ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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第十七話 レオポルト王との会談

テムジンの引き起こした騒動から一週間経ち、ようやくデルポイ殿が埋葬される。

遺体は氷結呪文(ヒャド)で凍結されていたので、腐敗が進行してはいない。

粛々と埋葬が行われ、レオナ姫を筆頭にアポロもボリクスもボロボロ泣いている。

 

今回の出来事は反省する部分が多い。

よほど私自身が焦っていたのだと自覚する部分なのだが、竜の(ドラゴン)騎士の血を飲ませれば、

デルポイ殿を蘇生できた可能性があった事を気づかなかった点についてだ。

テムジンの件で頭が一杯だったせいか、何故思いつかなかったのかと自責の念が湧いてしまう。

ダイは無理だったが、バランのような純粋の竜の(ドラゴン)騎士はそういった力があったのだ。

やや、特殊な存在ではあるが、ボリクスにも可能だったかもしれない。

 

しかし、いま思いついたからと言って、

葬儀を中断してすぐにそれを試せるかというと難しいだろう。

まず、デルポイ殿の死後、一週間は経過してしまっている。

作中ではポップ、ラーハルト、ガルダンディー、ボラホーンがバランの血を飲んでいた。

 

血の摂取自体はポップは戦闘直後であるし、

竜騎衆の面々も戦闘後すぐにバランが立ち戻り、血を飲まされているだろう。

蘇生したのは四名中、ポップとラーハルトの二名のみ。

確率で言えば熟練の僧侶が使った蘇生呪文(ザオラル)クラスの蘇生率だ。

 

ドラゴンクエストに限らずあらゆるファンタジーで、蘇生というのは死後すぐ行わないと、

成功難易度が格段に上昇してしまう事が多いのだ。

そう考えると、一週間の時間経過は、

成功確率を著しく下げてしまっている事だろう。

 

なにより血を飲ませるという絵面がよろしくない。

仮に蘇生確率があるという事で、血を飲ませる事の了承がとれたとしよう。

蘇生に成功すればよいのだが、蘇生しなかった場合は、

死者への冒涜と取られてしまうだろう。

 

もし、成功したら成功したで問題がある。

死者を蘇生できるボリクスが信仰対象になってしまう可能性があるのだ。

更に蘇生薬としてボリクスの血を要求されてしまうだろう。

無論、私と彼女ならその要求があったとしても拒絶する力はあるのだが……。

 

この世界には蘇生呪文が存在するが、成功率はとても低い。

調べた範囲では、蘇生呪文(ザオリク)の使い手はこの百年現れていないらしい。

身分が高い人物の不慮の死の際、蘇生呪文(ザオラル)の使い手が蘇生を試すのがもっぱらということだ。

ドラクエと言えば世界樹の葉だが、あるという話を聞いたことはない。

そうなると、蘇生呪文が不慮の死を遂げた者への唯一の対策である。

 

もし竜の(ドラゴン)騎士の血という蘇生手段が増えれば、

それを知った為政者は血眼になるだろう。

無論、竜の血の蘇生率も100%というわけではないが……。

だとしても、寿命ではない不慮の死に際して、蘇生の手段が多いに越したことはないだろう。

 

嫌な話だが、もしも誰かが死んでしまう事が今後あるとしたら、

秘密を守れることを条件にして、ボリクスの力を借りる必要があるかもしれない。

ボリクス自身に竜の騎士の血に秘められた蘇生の力について、

いつ説明するのかというタイミングは難しいと言わざるを得ないのだが。

 

葬列を眺めているようで、実は自分の思考に没頭している私に、

太陽の三賢者に内定した、デルポイ殿の甥であるパルナス殿が話しかけてくる。

デルポイ殿の甥ではあるが、末の弟の息子らしく、30代前半の長身の男性だ。

がっしりした体格ではあるが、素朴な顔立ちの為か威圧感はほとんどない。

賢者としてはバランス型で、攻防に対応できる器用さがあるが、

本人曰く器用貧乏で特筆するべき所が無いとは言っていた。

 

 

