ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第九十三話 超魔生物ザングレイ

 

あのクロコダインが吹っ飛ばされたのには驚いたが、

そのまますぐに受け身を取って尻尾で跳ね起きてくれた。

すかさずそこをついてくるザングレイの攻撃をかわしつつ、

鳳凰の戦斧で地動撃を叩き込んでいる。

 

クロコダインの一撃を受けたザングレイの腕が、

半ばまで切り裂かれた。

クロコダインの力とオリハルコンの武具の一撃で、

腕が切り落とされないことを褒めるべきか……。

だが、すぐさま超魔生物の回復能力で傷が再生してしまう。

 

副団長を二人とも倒したのに、百獣魔団の士気が落ちないのは、

軍団長ザングレイが健在であるからだろう。

今も、我々は百獣魔団との戦いの最中にあり、

私は周囲の仲間を援護しつつ、敵を攻撃している所だ。

 

戦いの場が拮抗しているのは良い。

良いが、拮抗しているという事は、

状況が動かずクロコダインの加勢に行けないと言う事でもある。

百獣魔団は軍団長のために、そこまで考えて、

我々と戦っているのだろう……。

恐るべき練度と言わざるを得ない。

 

しかし、鈍重そうな巨体であるはずのザングレイだが、

背中の翼のおかげか機敏に動いている。

己の身体をも焼く魔炎気だが、回復能力持ちの超魔生物とは、

相性が良いようではあるな。

魔炎気でダメージを負っても、焼けただれた傷口が泡立ち、

回復していっているので、血を流すクロコダインとは対称的だ。

 

よく見てみるとザングレイの魔炎気の火勢が、

凄まじいまでの熱風を送ってくる。

あそこまでの火力を誇るザングレイの魔炎気が、

いままでこちらに飛んでこなかったのはおかしい。

 

……まさか、クロコダインが防いでくれていたのか……?

 

 

「いつまで庇っているつもりだクロコダイン」

 

「あちらの決着がついたようだな。

では、ここまでだ」

 

 

やはり、ザングレイの魔炎気がこちらに飛んでくるのを、

クロコダインが身を挺して守ってくれていたのか。

 

そこでザングレイの持つ異形の斧を指さすクロコダイン。

 

 

「その斧、魔斧のグロイサンという戦士が持っていたモノか?」

 

 

ザングレイが一瞬、虚を突かれたような顔をしたが、

納得が浮かんだ後、クロコダインに説明を始めた。

 

 

「知らなかったのか。グロイサンは己の意志を持ち生きている斧だ。

"はぐれ武器"という存在よ」

 

「ほぅ……」

 

 

グロイサン……。

アバン殿に聞いたベルクスという輩のことか。

ロン・ベルク殿が最後の一人になってしまったというが、

魔界の鍛冶師工房の一族、ベルク。

彼らが作り上げた武器が意志を持ち、

はぐれ武器として世を騒がせたことがあったという。

 

クロコダインがそうとは知らず戦ったのが、

グロイサンだったという事だったとは聞いている。

ベルクスはベルク一族以外は修復できぬというが、

誰がどうやってグロイサンを直したのか?

 

 

「デスカールがエビルメタルを使って作り直してくれたのよ。

オレとグロイサンが組んで戦えるようにな!」

 

 

百獣魔団の魔物達を切り伏せながら、二刀を抜いて戦っているロン・ベルク殿が、

そのグロイサンを見て不愉快そうな顔をしてこう吐き捨てた。

 

 

「無様な修繕だな。拙劣にして醜悪だ。

どこの下手くそのやり口か知らんが、職人の魂を愚弄している」

 

 

横から攻撃したキマイラロードが、真っ二つにされたが、

彼は運が悪かったと言うべきだろうか。

 

 

ザングレイは魔炎気の勢いを強めた。

まるで、燃え盛る山火事が移動しているようだ。

距離を置いている私にも、凄まじい熱風を叩きつけてくる。

 

魔炎気をまとった魔斧グロイサンが縦横に振り回された。

グロイサンが振るわれる度、魔炎気の刃が間合いを無視して、

攻撃を飛ばしてくるため、あのクロコダインが防戦一方だ。

 

クロコダインの左目の瞼が閉ざされ、血が流れている。

原作を思い出してぞっとしたが、恐らく回復呪文(ベホマ)をかければ治るはずだ。

クロコダインが目の負傷をそのままにしたのは、自分への戒めだったはず。

それより、身体の傷が痛々しい。

ところどころ火傷や、動くことで開いた傷から夥しい血が流れている……。

 

