ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第九十四話閑話 鬼岩城にて

 

フレイザードはギルドメイン山脈の麓にある隠し通路から、

氷炎魔団を進軍させ鬼岩城へ帰還した。

部下達を休ませて、すぐにハドラーに面会を申し込む。

 

呼び出しがあるまでの間、壁にもたれてザングレイの死と、

その場で出会ったザボエラ達の事を考えていた。

 

元々、オーザムでブルーオーブを発見したフレイザードは、

軍団の半分を先行させて鬼岩城まで道中の安全を確保。

その上で、慎重に軍団を進めていった。

 

なぜ、浮遊樹で先んじてハドラーへ連絡を入れなかったかと言えば、

それをヴェルザーが聞いていた場合、帰途を襲撃してくる可能性があったからだ。

不仲であり、他人の功績を横取りすると公言する男だ。

わざわざ、宝の在処を告げて、襲撃を招くような愚を犯すことはない。

フレイザードはそう考え、あくまでオーザム陥落の凱旋という形を取った。

 

とはいえ、戦友ザングレイの陣中見舞いをするかと思った所、

状況があの有様であったので超魔生物を横合いから攻撃した。

大半の兵を伏兵として待機させておき、

単身ザングレイたちの元へ向かうことにする。

敵であるはずのクロコダインがザングレイを守っている事から判断して、

デスカール辺りの横やりかと宛てをつけて接近したのだ。

 

歩きながら敵の戦力を計算するフレイザード。

一見和やかだが、明らかに警戒している兄貴分のグランナード。

彼がいる時点で、至る所に石壁を出せるので、

奇襲の成功率が半分以下になってしまう。

ザングレイと戦ったであろうクロコダインは重傷で疲弊しきっているが、

彼をだまし討ちするのはザングレイが喜ばないだろう。

 

ザボエラも疲れている様子だが、まだまだ戦えそうではある。

なぜかいるテランのフォルケン王と、ピンク髪のギュータの法服を着た小娘。

この二人が、妙に強そうで油断がならない。

 

さらにロン・ベルクが無傷だ。

剣の間合いで言えば距離は開いてはいる。

だが、彼であれば一足飛びに詰められるのだろう。

自然体だが隙の無い立ち姿で、こちらを見つめていた。

 

フレイザードは素早く彼我の戦力を計算する。

何人か討ち取れる可能性はあるだろう。

だが、自分も死ぬし、氷炎魔団も全滅しそうだ。

ブルーオーブを抱えている現状、そのリスクは取れないと判断。

 

素直にザングレイの最期の言葉を聞き、百獣魔団の残兵を収容する。

ザボエラから情報を得た上で、氷炎魔団を損耗させず、

ブルーオーブも失わないで、鬼岩城へ抱え込んだ情報を告げるべく帰還することに成功した。

 

我ながら色々考えすぎたが、ベストの選択ができただろう。

そう自画自賛しながら一人考え込んでいると、

取り次ぎにやってきた親衛隊のガーゴイルの言葉に鷹揚に頷く。

 

 

フレイザードが玉座の間に到着した時、ガーゴイルたちから報告を受け、

即座に判断しつつ指示を出しているハドラーは忙しそうだった。

 

 

「カールの状況はどうなっている?」

 

「ハッ! 現在、三度目の攻勢もカール騎士団に敗退したそうです」

 

「ダブルドーラめ……! 兵力を小出しにしすぎだ!」

 

 

不愉快そうに鼻をならすハドラーは、別の場所の状況を尋ねる。

 

 

「パプニカとは連絡が取れぬのか?」

 

「パプニカ王都から発せられている聖なる力のためか、

浮遊樹が伝達できず……」

 

「伝令を送れ! 飛んで行けばよいではないか。

貴様ら何の為の羽根だ?」

 

「は! ただちに参ります!」

 

 

ガーゴイルが三名、司令室から走り去った。

 

フレイザードはパプニカと連絡が取れない事。

つまり、デスカールの動静が掴めぬという報告を耳にし、

妙な胸騒ぎを覚えた。

 

怪訝な顔をしているフレイザードに気づかず、

案内のガーゴイルがハドラーに取り次いだ。

ハドラーは軽く笑って手招きして、フレイザードの帰還を喜ぶ。

 

ハドラーはオーザム陥落の報を聞き、全軍団で一番槍となる功績を褒め称えた。

直接部下から聞く戦勝の知らせは、また格別なものだ。

 

