ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
原作で何度も見た
だが違うのは超魔生物ハドラーがダイを倒して帰還した時、
大魔王が素顔を見せたバルコニーがない。
"今日の余の心は晴れやかだ……あの雲間からさしこめる太陽のように……"
あの時はそう語ったが、いまの大魔王の心境はそうではないのだろう。
入り口の両開きの大扉も含めて、
他の部屋への出口が一切存在しない。
あまり機嫌が良くないのではないだろうか?
そう思い、大魔王の精神世界に訪れた事を一瞬後悔する。
だが、来てしまった以上、一定の成果を持ち帰りたいものだ。
私は腹をくくることにして、ルビス様に声をかけた。
「話しかけてみますか、ルビス様?」
「そうですね、お願いします。
私は面識ありませんから、紹介して貰えませんかザボエラ」
そう言われたので、さてルビス様をどう紹介するべきか考えていた。
外見からして明らかに人間ではないから、まず説明から入るべきだろうか?
などと考えていると、私の前にキラーアーマーたちが出現した。
思わずルビス様の前に立ち、魔法力を集中して一歩前に立つ。
この感じだと呪文が使えるなという手応えを得た。
私の中に出来たグレゴリーアの呪いの世界との差異について気になるが、
それは後で考えるとして眼前のキラーアーマーに集中する。
しかし、攻撃をしてくるわけでもなく、我々を包囲する形を保っていた。
いつでも戦闘に移れるように身構えていたが、ルビス様が私の肩に手を置く。
驚いているようだったが、キラーアーマーたちを観察してこう言った。
「待ってくださいザボエラ。
これは、大魔王の見ている夢の光景では? 恐らく最近体験したことかしら……」
「彼の実体験が我々に見えている、ということですかな?」
「はい。私たちへの敵意はありません。
そして、この光景には、玉座で身じろぎもしない、
大魔王と同質の気配を感じます」
夢か……と一瞬安心したが、かなりリアルな立体映像のようなもので、
目前で
もちろん、大魔王視点なので彼自身は映らない。
離れた場所にいるデスカールが、キラーアーマーやシュバルツシュルトなど、
魔影軍団のよろい系モンスターに命令を下している。
更に背後に巨大な石の壁がそびえ立っているが、
恐らくは鬼岩城の足だろう。
大魔王視点で、向こう側に鬼岩城が存在していると言うことは……。
デスカールが鬼岩城を手中に収めているのは確定だな。
となると、リンガイアへ増援として来たよろい系モンスターは、
デスカールがヴェルザーへ送った援軍ということになる。
魔影軍団が超竜軍団に合流して、リンガイアを攻めに来た訳ではなかったか……。
魔王軍の不可解な動きについて、裏側を知ることができた。
危険を冒してこちらへ来た甲斐があったようだな。
そう考えていると大魔王が
対面のデスカールは紫色の障壁で直撃した
いまだにデスカールの使う、あの力の詳細が掴めないな。
何かヒントのようなものが分かれば良いが……。
戦いの推移を見ていたら、とうとう、
大魔王の放つカイザーフェニックスまで消し去っていた。
一体、どういう力なのだこれは?
戦いは佳境へと至り、大魔王が凍れる時間の秘法を解除した。
原作であれほど慎重だったバーンが、切り札を切ったのだ。
これは、ガンガディア殿が言っていた、皆既日食についての情報を、
大魔王も知っていたということだろうな。
そう考えながら、周囲の光景に意識を戻した。
真・大魔王バーンとなり、破竹の勢いでキラーアーマーや、
シュバルツシュルトをまとめて大量に蹴散らし、デスカールも両断した。
やはり、圧倒的な力だと思ったが、そこへヴェルザーが奇襲を仕掛けてくる。
天地魔闘で迎え撃ったが、三撃全てに対応して、
大魔王に食らいつき、飲み込むとは……。
魔界で戦った時も尋常な強さでは無かったが、
現時点でも最強クラスの力だなヴェルザーは。
そのヴェルザーの体内をカラミティエンドで切り裂き、
叡智と魔法力の老バーンが、若さと強さの肉体を置いて、
脱出した過程が見えた。
何の呪文を使ったか分からないが、真・大魔王バーンの肉体に、
何らかの呪文をかけているのは理解できた。
その後は恐らく本人が意識を失ったのだろう。
そこで映像が止まってしまった。
大魔王の戦いを見たルビス様が、驚愕に目を見開いている。
「ザボエラ。あの、ザボエラ?」
「はい、なんでしょうかな、ルビス様」
「この人、その、かなり強くないですか?」
「強いですな。
あの若い肉体に戻った後、どう戦えばよいか分からぬほどです」
しかし、真大魔王バーンの肉体で、そのまま脱出できなかったものなのか?
