ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。


2026年2月19日 追記

身内に不幸がありまして、次回更新は4月2日の予定になります。

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第九十四話 戦いの後に……

 

スカールは金の魔法の筒を幾つか放り投げ、"デルパ"と唱えて超魔生物を解放する。

様々な姿の超魔生物が、数十体姿を見せた。

 

 

「ですかーる様ノ技術ノ精髄! 超魔生物タチヨ!

敵ヲ皆殺シニセヨ!」

 

 

現れた超魔生物たちは、我々と百獣魔団を区別なく攻撃してくる。

一見するとゲリュオンのような姿だが、妙に体毛が長いもの。

炎をまとったやつざきアニマル。

身体が石のようなヌーデビルなど、

異形の姿をした魔物達が現れた。

しかも超魔生物ということは……。

 

私は閃熱呪文(ベギラマ)で超魔生物の一体を攻撃したが、

まず閃熱呪文(ギラ)系呪文があまり効果的ではなく、

出来た傷もすぐ回復してしまった。

 

ザングレイが倒れても百獣魔団は誰も離脱していない。

現れた超魔生物たちと戦っている者もいるが、

疲弊した彼らでは分が悪いだろう。

 

百獣魔団の魔獣達は軍団長の仇討ちだと、

デスカールの部下であるスカールに向かって行った。

だが、魔斧グロイサンを振るうスカールは、

雷霆を使い百獣魔団の魔獣達を粉砕していく。

 

チウがキラーパンサーを庇って、窮鼠包包拳を叩き込み、

スカールの脚を一時止めてくれた。

だが、雷霆の余波で吹き飛ばされ、チョコマに治療を受けている。

 

チウの奮戦で私はクロコダインを治療する時間が得られた。

全快にはほど遠く、応急処置にすぎない。

回復呪文(ベホマ)の効きが悪いのだ。

恐らくはザングレイの魔炎気が強すぎたためか、

弱い回復呪文(ベホイミ)程度の回復しかできなかった。

 

痛々しい体をひきずり、無理に立ち上がるクロコダイン。

 

 

「十分だ、ザボエラ」

 

「待つのじゃクロコダイン。

それではほとんど回復しておらぬぞ!」

 

「ザングレイとグロイサンは勿論、百獣魔団の者達もよく戦った。

彼らの戦いをこのように汚される謂われなどない!」

 

 

怒りに震えるクロコダインは、グロイサンを振るうスカールへ向かい一撃いれるが、

魔斧を操るスカールに受け止められ、雷霆をまともに食らって吹っ飛ばされてしまう。

飛ばされた衝撃で傷が開いたクロコダインに、また回復呪文(ベホマ)を使う。

 

 

「クロコダイン! 待て、無理じゃ!」

 

「くそっ! 動け……こんなことは許せん!!」

 

 

そこへ雷霆の衝撃波が襲いくるが、ロン・ベルク殿が星皇剣で切り裂く。

チョコマ率いるギュータの者達やフォルケン王が、協力して超魔生物と戦っている。

 

ロン・ベルク殿は軽く振り向いてこちらを見て言った。

 

 

「クロコダイン。あんたはそこで寝てろ。

オレが代わりにアイツを止める」

 

「ロン・ベルク殿……」

 

「見ろ。グロイサンは崩壊しつつある。無理に雷霆を放っているからだ」

 

 

話をしている間も、グロイサンから放たれる雷霆を、

ロン・ベルク殿が星皇剣で切り裂いていた。

 

 

「あのスカールはグロイサンを使い潰すつもりだろう。

武器の意志を無視し使い捨てる。オレの一番嫌いなやり方だ」

 

 

ロン・ベルク殿が一気に間合いを詰めた。

スカールが振るうグロイサンから、雷霆が放たれるが、

それを剣圧で切り裂き、間合いを詰める。

 

 

「なるほど。間近で見ると分かる。お前、あいつの仕事か……。

では、オレが引導を渡してやるべきだろうな」

 

「ホザケ! ろん・べるく!」

 

「オレは貴様とは話をしていないし、

するつもりもない!!」

 

 

ロン・ベルク殿が二刀を構えた。

スカールが振るうグロイサンから、特大の雷霆が放たれたが、

それを星皇十字剣が切り裂き、グロイサンとスカールを真っ二つにした。

 

 

「感謝……す……る……」

 

 

グロイサンからの礼の言葉を、その場にいた全員が聞いた。

 

クロコダインは倒れ伏したザングレイに近寄る。

抱き起こしたザングレイは既に虫の息だ。

 

