ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回更新はまた一ヶ月ほど後になります。
5月28日を予定しております。
現在、役所関係で面倒な手続きが進んでおりまして、
それによってずれてしまう可能性もありますのでご承知いただければ幸いです。
老師からの警告があってなお、あまりの広範囲攻撃で回避が間に合わなかった。
暗黒闘気の衝撃波に吹き飛ばされてしまったが、グランナードが私を助けてくれる。
「大丈夫ですかい旦那!」
「すまんなグランナード……。しかし、良くない予想が当たったようじゃ」
まごうこと無き強力な暗黒闘気だ。
かなりの衝撃で頭が痛いが、ボリクスが暗黒闘気の衝撃波に対し、
衝撃波の威力をかなり弱めてくれていたようだ。
魔の森の大木がへし折れ、大きな岩が砕け散っている様を見ると相当な威力である。
ボリクスの機転がなければ、暗黒闘気の衝撃波で我々は全滅していたかもしれない。
ある意味、予定にはない同行だったのだが、ボリクスがいなかったら危うかっただろう。
私はグランナードに他の怪我人を守るよう指示を出し、
私自身も重傷者に対して
「ようもやってくれたな……オイ!!」
ボリクスは
勢いをつけてメネロに
全開にした
巨大なメネロは大きく仰け反って倒れそうになったが、数多くある根で踏ん張る。
その巨大さ故に、根が掘った土砂がこちらへ大量に飛んで来てしまう。
雷竜剣を構えるボリクスに、キギロが声をかけた。
「ボリクス君! 横薙ぎ! 横薙ぎにしてみてください!」
「おっけー! 任せろやー! 大地斬!!」
ボリクスは高空に飛翔し、伸ばした
メネロを横薙ぎ真っ二つにした瞬間、無数の触手が巨大な体を支える。
溢れ出る真っ赤な血のような樹液で、亀裂が埋められて回復、
というよりすぐに修復されてしまう。
元の姿に戻った巨大なメネロは、また、何事もなかったように歩みを再開した。
「うそ……やろ……!? そんなんズルやんか!」
思わず眼前の光景にそうぼやいてしまうボリクス。
その直後、触手や枝がボリクスを捕らえようと、猛攻を仕掛けてくる。
まるで、雨のように降り注ぐ暗黒闘気を纏った葉は、
地面に突き刺さると深い穴を穿っていた。
「うっひゃー!
己に
「ボリクス君、右に避けて!」
キギロが樹液魔力弾で、ボリクスに迫る木の枝を穴だらけにした。
「やるやんキギロ!
ボリクスは移動しながら自分を追う枝や根を、
別の方向からは老師が攻撃したようで、メネロの腕になっている枝の一つが、
ボロボロと崩壊していくが、途中で切り離されてしまう。
その後、老師もボリクスと同等の攻撃を叩きつけられていた。
効果からするとあれは、閃華裂光拳だったようだが……と思って老師を見ると、
叩きつけられる葉の攻撃をかわしながら、一瞬、私に向けてバツのポーズを取る。
閃華裂光拳は効果があったようではあるが、枝自体は何本もあるし、
切り離されてしまっては本体にダメージを与えられないか……。
ハドラーに看破されたように、閃華裂光拳は攻撃する際に若干の溜めが必要だ。
それをメネロに見抜かれた訳ではないだろうが、元々飽和攻撃をしてくる相手とは相性が悪いか。
巨大な敵というのは少年漫画では噛ませ役として扱われやすいが、
実際に巨大ということは攻撃範囲が広く、強いということだ。
動きが鈍いことで助かっているが、これで鬼眼王バーンのような速度だったら、
我々は全滅させられていただろう。
メネロの攻撃は我々にも及び、無数の枝が上から降り注ぎ地面を抉り、
グランナードが石壁を作り、ケインが爪を風車のように振り回して防御。
私は
炎の竜巻で広範囲を焼き尽くしてメネロの物量攻撃に対応した。
いつの間に集まったのか残党の妖魔士団の魔物たちや、樹木系モンスターたちが、
妙に鈍い動きでノロノロとこちらへ向かってきた。
動きは鈍いのだが、彼らの様子が妙だ。
ロモス騎士団と戦っているのだが、やけに強さが増しているのだ。
「なんだこいつら! 前より手強くなってやがる!」
ゴメスが二人倒した後、三人目のサタンパピーに苦戦している。
チウが割り込み、サタンパピーの
更に機敏に動いて跳躍して、窮鼠包包拳で相手を倒した。
「大丈夫かね! 何人かで協力して戦ったほうがいいよ!」
「お、おう! ありがとうよ!」
格闘士ゴメスを助けながら、チウがアドバイスを送っていた。
なんと、チウが他人に気を遣いながらサポートしているとは……!
