ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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第二十話 パプニカを去る一行と巡る旅の軌跡

空が薄暗くなっていたが王宮へ赴くと、パルナス殿に出会えた。

同行しているマトリフ殿に驚くが、王との面会を望むと例の私邸へ案内される。

急な面会に対して応じてくれた王に、

事情を説明してマトリフ殿がパプニカに戻る意志を伝えた。

話を聞きながらレオポルト王は何度も頷き、

マトリフ殿を去らせなければならなかった己の不明を恥じぬ日はなかったと語った。

 

 

「そこでだ、レオポルト王。いや、陛下。

オレの肩書について相談なんだが……」

 

「宮廷付き大魔道士というのを提案したのですが、よろしいですかのう陛下」

 

「相談役と言う既成の枠に、あなたを当てはめようとしたのが間違いだったな。

パルナス、それで問題はないだろうか?」

 

「正直な所、人が足りませんから否という者はおらんでしょうな」

 

 

表情に疲労感漂うパルナス殿が、レオポルト王にそう応じる。

満足げに頷く王から、一つの提案があった。

 

 

「ところで、私から提案があるのだが、聞いてもらえるだろうか」

 

 

レオポルト王は、マトリフ殿が戻りやすい方法を提案してくれた。

主命で一旦パプニカを離れていただけで、戻ってきたという体裁を整えてくれるという。

だが、それを聞いたマトリフ殿は首を縦に振らなかった。

 

 

「いや、そこは改めて陛下に忠誠を誓うさ。その上で、宮廷付き大魔道士に叙してくれ。

あと、禁止していた魔法兵団の連中との模擬試合をしてやりてぇ」

 

「そうか。模擬試合は構わないが、どういう意図からだマトリフ」

 

「オレは強い魔法使いって触れ込みだったが、相談役に任じられちまっただろ。

そのせいで、魔法兵団に魔法の実力がわからねぇって不満溜まってたよな?

もっと、砕けた言い方をすれば、誰が一番強いか決めた方がすっきりするんじゃねえか」

 

「マトリフと魔法兵団は仲が悪かったからな。あれは私の不徳とするところだ」

 

 

なるほど。勇者パーティー最強の魔法使いという話でやってきたマトリフ殿が、

相談役と言う役職に就いたせいで、魔法の力を見せる場がなかった。

そのせいで、直に実力を見ていない魔法兵団に、不満が溜まってしまっていたのか。

 

待てよ。わざと魔法使いの実力を見せられない地位に就任させて、

実力を疑問視する魔法兵団との間に亀裂を生じさせたのでは?

まさかとは思うが……。聞いてみるか。

 

「そのマトリフ殿を相談役に据えるという人事は、テムジンが進言したものですかな?」

 

「……そうだが……? まさか……そこまで考えてあの男は……!」

 

「ははーん、そういうことか。その頃から毒を撒いてやがったわけか、あんにゃろー」

 

「ど、どういうことですかな。私にも分かるように言っていただけませんか?」

 

 

物分かりがいい人間が集まると、当事者以外には分かりづらくなってしまう。

狼狽えるパルナス殿に対して、私が説明を始める。

テムジンが魔法兵団とマトリフ殿が親密になる事を邪魔したのだろう、と。

少し考えれば分かるが、勇者パーティーの実力者たる魔法使いがやってきたのだ。

魔法兵団は教えを請うたり、呪文の腕比べでもすれば仲が良くなった事だろう。

 

それをさせずに王だけの相談役にして、魔法使いとしての実力を見せぬようにした。

魔法兵団としては、自分たちには実力を見せるつもりもないのか、

偉そうな態度を取ってふんぞり返っているくせに、と見えてしまう。

自然、"相談役"マトリフと、魔法兵団の間に感情的な亀裂が深まる。

 

つまり、最初から相談役と言う要職に就けた事自体が罠だ。

マトリフ殿が内部から嫌われるよう仕向け、彼の立場を少しずつ狭めて行ったという事か。

恐ろしい政治的センスだ、テムジン。

……どれだけパプニカに災いをもたらしていたんだ。

 

説明を聞いて理解し、動揺してしまっているパルナス殿に、

マトリフ殿がお茶でも飲んで落ち着けと呆れている。

驚きは隠せないが動揺はしておらず、王は紅茶を飲んでため息をつく。

 

 

「いやはや、ザボエラ殿は知恵者だな。それこそ貴殿を相談役に招きたいところだ。

役立つ知恵を色々と出してくれそうだからな」

 

「過分なお言葉恐れ入りますな」

 

