ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
まず、現状を確かめるために手近な村や町へ行って、
自分自身で話を聞いて情報を集めてみる事にした。
そこで問題になるのは魔族という種族である。
もしも、ハドラーが世界征服をするべく侵攻している時期だったら、
ハドラー自身が魔族であり人類からは目の仇にされているだろう。
ハドラーの侵攻前であったとしても、
非情に高い戦闘力を誇り、高い魔法力を擁する魔族は警戒されてしまう。
ただ、私には一つ、解決策に宛があった。
幸いな事に原作でザボエラは
それで問題を解決する事にした。
人間の旅の商人や占い師、魔法使いなどに化けて、
町や村に赴き、人々の話に耳を傾けてみる。
数日間、噂を聞き情報を集めたので、
身を隠せる場所を探す。
少し考える時間を得るために、人気のない洞窟を探して
街で買ってきた保存食や、出店で買ってきたものを食べながら、
集めた情報を元にこの世界の状況について考えてみる。
運が良い事に、三番目に行った街で祭りが開かれており、
"魔王退治五周年祭"という垂れ幕があった。
ダイの大冒険本編は、勇者アバンが魔王ハドラーを倒してから、
15年の月日が経った後の話だ。
つまり、現在がダイの大冒険の本編開始から、
10年前の時間軸だという事なのである。
幾つか噂を仕入れたが眉唾な話も多かった。
勇者アバンは自分の後継者を育てているとか、
世界中を回って復興を助けている。
はたまたカール騎士団の団長に就任したと、
真偽不明なものもあった。
しかし、分からないことが多すぎるので、
信じる信じないはともかく、判断材料が多い事は助かる。
得た情報を元にして、状況について考察してみよう。
ダイの大冒険、本編開始から10年前。
主人公のダイは、2歳か……。
とても中途半端な時間だ。
ザボエラ……この体の年齢が880歳だと確定したが、
890歳と880歳にどれほどの差があるか分からない。
それはともかく、ここまでに起きてしまっている原作の事件は、
アルキード王国の暴走で妻を殺され、バランが既に人間に絶望してしまっていること。
ダイは既にデルムリン島でブラス老に拾われていること。
ヒュンケルがアバン先生に叛逆し、ミストバーンの下で暗黒闘気の修行をしている頃だろうか。
パッと思い浮かぶ起きてしまった事件はこの辺りになるな。
さて、私がどう行動するべきか考える時が来たか……。
本来なら元の世界に帰る方法を考えるべきだろう。
だが、私が知っている範囲では、個人が使える呪文で世界を超えるような事は、
ドラゴンクエストシリーズでは不可能であったはずだ。
不死鳥ラーミアでも捕まえられれば可能だろうが。
それにいまはダイの大冒険本編開始から10年前。
魔軍司令ハドラー率いる魔王軍の進軍が迫っているのだ。
悠長な事をしている時間がない。
まず、これからの行動方針を決定しなければならないだろう。
選択肢の一つとして原作通りハドラーからの勧誘を受け、
妖魔司教ザボエラとして魔王軍六大団長の一人となり、
大魔王バーンの臣下として生きていくルートだ。
私にはダイの大冒険を読んだ知識がある。
ダイたちパーティーの行動を先読みして、完全に封殺して勝利する事も可能だろう。
だが、大魔王バーンの治世には不安がある。
第一に彼は、地上を吹き飛ばしてしまう事を最終目的にしているのだ。
行ったことはないが、不毛な大地の魔界で暮らしたいとは思わない。
第二に大魔王バーンの器量である。
彼に有能な部下、もしくは自分に匹敵する力を有した部下を、
重く用い続ける事ができるのだろうかということだ。
私自身、原作を読んでいる時は器の大きなラスボスだと賞賛したが、
実際に彼を上司という視点で考えると厳しい所があると思う。
良い例がハドラーだ。
彼は魔軍司令就任から失態を重ね、大魔王バーンの信用を失った。
だが、後半、彼は一皮むけた武人となって、かつての魔王時代の覇気を取り戻したのだ。
ところが、バーンはそんな彼に
死んだハドラーを暗黒闘気で復活させていた、
大魔王の腹心であるミストバーンが知らなかったのだ。
アバンに敗れて肉体を復活した直後には、
埋め込まれていたのではないだろうか。
つまり、最初からハドラーは、バーンに信頼されてなかったのだ。
仮にバーンが勝利して、ダイ達を排除し地上を吹き飛ばし、天界を制覇したとする。
その後、大魔王バーンは有能な部下を、きちんと厚遇する事ができるのか?
知らぬ間にハドラーのように、
ハドラーの勧誘は蹴るべきだ。
大魔王バーン陣営には参加できようはずもない。
ならばダイ達の仲間となって、原作通り話を進めていくのが良いのか?
仲間になるのはいいが、パーティーに入るのは駄目だ。
たとえば、ロモス上陸時点のダイたちに、
ザボエラが仲間になってしまうのは、彼らの成長を阻害してしまう。
一歩引いた協力者。それがベストポジションだろう。
あと、原作終了時の世界各国の被害が酷すぎる。
今後もこの世界で暮らしていくのなら、原作通りに魔王軍に世界が破壊されては、
戦後復興だけで相当な時間がかかるし、生活が厳しい事になる。
私自身の為にも、被害を減らす努力も行いたい。
ダイたちの味方をして大魔王バーンを退ける。
その後、ある程度世界が落ち着いてから、
元の世界へ戻る方法を考えてみる事にしよう。
なんならマトリフやアバンのような頭の切れる人物と仲良くなり、
彼らの力を借りて帰還方法を探ってもいいだろう。
世界が落ち着いたころなら幾らでも時間がある。
その時点で考えても遅くはない。
……その時に帰りたいと思うのなら、だが。
まず、ダイたちの協力者になる前に、
ザボエラ自身の力を増しておくことも必要だ。
絶大な妖魔力で一目置かれた男だったはず。
妖魔力という言葉は後半出てこなかった謎の言葉なのだが……。
恐らくは魔法力の事ではないだろうか。
若き日のアバン先生が登場する、勇者アバンと獄炎の魔王でも、
ハドラーに自分に次ぐ魔法力だと評価されている。
だが、本人自身の戦力として考えると、弱くはないが決め手に欠ける。
それが私から見たザボエラの評価だ。
なにせこの男、極大呪文を一つも使えないのだから。
追い詰められた場合、ダイの大冒険の世界は弱いと何もできない。
どこか……呪文を学べる場を探さねばならないだろう。
マトリフを探して師事……は難しそうだ。
年代的にパプニカの重臣に虐められてしまい、
パプニカの宮廷を辞し、隠棲している頃だろう。
一番、人嫌いになっている時代のはず。
初対面の魔族が信用されるか怪しい所だ。
それに、マトリフに問答無用で戦いを挑まれた場合、
ザボエラの能力を把握していない今、容易く敗北するだろう。
そう考えると、私が出来る事は、現状のザボエラが、
どんな呪文を所有しているか把握する事。
そして、それを上手く私が使えるかを調べる事だろう。
ネットで読んだ転生だの憑依だのの小説だと、
もっと簡単に能力を把握したり、ステータスを見れたものだが、
そんなことはまったくないのでハードモードなのかもしれない……。
そう考えてやや憂鬱になってしまった。