ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の火曜日23時頃を予定しております。
ちょっと、今月の21日に更新される勇者アバンと獄炎の魔王の展開次第で、
少し展開に変化を加える必要が出てくるかもしれませんので。

二十四話の閑話がございますので、
時間のある方はお読みいただければ幸いです。


第二十四話 朋友有り、遠方より来たる

私はケインの破損した魔法玉へ魔法力を注ぎ修理している。

メネロの攻撃から私を庇ったせいで、伸ばした爪の部分が両断され、魔法玉も損傷したのだ。

このままではケインが死んでしまう。

しかし、敵が次の一手で全面攻勢に出たら、あっという間に我々は八つ裂きだ。

ケインを修復する時間稼ぎのため、少々、危険な賭けをしてみることにした。

 

 

「魔影軍師ガルヴァスと魔影五人衆じゃと? つまり、ミストバーン(・・・・・・)の配下と言うことかの?」

 

 

その一言で、ガルヴァスたち全員に緊張が走る。

魔影何某(なにがし)を名乗るということは、今の所属はミストバーンの配下のはずだ。

ならば、広く知られていないミストバーンという名を言えば、

彼らの動揺を誘えるだろうと思ったが、効果はてきめんだったようだ。

 

その彼らの隙をついて、ケインの魔法玉の修復を完了する。

竜水晶に目配せをし、ケインを彼女にポンと投げた。

キャッチした竜水晶に、キメラの翼を使うサインを送る。

一瞬の躊躇いの後、竜水晶はキメラの翼を使用した……。

瞬間移動呪文(ルーラ)が発動して飛び去る二人を撃ち落とそうとするメネロのイバラの鞭と、

肩の円盤(ソーサー)を飛ばすダブルドーラの攻撃を、閃熱呪文(ベギラマ)を横薙ぎに放ち迎撃する。

 

 

「メネロ、ダブルドーラ。その男と話がある。攻撃をやめよ」

 

「ハッ、ガルヴァス様」

 

「命令に従います」

 

「他の者も手を出すなよ。私の別命下るまで」

 

 

二人の攻撃を止めさせ、ガルヴァスは私に問いかけてくる。

好奇心半分、疑問半分と言ったところか。

 

 

「なぜ貴様自身も逃げなかったのだ?」

 

 

ガルヴァスの興味を引くことに成功したかな?

竜水晶たちを追おうとする者がいないよう、注意を払いながら返答する。

 

 

「見ての通りじゃよ。全員が逃げたらお前さんたちの攻撃で撃墜されておったじゃろう。

もっと言えば、瞬間移動呪文(ルーラ)を使って追ってこられたかもしれん。

逆に言えば、お前さんたちはなぜ追わんのじゃ?

追ってくれればワシが撃ち落としてくれたがのう?」

 

 

厭らしく言ってみる。

ブレーガンが怒ったが、ザングレイに制されて仕掛けてはこない。

まだ、ガルヴァスが話そうとしているからだろうか。

 

 

「殺す前に尋ねたい。なぜ、ミストバーン様の名を知っているのだ。

あの方は大魔王バーン様の股肱(ここう)の臣。側近中の側近たる高位の存在。

貴様の様な名も知れぬはぐれ魔族が知っているようなお方ではない」

 

「さてな。お前さんは自分の物差しで世の中を計っておるようじゃが、

全知全能でもない限りは、己の知識を絶対視するのは危険じゃよ?」

 

「ほぅ! 言いよるわ……!」

 

 

ありがたいな。情報をそちらからくれるようだ。

現在、彼らは独立部隊ではなく、やはりミストバーン直属であり、

彼への忠誠心も高いようだ。大魔王バーンへの忠誠かもしれないが。

そして、(ザボエラ)の事を知らない。

これは大きいな。もしかすると、スカウトしてくるか?

 

 

「私は大魔王バーン様へ忠誠を誓っている。あの方は人材を求めている所だ。

お前ほどの力を持った魔族を連れてゆけば、私の人材獲得能力の評価もあがろう。

なんなら、魔影六人衆にしてもいいのだからな」

 

「ガルヴァス様。喋り過ぎではありませんか」

 

「この状況で逃げられようはずもなかろう。

極大呪文を二種類も使える男。できれば手駒として欲しいではないか?

それにいざとなれば……」

 

 

横にいるメネロがガルヴァスに懸念を示すが、ニヤリと笑いながらそれに対して応えた。

恐らくは軍門に下らなければ、私を始末すればいいという事なのだろう。

確かにそうすれば、私に教えたことなど、よく言う冥途の土産という事になるだろう。

 

 

「どうだ? 我が軍門に下れ、はぐれ魔族」

 

「一つ聞かせてくれんかのう? なぜ、村を襲っているのじゃ?」

 

「このギルドメイン山脈に大魔王バーン様のご居城が築かれるからだ。

引っ越しの際に、ゴミくらい掃除するだろう?

バーン様の宸襟を悩ませぬための下準備だ」

 

 

やはりか……。そう思いながら背後に回した指で、地爆呪文(ジバリカ)を幾つか設置する。

腰をそらせ、わざとらしくため息をつく。

 

 

「ふむ……。お前さん、350歳くらいかのう? それとも、370歳くらいじゃろうか」

 

「何を言ってやがる! 狂ったかジジイ!!」

 

 

そう怒鳴るブレーガンをガルヴァスが遮る。大分、時間を稼げただろうか。

マトリフ殿は勿論、竜水晶もケインもヨミカイン魔導図書館へ帰りつけただろうか?

