ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
暴走していたメネロの力が絶たれ、暗黒巨大樹も打ち倒された今、
魔の森を筆頭にロモスを異常浸食していた木々は落ち着きを取り戻した。
森に覆い尽くされ、飲み込まれようとしていたラインリバー大陸とロモス王国は,
その運命から逃れ、一見すると以前の様相に戻ったようにようである。
ただ、流石に森があれだけ広がり、巨大化した木々が動き回った後だ。
完全に何事もなかったかのように、すぐ元通りとはいかない。
街道などは根によって掘り返され、きちんと整えなければ大量の荷物を運ぶことは難しい。
延びた枝に貫かれ、壁に穴が空いている家屋などもある。
シナナ王は動ける者を動員して、各地の村や町の安否確認をさせていた。
その際、穀物倉庫から物資を運ばせ、数日分の食事を用意する気配りは、
国民を大切にするシナナ王らしい配慮であると言えるだろう。
私は今後のロモスの復興について、シナナ王と会談の場を設けた。
会談に先んじて、私はメタッピーをテランへ送ってある。
必要な物資をテランへ問い合わせれば、手に入るようフォルケン王に、
書状を認めて送っておいたのだ。
誰か
王城を尋ねて貰えれば対応するよう準備を整えたと話す。
私が事前に手回しをしたことを、不思議そうにしていたので、
元よりそのつもりだったので、順を追って説明した。
世界の物流の要だったベンガーナが、陥落したことを知らないのだ。
それをシナナ王に伝えたところ、陽気な彼も深刻な顔をしていた。
別に彼が情報収集を怠っていたわけではない。
王を含めて国民全員が眠っていたのだから、ロモスでは知らない情報だ。
やむを得えない話ではある。
「まさかベンガーナが……。クルテマッカ王がご無事なのはなによりだが……。
そう。フォブスター殿に以前献策した、広く
それこそ使える呪文がそれくらいでもいいので、登用して使者とすることを。
ロモス王国では宮廷魔法使いであるフォブスター殿の元に、十名ほどの
彼らが各所へ飛んで被害状況を調べ上げたという。
「眠らされた際に多少怪我をした者はおるが、大体は無事だそうだ。
さらに、ロモスの穀物倉庫や畑も、大方無事だと確認が取れておる」
「もしも食料が必要な場合は、ロモスを訪問するようテランには伝えておきますぞ」
シナナ王からは重ねて礼を言われた。
お願いしていた伝令で、ネイル村の安否も確認できた。
後日、ロカ殿たちに出会ったら、アリアム殿は無事だと伝えておかねば。
私も怪我人の治療を行い、ロモス城で復興作業を手伝っていた。
フォブスター殿が私を見つけて走ってきて、あとは自分たちでなんとかすると言われる。
「ザボエラ殿をロモスに縛り付けておく事は、人類の損失になります。
一旦、テランなりにお戻りになって、ご自由な采配を振るってください」
「では、お言葉に甘えて退去させて頂きますかな」
フォブスター殿から、戦後に正式に弟子として魔法を学びたいと申し入れられた。
それを受けた上で、メネロの様子をヨミカインへ見に行きたいので、
許可を願いたいと言われる。
短い間だったが、一緒に戦ったキギロの意志を、ちゃんと尊重したいとのことだ。
やはり、フォブスター殿は義理堅い。
勿論、許可して好きなときに来て、メネロの成長を見守って欲しいと言っておいた。
キギロの人を見る目はしっかりしていたのだな……。
我々はフォブスター殿に見送られ、
フォルケン王にロモスでの状況を説明。
もし、フォブスター殿がやってきて知恵を求めたら、
力になって欲しいと伝えた。
クロコダインの様子を見に行くため、チウは竜水晶の待つ竜の神殿へ。
彼を見送った後、次はボリクスがリンガイアへ飛ぶ時が来た。
「ま、バランがおるから負けることはないやろが、ダイがヘマしてないか心配やなぁ」
「ほう。ダイは注意力でも足りぬのかね?」
ボリクスは首を捻ってうーんと言った後、一言付け加えた。
「お子様やねん。
ま、10歳やから、当たり前いうたら当たり前の話やけどな」
「ふむ……。ボリクスも注意して見てやってくれるかのう」
「ラーハルトおるから大丈夫ちゃうか? じゃな、
そう言って手を振りながら、ボリクスはリンガイアへ
ボリクスが去った後、すぐにグランナードがロン・ベルク殿を連れて走ってきた。