そして、フレイザードは氷の半身から一つの宝珠(オーブ)を取り出す。

ハドラーは目を(みは)り、フレイザードに確認する。

 

 

「それは、宝珠(オーブ)かフレイザード?」

 

「ミストバーンが持ち帰った宝珠(オーブ)の色違いだぜ、ハドラー様。

さしずめブルーオーブってところですかね?」

 

 

ブルーオーブはオーザムでザボエラと戦い、彼が砕いた氷河の下にあった。

最初、氷系の魔物に取りに行かせたら近づけないと報告が上がる。

そのため、フレイザード自身が周囲の海水ごと凍らせ、

破邪の光を封じて回収して、鬼岩城まで持ってきた。

 

宝珠(オーブ)探索は大魔王からの直接的な命令である。

それを子飼いの部下であるフレイザードが、

いち早く達成したことをハドラーは大いに喜んだ。

 

先ほどまでの不機嫌さがどこかへ行ってしまい、上機嫌なハドラー。

アークデーモンに二人分の杯を用意させて、一気に飲み干した。

 

魔王軍六大軍団を代表して、先んじての功績である。

だというのに、浮かない表情のフレイザードの事が、ハドラーは気になった。

 

そのことを尋ねようとしたところ、フレイザードが声を潜めて話しかけてくる。

 

 

「……ハドラー様。

人払いしてもらえねぇか? 秘密の話があるんだ」

 

「案ずるなフレイザード。ここにいるのはオレ直属のアークデーモンだ。

みな、極大爆烈呪文(イオナズン)を修めた猛者どもよ。忠誠心も厚い」

 

 

フレイザードは部屋を見渡して、表情に得心の色が濃くなる。

そして、彼は驚くべき事をハドラーに語り始めた。

ベンガーナの戦況と、百獣魔団軍団長ザングレイの死だ。

ザングレイはベンガーナを陥落させたようだが、その後、クロコダインと戦って戦死。

その報を伝えたとき、ハドラーは驚きを隠せなかった。

 

 

あの(・・)ザングレイが……負けたというのかッ!!」

 

 

思わず壁を殴ってしまうハドラー。

鬼岩城の壁面に、蜘蛛の巣状のヒビが入ってしまう。

 

ハドラーはいまの自分でも、ザングレイと戦って勝てるとはいえないと考えていた。

幾度かの死を経て暗黒闘気が増大し、力量が充実しているとの自負もある。

かつて、魔界での無様な初戦で助けられた時ほどの、差は無いと考えている。

だとしてもハドラー自身、勝てるビジョンが浮かばないのがザングレイだった。

 

しかし、魔軍司令として部下の前で、これ以上動揺を見せるわけにもいかない。

心を落ち着けたハドラーは、盛大にため息をつき、ぽつりともらした。

 

 

「……勝ち逃げしおって……ザングレイめが……」

 

「へへへっ……オレと同じ事言ってるぜハドラー様」

 

「なに? ふふ……そうか……」

 

 

二人して苦笑じみたため息をついてしまった。

やや気恥ずかしいのか、咳払いをしたフレイザードが、

別の話題をハドラーに示した。

 

 

「で、だ。しんみりする話はここまでだ。切り替えていこうぜ。

ちと、キナ臭い話を仕入れてきたんだ」

 

「どういうことだフレイザード?」

 

「オレなりの意見もあるが、そのまま話すぜ。

判断はハドラー様に任せたい」

 

 

声を潜めていうフレイザードに、ハドラーは訝しく思ったものの、

彼の話を最後まで聞いた。

 

信じられないような話だった。

デスカールの部下がザングレイの戦いの最後に介入。

副団長のボラホーンを殺害し、ザングレイにも重傷を負わせた。

その後、ザボエラたちに倒されたと言うことだが、由々しき事態である。

 

別に他の軍団長の担当国への介入は問題は無い。

だが、味方である百獣魔団の兵を殺し、

副団長ボラホーンを殺害し、団長のザングレイにも傷を負わせた。

それは明らかに問題である。

 

しかし、戦いの決着の下りを、ずっとフレイザードは眺めていたのだろうか。

見てきたように語ったフレイザードに、

ハドラーが尋ねると、驚くべき答えが帰ってきた。

 

 

「ああ、そいつか? ザボエラの爺さんに聞いたんだよ。

爺さんもあの戦場にいたからな。

律儀にザングレイとクロコダインの戦いを見守ってたんだろうよ」

 

「ザボエラだと!? 仮にも敵と何を仲良く話をしているのだ!!」

 

「話すくらい、いいんじゃねぇの?