 

「食らえ! 魔斧奥義 雷霆!!」

 

 

ブオンッ! と振り下ろされた魔斧グロイサンから、

円を描く形で衝撃波が轟音と共に放たれた。

まともに食らったクロコダインの不死鳥の鎧にヒビが入る。

なんという威力だ……。

 

助けに行きたいところだが、私が抜けると百獣魔団との均衡が崩れてしまう。

いまも極大爆烈呪文(イオナズン)を叩き込んだが、すぐに戦列の穴が塞がれてしまった。

 

 

百獣魔団はザングレイから厳命されているのか、軍団長とクロコダインの戦いには、

一切介入せぬようにしている。

おかげで二人の戦いを背後にすれば、そちらからの攻撃はないのが助かっているが……。

 

クロコダインが鳳凰の戦斧を握り直し、ザングレイに声をかけた。

 

 

「その超魔生物……か。

あと、どのくらい生きていられるのだザングレイ?」

 

「さてな。一月も持たんだろう。

……だが、悔いは無い。お前を越えられるのならな!」

 

「何がそこまでお前を駆り立てるのだ?」

 

 

クロコダインの穏やかといってもいいほどの声に対し、

ザングレイは熱い息を吐き出して大笑いした。

 

 

「オレに同情しているのかクロコダイン?」

 

「ただ、理由を知りたいのだ。

そこまで強さに執着し、オレを倒そうとするお前の抱えるモノを、な」

 

 

笑うのを止めて、いっそ厳粛な雰囲気で話し始めるザングレイ。

 

 

「ギュータでの戦いを覚えているか?」

 

「ああ。あの場でオレはお前達と戦った。

その時の意趣返しか?」

 

「最初は仲間達の仇討ちだと思った。

いや、思っていた……」

 

 

ザングレイは拳を振り上げて力強く叫んだ。

魔炎気の火勢が強まり、離れている私たちも熱い。

おかげで百獣魔団の魔物達の攻勢が、

少し収まってくれるのは助かるが……。

 

 

「だが、違う! あの日、オレはお前の強さに震えあがったッ!

お前を倒して心に染みついた恐怖を拭わねば、一歩も先へ進めんのだッ!!」

 

「長く持たぬ命で意味があるのかザングレイ?」

 

「いいさ。生の最後、お前を越えられた実感さえ得られればな!

お喋りはここまでだ、行くぞクロコダイ……ン……?」

 

 

ザングレイの言葉が止まる。

戦いながら見ていた私もあっけにとられた。

グランナードやチウ。

ロン・ベルク殿やチョコマ。

フォルケン王、クルテマッカ王たちも。

それどころか百獣魔団の魔物達の動きも止まった。

 

みなが見ているのはクロコダイン。

吹き出る光の闘気が、周囲を暖かい色で染め上げている、

光の中心にいる黄金の漢に、その場の者達の視線が集中していた。

 

ザングレイの焼き尽くし、燃やし尽くす、

痛みを伴う魔炎気とは違う……。

あの光は……?

 

 

「お前の命の火が消えかかっているのが気がかりで、

全力で戦って良いものか迷っていた。

だが、それは失礼だったな」

 

 

光り輝くクロコダインが握る鳳凰の戦斧にも、

光の闘気が伝わっていく。

 

 

「オレも身につけた力を全て叩きつける。

悔いが無いよう、全力で来いザングレイ」

 

「!!? いいだろう……行くぞクロコダイン!

我が灼熱の疾駆を受けるがいい!! デッドリーブレイズ!!」

 

 

背中の翼も魔炎気を帯びて燃え上がり、全身が地獄の炎で覆われたザングレイ。

大地を焼き尽くしながら、クロコダインにデッドリーブレイズで突っ込んでゆく。

 

クロコダインは鳳凰の戦斧を逆手に持って、構えたあの技は……。

 

 

「行くぞザングレイ! アバンストラッシュ!!」

 

 

赤黒い魔炎気の炎とクロコダインのアバンストラッシュが放つ、

光の闘気の激突はほぼ互角。

と思えたが、魔炎気を光の闘気が切り裂いた。

 

斬撃を受けたザングレイの肩がぱっくりと裂けて、

噴水のように血しぶきが吹き出た。

ほぼ、切断されたように見えたが、ザングレイが肩を押さえている間に、

泡がボコボコと肩を繋ぎ傷が塞がっていく。

 

 

「ぐぬううっ! オレのデッドリーブレイズを引き裂いて、肩を切断するとは……。

そうでなくてはな、クロコダイン!」

 

 

魔斧グロイサンに魔炎気を纏わせ、大上段に構えるザングレイ。

 

 

「行くぞクロコダイン! 我が魔炎気の神髄とグロイサンの力の融合、とくと見よ!

