ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
と言いたいところですが、一週間お休みをいただいて、
再来週から更新を再開します。
キラーマシンが盛大な音を立てて吹っ飛ぶ。
勿論、殴り倒したのはクロコダインだ。
しかし、キラーマシンは四本もの脚があるせいだろうか、
10mほど吹っ飛ばされただけで踏ん張り、体勢を立て直す。
「待たせたな二人とも。
戦士団のバダックと共に、周辺の者達を逃がすのに手いっぱいでな!
戻ってくるのが遅れてしまった!!」
キラーマシンを見据えながらこちらに声をかけてくるクロコダイン。
事前にボリクスに頼み、レオナ姫に手紙を渡してもらった後、
クロコダインとパプニカ戦士団の力を借りる事にしたのだ。
私が見せしめの為に引き連れて行かれるだろうと予測したので、
どこへ連れていかれるかは尾行してくれれば知れるだろう。
その上で、連れていかれた建物の周囲の人間を、
クロコダインとバダックの力を借りて避難させて欲しいと頼んだのだ。
テムジンはキラーマシンを保有しているのは確かだ。
もっとも、動かせるのは先の話の可能性があるが、
テムジンの戦力を過小評価してミスをする愚は避けたい。
いまキラーマシンが動かせるとしたら、住人がいる市街地で戦えば犠牲者が出る。
それではデルポイ殿は浮かばれまい。
そう思って頼んでいたが、
クロコダインとバダックは思った以上に上手くやってくれたようだ。
そのように状況を確認していたら、キラーマシンから無数の何かが射出された。
あれは、魔法の筒か……?
キラーマシンに搭乗したバロンが、勝ち誇った声で叫んだ。
「キラーマシンだけだと思ったか低能どもめ!! デルパァ!!!」
ばら撒かれた無数の魔法の筒から、まず大サソリが十体ほど出てきた。
中には鈍い鉄色を剣呑に光らせる鉄のサソリもいる。これは危険だ。
レオポルト王とレオナ姫は退避させた方がいいだろう。
「周辺住民の避難は完了しております。王よ、この場はお任せ下され。
あなた方に何かあっては、敵の思うつぼにございます」
「ザボエラ殿。騒ぎが収まったら、貴公にはきちんと報いたい」
「陛下、それに姫も早くお逃げください!!」
魔法兵の者達が声をかけ、二人はこの場から離れていった。
私はクロコダインにキラーマシンは呪文を弾く特性を持っていると話すと、
こともなげにクロコダインはこう私に返答した。
「大サソリを頼む。あのデカブツはオレだけで十分だ」
「うちも行くで。
「ほぅ……そうか。任せたぞボリクス!」
早速
雷系呪文はある程度ダメージが通るようだ。
それを見やって走り出すクロコダイン。
大サソリが他の場所へいかないよう、
パプニカ戦士団が大サソリの前に立ちはだかり戦闘を開始している。
私は大サソリの尾を
戦士団に指示をだす年長の人物がいた。
恐らくは彼がバダックだろう。
本編より若いが、髪型と特徴的なヒゲで彼だと分かりやすい。
「バダック殿か。大サソリはハサミも危険じゃが、尾に毒がある。
刺されたらすぐに声をかけて欲しい。ワシなら
「おお! 貴殿がザボエラ殿か。クロコダインから話は聞いておるよ!!