ここ数日の戦いで、彼も確かな成長を得ているようだな。
「どないなってるんや! これ!」
「恐らくは妖魔士団の連中に、メネロが魔力を送り込んでいるんだ。
見てごらん。背中に細い触手が埋め込まれているでしょ?」
ボリクスの疑問にキギロが答えた形になったが、
確かに妖魔士団の者達や、蟲系、樹木系モンスターの背後に、
細い糸のような触手が張り付いている。
「なるほどねぇ……」
そういいながら老師が一人の敵の背後を手刀で切ると、
糸が切れた人形のようにガクンと倒れた。
「みんな、敵の背後を切るんだ!
糸のような細い触手が彼らを操り力を与えてるよ!」
老師のアドバイスでロモス騎士団もそのように戦うが、
真正面から戦っている間に、相手の背中の糸を切るのはなかなか難しい。
こちらも二人・三人でかかればよいが、
相手の方が数が多いのだ……。
その間に巨大樹と化したメネロの天辺に生えているツボミが、
少しずつほころび真っ赤な花を咲かせた。
その瞬間、広範囲に花粉をばら撒いてくる。
目覚まし草のおかげで、ねむりの花粉の効果は無い。
しかし、ねむりの花粉の効果を解除した我々が来ているのに、
同じ手を繰り返す辺り、相手の分析は出来ていないということか?
凍てつく暴風の檻を作り、吹雪で凍り付かせてやろうかと考えていると、
キギロが話しかけてきた。
「ザボエラさん。
まだあの中に人型のメネロ本体がいるのですよ」
「場所は分かるのかね?」
「彼女はボクの力を強く受け継いでいるので、
メネロの生命エネルギーを感知できるんですよ」
先ほどのボリクスへの横薙ぎの指示はそういうことだったのか……。
そうしてキギロは提案をしてきた。
あの巨大な樹木は力が暴走したモノでメネロ本体ではない。
だから、暴走の根源であるメネロを引きずり出せば、
巨大な樹木を無力化できる可能性があるらしい。
私は飛んでくる刃のような葉を
キギロは両腕を伸ばして叩きつけられる枝を逸らしながら話をする。
「しかし、どうやって引きずり出すかね?」
「ボクしか場所がわからないので、
みなさんで攻撃して注意を引いてもらえますか?」
私は心得たと返事をして、みなに状況を説明した。
フォブスター殿と私が
グランナードも石壁を作って、ロモスの兵たちが隠れられる場所を作った。
木の葉や枝の類いに対しては、味方の魔法使い達の呪文や、ロモス兵の弓で対応する。
巨大な蛇のような根の攻撃は、ボリクスが
チウが窮鼠包包拳で迎え撃ち、バロリアやゴメスたち戦士が切り払い叩き落とした。
私はメネロに
あまり効果が無いようで
恐らくはキギロの灼熱した樹液を体内に通わせている特性を、
継承しているのだろうか。
フォブスター殿がロモス騎士団や呪文が使える者達に指示を飛ばした。
間断なく叩きつけられる氷の攻撃によって、ようやくメネロの根を凍結させることに成功した。
「いまだ……! 援護をお願いします!」
「任せろや!」
動きが止ったメネロの枝に飛び乗り、真っ赤な花によじ登るキギロ。
枝や葉がキギロを追いかけるが、ボリクスが立ちはだかり、
チウが窮鼠包包拳で根を攻撃し、私やロモス騎士団の面々が、
呪文や矢などの飛び道具でキギロを援護する。
身軽に巨大なメネロの身体を登り、天辺の花にしがみついたキギロ。
キギロは真っ赤な花弁を切り裂き、腕を奥へねじ込む。
「……よし、捉えた!!」
腕を引っ張り出すと意識のないメネロの姿が現れた。
両手に抱えて110mほどの高さから地上へ飛び降りるキギロ。
その瞬間、絶叫のような叫び声を発し、メネロがいなくなった巨大樹は、
いままで普通の樹木の色だったのが、葉っぱが真っ黒になり、
樹皮がドス黒い一見して朽ちているかのような色に変化した。
メネロが助け出されたというのに、巨大樹が全く活動を停止しない。
頭上の枝に沢山の毒々しい果実を実らせ、地上へ一斉に落とした。
「なんだい、これは?」
「チウ君、離れるんだ!」
不用意に近づいたチウに注意を喚起するキギロ。
その瞬間、果実が割れて中から、マンイーター、ポイズンキッス、オニオーン、
もみじこぞう、ズッキーニャ、ダークマタンゴが現れる。
「
「あの巨大な木……。仮に暗黒巨大樹とするが、植物系の魔物を産むのじゃろう」
もしもデスカールの目論見がこれであったとしたら、
敵地に侵攻して兵をどんどん量産する植物版の鬼岩城だ。
ザムザに聞いた範囲では、デスカールとメネロの関係性は悪くはなかったはず。
同僚の軍団長を道具のように使い捨てるデスカールのやり口に、
私は原作においてザムザを道具だと言った真ザボエラとは、また違った嫌悪感を抱いた。
私のそんな内心をあざ笑うかのように、暗黒巨大樹の暗黒闘気が陽炎のように燃えさかった。
それと同時に、暗黒巨大樹の幹に裂け目が出来て、真っ白な目と三日月型の口が開く。
あれは確か……ドラクエ8に出てきた暗黒樹か。
暗黒巨大樹と名付けたが、正鵠を射ていたということだな。
天辺に生い茂る葉から、さそりばち、じんめんちょう、キラービー、
ひとくいが、ハンターフライ……etcと、
蟲系の魔物が多数現れ、メネロを背負っているキギロを追っていく。
「一人で大丈夫か、キギロ殿!」
「抱えて逃げるくらいは……っとザボエラさん!