ボルティックプリズン!!」

 

「受けて立つぞ! ぬううん! 獣王会心撃!!!」

 

 

獣王会心撃の闘気流、凄まじい規模のそれを切り裂きながら、

ボルティックプリズンの赤黒い魔炎気の(アギト)がクロコダインを襲う。

まさか、グロイサンの雷霆……衝撃波に魔炎気を乗せているのか?

 

かつてない規模の魔炎気の(アギト)が巨大な牙となり、

獣王会心撃の闘気流を飲み込んでクロコダインを焼き尽くした。

いかん……助けに行かねば!!

私は瞬間移動呪文(ルーラ)でクロコダインの側まで行く。

 

胸甲にヒビが入り、不死鳥の鎧が所々、破損している。

オリハルコンの鎧に守られて、ここまでのダメージか。

私は回復呪文(ベホマ)をかけようとしたが、クロコダインにそれを拒否される。

 

 

「クロコダイン! 意地を張っている場合ではないのじゃぞ!」

 

「いや、ここは意地だ。男の意地、というやつだぞザボエラ。

それより、みなを……守ってやってくれ」

 

 

そう笑って私を後にし、ザングレイへと歩いて行く。

勝算はあるのだろうか……。

だが、無謀な戦いに挑む後ろ姿とは思えない。

 

荒い息をつきながら、身体の傷がボコボコと回復するザングレイ。

私がクロコダインの助けに入ったことを咎める雰囲気もない。

 

 

「ザボエラに回復して貰ってはどうだクロコダイン。

オレは勝手に傷が治る体だ」

 

「いや……オレもこれを使わせて貰う」

 

 

鳳凰の戦斧を背中に仕舞い、両手を自由にしたクロコダイン。

 

 

「どうするつもりだ? まさか、素手でオレを倒すつもりか?」

 

「光の闘気の神髄というやつだ」

 

 

クロコダインは静かに話し始めた。

 

闘気を必要とする部位へ流す。

例えば拳、脚。

握りしめた柄を通じて斧へ、剣へ、槍へ……。

 

闘気を流す。

そう考えるのはやむを得ないだろう。

だが、そうではない。

流すのでは無く、最初からただ、闘気はある。

 

全身全霊で世界に存在している。

光の闘気を身につけるというのは、

きっかけを得ただけだ……と。

 

 

「よく分からんが……見せてみろクロコダイン」

 

「もう、見せているぞザングレイ」

 

 

何人ものクロコダインが立っていた。

ザングレイは魔斧グロイサンを振り回し、雷霆を放ってクロコダインを消し去る。

だが、消し去った側から新たなクロコダインが現れるのだ。

 

デッドリーブレイズでまとめて吹き飛ばすが、新たなクロコダインが現れた。

 

 

「こ、これは……なんなのだ一体……!!」

 

「武神流の未完成奥義だった、世界の気と一体になる技……。

黄龍無想陣……防御は幻だが攻撃は……」

 

 

初めてクロコダインが攻撃に転じた。

龍撃波動拳。

両手から放たれた気の塊が、

ザングレイの肉体を焼く。

 

 

「実体だ。気を抜くなよザングレイ」

 

「ぐっ……おおおおッ!!」

 

 

龍撃波動拳のダメージを、超魔生物の肉体がすぐに塞ぐ。

ザングレイは戦意が衰えぬまま、魔斧グロイサンを構え、

横薙ぎの一撃を放つ。

 

横薙ぎの斬撃を踏み込んで肩甲で受けたクロコダインが、

そのまま更に一歩踏み込み、震脚と共に放った玄武鉄山靠。

 

ドンッどころではなく、グウォン!という音が響き、

地面に蜘蛛の巣状の亀裂が走り、ザングレイが吹っ飛ばされた。

 

すぐに起き上がったザングレイは腹部の穴を気にせず、

例によってボコボコと塞がっていくその傷口をそのままに、

魔炎気を宿した魔斧グロイサンを振り回す。

 