「陛下。話があるんだが、人払いを頼めねぇか?」

 

 

私を見ながらマトリフ殿がそう切り出した。

道中で幾つか話をしたのだが、それについてだろう。

 

 

「内密の話かな? パルナス、護衛の者を下がらせるのだ」

 

「ハッ……畏まりました」

 

 

部屋の入り口や四隅に立っている護衛の者たち。

あと、隣の部屋で何かあった場合に突入してくる近衛。

彼らを全て退かせた上で、これから話をする。

 

マトリフ殿が部屋の四隅に魔法玉を置いている。

パルナス殿が何をしているかと問うと、

余人には聞かせられないから覗けないよう結界を作ったと。

結界内部は悪魔の目玉でも覗き見ることができないらしい。

 

途中から話を聞きつけて同席したレオナ姫もいる。

その場で私は自分が魔族であることを説明した。

それを聞いたレオポルト王はあまり驚かずにこう言った。

 

 

「種族を偽らねばならぬほど肩身の狭い思いをさせてしまっているのは、

王である私の不徳の致すところだ。ザボエラ殿にはまことに申し訳ない」

 

 

逆に謝られてしまった。

パプニカは魔王ハドラーの本拠地である地底魔城が存在していた国だ。

直接魔族が攻めてきたわけではないが、国内で魔族への反感が高まったことは確かである。

 

 

「あたしはザボエラさんが魔族じゃないかなって、割と最初の頃から気づいてたわよ」

 

「へぇ。どこで見抜いたんだお嬢ちゃん?」

 

 

私は驚きで声も出ないが、なんとか顔には出さないようにしてポーカーフェイスを保つ。

衝撃の発言をしたレオナ姫に、マトリフ殿が面白がって尋ねる。

 

 

「簡単よ。マトリフさんくらい高齢なのに、魔法使いとして優秀な"人"っていないでしょ?

幻の賢者バルゴート様がピンとくるけど、亡くなってるって聞いてたわ。

若い人なら分かるじゃない。新しい才能が生まれたって変じゃないもの」

 

 

マトリフ殿が無言で頷き、レオナ姫に続きを促す。

 

 

「隠れ里に住んでいる可能性もあるけど、ギュータは閉鎖されたんでしょ?

高齢の腕利き魔法使いが野心も抱かず、隠れ潜んでた可能性よりは、

その人が魔族であって、私たちと生活圏が違ったから知られてなかった……

って考えたんだけど」

 

「ほほーん。それをお前さん、自分一人で導き出したのか姫さんよ。

なぜ、本人に指摘しなかったんだ?」

 

「だって、隠してるなら指摘する事じゃないでしょ。

あと、魔族への偏見がある事は分かってたし、

ボリクスのお爺ちゃんを悪い立場にしたくなかった。

もっと言えば、魔族の人が姿を変えなきゃいけないのは、

パプニカの政治の失敗よ。ねえ、お父様」

 

 

ズバズバいうレオナ姫に苦笑するレオポルト王。

しかし、切れ味鋭い知性ではあるが、知に秀で過ぎた者の冷徹さが感じられない。

ボリクスへの友情もあるのだろうが、そこがレオナ姫のよい部分だろうな。

マトリフ殿は嬉しそうにレオナ姫の話を最後まで聞いていた。

これは、彼の眼鏡に適ったという事かな……?

 

パルナス殿が調べた結果、テムジンが彼の一存で、

国内での魔族を見つけては追い出す政策を実施していたらしい。

それを改めさせ、差別をせぬように通達して浸透させるには時間がかかるだろう。

当分は、変身呪文(モシャス)で姿を変えてパプニカに訪れることにした。

そう考えこんでいたら、レオポルト王が爆弾発言を投下してきた。

 

 

「実はボリクス殿も……単純な人ではあるまいと思っているのだが。

彼女は竜の(ドラゴン)騎士ではないかなザボエラ殿?」

 

「その伝承をご存じだったのですか陛下」

 

 

思わずその通りです、と正直に答えたかのような返事をしてしまった。

この世界ではネイル村の長老が額に紋章を抱いた騎士一族の話を知り、

マトリフ殿ですら書物を紐解かねば分かりえなかったというのになぜ……?