暗黒巨大樹に動きが!」
蟲系モンスターから逃げながら、キギロがこちらに注意を促した。
だが、既に暗黒巨大樹は罠を張った後だった。
暗黒闘気を漂わせた暗黒巨大樹から、カッと周囲に蜘蛛の巣状の闘気が広がる。
微動だにできず、ほぼ、全員が絡め取られてしまった。
「まさかこれは闘魔滅砕陣……!?」
「まずいぜ、旦那!」
グランナードの焦った声が響くが、この場でこれを解除できるのはただ一人。
キギロの声で跳躍していたボリクスが、雷竜剣に光の闘気を貯めた。
暗黒巨大樹が枝に
それよりも前にボリクスの空の技が炸裂する。
「アバン流刀殺法──空裂斬!」
暗黒闘気の蜘蛛の巣が、光の闘気によって切り裂かれた。
私は
グランナードも間一髪で石の壁を作り出し、
その間に果実から現れた植物系の魔物が、
こちらへ攻撃を始めており、乱戦の様相を呈していた。
暗黒巨大樹は、またもや枝に毒々しい果実を宿しており、
兵力を増強しようとしている。
私は試しに暗黒巨大樹の枝に、
一応、すぐに対応できるように
どうやら樹液を高熱化して、
耐性を持つ能力それ自体はメネロ由来だったようだ。
いまの暗黒巨大樹には
それをみたフォブスター殿が、ロモス騎士団に伝達し、
私は地上から
どうすれば良いか考えあぐねて、思わず考えを口に出してしまった。
「うむむ……全体を一気に攻撃できる、効果範囲の強い力が必要じゃのう」
それを聞きつけたボリクスが、私の横に飛んでくる。
「よし、
「ほぅ……では、お前さんに任せるとするかのうボリクスよ」
雷竜剣を構えるボリクスが
私は
更に毒々しい果実を落とそうとしている暗黒巨大樹に立ちはだかった。
「くらえや! イオナズンストラッシュ!!」
呪文を宿し、同時に
何度か練習はしているが、
攻撃範囲が大きすぎるので使用が難しかった。
何度か練習を行ったが、人里離れてないと危険で使えないほどの威力だ。
凄まじい火力を叩き出す。
闘気を飛ばすアロータイプのアバンストラッシュであるが、
暗黒巨大樹に着弾した瞬間、大爆発を起こして燃え上がった。
あの巨体が爆発で吹っ飛んで、ほとんど残骸であるが、
元が大きいため残骸と言っても、相当なサイズではある。
そしてその焼け残った根やら触手が、
いまだしぶとく蠢いてこちらへ攻撃しようとしていた。
「うわぁああ! ま、まだ動いてる!」
「なに、最後のあがきだよ。そんなに取り乱すものじゃないチウ」
「す、すいません老師!」
まだ動いている暴走する触手たちに、チウが慄いているが、
ブロキーナ老師がチウの肩をポンと叩いて落ち着くように言った。
「見てなさい。武神流奥義……閃華裂光拳!!」
今度は枝を切り離すことも出来なかったようだ。
その一撃は、焼け残った暗黒巨大樹に瞬時にして走り、
暴れ狂っていた触手も枝も枯れ果て、葉は萎んで塵となった。
やはり、閃華裂光拳は強力だな……。
原作後半は
メタを張られた敵が多かったせいで、なかなか使い所がなかったのだが。
肥大化し、40m級に伸びて歪な姿を晒していた森の木々が、
力をなくして元の姿に戻って行き、私とケインとクロコダインが訪れた頃の、
静かな姿に立ち返る。
息をつく暇も無く、背後で強力な気配が膨れ上がった。
「キギロ! そいつから離れるんや!」
ボリクスの焦りを含んだ叫びを聞き、私はそちらを見る。
メネロを抱えたキギロは、彼女から溢れる暗黒闘気の闇に、
呑まれそうになっていた。
「メネロを死なせるわけにはいかない。
大丈夫、この為に……真似をしてみたんだ!」
頭に生えているヒイラギの葉を毟り、そこに魔力ではなく闘気のようなものを纏わせるキギロ。
老師が厳しい顔をしてキギロに声をかける。
「キギロくんそれは……!」
「生命エネルギーを使った
彼の真似をさせてもらいます!」