だが、まだ、安心できない。

しぶとい超魔生物が二十体あまりいるからだ。

再生能力が高く、疲弊した我々ではなかなか押し切れない。

 

そこへ横合いから激しい炎や火炎呪文(メラミ)火炎呪文(メラゾーマ)

さらに氷の息や氷結呪文(ヒャダルコ)氷結呪文(マヒャド)が飛んできた。

直撃を食らったが、少しずつ回復しつつある超魔生物たち。

しかし、それを越える火力が叩きつけられた。

 

 

五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)ッ!!」

 

 

火炎呪文(メラゾーマ)五発分の超火力が飛ぶ。

流石に超魔生物も消し炭になってはお仕舞いだ。

まさかの援軍……か?

そう思ったらフレイザードが、

氷炎魔団を何部隊か連れて通りかかったようだ……。

 

 

「おいおい、こりゃどーなってんだよ?」

 

 

緊張感のない声をあげるフレイザード。

そんなフレイザードを見て、グランナードが油断なく近寄って声をかけた。

 

 

「そりゃこっちの台詞だぜ弟よ。ヤリ合おうって腹じゃねぇよな?」

 

「安心してくれ兄貴。オレは残業はしねぇタイプだ。

これから鬼岩城へ戻る途中だし、あんたらと戦うつもりはねぇよ」

 

 

ひょいひょいと軽い足取りで歩くフレイザードは、

クロコダインに抱きかかえられたザングレイの側まで行った。

 

 

「ザングレイとはダチだからな。

話をさせてもらいてぇんだが」

 

「わかった。おい、友が来たぞザングレイ」

 

 

ザングレイが瞼をあげて、フレイザードを見た。

 

 

「チッ……オレ以外に負けんなよ。てめぇ、勝ち逃げじゃねぇか」

 

「すまん。だが、オレは満足だ」

 

「仕方ねぇな。ハドラー様にはオレからワビとく」

 

 

右手で顔を抑えて、"勝ち逃げかよ"と同じ事を呟くフレイザード。

その姿から二人の友情が感じられた……。

最早虫の息だが、ザングレイがフレイザードに声をかけた。

 

 

「フレイ……ザード。デスカールに……気をつけろ。

あの男……オレの戦い……邪魔をしてきた……」

 

「なにぃ? あの野郎……!」

 

 

ガシッとクロコダインの手を掴んだザングレイが、

最後の言葉を伝える。

 

 

「負けるなよクロコダイン。

お前ならオレが歩めなかった正道を歩んでいけるだろう……」

 

「ああ……!

お前に恥じぬ戦いを貫くことを誓おう」

 

 

最期に満足げに微笑んでザングレイは事切れた。

ザングレイはクロコダインとフレイザードを包むように、

灰となって風に乗り、世界へ飛散していく……。

 

肩を落としたフレイザードが私に話しかけてくる。

 

 

「なぁ、ザボエラよ。

ザングレイが言ってたのは本当なのか?」

 

 

オーザムで戦った時、"てめぇの首は、このオレが必ずとってやるぞ!!"と、

私に激怒していた気がするが、切り替えるタイプなのかフレイザード。

もしかすると、友人の死で意気消沈していて、

それどころではないのかもしれないが……。

 

 

「勝負がついた後に、デスカールの部下だというスカールというアンデッドが来たのじゃ。

彼奴がグロイサンを振るって、ボラホーンを殺害し、ザングレイに斬り付けた。

……というのが事の次第かのう」

 

「……デスカールの野郎……やり口がヴェルザー以下じゃねぇか」

 

 

どういうことだ?

聞いても答えてくれるかは分からないが、聞くのは只だろう。

 

 

「ああ、アンタは知るわけもねぇか。会議で揉めたんだよ。

あのクソ野郎、攻めあぐねてる軍団がいたらケツを蹴り上げてやるって言いやがった!

