ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
デスカールの掌中にある魔法玉は絶大な魔力を宿していた。
そこから放たれた魔法力はバルトス殿へ飛んだが、
呪法が発動した瞬間がチャンスだ。
予め準備していたレッドオーブに籠めた呪法で介入する。
バルトス殿とガンガディア殿の支配権、並びに魔力の供給先を、
私に変更するべく魔法力を叩きつける。
デスカールの魔法玉に宿った反英霊召喚の呪法は、
まるで荒れ狂う大海そのものが敵であるかのようだ。
膨大な魔力に圧倒されそうになりつつ、
呪法の核へ私の魔法力を貫き通すため全力を注ぐ。
しかし、魔力の量も絶大なものであるが、呪法そのものの強度が凄まじく、
デスカールの魔法力は大魔王一歩手前くらいの強さがあると感じた。
人物の好悪はともかくとして、デスカールは魔法使いとして、
掛け値無しで一流の実力を持っていることが分かる。
魔法力は極めて強く、反英霊の呪法に費やされた魔力の量は、
私とザムザ、グレゴリーア、そしてマトリフ殿の四人の魔力を若干超えるほどだ……。
流石に多すぎるので、もしかすると大人数で行った集団儀式による呪法だろうか。
古代には生け贄を用いたそういった儀式も存在したらしいが……。
私は極大呪文を十連射したような魔力消費と、
デスカールの呪法を弾く事に成功した。
途中で魔法力の解放も行ったが、周囲に誰もいなくてよかった。
離れていたことが功を奏したが、地面がえぐれてすり鉢状になっている。
しかし、成功はしたが……魔力を七割以上消費してしまったぞ……。
荒い息と共に、デスカールの方を確認する。
鈍い"ビシッ"という音がした直後、デスカールの手にした魔法玉がひび割れた。
よしと思った瞬間、力が抜けてしまって膝をついてしまう。
ケインが心配げに声をかけてきた。
「
「す……少し休ませて貰う……。
大分、疲労したが……成功したようじゃ……」
「おめでとうございます、
あとはお任せ下さい。
砕け散り、地面に破片をまき散らす魔法玉。
呆然とそれを見ていたデスカールは、怒りの声を上げた。
「どういうことだこれは!」
よし、成功した。
私はガンガディア殿を見た。
彼も手の平に
こちらを見てしっかりと頷いてくれる。
マトリフ殿がバルトス殿の前に
デスカールの前に杖を構えて、バルトス殿を下がらせ、ヒュンケルの方へ行くように諭す。
「バルトスさんよ。ここはオレに任せてくれねぇか?
あんたは、ヒュンケルの方を見てやってくれ」
「かたじけない……ここはお任せする!」
一礼したバルトス殿は、ヒュンケルのいる方へ走っていく。
人の悪い笑顔を見せながら、マトリフ殿がデスカールに語り始めた。
「反英霊の呪法ねぇ。英霊召喚ってのが神々の作り出した呪法だろうから、
そいつをこの短期間に改良して、あれだけ強い連中を三体呼び出すのは大した手並みだ」
「それは……どういう意味だ? 賞賛しているわけではあるまい」
そして口笛を吹きながら私の方を見る。
マトリフ殿の言葉を継いで、私はデスカールに話し始める。
「デスカール殿。あなたの呪法に干渉させて頂いた。
既に彼ら二人には私から魔力が供給されている。
あなたから二人への支配は断ち切らせて頂いた!」
「そのような事が可能だというのか……。
……聞いていないぞ……」
いま、デスカールが気になることを言ったが、
眼鏡を光らせて言葉を紡いだ。
「この短期間にやって頂けるとは……。実に憧れる!!」
その瞬間、
デスカールは紐のようなもので、
その間にボーンファイターやコンキスタグールが割り込み、
デスカールを守ろうとする動きを取っている。
離れた場所にいるバルトス殿は、ヒュンケルと肩を並べ、
アバン殿、マァムと一緒に不死騎団と戦っていた。
「笑止な! 愚か者たちは自分の行動に自信があるようだが……。
この私が何の対策もしていないと思っているのか?」
高らかに指を鳴らすデスカール。
デスカールの足元に砕け散った魔法玉が、真っ黒な煙を出しながら、
もくもくと立ち上がりそれが一つの形を取った。