「陛下が非公式の会談を望んでおられるのですが、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「構いませぬよ。では、ボリクスに一声かけてまいりましょうかのう」

 

「ボリクス殿は姫がお茶に招かれましたので、ご案じめされませぬよう。

お茶の後は宿にお送りする手はずを整えてございます」

 

 

なるほど。なかなかに如才ない人物だな彼は。

クロコダインはパプニカ戦士団と一緒に、街の者達に招かれて食事を振舞われているはずだ。

なんでも、街を救った英雄に感謝したいという話だったか。

避難させられたテムジンの私邸周辺の民衆が、彼に感謝しているという事だったな。

……このまま、草の根の英雄になってしまうのではないだろうかクロコダインは……。

 

そんな事を思いつつ、パルナス殿と馬車に揺られレオポルト王の庭園へ向かっている。

薔薇を育てるのが趣味で、そのために一つ館を用意したという。

もっぱら、息抜きと密談のために利用しているらしいが……。

 

レオポルト王はあまり人柄が分からないのだが、危険性はないと判断してもいいだろう。

危険な人物であったら、自国の重臣が起こした内乱に近い話を隠蔽する為に、

私達を始末しようと画策するはずだろうが、そんな素振りはまったくないのだ。

しかし、一体、私に何の用があるのだろうか?

特に心当たりがないのだが。

 

 

招かれたレオポルト王の庭園は実に美しかった。

華美にならないよう落ち着いた手入れがなされた薔薇園は、

レオポルト王の人柄を感じさせるところがあって心が休まる。

いま頂いているお茶も、銘柄が分からないが馥郁たる香りがした。

実に美味い紅茶なので、帰りに銘柄を伺っておきたい。

そんな事を考えていると、王がパルナス殿以外の者を人払いする。

 

 

「ボリクス殿はレオナと仲良くしてくれているようだ。

あの子は気難しい所があってな。友達ができたのは嬉しい事だ」

 

「失礼がないか恐縮しております」

 

「間近で拝見したが、見事な武術の腕だ。

クロコダイン殿の指導のたまものであろうか?」

 

「ワシは武術はとんとダメでしてな。

祖父の贔屓目を差し引いても、ボリクスは優れた才を持っております。

おっと、孫自慢な老爺(ろうや)の戯言とご一笑くださいませ」

 

「フッ……いや、気持ちは分かる。

才多き娘がいると、お互い苦労するものだ」

 

 

パルナス殿にレオポルト王が合図すると、

丁寧に丸められた文書が運ばれてくる。

王は受け取った文書をテーブルに広げて置いた。

 

 

「これは、亡くなったデルポイが調べ上げてくれた故事に関する書類だ。

古の儀式の一つでロモス王国の南にあるデルムリン島、

──魔物が多い事からモンスター島と呼ばれているのだが──

そこで開かれていた地の神への神事だ。それについて書かれている」

 

 

ダイ爆発!!!の際のデルムリン島へ訪れるきっかけの話だな。

あの時はテムジンが立案して同行したが、

依頼を受ければ我々が代わりに行くことになるわけか。

 

 

「古い儀式の一つで、この40年ほど行われていなかったのだ。

ザボエラ殿たちの信義に厚い心根を見込んで、

レオナに同行して儀式を見届けていただけないだろうか?」

 

「ワシらにその儀式の付き添いを依頼されるというわけですな」

 

「貴殿がフォルケン王の信頼厚い人物であることは分かっている。

だが、それ以上に、貴殿自身もそうだが、

クロコダイン殿やボリクス殿の実力は目を見張るモノがあるのだ」

 

 

ふむ。付き添いというが、これは護衛の依頼だな。

あと、レオナ姫を国から遠ざける意味としては、恐らくだが……。

 

 

「もし、フォルケン王から何か命を受けているなら、

私が王へ貴殿の力を借りる旨、一筆認めてもよいがどうか?」

 

「ご案じめされますな陛下。今回の旅は比較的緩やかな旅程でございますれば。

ところで、この急なお話はテムジン派の摘発で、血生臭い事になりますかな?」

 

 