頭にきて文句言ってやったのさ」

 

 

そこまで言って、"おっと……喋り過ぎちまったか"と漏らすフレイザード。

周囲を見渡していたフレイザードから一つ提案がなされた。

 

 

「百獣魔団の生き残り、連れて行かせて貰うぜ」

 

「そんなの許せるもんか!」

 

 

チウがフレイザードに食ってかかる。

グランナードが何かあっても動けるようにすぐ隣にいてくれていた。

フレイザードはイタリア人のように肩をすくめて言う。

 

 

「参ったなぁそりゃ……オレたちもオーザムから帰還した所だ。

疲れてるんで、一戦交えるのは避けたいとこだが……」

 

 

私はチウとフレイザードの間に入って、

まるで中立側から提案するように話をしてみる。

 

 

「こちらはベンガーナ国民の安全を確保するのが先決じゃ」

 

 

私はチウに話しかけながら、最初に超魔生物たちへ攻撃をしてきた、

森の方を眺める。

グランナードをチラッと見ると、頷いたので、

やはり伏兵は森の中にまだいるということか……。

フレイザードに向き直り話を続けた。

 

 

「フレイザード殿が何もせず、百獣魔団の生き残りを連れ、

この場から去ってくれるというならワシは特に文句はないがのう」

 

 

フレイザードは機嫌が良さそうに笑いながら私に話しかけた。

 

 

「ヘッ……やっぱアンタ食えねぇわ。

ザングレイの死に目には会えたし、ここは引き時ってやつだろうな。

……やることもあるからな」

 

 

そう言ったフレイザードは、百獣魔団の生き残りに声をかける。

 

 

「大将のザングレイは死んだ。見事な最期だったぜ!

その武名を汚さぬように、鬼岩城まで整然と真っ直ぐ帰還するぞ!」

 

 

そのフレイザードの声を聞いた百獣魔団の残党は、

整然とこの場から立ち去ってゆく。

まるで、軍団長ザングレイの最期を汚さぬよう、誇り高く……。

恐らくは数的には四分の一以下になっているだろうが。

 

フレイザードは交渉も含めて、おどけてはいるが、

最後までまったく隙を見せてはこなかった。

 

キラーパンサーを含め、チウに救われた何体かの魔獣がこの場に残った。

その中でもチウに懐いたキラーパンサーに、顔を舐められている。

あまり説得力が無い姿で、なぜ百獣魔団を逃がしたのかと問うチウ。

 

チウはあまり状況を理解していなかったようだ。

私は彼に一言説明した。

 

 

「みな疲弊した状態で、氷炎魔団とも一戦交えるつもりかね?

ワシはごめんこうむるがのう」

 

「え? でも、そんなに氷炎魔団いなかった……」

 

 

横に居たグランナードがチウの額にデコピンをした。

 

 

「痛ッ! なにするんですかグランさん!」

 

「あのなぁ、チウよ。

フレイザードは少数の供しか連れてないように見せて、

森の中に伏兵を何十も待機させてたんだよ」

 

 

森の方を眺めて、こちらを見てキョロキョロするチウ。

 

 

「……えーっ!? 分かりませんでした……」

 

「あのまま戦っていたら、

負けなくともこちらの被害も大きくなったことじゃろう」

 

 

そう、グランナードの言うとおり、

少数の兵だけを見えるように配置していたフレイザード。

彼は自分と少数の供回りだけで姿を見せたかのようにしていたが、

当たり前のように物陰に伏兵を潜ませていたのだ。

 

私はどっと疲労感に襲われ、深いため息をついた。

こちらは激戦の後で疲弊している。

どの程度隠れているか分からない氷炎魔団と、

やり合って勝てるとは思えない。

 

私が安堵した瞬間、クロコダインが大きな音を立てて倒れた。

 

 

「クロコダインさん!」

 

「やべぇ、旦那しっかりしろ!!」

 

 

すぐ、チウが彼の体を支えた。

グランナードがそれを手伝う。

私が駆け寄って治療した。

 

魔炎気も暗黒闘気だ。

強すぎる闘気で受けた傷は回復呪文を弾いてしまう。

私は薬草などを使いながら、闘気で受けた傷を癒やす方法を研究した。

時間がかかってしまうのが難点だが、重症者の治療には効果を発揮する。

 

私は体内で止血剤を調合して、クロコダインに注射した。

チウとグランナードが包帯を巻いてくれている。

ロン・ベルク殿がここは我々に任せて、一旦、テラン城へ戻れと言ってくれた。

 

アキーム殿もやってきており、閉じ込められていたベンガーナの民衆も出てきた。

みな解放されたことを喜び合っている。

クルテマッカ王は更地にされた城の地下に、食料をたっぷり貯蔵してあったことを話す。

 

実はベンガーナの王都には幾つも石造りの地下室が作られており、

そこに物資を蓄えておく態勢を整えておいたのだ。

発案はキングヒドラの襲撃の後、六年ほど前の話である。

私も協力しており、グランナードの力で地下を掘り進めた。

策を提案したときは、杞憂で終われば良かったが、

この貯蔵庫の食料物資に頼る日が来るとは思わなかった……。

 