 

種明かしはすぐに王自身からなされた。

実は少年の頃、伝承に興味があったレオポルト王は、

テランでフォルケン王を師と仰ぎ、様々な伝説や逸話について学んだらしい。

そして、テランで信仰されている竜の神と、竜の(ドラゴン)騎士についても知ったという事だった。

 

 

「まさか、少年の日に聞いた伝説が、目の前で展開されるとは思わなかった。

道理でフォルケン王の書状が、ザボエラ殿たちをまるで、

王より上の立場であるかのように書いてあるわけだ」

 

竜の(ドラゴン)騎士……まてよ確か。隠棲してから本を整理がてら読み直してたが……。

思い出したぜ。神が力を授けた竜と魔と人の力を併せ持つ最強の騎士か……!!」

 

 

マトリフ殿も記憶を手繰り、竜の(ドラゴン)騎士について思い出したようだ。

しかし、レオポルト王が、竜の(ドラゴン)騎士について知っていたとは予想外ではある。

そういえば、思い当たる節がないわけではない……。

 

確かレオナ姫からの話を聞いて、勇者の家庭教師をアバン殿に依頼したのは王だ。

娘を救った事だけを理由に、氏素性も分からない一介の少年を、

王命でかつての勇者に対して指導を依頼するのは、普通はあり得ない話だ。

デルムリン島でのダイ少年の活躍を(つぶさ)に聞いた王は、

額に紋章を抱いた彼を竜の(ドラゴン)騎士だと看破したのでは……?

 

本編ではレオポルト王は亡くなっているので、確認しようがない事ではあるが。

 

 

「ボリクスも耳が伸びるのかしら。変身呪文(モシャス)解いたら触らせてもらっていいかな」

 

「いいえ、姫。ボリクスは変身呪文(モシャス)を使っておりませんぞ」

 

 

ボリクスへの些細な誤解を解いてから、

実はヨミカイン魔導図書館を使わせてもらっているという話をしておいた。

だが、別にヨミカイン遺跡自体はパプニカの領土でもなんでもないので、

自由に使ってもいいという話になる。

念のため、マトリフ殿がパルナス殿に、所有権の公文書作成を依頼してくれた。

ザボエラ氏がヨミカイン魔導図書館を再建して、

その図書館長として施設を保有する資格を持っていることをパプニカの名で証明する。

そういう文書を仕立てて、パプニカの文書館で保存しておくことになった。

 

こういうのは形式が大事だとマトリフ殿が言った。

馬鹿馬鹿しいが、あとからテムジンみたいな悪党が目をつけるかもしれんから、

きっちりと権利関係は定めておく必要があると言われたのだ。

まったく、仰る通りである。そこまで気が回らなかった。

 

そこから30分ほど話をして、レオナ姫が眠気の限界に達したので会談は終了した。

私は宿に戻りクロコダインとボリクスにも話をする。

二人とも驚いていたが、結果として良い方向に動いたのでよかったと、

私の選択を首肯してくれた。

こういう時の彼らの信頼が非常にありがたい。

その信頼を裏切らぬように誠意をもっていかねばならないと強く思った。

 

翌日、王宮に赴いてレオナ姫とボリクスが別れを惜しみ、

パプニカ戦士団がやってきてバダックとクロコダインが話をして再会を約束した。

私は王とパルナス殿に挨拶をして、マトリフ殿からネイル村のレイラ殿への紹介状を貰う。

一応、もしもいた場合に、アバン殿への紹介状も貰っておいた。

 

 

「あんたは賢いから特にアドバイスもないが……レイラはオレより勘が鋭い。

で、あいつの好みはロカみたいな真正直な男だ。ま、ヒントはここまでだが頑張れよ」

 

 

と言ってレオナ姫に声をかけ、王宮へ戻って行った。

"瞬間移動呪文(ルーラ)って難しいのかしら先生"と尋ねるレオナ姫に、

"おめーさんはまずは基礎の瞑想(メディテーション)からだぜ"という会話が耳に届いた。

 

 

 

 

 

まず、我々は瞬間移動呪文(ルーラ)でヨミカイン魔導図書館へ戻った。

ケインと竜水晶は待っていてくれて、

竜水晶がかなり人間らしい受け答えができるようになっていると自信満々だった。

 

 

「パプニカではそのような楽しい事があったのですね。

(わたくし)も同席したかったものでございます!」

 

「ケインがいれば、そのマトリフと言う魔道士に勝てたかもしれないなザボエラ」

 

「いや、別に勝つことは目的ではないからのう……」

 

 

そんな話をした後に、彼らを連れてテランへ向かう。

フォルケン王に面会を申し込み、すぐに私室へ通されたので話をする。

パプニカであった事件に興味を示したが、重臣テムジンの政変よりは、

竜の(ドラゴン)騎士ボリクスの戦いの方が気になるようだった。

 