身体の半分に黒い鉱物が張り付いた、凶スカルゴンが姿を現す。
「呪法がなんらかの形で破られた場合、発動して裏切り者を処分する死刑執行人よ!」
ガンガディア殿に闇色のブレスを放つが、マトリフ殿が
「いやはや。お前さんと共闘する日がくるとはな?」
「私としては嬉しい限りですよ、大魔道士」
そうして、凶スカルゴンに
私は呪法の維持に集中力を使っているので、見ていることしかできない
近づいてくる死霊の騎士などはケインが攻撃して、
私に近寄らせないようにしていくれている。
凶スカルゴンは反撃を食らったガンガディア殿を無視して、
逆の方向にいるバルトス殿にも闇のブレスを放った。
バルトス殿は剣圧で、ヒュンケルは海破斬でブレスを切り裂く。
マトリフ殿の背後にいたガンガディア殿が、眼鏡を直しながらこう言った。
「助けて頂いてばかりでは面目も立ちません。少しはお役に立ちましょう」
「ほう、どうするってんだ?」
光の矢として凶スカルゴンに放つガンガディア殿。
凶スカルゴンはブレスを吐くが、それを消滅させながら進む
ブレスを吐いていた頭の辺りから、胸骨までを綺麗に消滅させられ、
残った部分がそのまま崩れ落ち、灰となっていく凶スカルゴン。
口笛を吹いたマトリフ殿がガンガディア殿に声をかける。
「ヒュッー! お見事。オレの弟子たちじゃまだできねぇんだよあれ」
「ほう、弟子を取られたのですかマトリフ」
頭をボリボリと掻きながら、マトリフ殿は返事をした。
「まぁな。地底魔城の闘技場で会った時、お前さんが出来なかったのはアレだ。
魔王軍の運営、ハドラーの解呪、指揮などと忙しすぎたってこったな。
いやはや、大したもんだぜ」
そう手放しで評価されて、ガンガディア殿は嬉しそうにしていた。
「昔から……あなたに評価されると最高に嬉しいモノです」
ガンガディア殿は軽く上を見ながら、噛みしめるようにそう口にした。
その間にバルトス殿とヒュンケル、ケインたちの奮戦により、
死霊の騎士、コンキスタグール、ボーンクラッシャーなど、
デスカールが連れてきたアンデッドたちは片付いた。
思案するようにこちらを見ているデスカール。
闘魔傀儡掌を使えるのは知っているが、滅砕陣を使える可能性もある。
こちらには空の技の使い手がいるから安心ではあるが……。
様子を見るためか、ガンガディア殿がデスカールに声をかける。
「ここまでですなデスカール様……いや、デスカール
「年貢の納め時ってやつだぜ、なあオイ?」
不死騎団の精鋭を倒しながら、デスカールの側へ近づくアバン殿とマァム。
みながデスカールに注意を払っており、ガンガディア殿とマトリフ殿は、
呪文を手に宿して、油断なくデスカールを見据えている。
「……ここまでか……」
そう言ったデスカールは慌てていたり、焦っている風ではない。
何か細い物を手に持っているように見えるが……。
「ふっふっふ……では、奥の手を切らせて貰おうかなあ」
声が変わった……?
ガンガディア殿、マトリフ殿も気づいて慎重にデスカールを睨み付けるが、
変化は別の場所で起こった。
「いかんヒュンケル、逃げろ!」
背後からバルトス殿の鋭い声が響き、私はそちらを見た。
ヒュンケルを襲った槍の一撃をバルトス殿が防ぐが、
バルトス殿を背後から大剣が襲う光景を目の当たりにする。
腰を切断されて、地面に転げ落ちるバルトス殿。
それを見たヒュンケルが激高して叫ぶ。
「父さん! 貴様、許さん!」
ヒュンケルが大地斬を放つが、その大剣の男は片手でそれをなぎ払う。
「軽いな。 魔重奥義……
「なに……!?」
その大剣の男の地面が重さに耐えかねたように、すり鉢状に凹んだと思ったら、
凄まじい斬撃の威力でヒュンケルが百mは吹っ飛ばされてしまう。
アバン殿が
"あれはまさか……魔重剣のスイグン……"と。
私はマトリフ殿に注意を喚起しようと思ったところ、細い鞭のような剣を持った剣士と、
手甲のような爪を持った巨漢と戦っており、既にマトリフ殿を庇ったのか、
ガンガディア殿が封印されてしまっていた。
話だけは聞いていたが、魔妖剣のテンペストの使う千年夜曲というやつか……!