ブルーオーブが見つかったのも、爺さんのおかげでもあるしよ」

 

 

禁呪法生命体は呪法の術者の影響を如実に受ける……はずである。

だが、敵とも平然と会話をするフレイザードの人懐っこさというか、

協調性のようなものは誰に似たのだろうかとハドラーは考えた。

 

 

「大体、オレの話は終わったが、ハドラー様はどう考えるんだ?」

 

「放ってはおけぬな。

デスカールを呼び出し、問いたださねばならん」

 

「呼び出す……呼び出すねぇ……。

ハドラー様、デスカールに連絡がつくのかって話だぜ?」

 

 

フレイザードの言葉が気に掛かり、続きを促すハドラー。

悪事をなしたものが、問罪されるのを分かっていて、

呼び出しに素直に応じるモノだろうか……と。

 

 

「オレがデスカールだったら、さっきのガーゴイルを無事に返さねぇぜ」

 

「では、オレ自ら行って問いただしてくれるわ!」

 

 

いきり立つハドラーをフレイザードが宥める。

 

 

「まぁ、待ってくれ。

オレは実の所、デスカールは得体が知れなくておっかねぇ。

強さで言えばヴェルザーの方が上だろうが、

アイツはそれとは違う方向性でヤベぇ臭いがする」

 

「……では、手をこまねいていろと言うのか?」

 

「まず、ここは情報を共有して味方を増やすのが得策だぜハドラー様。

ミストバーンは大魔宮(バーンパレス)だろ」

 

 

頷くハドラーにフレイザードは説明をした。

ミストバーンに宝珠(オーブ)発見の報を送れば、すぐにやってくるはずだ。

まず彼にブルーオーブを預け、その上で今回の顛末を話す。

 

 

「その上で大魔王様の御裁可を得ようというのか」

 

「ま、そういうことだな。ナニしてくるかわからねぇ相手に、

ハドラー様一人じゃ危ねぇよ」

 

 

本来、ハドラーは武断的に話を解決したい男だ。

デスカールの陣営に乗り込んで、正面から話をつけたかった。

だが、フレイザードとしては、手の内が見えない(デスカール)の術中に、

上司であり生みの親であるハドラーがはまってしまうことを恐れたのだ。

正面から戦えばハドラーの方がデスカールより強いとは思われるが、

相手が正面から戦ってくれない場合、強さを増した彼でも敗北の可能性がある。

 

それにこの権限を逸脱した百獣魔団並びに団長に対しての干渉行為自体、

ハドラーを激怒させて冷静さを失わせた上で、捕らえるなり殺害を企んでいるかもしれない。

そこまで話した後、ハドラーは落ち着きを取り戻し、

フレイザードの言葉を受け入れた。

 

百獣魔団の残兵をフレイザードの氷炎魔団預かりとして、

希望者はそのまま所属させ、そうでないものは魔界へ戻す沙汰が下る。

罰はなさそうだとフレイザードは冷や汗をかいて安堵した。

 

ハドラーは浮遊樹に、宝珠(オーブ)の一つを発見した旨を伝達させる。

ここでハドラーがミストバーンと連絡を取り、デスカールの元へ殴り込まなかったことは、

デスカールにとって誤算の一つではあった。

 

 

 

 

魔界辺境。

そこには冥竜将ヴェルザーとデスカールがいた。

ヴェルザーは謹慎を命じられ、地上へは行けないが、

パプニカ攻略中のはずのデスカールが魔界に居るのは不自然だった。

 

 

「見つかったのかデスカールよ?」

 

「死の大地で飛散した瞬間、飛んだ方向を計測させていたのだ。

発見は容易であった。保管と移動の方は手間だったが」

 

 

彼が手を翻すと、暗黒闘気に覆われた中に、

緑・紫・黄色の宝珠(オーブ)が封じられていた。

 

 

「オレが使って良いのだな? 後で返せと言われても返さぬぞ」

 

竜の(ドラゴン)騎士は手強いと聞く。上手く使えば戦況を有利に進められるのでは?」

 

「フン……。お前の動きを悟らせぬ為、オレが大人しく謹慎してやっているのだ。

感謝して貰いたいものだな」

 

 