クルテマッカ王は民衆を心配させぬよう、顔の傷を回復呪文(ベホマ)で消し、

一段高い場所へ上がり、不安げな国民の前に出てきて大声を張り上げた。

 

 

「敗戦の責任は全てワシにある! 退位を考えぬでもなかった……。

だが、この破壊された王都を立て直し、民衆の生活を取り戻す事こそ、

ワシの逃れられぬ責任であると思っている!」

 

 

聴衆は王の言葉に耳を傾けた。

 

 

「今日がベンガーナの新たなる門出。

ここからかつての繁栄を取り戻そうではないか!

だが、今日はまず腹ごしらえといこう。明日、また歩き続けるために!」

 

 

地下に大量の物資を保管してあることを、民衆に説明し、

みなが安堵の声を上げ、クルテマッカ王万歳の声も聞こえる。

 

グランナードがクロコダインを収容した檻の姿になり、

チウがそこに乗っかった。

私は瞬間移動呪文(ルーラ)で一路、テラン城へ向かう。

 

 

 

 

 

テラン城へ到着してすぐ、竜水晶がやってきてクロコダインの容体を看た。

協議した結果、竜の神殿へ連れて行きたいと話す。

 

 

「竜の神殿にはアルゴ岬にある竜の泉と同じ、

体力を回復する水を湛えた場所がある」

 

「竜の泉とはなんじゃ? 奇跡の泉のことかね?」

 

「……そうか。呼び名が違うのだな。

我らは竜の泉と呼んでいる」

 

 

竜の姿になり、ひょいと背中にクロコダインを乗せた竜水晶は、

竜の神殿へ飛び去っていった。

 

テラン城では忙しく文官達が港町サババからの荷を整理して、

それを運び出しており、オーザムの者達が協力して受け取っている。

全て戦いが始まる前に、フォルケン王が手配しておいた荷だ。

オーザムからの避難民が来た場合に備えてのことで、

必要がなければ保存食にすればよいだけだ。

 

そういうものを準備するにも先立つ資金が必要となるだろうが、

テランがここまで大きくなっていなかったら難しい事だったはずだ。

フォルケン王が長年蓄えた知識と、現実に即して行動してきた成果が出た。

そういうことだろうと私は内心喜んでいる。

 

サババへ荷物を運んでくれたのは、ディードック殿が船団を組んで指揮し、

ウルスの村……いや、一大貿易港となったウルスへ運び込んでくれたものだ。

フォルケン王はかなり多めに物資を発注しており、

余剰分はベンガーナへ持って行ってくれるという。

 

ディードック殿が海ぞ……おっと。

冒険者仲間でキャラバンを組織して、そのまま陸路を使い、

わざわざベンガーナへ運んでくれるということだ。

行き違いになっていなかったら、お礼を言いたいところである。

 

本当ならサババからベンガーナへ船を出すのが、

大量に物を運べて良いのだが、

サババからベンガーナまでの海路は時間がかかってしまう。

 

現状、テランに到着した荷物を、ベンガーナまで陸路で運ぶ方が早い。

ディードック殿と仲間達は、地底魔城を攻めたときに同行した、

歴戦の男達だというので安心している。

 

更にアギロ王が戦士団や民間の木こりや狩人を連れ、

ベンガーナの復興の協力をしにいくという。

重傷だったが誰よりも早く回復し、避難民をとりまとめ、

テラン側の文官と折衝を繰り返したタフさは流石という所か。

 

様々な事後処理を終えて、次はどうするべきかと話し合っていると、

城の外に瞬間移動呪文(ルーラ)の着地音がした。

酷い失敗ではないが、ちょっと失敗したようで外の兵がざわついていた。

 

すぐに門番からの報告が上がってきて、ロモスの宮廷魔術師である、

フォブスター殿が重傷を負って倒れていたという。

クロコダイン達の話以降、現状が分からないロモスからの脱出者だ。

是非話が聞きたいと思ったが、フォブスター殿に治療を施したグレゴリーアは、

私の面会したいという言葉を聞いて、渋い顔をした。

 

 

「あの魔法使いのボウヤは、限界まで魔力を振り絞ってる。

ここまで誤らずに飛んで来られたのが幸運ってやつさね」

 

 

"いまは休ませてやんな"と釘を刺された。

そして、城の外にいる魔物に話を聞けと言われる。

 

 

「魔物とは一体何者かね?」

 

