!」

 

「油断するなガルダンディー。恐ろしい使い手だぞ」

 

 

ロン・ベルク殿はガルダンディーを一瞥して、その後にチウを見る。

チウの身体に刺さっている紅白の羽根を、一瞬で全て切り落とした。

もちろん、チウは怪我一つないので、神業の領域だ。

 

 

「ぼくがそいつと戦います!」

 

「まぁ、お前なら勝てるだろう。

羽根手裏剣は直線的な攻撃だ。横方向に散らせ」

 

「へ? あ、はい!」

 

「ふざけるな! テメェが戦え!」

 

 

ガルダンディーがそのやりとりを見て、激怒してロン・ベルク殿に斬りかかるが、

チウが窮鼠文文拳をボディーに叩き込む。

 

 

「ぐおっ……!」

 

「お前の相手はぼくだ!」

 

「ネズミ野郎が! 八つ裂きじゃすまねぇ!

みじん切りにしてばら撒いてやる!」

 

「できるもんか! ぼくが必ずお前に勝つ!」

 

 

ロン・ベルク殿がグレンデルやバッファロンの前に立つと、

武器ごと彼らがみじん切りにされている。

 

あれは確か流星剣。

一閃にしか見えないが、一振りで五回切り裂く技だと聞いている。

 

 

「死にたいやつはかかってこい。逃げるなら構わんぞ。

面倒だから追わん」

 

 

ロン・ベルク殿の言葉に一瞬怯む、百獣魔団の魔物達。

だが、流石に魔界の猛者だ。

何体かがロン・ベルク殿に向かって突っ込んでゆく。

 

 

「ほう……その意気やよし!」

 

 

星皇剣を構えて、百獣魔団の魔物達と戦うロン・ベルク殿。

 

その近くでテランの拳士団が武神流の技で、百獣魔団の魔物達を蹴散らしている。

クルテマッカ王の方はこれで大丈夫だろう……。

それを援護しているのはチョコマたちギュータの民の精鋭たちだ。

チョコマがかなりの速度で、極大閃熱呪文(ベギラゴン)を敵陣へ叩き込んでいる。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)ー! チョコマたちが来たから平気だぞ!」

 

 

私はチョコマへ手を振り、感謝を伝えた。

バッファロンを蹴り一発で沈めて、キラーリカントを手刀で黙らせ、

フォルケン王が私の隣にやってくる。

 

 

「いやはや助かりました。テランの方は大丈夫ですか?」

 

「グレゴリーア殿の治療で起き上がったアギロ王が、

避難民から戦える者を募ってテランを守ってくれています。

今度は我々が……いや彼の言葉を借りれば、"オレたちが恩を返す番だ"と」

 

 

嬉しそうに語るフォルケン王。

竜の神殿には竜水晶もいるし、グレゴリーアもいる。

何かあったら連絡がすぐ来る手はずにはなっていた。

 

戦いの潮目が変わったことに焦ったのか、ガルダンディーを抑える側だったボラホーンが、

慌ててこちらへやってきて怒りの声をあげた。

 

 

「人間風情が調子に乗るな。まずは貴様らから倒してくれるわ!」

 

 

ゴウッと凄まじい勢いで、凍てつく息(コールドブレス)を吹きかけてくる。

強力な攻撃だが、二重に発動させた私の防御光膜文(フバーハ)で十分に防げた。

 

すぐに戦法を変えて、錨を振り回すボラホーン。

魔冷気(まれいき)を纏わせ凍結させた錨を、凄まじい勢いでこちらに叩きつけてくる。

私の前に立ち塞がるフォルケン王。

まずい……と思った瞬間、フォルケン王が渾身の一撃を繰り出した。

 

 

「武神流奥義……猛虎破砕拳ッ!!」

 

 

魔冷気(まれいき)を圧倒するフォルケン王の闘気が、錨を粉砕して凍てつく闘気を霧散させた。

手元に戻した鎖に錨がついていないことを確認したボラホーンが、

驚愕に見開かれた目でこちらを見ながら震える声で尋ねた。

 

 

「き、貴様は……何者だ!」

 

「テラン王フォルケン」

 

 

フォルケン王は静かにボラホーンへ歩み寄る。

 

 

「友邦、ベンガーナを助けんと参った。

いたずらに戦火を広げ、人々の魂を凍てつかせんとする行い許せぬ」

 

 

スッと移動したと思ったら、ボラホーンの至近まで迫っており、

ボラホーンの拳や鎖をかいくぐって、顎を打ち抜く。

 

 

「ぐおっ!? 至近距離でならどうだ!!」

 

 

凍てつく息(コールドブレス)が放たれるが、見事な廻し受けで捌くフォルケン王。

その後に続く、鎖での連続攻撃も華麗な動きで避けている。

 

 

フォルケン王が以前聞いたより、更に腕を上げていることに驚いた。

ボラホーンも恐らくは原作より強くなっているであろうに、

それがまったく相手になっていない……!?

 

 

「おのれぇ……! 我が魔冷気(まれいき)の奥義を受けるがいい!