宝珠(オーブ)はベリアルたちにくれてやるかと言っているヴェルザーに、

デスカールがボソリと呟いた言葉は届かなかった。

曰く、"すでに宝珠(オーブ)の解析はすんでいる……"と。

宝珠(オーブ)を眺めているヴェルザーに対し、

デスカールはハドラーへの挑発はどうやら失敗したらしいと告げた。

 

宝珠(オーブ)を眺めるのを止めたヴェルザーは、

鼻を鳴らし毒の籠もった紫煙をまき散らす。

デスカールがアンデッドだから効きはしないが、まともな生物なら猛毒の煙である。

 

 

「策士策に溺れるというやつだな。あまりやり過ぎて警戒されるなよデスカール」

 

「心得ている。だが打てる手は打っておきたいのだ。

ヘマはせぬよ」

 

 

デスカールはハドラーの慎重な行動が、

フレイザードの言葉によるものだとは気づかなかった。

 

彼は陰謀家としては自分が二流だと知っている。

知っているから、(はかりごと)に自信を持たず、

失敗したら二の矢、三の矢を撃ってくるのだ。

 

一言二言話をして、お互い振り向きもせずに別れる。

魔界辺境の荒野を歩きながら、デスカールはパプニカ攻めのことを考えていた。

テムジンが功を焦っており、ガンガディアから権限を奪ったことも聞いている。

一応、デスカールはテムジンの内政能力や策謀に長けた力を評価はしているのだ。

 

お膳立てをしてやっても失敗するなら、そこまでと切り捨てる。

その場合はガンガディアに指揮権を戻せば良い。

 

実はパプニカ攻めはデスカールにとって優先度が低いのだ。

彼にはやるべきことが多い。

 

 

「さて……私の影武者は上手くやっているだろうか?」

 

 

そう、一人呟いて瞬間移動呪文(ルーラ)でいずこかへ去って行った。

 

 

 

 

パプニカを攻める不死騎団の陣地では、ガンガディアがデスカールと話し合っていた。

カールが強力な騎士を抱えた剛の国であるのに対して、

賢者の国と呼ばれ、魔法使いや僧侶も多く抱えるパプニカは柔の国である。

 

パプニカ魔法兵団は退散呪文(ニフラム)を使える者が多くおり、

王都自体が破邪呪文(マホカトール)に囲まれている。

さらに大破邪呪文(ミナカトール)の魔法陣があるらしく、

アンデッドたちが効果覿面(てきめん)に弱体化されてしまっていた。

 

これが超竜軍団や百獣魔団、妖魔士団であったらここまでではなかっただろう。

特に聖なる力に弱い不死騎団のアンデッドたちは、厳しい戦いを強いられていた。

 

ガンガディアは本来、その知謀を買われて不死騎団の参謀格として、

全軍をデスカールの代わりに率いるはずだった。

 

だが、ヨミカイン魔導図書館に瘴気結界魔術を敷いてパプニカを毒で汚染し、

戦いを有利に運ぶという作戦を失敗したとテムジンに決めつけられてしまう。

テムジンがパプニカ攻めの総指揮をガンガディアから強奪。

以後、大分、まずい攻めを行っていた。

 

その事をガンガディアがデスカールに陳情に来たのだ。

意外にもデスカールは、自軍の損耗が激しい現状を、

あまり問題視していなかった。

 

 

「我が不死騎団は魔影軍団ほどではないが、

世界に骸がある限り幾らでも補充は可能だ」

 

「ですが、あまり被害が大きくなりましては、後の戦いに支障をきたします」

 

 

デスカールは死霊魔術の本を読みながら、

ガンガディアの言葉に返事をする代わりに質問をした。

 

 

「テムジンをどう見るかね、ガンガディア?」

 

「……知識はありますが教養がありません。

自尊心はありますが自制心がございません」

 

 

そこでガンガディアは眼鏡を押さえ、

怒りでこめかみをピクピクさせながらこう言い放った。

 

 

「元司教という知識階級であるのに、品位の欠片もない。

まったく憧れませんな……! 