「旦那! ロン・ベルクの大将から、話があるそうですぜ」
「ほう。なんじゃろうか……」
「ザボエラ、こいつを見て欲しい」
ロン・ベルク殿が深刻な顔をして、一枚の巻物を広げる。
そこには幾つかの名前が浮かび上がっていた。
しかも、不吉な紫色の文字で。
「ロン・ベルク殿、これは一体……?」
「ベルクの血判状だ。
数年前にベルクスを根絶させた時に、役目を終えて燃え尽き、
無くなったはずだった」
魔界の鍛冶師一族ベルク。
代々、名だたる鍛冶職人を輩出し、無数の魔剣、魔槍etc……を作りあげ、
魔界に送り出してきた有数の鍛冶の技を誇る一族であった。
勿論、ロン・ベルク殿もその一人であり、最後のベルク一族でもある。
「前に伺った際には、既にベルクスの件は片がついたと伺っておりましたが?」
「アバンの頼みで、後で魔峡谷で一仕事したが……」
そう。ベルクスの一振りは打ち直され、
生前の記憶をおぼろげに宿したまま、いまパプニカにある。
血判状を懐にしまいながら、ロン・ベルク殿は記憶を手繰りよせながら話した。
「その大分前に、オレはライゼの剣に出会い引導を渡していたはずだ」
「確かアバン殿の話を伺うと、タイミング的にロン・ベルク殿とはニアミスだったとか」
「そのようだな。良かったのか悪かったのか……。
しかしまあ……ご覧の通りってやつさ」
ベンガーナでグロイサンを見かけた事が気にかかっていたロン・ベルク殿が、
テランへ戻るとベルクの血判状が落ちていたという。
あの日、燃え尽きたはずの血判状が、だ……。
確認してみたところ、消えていたはずの名前が復活してしまっている。
血判状に記載されている名はタークス、テンペスト、ベアーチェ、フーガ、そしてライゼ。
先の言葉の通りなら、ライゼはロン・ベルク殿が自ら手を下した魔剣のはず。
「問題としちゃ、ここに刻まれた文字の色がおかしいということだな。
特殊なインクに、はぐれ武器を出しちまった代々のベルクが、
血を混ぜて記したもので、文字は黒になっていたのをオレが確認している」
「ふむ……文字の色は紫ですな。しかも、淡く発光しております」
「初めての事態でオレもよく分からんが……」
紫というのはこの世界では
私もヨミカイン魔導図書館で知識だけは蓄えたが、
死霊魔術を使う際の魔力の色が紫だったはず。
「オレもパプニカへ行くか?」
「いや……それは暫しお待ちくだされ」
彼のパプニカ参戦はありがたいが、現時点でパプニカは過剰戦力も良いところだ。
アバン殿、ロカ殿、レイラ殿、マトリフ殿のかつての勇者パーティー。
更にマァム、ヒュンケルの若い世代の戦士達。
アポロ、エイミ、マリンの三賢者。
水の精霊オーチェとレオナ姫。
魔法兵団も鍛えられており、小型のキラーマシンも配備され、戦士団も鍛え上げられている。
原作を遙かにしのぐ戦力だ。
そこに私も行く予定なので、できればロン・ベルク殿にはテランを守っていて欲しい。
その旨を説明したところ、血判状を渡されて、よろしく頼むと頭を下げられた。
私は血判状を携え、グレゴリーアとグランナードを伴い、
ヨミカイン魔導図書館へ戻った。
ヨミカインへ帰るとザムザが迎えてくれた。
めざとく私が抱えたメネロの鉢を見かけて、声をかけてくる。
「父上、その鉢植えは一体?」
「うむ。話せば長くなるので、かいつまんで説明するが……」
私はロモスであったことや、キギロの辿った運命。
そして、キギロが命を賭けて守った、メネロを託された事を説明した。
「そうでしたか……分かりました。
どこか日当たりの良い場所を選んで、大切に育てましょう」
「おっと! 任せてくださいよ、ザムザの旦那。
お二人を休ませてやってくださいな」
グランナードが気を利かせて、メネロの鉢を受け取り、竹槍兵に指示を出していた。
ヨミカイン魔導図書館の外は守るから、安心して休んでくれと言われてしまう。
私は彼の配慮に感謝して、みなで魔導図書館へ入った。
我々にお茶を用意してくれて、まず、話さないといけないことがあると、
応接室にある鏡をザムザが指し示した。
グレゴリーアが面白そうに鏡を眺めてザムザに尋ねた。
「こいつは、鏡を使った通信呪文じゃないかい?」
「ガンガディア殿から父上宛の文書です」
「ほぅ……」
以前、ヨミカイン魔導図書館へやってきたときに、
"そうそう。応接室にある鏡は使っていますか?