パルナス殿が露骨に狼狽えてしまい、

穏やかな笑みを浮かべていたレオポルト王の表情が引き締まる。

やはりそういうことか……。

 

 

「ザボエラ殿は知恵者だな。言葉にする前に先んじて推察されたか……。

テムジンは長い間、国家の重責を担っていたからな。

その勢力の浸透は予想以上であった」

 

「現在も調査を続けているのですが、重要な職責に就いている者はほぼ押さえました。

さすがに、国外の勢力は手が出ない現状ではありますが……」

 

 

そのようにパルナス殿が説明する。

しかし、国外にまで協力者がいたのは予想外だったな。

 

 

「全てはデルポイ殿の拓いた道でございます。

彼の遺志を無駄にせぬためにも、厳しい道ですが進むほかございません」

 

「そうだな。まったく、ザボエラ殿の言葉の通りだ。

しかし、魔王ハドラーとの戦いの最中でなくて良かったと胸をなでおろすべきだな」

 

「ヴィオホルン山に対して、常に緊張を持って接しておりました。

ハドラー配下のモンスターが襲撃してくる度に、

叔父のデルポイにすがりつくアポロを預かるのが私の役目でして……」

 

 

そのレオポルト王とパルナス殿の会話に私はハッとした。

ダイ爆発!!!のテムジン一派逮捕の直後に、

大魔王バーンの魔王軍による世界各国への侵攻が始まる。

 

重臣であるテムジン勢力の後始末をしていて国内が混乱している最中に、

不死騎団の攻撃にあってしまったためのパプニカ陥落だったのだろうか?

軍団の規模が違うとは言っても、同じホルキア大陸内に魔王ハドラーの拠点がありながら、

長い年月戦い続けたパプニカにしては、あっけないと思っていたのだが……。

 

もっとも、不死騎団を率いていたヒュンケルは、

呪文を弾く鎧の魔剣をまとった戦士だ。

賢者の国であり、呪文を主戦力にするパプニカに対して、

まるでメタのような存在ではある。

 

 

「……ところで、レオナの素質はあなたにはどう映るかなザボエラ殿」

 

「聡明で芯の強い姫君でございますな。長じればよき女王となりましょう」

 

 

急な質問だったが、正直なところを話した。

嘘偽りのない私のレオナ姫に対する印象ではある。

レオポルト王はため息をつく。私の返答を予想していたようだ。

 

 

「よくそう言われるのだ。だが、まだあの子は幼い。

人は必ず大人になる。しかし、子供の時間は短い……。

もう少し、あの子を子供の時間で遊ばせてやりたい。愚かな親心と思うか?」

 

「いえ、当然のお気持ちでしょうな。

おっと、お返事がまだでございましたか。

陛下、デルムリン島への同行の件、お引き受けいたします」

 

「感謝するザボエラ殿! そう言っていただけると助かる」

 

「随員は姫のお世話回りと、魔法兵から精鋭数名でよろしいのでしょうか?」

 

 

パルナス殿が口を挟む。

だが、精鋭は王の方で必要だろうから、魔法兵は信頼できる人物をと言っておいた。

 

 

「貴殿の厚情にすがる形になって申し訳ないザボエラ殿。

それでは、パルナス。例のものを」

 

「はっ……ザボエラ殿こちらをご覧ください」

 

 

デルムリン島行きを了承し、話が進んだからか別の古文書が出てきた。

所々が欠けている、呪文契約の魔法陣のように見える。

 

 

「ほう、これは……!?」

 

「これはデルポイが発見した古文書だ。

見ての通り、欠けが多くて意味をなさぬのだがな……。

この契約魔法陣の原本がデルムリン島にあるらしい。

そこには地系の知られざる呪文が刻まれた石板があるというのだ」

 

「なんと、地系の呪文でございますか」

 

 

恐らくは地爆呪文(ジバリア)系の呪文だ。

ドラゴンクエストシリーズで地属性の呪文で、思い浮かぶのはその系統くらいではある。

呪文発動と共に任意の場所に魔法陣を描く。

それから一定の時間経過によって、

大地を隆起・爆発させ、敵を攻撃する呪文である。

まさか、ダイ大世界にも存在したとは。

 