大きい方は……爪のついた手甲を装備している事から魔甲のベアーチェだろう。
私は懐に入れていたベルクスの血判状を引っ張り出すと、
血判状の文字が濃い光を放っているのが確認できた。
すると、デスカールだと思っていた男が、ガゼルの仮面を骨の肉体につけていた。
先ほどまでの紫色のローブを脱ぎ捨てて、いつの間にか貴族的な服に身を包んでいる。
デスカールだった男の側に、槍を持ち鳥の仮面をつけ、羽根飾りを服につけた男が。
ガンガディア殿を封印した、鞭のように細長い剣を持った狐面の人物が。
ヒュンケルを吹き飛ばした大剣を携えた大柄なスケルトンが。
ゆったりとした服に身を包んだ手甲をつけた、かなり大柄なアンデッドが並び立った。
「初めましてかな? 勇者アバンとヒュンケル以外は初めまして、だろうなあ。
そうか。先ほどまでは死霊の騎士やがいこつのように普通の茶色の服や、
緑の服を着ていたので見分けがつかなかったのか。
明らかに逸脱して大きい者もいるが、流石に戦闘中に見極めるのは難しい。
「
不測の事態が発生した場合、正体を明かして敵を殲滅することが許されているんだよ」
そのタークスの言葉で、武器を構えるベルクスたち。
私は迂闊に動けないし、マトリフ殿も封印されたガンガディア殿の側を離れられない。
千年夜曲の強度がどのくらいか分からないが、
もしもガンガディア殿が戦いの余波で破壊されたら大変な事になるだろう。
アバン殿は治療したヒュンケルを、腰から切断されたバルトス殿の側に置いて、
「彼らベルクスとは因縁があります。ザボエラさんはマトリフに合流してください。
ヒュンケルとバルトスさんの方を、見守っていただけると助かります」
「分かりました。アバン殿はどうなさるのです?」
「ガンガディアが施された千年夜曲の解き方は知っています。
それに、ベルクスに邪魔をされるのは二度目です。
彼らにこれ以上の暗躍は……」
強い怒りの表情を宿し、眼鏡をしまうアバン殿。
「一切、許してはおけない」
ガイアの剣を構えたアバン殿は、私が初めて見る表情だった。
いつも穏やかに笑い、ロカ殿の死とヒュンケルとの別離に落ち込み、
そこから立ち直ってきた彼の姿ではない。
取り乱してはいないが、良くない状況だ。
アバン殿の本質は、たぐいまれなる知恵と、それを裏打ちする教養さ。
そして、広い視野を持ち、柔軟で臨機応変に思考する知性だと言えるだろう。
怒りで心が頑なになってしまっては、アバン殿の良さが生かされない。
何か彼の心を解きほぐす言葉をかけてあげられれば……。
私がそう考えている時、
ロカ殿とレイラ殿が走ってきて、アバン殿の傍らに合流してくれたのだ。
少し遅れてマァムもそこに並ぶ。
私の表情から察したのか、アバン殿を見たロカ殿が、
彼の肩をバンバンと叩く。
そして、アバン殿の肩を掴んで、真っ向から目を見て声をかけた。
「アバン、そんな
「……え……。ロカ、いつ来たんです?」
「まったく、周りが見えなくなってんじゃないか。オレたちもお前と一緒に戦う。
お前はいつもみたいにやりゃいいんだ、なあ親友!」
「……そんなに酷い顔をしてましたか……」
"こーんなだったぞ"と目をつり上げているロカ殿。
それに釣られて、レイラ殿もマァムも笑ってしまう。
ふむ、やはり彼はパーティーに欠くべからざるムードメーカーだな。
「ロン・ベルク殿に仕上げて頂いた、私たちの武具をお見せします。
アバン様は、ベルクスとお一人で厳しい戦いを繰り広げられたとか……」
「今度はオレたちもいる。
お前を一人で戦わせやしねぇぞ、アバン!!」
レイラ殿が夫の言葉に深く頷き、マァムが嬉しそうに笑った。
私は
アバン殿たちに合流するように促した。
「いや、だが、オレはこいつを守ってやらなきゃ……」
「良いですかマトリフ殿。遠慮している場合ですか?