気になってルビス様に聞いてみたところ、
流石は神格だけあって、私とは違う見え方をしていたようだ。
既にヴェルザーに真大魔王バーンの肉体が飲み込まれており、
脱出は不可能な状態のようだった。
つまり、叡智と魔法力の老バーン体だけ、
ヴェルザーの体内から逃がしたのは、あの状況では最善手だったようである。
そういえば、破壊神シドーを取り込んだヴェルザーだ。
大魔王バーンすら、飲み込めるのかもしれない。
そうなると、そのまま強さが加算されるのか分からないが、
ヴェルザーはどれほどの力を得るのだろうか……?
だが、大魔王視点でも腕を切り飛ばされ、
ヴェルザーは大ダメージを受けているように見えた。
私としては重傷故に力の制御に失敗して自滅するか、
弱体化してくれると嬉しいのだが、世の中そんなに甘くはないだろう。
魔界で戦った破壊神を取り込んだ四本腕のヴェルザーは強かった。
そこにさらに真・大魔王バーンを取り込んだヴェルザーは、
どれほどのものになるのだろうか……。
単純な足し算とはいかないだろうが、あの時より強くなっていたら、
正直、どう対処すれば良いか分からないほどではある。
そのように私が考えている時、低い声が響いた。
「……ザボエラか。そなたを呼んだ覚えはないが……」
玉座から大魔王の声がした。
心なしか不機嫌な気がする声音である。
私は敵意がないことを示すためにゆっくり向き直り、
彼に対して一礼した。
「これは失礼致しました、大魔王殿。
眠っておられるようなので、声をかけませなんだ」
「ふむ、そうか……。
ところで、そちらの
「この世界の方ではありません。こちらは精霊ルビス。
人間の神の残留思念に呼ばれ、現在、この世界に来ておられる神です」
「……残留思念……? むぅ……そうか。
神は死んでいた、のか……」
複雑な思いがあるのか、無念そうな残念そうな重い口調だ。
がっかりしたような大魔王に対して、
ルビス様が軽く頭を下げて話し始めた。
「初めまして大魔王バーン。
私のことはルビスとでも呼んでください」
「こうして直接会うのは初めてだが、実は知っておる。
そなたはアレフガルドにて、ゾーマめに石にされていた神であろう?」
「え、し、知ってるんですか……しかも知られたくない事を……」
「結果としてそなたは、上手くやったように見えたがな……。
さて、ザボエラ、そしてルビスよ。余の記憶を見たな、そなたたちは?」
怒るわけでもなく、確認するために淡々と呟く大魔王。
偽りようもないので私は正直に答えた。
「失礼ながら、何が起ったのかは拝見いたしました」
「そうか。余は久方ぶりに敗北した。
何千年ぶりであろうか……。だが、またやり直せば良い。
数千年以上前には何度もやり直していたのだ」
思わずどこかの掲示板で見かけた、ポジティブハートという言葉が頭をよぎる。
それは表に出さないとしても、この折れない心こそ彼の最大の強みなのだろう。
私は状況の確認の為に、大魔王に話しかけた。
「デスカールとヴェルザーの両名が結託。
その後に大魔王殿を罠にはめた。経緯としてはそれでよろしいですかな?」
「そうだ。いまさら取り繕っても意味もなかろうな。
まんまと、してやられたわ」
少し機嫌が悪くなってしまったか……。
話題を少し変えて反応を見てみよう。
「しかし、生きている内に、魔界でも
若き日の大魔王殿の姿を拝めるとは思いませんでしたぞ」
原作でもなかった彼の異名だが、
大魔王ならこういった婉曲的な表現を好むだろう。
グレゴリーアに聞いた、大魔王バーンが太古に呼ばれた異名の一つである。
相当に古いもので、長らく呼ばれたことがない異名であろう。
つまり、
隠喩を含めたわけだが通じるか……。
「古い呼び名だ。だが、現存する魔族でそれを知る者はおらぬだろう。
よく調べ上げたものだな」
「歴史は重要ですからな。
現在起きている事象は、紐解けば既に歴史の中にあります。
過去を識ることで、未来を識る灯火とすることも適いますゆえ」
「余はそう呼ばれた時に、ならば名実ともに魔界の神となってやろう……。
そう考えたのだ」
何か遠い過去を眺めるような眼差しで、大魔王はそう言った。
声から怒気が消えてきているので、機嫌が少し良くなったようではある。
「パプニカ四賢者の称号を得たと言うが、まさしく賢者よな」
「過分なお言葉痛み入ります」
「ところで、賢者ザボエラよ。そなたの慧眼には、どのように映った?