このままでは、百年かけてもパプニカは落とせぬでしょう」

 

「そうだな……お前の意見に同意するよガンガディア。

だが、私はあの男の戦場以外での能力を買っているのだ」

 

 

テムジンを酷評したガンガディアも、戦闘指揮以外の能力は理解していた。

策謀や知識は一級品であると言えし、経歴から政治力も相当なものだ。

 

 

「では、なぜテムジンにお任せになるのです?」

 

「戦後を見据えた場合、彼の能力は魔王軍内部で必要になる可能性がある。

それゆえに戦功を積ませ、一定の発言力を与えてやっても良いのだ」

 

「ですが、それを傘に着てこちらに牙をむく可能性もあります」

 

 

そこで初めて本を閉じ、ガンガディアを見返したデスカール。

彼は苦笑してこう言った。

 

 

「私が彼の生命を握っているのに、刃向かうというならそこまでだ。

もし、彼が失敗したら、お前の出番になる。

その時まで控えて戦場の情報を得ていて貰いたい」

 

「心得ました。

では、私はテムジンを特に手伝う必要はないのですね?」

 

「不要だ。補佐してもお前の能力を疎まれるだけだ」

 

 

今度はガンガディアが苦笑して、その場を後にした。

ガンガディアが退出した後、すぐに死霊魔術の本に視線を落とし、

熟読しているデスカール。

読破した後に、本をパタンと閉じてため息と共に感嘆の声を漏らした。

 

 

「……素晴らしい。

なぜ、(ボク)は生前に死霊魔術(この)可能性に至らなかったのか……!」

 

 

その声は、先ほどまでガンガディアと話していた、

デスカールの声ではなかった。

 

 

(ガンガディア)にばれなかったのであれば、(ボク)の演技も大したものだ。

もっとも、声も変えてあるのだから、見抜けるものはいないだろうけど」

 

 

デスカールの手首の辺りから、ガゼルを象った刃とともに鎖が這い出てくる。

 

彼は魔鎖のタークス。

デスカールにアンデッドとして蘇生させられたはぐれ武器、ベルクスの一人だ。

 

タークスの前にマントを羽織り、フードを目深に下ろしたアンデッドが歩いてきた。

なぜ、アンデッドであると断言できるかというと、

服から垣間見える手首や足首が、白骨であるからだ。

 

 

「本格的な侵攻は、デスカール様からの指示があってからかしらタークス?」

 

 

狐面を顔につけた女性の声にタークスは頷く。

 

 

「いまは引き延ばせとの仰せだからね。(ボク)としてはじっくり攻めさせたい。

その為に戦下手のテムジンに指揮をさせているのだから」

 

「ふぅん……そう」

 

 

自分で質問したのに、あまり興味がなさそうな返事をする女性の声。

横に居る槍を肩に構えた鳥の面の人物が、嬉しそうに話す。

 

 

「しかし、名のある武芸者を倒して、その肉体を使っていた我らベルクスの悩みが、

こんなあっさり解決するとは思いませんでしたね」

 

 

大剣を地面に突き刺して、その柄に手を置く大柄な水牛の面の男が言葉を続けた。

 

 

「アンデッドの体は我らの魔力さえあれば、幾らでも補修は可能だ。

老いさらばえ、朽ち果てるのが早い、人間や獣人よりよほど使いやすい」

 

 

彼と同じくらい大柄な大熊猫の面の男が、凶悪な爪の生えた手甲で頭を掻いた。

 

 

「ぼくとしては回復呪文(ホイミ)での回復が使えないのが残念だけどね」

 

「あなたのいままでの尽力には感謝しているよベアーチェ」

 

 

タークスがベアーチェと呼ばれた人物に声をかけた。

実はタークスは過去にベアーチェに破壊されているのだが、

蘇生された際に過去の諍いは全て水に流そうと声をかけている。

 

タークスは他のベルクス達より、多くの魔力を与えられているため、

彼はかつて自認リーダーであったが、いまは実際にベルクスをまとめ上げていた。

 

 

「さて。まだ、あなたたちは秘密の存在だ。

(ボク)が呼ぶまで、身を潜めていてもらえるかな?」

 

 

天幕を去る同胞たちを眺めながら、仮初めの不死騎団長の地位を、

大いに満喫するタークスであった……。

 

 





独自設定
聖なる力
ラザマナス襲撃の時に作った大破邪呪文(ミナカトール)の魔法陣がまだ存在しているので、
パプニカを攻める不死騎団は難儀しております。

ベルクス
魔鎖のタークス、魔槍のフーガ、魔妖剣テンペスト、魔重剣のスイグン、
魔甲のベアーチェがこの場におります。

現時点でのオーブの持ち主
ザボエラ レッドオーブ
大魔王 シルバーオーブ
ヴェルザー グリーン、パープル、イエロー
フレイザード ブルーオーブ
ブルーオーブはミストバーンに渡す予定です。
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