ワシは勇者と仲間たちが揃うところが見たいのですよ」
「……ったく……ハハ……おめぇさんはよぉ……」
私が冗談めかして言うと、マトリフ殿は苦笑いして了承してくれた。
ガンガディア殿を
私はバルトス殿とヒュンケルの側に移動した。
「ご無事ですかなバルトス殿?」
「油断しました。ただの死霊の騎士だと思っておりまして……」
「いま、魔力を注いで修復して、接合します。
ですが、すぐには動かないでくだされ」
「分かりました。私よりはヒュンケルを守ってくだされ」
ヒュンケルは身体の傷は塞がっている。
どちらかというと、精神的な疲労もあって、眠りについているのではないだろうか。
私はバルトス殿の切断された腰を接合しながら、マトリフ殿が合流した勇者パーティーを眺めた。
ロカ殿になにか言われながら、照れた様子で
私は目に焼き付けるように見た。
そう。
私は大嫌いだったのだ。
"その後…………この四人が同時に顔を揃えることはもう二度となかった……"
という原作の一節が。
「ケイン。恐らくはあの場にいるのは最強のパーティーじゃ」
「良い光景でございますね。
私は呪法を維持しながら、何かあれば手助けできるよう彼らを見た。
「「
手にした剛剣がロカ殿にまとわりつき、カール騎士団の鎧に似た形の、
ロン・ベルク殿が作った武具、鎧の剛剣となった。
両手持ちの大剣であり、ロカ殿の戦闘スタイルに合わせ、
殴れるように手甲が強固に作られていて、鎧も硬く強い。
彼の剛力を生かせる作りになっている。
レイラ殿の武具は魔甲剣。
キラーピアスを下地にして打ち直し、二刀の短剣と鎧で構成されている。
動きやすさを阻害しないよう、防御性能は若干低くはあるが、
それをカバーするために
マトリフ殿がかつて苦戦した
呪文を反射する暗黒のマントを参考に作ったモノだ。
私とマトリフ殿が魔力を籠めたので、我々の魔法力を上回らない限り、
ほとんどの呪文を反射できる
勿論、両方ともロン・ベルク殿が作った鎧の魔剣や魔槍同様、
呪文を防ぐ特性を有しているのは言うまでもない。
勇者アバン、戦士ロカ、僧侶レイラ、魔法使いマトリフ。
そして、
危機ではあるが、この状況で安心感を覚える姿である。
私が感慨深く彼らを見ていると、その余韻を邪魔するように、
軽蔑したような小馬鹿にしたような拍手が響く。
勿論、それはタークスであり、若干苛立ちを含んだ声で、
アバン殿たちに声をかけた。
「
そのパーティーごと粉砕してやろう。我らが新生ベルクスが!」
タークスの言葉を受け走り出すはぐれ武器たち。
ベルクスと勇者アバンパーティーの戦いの火蓋が切られた……。
独自設定
魔重奥義
魔重剣スイグンの奥義。
生前は自分自身の重さを二倍にして威力を増大させ、更に自身の強度をも上げる技でした。
現在では二十倍の重さであり、その一撃が発する威力はヒュンケルを吹っ飛ばしました。
ヒュンケルの大地斬をものともせず振り払ったのはこのおかげです。
鎧の豪剣
ロン・ベルク作の鎧の~シリーズ最新作。
娘のマァムの防具が羨ましかったので、ロン・ベルクに頼み込んだものです。
守備力が非常に高く、攻撃を受けるスタイルのロカに相応しい武具です。
鎧のシリーズと同様、デイン系以外の呪文なら弾く効果があります。
守備力の高さ故にかなり重いのですが、
剛力のロカは難なく扱ってロン・ベルクを驚かせています。
【挿絵表示】
魔甲剣
キラーピアスを打ち直して、女性用の鎧の~シリーズのアーマーもつけた武具。
軽量なため若干防御力が他の鎧の~シリーズより劣りますが、
白いマントはマトリフがかつて苦しめられた、
幽霊騎士団のフューレが持っていた暗黒のマントを参考にした光明のマントです。
ザボエラとマトリフが魔力を込めて、ロン・ベルクが
この二人を超える魔法力でなければ破壊されること無く呪文を反射できます。
【挿絵表示】