余の
どのようなものだと捉えたか?」
あの力……つまり、さきほど見せられた、真・大魔王バーンの力か……。
実はその問答をする想定は何度もしている。
私は正解を知っているからそのまま言ってもよいのだが、
それを知っている事はおかしいので、キルバーンの名を借りるとするか。
「数年前、ヨミカイン魔導図書館へ、キルバーンが攻めてきたことがありましてな」
「ふむ。キルがそなたに返り討ちにあった際のことだな?」
「私を罠にはめて、よほど気分が良かったのでしょう。
色々と語ってくれたので、幾つか聞き出しましたぞ。
凍れる時間の秘法、ミストバーン殿……の事など」
凍れる時間の秘法の下りで、眉がピクリと動いたことを確認した。
「凍れる時間の秘法は、アバン殿から仔細を聞いております。
極めて難易度の高い呪法であり、最高クラスの魔法力を必要とした。
故に自分は失敗してしまった、と……」
「発動させただけでも人間とは思えぬ。
並の使い手であれば魔法力がその水準に達しておらず、
発動すらせず、その存在すら疑問視しておったであろうからな……」
「故にあれを自在に使いこなせるのは、大魔王殿お一人ではありませぬかな?」
「ふっふっふ……。で、その凍れる時間の秘法を如何にする?」
採点されている気分だ。
いや、実際にそうなのだろうが……。
「大魔王殿は若き日の肉体を呪法で分離し、普段はいまのお姿。
つまり、平時は凍れる時間の秘法で、若さの肉体を保存されたのでは?」
「ほう。だが、凍れる時間の秘法で時を止めた肉体は動かせまい?」
「そこで、あなたの腹心たるミストバーン殿の登場です」
何故かルビス様が身を乗り出して、"え、それでそれで?"と聞いているが、
取りあえず大魔王と対面して話し合っているので、バーンに対して話をしている。
ミストバーンの名を口にした瞬間、大魔王の表情が軽く動いた。
「ふむ……続けよ」
「ミストバーン殿の本体は、暗黒闘気生命体ですかな?
あの存在であれば、平時は凍れる時間の秘法を施された、
大魔王殿の肉体を動かせましょう」
大魔王は真剣な顔で私を見て、感心したように苦笑して拍手した。
「見事だザボエラ。
実際に過程を見た上でだが、余の秘密を解き明かすとはな」
「いえ……キルバーンから色々と聞けたことが功を奏しました。
私の独力では届きますまい」
「それで、だ。ザボエラよ」
大魔王が玉座で人差し指を立てて言葉を続けた。
「いままで、余の肉体の秘密を知る者は全て始末してきた。
現存して知る者は、余の他にはミストバーン、それにマキシマム。
後は二名の裏切り者か? そして、そこにそなたらが加わった……」
後ろでルビス様が顔を青くしている。
もしかすると、始末するという話に移行すると考えているのかな?