 

「斧無双・轟炎!!」

 

 

まるで炎の独楽のように回転するザングレイの攻撃が、

光り輝くクロコダインを消し去っていくが、すぐに別のクロコダインが現れる。

飛び上がって蹴りを放つクロコダイン。

鳳凰流星脚だ。

 

ザングレイが地面にめり込むが、ボラホーンと違って血だらけでもすぐに立ち上がる。

またもや身体が回復を始めるが……その速度が若干遅い気がする。

 

 

「こんなものかクロコダイン! 貴様の技はオレには通じぬぞ!!」

 

「さて、それはどうかな?」

 

 

炎をまとい凄まじい速度で体当たりをしてくる。

二度目のデッドリーブレイズだ……。

 

クロコダインは拳で迎え撃つ。

 

 

「武神流……猛虎破砕拳ッ!!」

 

 

胸を撃たれ穿たれたザングレイは、血をまき散らしながら倒れたが、

またもやすぐに立ち上がる。

だが、今度は胸の傷が塞がっていなかった。

 

 

「ぐはっ……! どういうことだ。

超魔生物は無敵の存在ではなかったのか!!」

 

「恐らくだがなザングレイ。

お前は魔炎気で常にダメージを受けている状態だ。

その上、オレの攻撃のダメージが蓄積して、

肉体の回復の上限を超えたのではないか?」

 

 

ふらつくザングレイだが、グロイサンを地面に突き刺し、

魔炎気を限界まで燃やし尽くしている。

 

その姿を見つめるクロコダインは悲痛な表情だ。

 

 

「ザングレイ……命を賭けるか?」

 

「受けてくれると……信じている。クロコダイン、お前ならな……!!」

 

 

驚愕に見開かれたザングレイの目は、クロコダインを凝視した。

 

 

「グロイサン、力を貸せ! 二人でクロコダインを上回るのだ!!」

 

 

そのザングレイの声に呼応するように、低いうなり声を上げる魔斧グロイサン。

分身していたクロコダイン達が集まり、光の闘気を極限まで高めたクロコダインが、

その場に立っていた。

 

 

「こい、ザングレイ! お前の技を受けて、オレは勝つ!」

 

「信じていたぞクロコダイン! 行くぞ燃え上がれオレの魔炎気よ!!

オレの命をくらえ~~! ボルティックプリズンッ!!!」

 

 

燃え上がる魔炎気は苛烈なまでの熱気を生じて、

ザングレイを赤黒い太陽の如く熱した。

回避せず真っ向からボルティックプリズンを受けるクロコダイン。

光の闘気で魔炎気を防いでいるが、

轟音と共に放たれるグロイサンの衝撃波がクロコダインを切り裂く。

 

不死鳥の鎧がなければ、クロコダインはズタズタだっただろう。

それでも、凄まじい衝撃波がクロコダインの肉体を切り裂き、

夥しい血しぶきがあがった。

 

だが──

 

 

「武神流──玄武裏金剛!」

 

 

ボルティックプリズンの威力に上乗せされた光の闘気の塊が、

クロコダインからザングレイに叩きつけられる。

二人のいる大地がすり鉢状に凹み、割れ、砕け、見ている我々が、

地震かと思うような振動が走った。

その瞬間、ザングレイの巨体が、地面を抉りながら50mほど吹っ飛ばされる。

 

ゆっくり歩いて行き、近寄ったクロコダインが声をかけた。

 

 

「ザングレイ……」

 

「ここまでやっても勝てないか……。アレはどういう技だ?」

 

「玄武裏金剛。

相手の技を受けて、その上で己の闘気と体重を乗せて叩き返す技だ」

 

 

クロコダインの言葉を聞いてハッとしたザングレイが、

涙を一滴流し、嬉しそうに笑った。

 

 

「はははははっ! その技で無くとも勝てただろうに……。

オレの技を……受けてくれたのか……。真正面からッ!!!」

 

 

そこまで話して、限界だったのかクロコダインが地面に座り込んだ。

黄龍無想陣でザングレイの攻撃を受けず、実体の攻撃を叩き込んでいれば、

容易く勝てていたのだ。

だというのに、ザングレイの意気に応えて、彼の攻撃を受ける玄武裏金剛を選択した。

人が良すぎると思うが、それでこそクロコダインだと私は誇らしく思う。

 

 

「ハハ……流石に効いた。

お前の……いや、お前達のボルティックプリズンは凄まじい技だったぞ」

 

 

そう聞いたザングレイは、小さく震えるように笑い、

そこから大笑いしていった。

まるで憑き物が落ちたかのように。

 

 

「光の闘気、か。

オレは暗黒闘気に手を伸ばしたが、そちらの方が正解だったのかもしれんな」

 

 

そう言ったザングレイの肩が灰となって、ボロッと崩れ落ちた。

原作で真ザボエラが言っていたが、

"超魔生物は圧倒的に強いが生命力を一気に消費してしまう!