実は一泊した後に、全員でデルムリン島へ行き、

瞬間移動呪文(ルーラ)で魔の森を経由して、ネイル村へ行くというのが最初の予定だった。

 

しかし、フォルケン王が竜水晶から歴代竜の(ドラゴン)騎士の話を聞いてしまい、

それを是非、本にまとめたいと言い出してしまった。

ふむ……フォルケン王がこんなに活動的だったとは意外だ……。

竜水晶にはフォルケン王に協力するように話し、彼女も納得した為、

テランで私たちがネイル村から戻るのを待つこととなる。

 

 

 

 

 

明くる日、瞬間移動呪文(ルーラ)でデルムリン島の浜辺へ。

甲羅を干していたガニラスにケインが話しかけ、ブラス殿を呼んできてもらう。

思っていたより早い再訪に驚くブラス殿に、ダイの素性を説明する。

ブラス老はモンスターである自分が、ダイをこのまま育てていてよいのかという話をしだした。

 

だが、私はそこはそれでよいのだといっておいた。

ブラス老という人物に育てられ、モンスターに囲まれたからこそ、

ダイの根底にある他者を外見で差別しない、良い意味での純粋さが育ったのだから。

レオナ姫が言っていた留学の話も、前向きに検討してもらうという事で、話を進めた。

一応、何か危険があった時の為に、キメラの翼を二枚渡しておく。

これはメイジキメラの翼で、指定された場所にしか飛べないが、

両方ともヨミカイン魔導図書館が指定してある。

 

遊びに行っていて留守だったダイが、ゴメちゃんと共に戻ってくる。

真新しい鎧を着たクロコダインをすごいすごいと眺めていた。

すぐに辞去する予定だったが、こちらも一晩泊まり、

翌朝、ロモスの魔の森へ旅立った。

 

 

 

 

 

少々、懐かしささえ感じるロモスの魔の森にやってきた。

私とクロコダインが出会ったのもこの辺りだ。

幸いな事にネイル村の場所はクロコダインが知っていたので、案内してもらう。

 

村へ行き猟師の青年に声をかけ、まず村長に話を通すことにした。

パプニカ王室からの正式な身分証明を手渡し、レイラ殿の家へ案内してもらう。

 

レイラ殿の家は、ネイル村唯一の教会である。

確か彼女の父親である僧侶のアリアム殿がいたはずだが、

姿が見えないのは留守なのかそれとも亡くなったのか?

後者であったら気まずいので気軽に尋ねられないだろうな。

 

お茶を頂いて開口一番、レイラ殿は言った。

 

 

「実はここ数年、アバン様はこの村を訪れてはいないのです。

弟子にした少年が行方不明になってしまい、

彼を探して大陸中を探し回っているそうなのですが……」

 

 

ロカの墓参りに来ない事が気になっていた頃、

レイラ殿宛に届いたアバン殿からの手紙にはそう記してあったらしい。

そうかヒュンケルを探している時期だったか……。

 

アバン殿に会えなかった落胆と、次の行動をどうするか考えていた時、

勢いよく扉が開かれ、一目でマァムだと分かる少女が飛び込んできた。

呼吸が荒く、涙を流しているので只ならぬ事態だと分かる。

 

 

「マァム、なんですか。お客様がいるのに失礼ですよ!」

 

「ごめんなさい! でも、お爺ちゃんが……お爺ちゃんが大変なの!!」

 

 

アリアム殿がいるのか。まさか、何か事件だろうか?

……これから数分後、マトリフ殿から助言を貰っておいてよかったと、

心の底から思う事が起こった……。

 

 

 




パプニカの文書館……小説それぞれの道第一話「ダイの弟子」より。
発行される証文や文書は、パプニカの魔法の紙で、
マトリフの火炎呪文(メラ)でも燃えないようになっています。
どういう技術なのか気になっています。

独自設定
レオポルト王が竜の(ドラゴン)騎士についての知識を持っている事。
"アバン先生に勇者の家庭教師をお願いした亡き父の目に狂いはなかった……"
バルジ編の後でレオナ姫が語っている下りです。
それを膨らませて、レオポルト王が竜の紋章を見ていたなら、
そこからボリクスを竜の(ドラゴン)騎士ではないかと推測したという感じになります。

テムジンのマトリフ追放の布石
人間界最大の策士になってしまいそうですが、
パプニカがどれだけデバフをかけられてたかという部分を盛りたいので、
テムジンを擦らせていただくことになりました。

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