 

「貴殿はあまり金銭による報酬を好まれぬようだからな。

もし、呪文契約の魔法陣を発見したなら、最初に契約する事を我が名において許可する。

できれば、帰りの道中で呪文を解析していただけると助かるのだが。

それについても、貴殿の望む物を報酬として用意させていただく」

 

 

なるほど。先だって、式典を固辞した事などをそう解釈されたわけか。

私は金品には興味が無く、知識や呪文関係の方に好奇心が向いている、と。

悪い勘違いではないのでその方向で考えて頂こう。

実際、地爆呪文(ジバリア)系は色々な使い方が出来そうで助かる。

魔法耐性を貫くことができる特性があれば、有効な使い道があるだろうな。

 

 

「……デルムリン島まで5日の旅程になります。

デルムリン島の魔物は多様ですが、温厚だという情報もありまして……」

 

「ワシもそのように聞き及んでおりますな」

 

 

パルナス殿のデルムリン島に対しての説明を聞きながら考える。

しかし、意外と早くダイと接触する事になりそうだ。

現在のダイは2歳だろうから、交渉を持つにも修行をするにも時期尚早だろうな。

 

現状できることはブラス老にキメラの翼を渡しておいて、

なにかダイに危機が迫ったらヨミカイン魔導図書館へ逃げて貰う事くらいか……。

下手に紋章の力を覚醒させて、2歳児が竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を発散していては、

ブラス老の手に負えないだろうし、バランが変に感づいてしまう可能性もある。

 

一度訪れれば、瞬間移動呪文(ルーラ)で再訪する事もできるのだ。

本題は次回以降にするべきだろうな。

あくまでレオナ姫の儀式を優先して、ブラス老との顔つなぎと考えるべきか。

 

 

その後、レオポルト王、パルナス殿と細かい部分について詰めて、

すっかり夜になってしまっていた。

宿に戻りボリクスとクロコダインに話をしたが、

話を先に決めてしまった事に対して、文句も言わずに楽しみだと言ってくれている。

クロコダインは避難させた住民たちが、

彼を招いて感謝のパーティーを開いてくれたと話してくれた。

まるで英雄のように扱われてしまって恐縮したらしい。

 

サプライズがあるから黙っているが、実はパプニカに戻ってきた時、

クロコダインには王家とパプニカ戦士団から贈り物があるということだ。

しかしまさか、キラーマシンのボディの金属が、かの青鍛鋼(ブルーメタル)だったとは。

呪文への耐性もそうだが、もしもロトの鎧にあった回復効果があれば、

クロコダインにとっても、非常に有用な装備になるだろう。

 

確か青鍛鋼(ブルーメタル)はドラクエビルダーズで、青い鉱脈に眠っていたはずだが……。

いずれ、それについても調べてみるか。

こんなに長い逗留になるとは思っていなかったが宿の主人は、

パプニカから色々言われているのか、かなり丁寧な対応をしてくれる。

 

クロコダインを誘いに来るバダック殿とパプニカ戦士団。

私に用事があってやってくるパルナス殿。

一人でボリクスを訪ねに来て、側仕えの者に怒られているレオナ姫。

毎日、様々な出来事があるためか、退屈せず予定の日になった。

 

用意されたパプニカの王家の船に乗って、レオナ姫と共に我々はデルムリン島へ向かう。

 

 

 

 





ヴィオホルン山……魔王ハドラーの居城、地底魔城が存在する休火山。
火山をくり抜いて作られた城なので火口以外に出入り口が存在しない。
勇者アバンと獄炎の魔王で山名が判明。


独自設定
太陽の三賢者パルナス……原作のアポロのプロフィールにいた養父になります。

キラーマシン……ブルーメタルはこの世界だと特に明言されてはいないのですが、
あの呪文をきっちり弾く金属としての存在感とキラーマシンに使用されているとなると、
やはりブルーメタルなのかという感じになりました。
モンスター物語を参考に漢字をあてると青鍛鋼(ブルーメタル)になります。



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