なに、我らパプニカ戦士団。誇りの在り処を確認したからな。もはや敗北などない!!」
そう言って走り出していく。
私は彼を追いながら、
鉄のサソリは
戦士団は三人で連携を組んで、大サソリを相手に見事な戦いを見せてくれる。
後でクロコダインに聞いた話だが、一昨日の酒の席でこんな話し合いがあったらしい。
パプニカではやはり魔法兵が花形であり、魔王ハドラーとの大戦中も、
勇者パーティーの戦士ロカを援護し、共に戦った事で存在感が大きくなっていった。
その際、怪我をしていたバダックは戦えず、戦士団は出来る事もなかったので、
肩身が狭い思いをしてしまった事を、クロコダインに愚痴っていたのだ。
そこで翌日から訓練に付き合っていたが、個々の力がそこそこなのに、
部隊としてまったく連携を取ろうとしてないことをクロコダインが指摘した。
いっそ、三人で一人を攻撃してはどうか、と。
それに対してバダックは怒り、我々にも誇りがあると吐き捨てた。
「なあ、バダックよ。誇りの置き所を間違えては駄目だ。
オレは一介の戦士。誇りはオレと共にあればいい。
その価値はオレが知り、己自身をオレが裏切らなければいい。
だが、お前たちは国の戦士団だ。その誇りは何と共にあるべきだと思う?」
クロコダインはいっそ、穏やかに諭すように語ったという。
パプニカ戦士団の者達は、水を打ったような静けさで聞き入った。
バダックは怒りを収め、ひとたび瞑目して答えた。
「我々の誇りはパプニカと共にあるべきだ。
国の為に戦うなら、パプニカと国民を守る事を第一に考え、
自分たちのこだわりやプライドを捨てる事を、誇りにするべきだろう」
嬉しそうなクロコダインは腕を組み、静かに頷いたという。
槍を持った戦士が牽制している間に、後方に回った戦士が尾を斬り落とす。
そこへ別の戦士が大サソリの関節に斧を叩きこみ、鋭利なハサミを切断する。
そうやって、見事な連携を見せる戦士団によって、
大サソリは一匹ずつだが、確実に倒されていっている。
私は毒を受けた戦士を
私達が大サソリと戦っている間に、
クロコダインとボリクスがキラーマシンと戦っている。
巨大なクロスボウを時折射出してくるキラーマシンだが、
戦士団に当たらぬよう真空の斧で風のバリアーを作り防ぐクロコダイン。
果敢に
キラーマシン本体には、確かに呪文は効果が薄いのかもしれない。
だが、持っている武器は? ボリクスはそこに気づいたらしい。
ボリクスが
キラーマシンのクロスボウと矢を
クロコダインに後は任せたと言わんばかりにサムズアップし、
そのまま鉄のサソリに苦戦している戦士団の援護に向かう。
後は、クロコダインとキラーマシンの一騎打ちだ。
大きさと単純なパワーを叩きつけてくるキラーマシンの攻撃を、
真空の斧で余裕をもって捌くクロコダイン。
キラーマシンの攻撃はごくごく単調だ。
尋常ではないパワーと巨大さゆえに、普通は太刀打ちできないと考えてしまう。
だがそれは、対抗できるパワーを持ち、磨き抜かれた武を修めた男の前では児戯に等しい。
真空の斧が跳ね上がり、甲高い音を立てて巨大な剣がテムジン邸に突き刺さる。
武器を失ったキラーマシンは右拳で殴りつけてきたが、
真空の斧を石畳に突き刺したクロコダインに両手で掴まれる。
クロコダインが両腕でキラーマシンの右腕を掴み、捻り上げ腕をもぎ取り地面に叩きつける。
放り投げなかったのは、パプニカ戦士団への配慮か。
たたらを踏んで後ろに下がるキラーマシンにタックルを仕掛ける。
バランスを崩して後ろに倒れるキラーマシンを見据え、右腕に力を込めるクロコダイン。
「ぬううううううん!! 行くぞ……獣王痛恨撃!!」
闘気流がキラーマシンをズタズタに破壊し、最早ピクリとも動かない。
鉄のサソリを片付けてきたボリクスがすかさず
ボリクスが搭乗席で気を失っているバロンを引っ張り出すと、
パプニカ戦士団の者達が彼を捕縛した。
クロコダインは戦士団の歓呼の声で迎えられ、左手を掲げると歓声が更に大きくなった。
そのクロコダインに近寄るバダックが彼に声をかけた。
「凄まじい技だな、クロコダインよ!」
「全ては大サソリを引き受け、キラーマシンに専念させてくれたお前たちの功績だ」
「まったく謙虚だのう、お前さんは。
しかし、獣王痛恨撃とは物騒でいかんな。
お前さんは英雄なのだから会心撃と改名してはどうかな?」
「ワッハッハッハ! そいつはいいな!」
なにやらクロコダインの技名が変わる瞬間に立ち会ってしまったようだ。
しかし、上手くいってくれたから良かったものの、
こんな各々のファインプレーに頼るやり方は、あまりしたくないものだな。
数日後、パプニカ王から正式に式典を開いて、礼をしたいとの打診があった。
だが、目立つことを避けたいという気持ちもあるし、
キラーマシンで壊された街の復興にも国費がかかるだろうからと辞退。
キラーマシンを倒した英雄としての賞賛は必要ないのか?