「命を……賭けるつもりかね?」
「はい。そのために、ここへ来ました……」
老師の言葉にハッとするボリクスだが、
私は彼女の肩に手を置いて首を振る。
止められるものではない……。
キギロの生命エネルギーの籠もったヒイラギが、
暗黒闘気を切り裂き、メネロを助け出すことに成功した。
みなが歓声をあげたが、キギロの表情が芳しくはない。
私は
暗黒闘気を払うことができたが、メネロが限界のようだった。
明らかに衰弱が酷く、このままでは……。
私はとにかくすぐに
「
メネロにはいま、それがない。だから……ボクの命を彼女にあげます」
私は咄嗟に言葉がでなかった。
穏やかな表情をしたキギロが、諭すように私に話をした。
「あなたたちにとっては敵でしょうから、虫の良い事を言ってしまいますが……。
彼女をお願いできますかザボエラさん?」
「この期に及んで拒絶はできんよキギロ殿。
出来る限り彼女の立場を擁護することを約束しようかのう……」
「ありがとうございます、ザボエラさん」
私の言葉にキギロはニッコリと笑った。
泣き出しそうな顔でボリクスがキギロに話しかける。
「そいつ、キギロが命賭けるほどのヤツなんか?」
ボリクスはメネロに対してあまりいい印象がないのだろう。
苦笑しながらキギロは答えた。
「ボクは地底魔城での戦いで、ロカという男に二つ教わってね。
自分より大切なモノがこの世にはあるってこと。
そして……」
キギロの両手に暖かい光が宿った。
優しいその光は、生命エネルギーの光だろう。
「自分の得にならないことに……命をかけるってことさ!」
キギロは生命エネルギーをメネロに移していっている。
そのためか、頭の葉っぱは枯れて落ちてきており、
樹皮も潤いを失って、身体にヒビが入り始めた。
チウがキギロに近づいて声をかけた。
「キギロくん……。ぼくの部隊に入ってもらいたかったのに……」
「ごめんよ。嘘をついてしまうことになってしまったよ。
ああ、そうだ。一つお願いしていいかい?」
キギロは隊員に番号をつけるなら一番をもらいたい、と。
そして、永久欠番にして欲しいなとチウに言った。
チウはそれを聞いて、元気のない声で承諾した。
「ザボエラさん。
ロカに会ったら伝えてもらえませんか?」
「何を伝えれば良いのかね?」
"自分以外のモノのために命を賭けるのは、案外悪くなかった"と……。
最後の生命エネルギーがメネロに注ぎ込まれた。
そうして、ヒビが全身に広がって崩れ去るキギロ。
メネロも姿を保てず、人間の姿は消え去るが、
そこに手の平大の球根が残った……。
グランナードが即席で植木鉢を作り、その場の土を掬って入れて、
丁寧に球根を植えた。
私が一応、
小さな芽がポツリと生えてくる。
回復呪文が効いたということは、
それはつまりメネロの生命力が蘇ったということだ。
……キギロが命を賭けたことは、無駄にはならなかったな。
ボリクスがその植木鉢を持ち、球根に声をかけた。
「キギロの命で助かったんや。
自分、ええヤツにならなあかんでメネロ……」
当然今のメネロは返事のしようがないが、ボリクスの言葉と共に雨が降りだす。
恵みの雨、あるいは安らぎの雨というべきか。
激しい戦いが行われた魔の森を、天からの恵みが癒やしていく。
泣き出した空は、まるでキギロの死を悲しむ涙のように見えた……。
設定
生命エネルギー
闘気の事なのですがこの場合、キギロが参考にしたのはロカが使った武鋒・豪破一刀です。
暗黒闘気を切り裂けたのも、ロカのおかげなので、本作のキギロはとても感謝しています。
独自設定
暗黒樹
人面樹、ウドラーたちの上位種としてドラクエ8に登場。
その後、ほとんど音沙汰がなく、エビルトレントや長老樹に出番を奪われてしまいました。
本作では暗黒闘気を宿した人面樹ということになっています。