他人を改造するならともかく自分がなりたくはない!"

そう吐き捨てていたな……。

ハドラーは顕著であったが、ザムザも寿命を削って研究に命を捧げていたのだろう。

 

そしていま、ザングレイも敗北した超魔生物の道を歩んでいる。

クロコダインが大声で私を呼ぶ。

 

 

「ザングレイ! ザボエラこいつを回復してやってくれ!」

 

 

私は瞬間移動呪文(ルーラ)で近くまで行く。

しかし、ザングレイが超魔生物の道を選んだ以上……回復することはできないだろう。

私はクロコダインに超魔生物は敗れ去った後は、灰となる運命だと教えた。

ザングレイは意外そうな顔をしてこちらを見た。

 

 

「よく知っているな……その通りだ」

 

回復呪文(ベホマ)! 多少は痛みが抑えられるじゃろう」

 

 

回復呪文(ベホマ)を使う私を見るザングレイ。

嬉しいように呆れたようにため息をつく。

 

 

「オレは悔いはな……二人とも避けろ!!」

 

 

立ち上がれるはずもないザングレイが立ち上がり、私をクロコダインの方に投げ飛ばす。

ザンッ! と肉を切り裂く音と、盛大に飛び散る血しぶき。

 

 

「ザングレイッ!!」

 

「逃げろ……」

 

 

倒れ伏したザングレイを再度襲う斬撃を、何者かが防いだ。

 

 

「……ボラホーン……」

 

 

ほぼ半ばまで食い込んだグロイサンを魔冷気(まれいき)で凍結させたボラホーンが、

最後の力で叫んだ。

 

 

「クロコダイン! ザングレイの大将を頼む!

あんたに倒されるならまだいい! だが、こんなわけの分からぬ奴に……

倒させるわけにはいかん!」

 

 

クロコダインが力を振り絞り、ザングレイの巨体をこちらへ引き戻すのと同時に、

ボラホーンは何者かが振るうグロイサンの雷霆で吹き飛ばされ今度こそ息絶えた……。

 

グロイサンを軽々振るい、我々に迫るそのアンデッドに頭はない。

両手であの巨大なグロイサンを構えている。

盾がないが頭のない騎士ということは、デュラハーンかスケアフレイルだろうか?

グロイサンを振るうためなのか、クロコダイン並の大きな体格をしていた。

 

 

「……このガイコツ……アンデッドは……デスカールが用意し……」

 

 

初めて聞く声だ。

恐らくはグロイサンが喋ったのだろう。

 

 

「黙レ、ぐろいさん。貴様ハ、コレヨリ、おれニ使イ潰サレロ」

 

 

あざ笑うようにいうアンデッド。

アンデッドが魔力を込めグロイサンを支配したのか、声が聞こえなくなる。

 

 

「我ガ名ハ、すかーる!

ですかーる様ヨリ、イタダイタ魔力。存分ニ見セテクレル……」

 

 

眼前の巨大なアンデッドは、ザングレイとグロイサン、

二人の思いを踏みにじるかのように立ちはだかる。

あざ笑うかのような風切り音を立てグロイサンを振りかぶり、

魔斧より衝撃波を放ってきた。

 

 




独自設定

雷霆
現状、判明しているベルクスの奥義は全て魔力を源とした攻撃なので、
グロイサンの技は魔力の衝撃波を放つモノにさせていただきました。
闘気はベアーチェだけが使っています。

黄龍無想陣
闘気を用いた武の技術体系である武神流の未完成だった奥義です。
理論的には出来ていたのですが、老師が晩年に辿り着いた境地で、
その年齢では既に技を錬磨することができずクロコダインが完成させました。

わかりやすく言うと無双転生とか幻影陣的な感じの技です。

スカール
ミストバーンのシャドーのような感じで、デスカールの分身ではありませんが、
彼の意のままに動く特別に作られたアンデッドです。
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