とクロコダインに対して訪ねた使者へ彼はこう告げた。
「あの戦いの最大の勲功は、周辺住民を円滑に避難させたパプニカ戦士団にある。
一人の戦士としての誇りを捨て、戦士団として国を守る事を第一とし、
己が誇りと成した彼らにこそ勲功は相応しいだろう」
ただただ、パプニカ戦士団の活躍が嬉しいとばかりに話した。
使者はその言葉に感銘を受け、陛下には貴殿の意志をお話ししよう、
そう返事をして丁寧に礼をして城へ戻って行った。
後日、パプニカ戦士団は天晴見事と称賛され、国内での評価もあがったようだ。
式典辞退は理解したが、礼くらいさせて欲しいと王家より再度打診があった。
丁度いいのでボリクスに何着か、法術の服を仕立ててもらう事にしたのだ。
更にもしもの場合、優先的に服をいつでも用立てるという約束もしてくれた。
レオポルト王も娘の友人の為なら、この程度はお安い御用だと言ってくれる。
パプニカへ来た目的は、満点で達成されたのだが、
私にとってはデルポイ殿の死という、苦い教訓を残すこととなった……。
明くる日、レオナ姫と一緒に王妃の眠る墓へ来た。
無論、ボリクスもついてきている。
あの時、デルポイ殿と四人で来たこの墓所に、
今回は三人で来ている……。
パプニカの海が広く見渡せて、相変わらず美しい場所だ。
私は調合した解毒薬を撒く。土にしみ込んだ毒は消えるだろう。
人を害するほどではないが、供えた花が枯れるのは忍びない。
私とボリクスは花を供え、手を合わせる。
その後、レオナ姫が手を合わせていたのだが、震え出し嗚咽を漏らした。
ボリクスが駆け寄ろうとするが、私が肩に手をやり首を横に振る。
一人になりたい時間であろうと思ったからだ。
「お母さまごめんなさい……テムジンを頼りになると勘違いして……!」
初めて……レオナ姫の目から涙がこぼれ落ちた。
「ずっと、お母様の仇だったのに……仇を前に……あたしは何もできなかった……!!
早く、早く大人になりたい。世界の全ての理不尽を叩きのめせるくらいに……!!」
絞り出すような告白と共に、あふれ出す涙が止まらないレオナ姫。
私はその時、悟った。
この聡明な少女は、ずっと母の死で泣けなかったのだろう、と。
すべてが明らかになった時、それを明らかにしたのは異邦人である我々だった。
母の仇に対して、自分の力が足りなかったことに対して、無念の思いが尽きないのだろう……。
ひとしきり泣いたレオナ姫の隣にボリクスが並び、慰めるでもなく黙って拳を突き出した。
あれは、最初に会った時、意気投合した二人の挨拶だ。
レオナ姫は真っ赤に泣きはらした顔で、そのボリクスの拳を見据える。
四歳の女児とは思えない体重の乗った拳を、ボリクスの拳に合わせた。
二人はニカッと笑い、その後は疲れ果てるまで笑い続けた。
私は心の中でデルポイ殿に語り掛ける。
貴殿が守り、付き従っていた姫は、よい資質を持っていますぞ……!
天空から見守って下され……と。
独自設定
テムジンの陰謀
ダイ爆発!!!の際にテムジンが口にした、
"レオナ姫さえ死んでしまえば
後継者を失ったパプニカ王国の実権はわしのもの……。"
というのがずっと気になっていました。
この言葉はつまり、
後継者を失って自失した王を傀儡にすることは容易い=王はテムジンへ全幅の信頼を寄せている
という事だと解釈しました。
客観的に見て一臣下の専横ですが、
テムジンを止められるライバルはいないということです。
本編に情報が明らかになっている範囲で見ると、
この時の三賢者はアポロ(20)マリン(20)エイミ(18)の若輩。
王がいても後継者(レオナ)が死ねば(テムジンが)実権を握れるという事は、
重臣で自分に反対するような人物は政治的に、
もしくは実際に始末してるのだろうと解釈しました。
彼の最終目的は? 王を傀儡にして終わりなのか?
いずれ王を廃して、テムジンが王になる?
どちらもしっくりこなかったのですが、
2020年から始まったダイ大の再アニメを見て納得しました。
実はアニメで見直すまでただの大臣だと思っていたのですが、
この人、"司教"だったんですよね。
古の儀式を王に直言して再開できるほど、権限をもった宗教家。
となるとこの人の目的は……。
宗教的な最高権威に就いてパプニカを支配することか?
そう妄想を膨らませた結果がこうなりました。