だが、明確にそう言っているということは、別の話に転がっていきそうではある。
「そなたが余の腹心になるのであれば、許そうではないか?」
「さて、それはお断りしたはずでございます」
「ふふっ……頑なよな。やはり、部下に欲しいところよ」
さて、切り出すならこのタイミングだな。
「大魔王殿。私は停戦を提案いたします」
「停戦……だと? 余たちとは戦わぬと言うのか?」
「既に大魔王殿が掲げていた、
最初の構想は潰えたのではないかと推察いたします」
「なぜそうと言えるのだザボエラよ」
声に若干怒気が含まれ、私の後ろのルビス様がヒエッと言っているのが聞こえた。
「百獣魔団、妖魔士団、不死騎団が瓦解しております。
魔影軍団は軍団を作り出す鬼岩城をデスカールが占拠。
超竜軍団は裏切り者であるヴェルザーの麾下。
氷炎魔団は無事でしょうが、つまり現在自由に動かせるのは二個軍団のみ」
「六大軍団がすでに二個……であるか。
不愉快ではあるが事実だ」
「ここまでで異論がありましたら伺いますが?」
「続けよ。そなたの意見を聞きたい」
私は一礼して話を続けた。
「ガンガディア殿やヒュンケルから聞いております。
大魔王殿の当初の大望は、地上を侵略した後に、
天界や他の世界へ挑む最強の軍団を欲してのことと」
「ほう……。知っておったか」
「現状の二個軍団では、最強の軍団とはなりますまい。
半減以下の軍勢で、他の世界の強豪と覇を競うなどと言えますかな?」
沈黙して考えている大魔王バーン。
いま、魔王軍の本拠地を攻めれば、戦力的には勝てないこともないかもしれない。
だが、
あれを爆破されたら……死の大地を中心に地上世界に巨大な穴が開くことになるだろう。
それにミスト、マキシマム、ハドラー、フレイザード、ダブルドーラと猛者はまだ沢山居るのだ。
大魔王バーン自身も、老バーンでも最強クラスの存在ではある。
「状況が苦しいのは認めざるを得ぬ。
だが、いままで余が掲げてきた流儀を捨てるのは、変節漢のそしりを受けよう……」
立ち上がり玉座から降りる大魔王。
「やはり余に語りたくば、力を以て納得させてみせよ」
「言葉を尽くすという方向ではゆきませぬか?」
「まずは力だ。力で余にそなたの言葉を押し通すのだ。
この空間、精神世界であるが故に格闘戦はできぬが……
魔法戦は可能」
大魔王が火の粉のような
それが飛んで行き離れた場所で巨大な火柱を上げた。
格闘戦ができない? それは好都合だ。
呪文だけでの戦いであれば……勝機はあるかもしれない。
慌てたルビス様が言い募ってくる。
「ザボエラ、逃げましょう。ここは彼の精神世界です。
敗北した場合、あなたは命を落とす可能性もありますよ!」
「お待ちくださいルビス様。賭ける価値があるやもしれませぬ。
大魔王殿、一つお願いがあります」
「ふむ、聞き届けるかは別だが、言ってみるが良い」
私はルビス様の身の安全を頼んでみた。
「ふふっ……自分ではなく神の身の安全を願うのか。
まぁ、良かろう。今のところそちらの神を害するつもりはない」
ルビス様の周囲に透明な障壁が生じた。
「余の攻撃は効かなくなる。それで十分ではないか?」
「お聞き入れいただきありがとうございます」
私と大魔王は謁見の間の中央まで歩いて行く。
概ね5mほど距離を取って、そこで止まった。
「そなたほどの魔法使い相手だ。全力で行かぬのは失礼というもの」
「手加減いただけるなら、私としては嬉しいのですが……」
「ふっ……戯言をほざきよるな。
ルビスよ。そなたがこの戦いの口火を切るがよい」
"え!?"と自分を指さして言うルビス様。
「お願い致しますルビス様」
「わ、わかりました……。では、始めッ!!」
意外に思い切りが良いと思ったら、大魔王は両手に魔法力を集めており、
手を合わせて前に突き出していた。
あれはまさか大魔王が
「受けてみるがよい。
この大魔王バーンの
私の脳裏に浮かんだのは一つの呪文だった。
独自設定
あれだけ強かった人物ならそう謳われていてもおかしくはないかなと。
剣神ドラゴンクエストを思い出しながら考えた異名です。
バーンが大魔王を名乗り、魔界の神と称して以降、
名乗っていないでしょうから、近年は知っている人はいません。
マキシマムに教えた古代拳闘を使っていた頃です。