魂まで凍り付け! ホワイトインパクト!」

 

 

ボラホーンを中心として魔冷気(まれいき)の吹雪が巻き上がる。

凄まじい吹雪の竜巻がフォルケン王を襲うが、

既にボラホーンの眼前に王はいない。

 

 

「ど、どこだフォルケンッ!」

 

「武神流──鳳凰流星脚!」

 

 

飛び上がっていたフォルケン王は、上空から凄まじい勢いでボラホーンに必殺技を叩き込む。

ドンッ!という音共に、ボラホーンの腹を穿つ蹴りは、

大地にクレーターを作ってその巨体を地面深くにめり込ませてしまった。

 

何事もなかったかのように私に一礼し、クルテマッカ王たちを助けに入るフォルケン王。

私は怪我人を治療する方に専念した。

 

 

チウは大丈夫だろうかと見たが、何ヵ所かに赤い羽根を食らっていた。

羽から流れ出る血が痛々しい。

 

 

「ロン・ベルクのアドバイスが意味なかったなぁネズミ!」

 

「……ハァ……ハァ……アドバイス……。アーッ!」

 

 

……忘れていたなチウ。

ロン・ベルク殿の忠告でどう勝てば良いのか分かったはずだが……。

流石に危なかったら閃熱呪文(ベギラマ)でもガルダンディーに叩き込もう。

そう思いながら私は二人の戦いを見守った。

 

ガルダンディーの剣技はなかなかのものだったが、

チウが闘気を込めた拳でいなしている。

恐らくあの技をやりたいのだろうが、隙が掴めないのだ……。

 

焦るチウが転んでしまい、残虐な笑みを浮かべたガルダンディーが剣を振り下ろした瞬間、

地面から岩の壁がガルダンディーの前に立ち塞がる。

 

 

「くそっ! 邪魔しやがったな岩野郎!」

 

「悪りぃな鳥野郎。手が滑っちまった。一回だけだぜチウ!」

 

「ありがとうございます! グランナードさん!」

 

 

そう叫びながら距離をとって、チウは闘気を高めた。

身体が回転を始め、縦方向の窮鼠文文拳とは違う、

横方向の軌跡を描き始め、チウ自身が中心にある闘気の渦が、

ガルダンディーへ向かった。

 

 

「舐めるな! フェザーストーム!」

 

 

赤と白の羽が凄まじい数でチウを襲うが、

チウごと回転する闘気の渦に弾き飛ばされてダメージにはならない。

 

 

「ぐおおお! くらえ火炎呪文(メラミ)! 火炎呪文(メラミ)ッ!!」

 

 

立て続けに放たれる火炎呪文(メラミ)も、チウの闘気の渦には通じない。

 

 

「ちきしょう! 火炎呪文(メラゾーマ)だ!」

 

 

ガルダンディーが渾身の魔法力をこめたであろう火炎呪文(メラゾーマ)を繰り出すが、

それすらも霧散させて突っ込むチウ。

 

 

「いくぞー! 窮鼠電影弾~~~ッ!!」

 

 

闘気流の渦となったチウが、ガルダンディーを巻き込んでズタズタにした。

クロコダインの獣王会心撃を見て感激したチウが、

闘気流が難しくて習得できず、

自分に闘気を纏わせて突っ込む技として創り出したものである。

 

 

「……あ~目が回るぅ~~~」

 

 

弱点は本人も回転するので、目が回ってしまうのだ。

私は慌ててチウを支えて回復呪文(ベホマ)をかけてやる。

 

 

「よく頑張ったものじゃなチウよ!」

 

「は、はい……ロン・ベルクさんのアドバイスがなかったらまずかったです。

窮鼠文文拳だと、あいつの羽の餌食でした」

 

「うむ。横方向の渦ならガルダンディーの羽をいなし、

そのまま突っ込んで攻撃できるからのう」

 

 

まだまだ、百獣魔団は闘志旺盛で戦いを挑んでくるが、

こちらは味方が増えてちゃんと連携して戦っているので、問題はないだろう。

私は岩石獣化呪文(レゴール)の呪文を唱えて、破壊された岩蛇の代わりを呼び出す。

味方の前に地爆呪文(ジバリア)地爆呪文(ジバリカ)を時間差で出現させて、

バリケードを増やした。

 

そして、クロコダインの戦いを見る余裕ができたのだが……。

私が見たのは、優勢なクロコダインの戦いなどではなく、

魔炎気の大爆発で吹っ飛ばされる彼の姿だった。

 

 




独自設定

アイスクラッシュ
ホワイトインパクト
ドラクエ10の悪名高きボスである氷魔フィルグレアの技から名前を貰いました。

窮鼠電影弾
窮鼠文文拳が手をぐるぐる回す技で、
窮鼠包包拳が体ごと前方向に回転させる技です。
獣王会心撃を見る機会があったチウが、
その威力に感激して真似したのですが、
闘気流を放つことはできませんでした。
なら自分事回転して、相手に突っ込めば闘気の渦が作れるのでは……?
と考えて考案したのがこの技です。

威力はかなりのものですが、使用後目が回るので連続使用できないのが弱点です。


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