古のヨミカイン文明の臭いがする逸品です"
と言っていたので、いずれ連絡が来るだろうとは考えていた。
そこにはパプニカでの戦いについての話が記されていた。
キギロの分身体があちらでも朽ち果て、彼が消える前にあらましを聞いたということ。
テムジンが圧倒的な不死騎団という軍勢を手に入れて、
真正面からパプニカを叩き潰そうして失敗を重ねてしまい、
ようやく搦め手を使おうとしていること。
そして、反英霊体を召喚主から切り離す方法について、
彼なりの考察が書かれていた。
「英霊召喚の呪法自体は古からある優れたものだったため、
デスカールはそれを反転させただけである……とありますね」
「なら、通常の英霊召喚の呪法で介入できるんじゃないかい?」
「言ってみればその場に、既に呪法で召喚された英霊がいるわけじゃからな……」
呪文や呪法の専門家が揃っているので話は早い。
「まず、召喚主……この場合はデスカールになりますが、
彼の魔力の遮断から二人を守らねばならないでしょう」
「戦場でやるのは事さね。
もし、ガンガディアとバルトス、その二人の裏切りが確定した瞬間、
デスカールってのが"裏切り者め!"って魔力を絶っちまったらそこまでだろ?」
「そう、そこじゃのう……。
強制的に魔力を絶たれて、反英霊の魂を黄泉の国へ戻されては、
せっかく、ガンガディア殿が手を尽くしているのが無駄になってしまうからのう」
元々の英霊も魔力によって動いている。
かつてのヨミカイン魔導図書館を守護していた英霊たちも、
図書館の最深部にあった巨大な魔法玉から魔力を得ていた。
ロカ殿も同じ手法で英霊になってもらったことがある。
魔力を多く含んだ魔法玉を選び、それを子機とすることで、
ヨミカイン魔導図書館から離れた場所へ行ったこともあった。
「デスカールを倒しちまうのが早いんじゃないかい?」
「それは早いが……その前にガンガディア殿とバルトス殿の、
魔力源を確保しておかねば、二人ともすぐに消えてしまうじゃろうな」
「それから父上。デスカールが使った呪法の魔力がどれほどなのか……。
そこが問題になってくると思われます」
ザムザの言うとおりだ。
キギロの強さを見れば相当なものではあるし、
ヒュンケルから伝え聞いたバルトス殿の圧倒的な強さ。
相対して分かったガンガディア殿の魔力を考慮してみると、
まず彼らを維持するための魔法玉を用意するのに時間が必要になってしまう。
結局の所、強いモノ、多いモノが有利なのは、呪文や呪法の世界でも同様だ。
それを使用した者の魔法力の強さや、魔力の量が重要なのである。
しかし、大量の魔力を高い出力の魔法力で封じ込めるには、
手間暇かけて鍛え上げて磨き上げた、強力な魔法玉が必要になる。
一朝一夕で用意できるものでは、デスカールの呪法に太刀打ちできないだろう。
頭を悩ます私とザムザに対して、グレゴリーアは気楽そうに言った。
「アンタの持ってる
そいつは、そんじょそこらの魔法玉なんざ、比較にならないシロモノだよ」
私は懐のレッドオーブを引っ張り出して眺めた。
軽く魔力を込めてみるが、まるで巨大な湖に小石を投げ込んだような感じだ。
思い切って
「徹夜の作業になるが、お前さんたちの力を借りたいのじゃが?」
「水くさいこと言いっこなしだよ。初めての家族の共同作業になりそうだね」
「父上の力になれるなら、徹夜など苦ではありません!」
私は二人の力を借りて、英霊召喚の呪法を組み上げ、
三人分の魔法力を注ぎ込んで、強力な呪法に仕上げた。
もしも、ガンガディア殿やバルトス殿を、デスカールが始末しようとしたなら、
すぐさま彼の魔法力を遮断して、二人をこちら側へ引き込むことが可能だ。
ただし、二人の目の前へ行かねばならぬ事。
そして、デスカールが自身の反英霊の呪法に干渉して活性化させ、
二人を始末しようとする瞬間を狙わねばならない、なかなかタイミングが厳しいものだ。
グレゴリーアとザムザが寝ているので、私はグランナードに二人を守るよう頼んだ。
「しかし、ザボエラの旦那。もう少し休んじゃどうっすか?」
流石に徹夜は堪えたので、三時間ほど仮眠を取ったが、
あまり悠長にはしていられないのでパプニカへ飛ぶことにした。
「そうもいかぬのでな。
取りあえずこのパプニカ行きが終わったら、丸一日は休みたいところじゃのう」
「そうしてくださいな。旦那はオレたちの要なんですからね。
ケインの兄貴、旦那を頼みましたぜ」
「分かっていますよグラン。
あなたも、ヨミカイン魔導図書館を守ってください」
ケインが私の手に収まり、グランナードにそう答えた。
私はグランナードに手を振り、
独自設定
ベルクの血判状
ロン・ベルクが勇者アバンと獄炎の魔王でライゼに見せた、
ベルクスたちの名前が描かれた巻物です。
代々の名工が己の血で刻んだ名前で、はぐれ武器根絶を目指して、受け継がれたものでした。
ベルクスが破壊されると名前が消え、最後のライゼが砕かれた後、燃え尽きて消え去りました。
ですが、ベルクスが復活する異常事態に、復活してもらうことになりました。
ベルク製の書状なので、そのくらいの事が起ってもおかしくはないかなと。
名前がなかったので血で刻んだということから、物々しい名になりました。