「亜人面樹のキギロって言えば、

分かるやつがいるんじゃないかって言ってたね」

 

「ほう? それは会わねばならぬのう」

 

 

テラン城内には破邪呪文(マホカトール)が張られており、

魔物は侵入することができない。

衛兵達がその魔物を前に、緊張して槍を構えていた。

 

私がグランナードとチウを連れて姿を現し、

衛兵達は露骨に安堵した表情を見せる。

 

そこにいるのは小さい姿で尻尾を生やした、

キギロの分身体の一人であるようだ。

外見はギュータ襲撃時のキギロ分身体によく似ている。

ただ、ちゃんと頭に葉っぱが生えている辺りに差異があった。

気になるのは、私が見るところ、内在する魔力がやけに多い。

 

私が姿を現すと、ニヤニヤしながら手を振るキギロ。

 

 

「やあ、初めまして。

ところで、どなたがヨミカイン魔導図書館館長ザボエラさんかな?」

 

 

しっかりと私を見ながら言うので、私が分かった上での事だろう。

 

 

「ワシがザボエラじゃよ。お名前はかねがね伺っておるよキギロ殿」

 

「そうですか……。お願いしたいことがあるんだけど。

ボクの右側後方、50m辺りに浮遊樹が隠れてる」

 

 

私は間髪入れず爆烈呪文(イオラ)を撃った。

その後、キギロが逆の方向を指さすので、

そこにも閃熱呪文(ベギラマ)を撃ち込む。

 

それを見てチウが驚いて言った。

 

 

「お、お前、魔王軍じゃないのか!?」

 

「まぁ、一応所属はしてるよ。

あと、ボクの肉体は反英霊だから破邪呪文(マホカトール)内には入れない」

 

「ふむ……衛兵殿。フォルケン王にお伝え願えますかな?」

 

 

私は衛兵の一人に、城の外にある小屋を一つ借りてキギロと話をしたい旨、

王に言づてを頼むと、彼は急いで走って行った。

 

 

「いいんですかね? ボクを信用しちゃっても?」

 

「ワシには二人ボディガードがついておるから、お前さんも無茶はするまいて」

 

「おやおや。そちらの杖も生きてるんじゃない?

ちゃんと数に数えてやらないと、ふて腐れちゃうんじゃないですか?」

 

「……別に(わたくし)はふて腐れたりしません」

 

 

不満げな口調でケインがキギロに反論する。

私はわざと彼の事を隠したのに、簡単に見抜いた眼力に感服していた。

 

小屋に入り、グランナードとチウが油断なく私の両横にいて、

キギロを見ている。

私から彼に用件を尋ねた。

 

 

「駆け引きはなしにしたいんですよね。

あなたの力を借りたいんですよ、ザボエラさん」

 

「ふむ……どういうことかね?」

 

「いま、ロモスで暴走している、妖魔士団長メネロの力を止めたい。

あれは、超魔手術で与えられたボクの力が、

暴走させられているせいでああなってるんです」

 

 

これは……意外な所から、打つ手無しかと思われた、

ロモスの状況に対しての解決手段が出てきたかもしれない。

 

 

「それは興味深い話ですな。キギロ殿とお呼びしても?」

 

「いや、キギロでいいですよ。あなたの方が年上でしょうし」

 

「では、キギロ。ロモスの状況について、教えていただきたい。

その上で、お前さんの提案について考えるとしましょうかな?」

 

 

キギロは満足げに頷き、ロモスの現状について、

私たちが知り得なかった情報を説明してくれた。

 

 

 




設定解説
ディードック
勇者アバンと獄炎の魔王に登場したマトリフの後輩の一人。
ギュータから身を引いた後は、サババで冒険者(海賊)を行っている。
マトリフからは海賊と揶揄されるモノの、本人は頑なに冒険者と主張している。


独自設定
あいつの仕事か
グロイサンはロン・ベルクの手になる武具では無く、
ベルク一族の他の誰かの仕事という意味です。
恐らくベルクスに、ロン・ベルクの作った武器はいなそうなので。
ライゼが怪しいですが。

港町ウルス
オーザム、リンガイア、サババとの貿易を行うことで、
小さな漁村だったウルスは整備された貿易港となっている。
今回、まず、第一にオーザムからの避難民を受け入れたのもこの街。

竜の泉
奇跡の泉という名前は恐らくはアルキード王国で呼ばれた名でしょうから、
本来は竜の騎士が体力を回復する泉で何かの名前があっただろうということで、
シンプルな名前をつけてみました。
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