 

 

「何が言いたい?」

 

「考えが若すぎるという事じゃよ。他者をゴミと吐き捨てるような人物に仕える者がいるかね?

いつ自分がそのゴミになるかもしれんと怯えて暮らせと?

他人をスカウトするには知恵が足りなかったのう!」

 

 

私はこれみよがしに魔法力を上げてゆく。

それを見たガルヴァスたちが色めき立ち、メネロがガルヴァスに許可を求めた。

 

 

「よろしいですね、ガルヴァス様?」

 

「チッ! 致し方あるまい。私の温情が分からぬとはな。殺せ!!」

 

「その言葉を待っていた! ジジイを殺すぞ!!」

 

 

サイおとこを20体ほど引き連れたブレーガンが駆けよってくるが、

予め仕掛けておいた無数の地爆呪文(ジバリカ)による土の槍でサイおとこたちが貫かれた。

彼らが邪魔でブレーガン自身は私の所へ来ることができない。

 

私は逆方向から鞭を振るいながら近づいてくるメネロとダブルドーラに、

光量最大・持続時間一瞬の松明呪文(レミーラ)を使用する。

メネロは目つぶしを食らい足を止めるが、ダブルドーラはそのまま進んでくる。

 

二対一になる危機を逃れたので一人ずつ対処してゆく。

真空呪文(バギクロス)で炎の範囲を広げた火炎呪文(メラゾーマ)を食らわせる。

炎の強風に巻き込まれ、恐らく内部が空洞のダブルドーラは焼かれながら吹き飛ばされる。

ダブルドーラの後方で目つぶしを喰らって立ちすくんでいたメネロは、

イバラの鞭で炎の嵐を切り裂き直撃を避けた。なかなかやる。

所々焼け焦げた事に激怒して、恐ろしい形相で走ってくる。

 

メネロが手裏剣のように葉を放ってくるが、

地爆呪文(ジバリア)で土槍の盾を無数に出現させたのでなんとか防げた。

幾つかは貫通して飛んできたが、足や肩をかすった程度ではある。

さて、次の手を打たねばと考えたが、私の抵抗はそこまでだった。

空中から機をうかがっていたベグロムが、闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)を放ってきたのである。

私の動きを封じ急降下し、肩口を刺し貫いて崩壊したギュータの壁へ縫い付けられてしまう。

 

 

呪文封じ(マホトーン)!!」

 

「くっ!?」

 

 

しまった!! 私に呪文封じ(マホトーン)を効かせてくるか。

ノーマークだったが、このベグロムも強い。私の知識にあるよりも数段上の力を持っているな。

 

 

「しぶといなジジイ! 魔族にも効果がある毒を塗ってあるというのに!」

 

「ワシに毒は効かんよ……」

 

 

そうは言ったものの、体内で中和剤を作るのに精いっぱいだ。

麻痺毒か? 口ぶりから効果は他にもありそうだが。

劇場版の小物ぶりに甘く見ていたが恐ろしい男だ。

 

 

「では、死んでもらうぞはぐれ魔族!」

 

「狡いぞベグロム! 手柄を横取りか!」

 

 

ブレーガンの声が聞こえるが、出血が多くてどうにも意識が朦朧としてきた。

 

 

……

 

 

私の中にあるのは死への恐怖と言うより、ケインや竜水晶を逃がすことができたという満足感。

それと、信頼関係を築くことができた、

クロコダインやボリクスの今後を見ることができないという寂しさだった。

 

 

……! 

 

 

ある程度お膳立てはしたが、いまの状態で大魔王バーンに勝てるんだろうか?

私が彼らの道を定めてしまったようなものだから、

一緒に戦う事で干渉してしまった責任を取りたかったのだが……。

まさか、ここまで道半ばで、自分自身が舞台から去る事になってしまうとは。

 

 

……ろ!! 

 

 

そこでおかしいと気づく。一向にベグロムの剣が振り下ろされないのだ。

ブレーガンの三節根やら、炎か氷の攻撃もない……。なぜだ?

そう考えていたら、何やら暖かい光で私の傷が癒えていく。

これはまさか……?

 

 

「よぉ、気づいたか? すまねぇ、遅れたぜ。助っ人を呼んできたんだ」

 

 

そう言ったマトリフ殿の後ろには、

ガルヴァスたちの前に立ちはだかるクロコダインとボリクスの姿が見える。

 

 

「遅くなったなザボエラ。すぐに片づける。そこで寝ていてくれ」

 

「よくもザボ爺殺りおったな! ゆるさへんでお前ら!!」

 

「落ち着けよお嬢ちゃん。まだ死んでねぇぜ。

だが、危ねぇ事に変わりはねぇよ。オレは回復呪文(ベホマ)解毒呪文(キアリー)に集中するぞ。

他になんもできねーから、背中は頼むぜ!!」

 

「分かった。ボリクス、二人を守ってくれ」

 

「……いやや! あいつらはうちがやる!!」

 

 

クロコダインがボリクスの肩に手をやり、諭すように語り掛ける。

 

 

「ボリクス。敵への憎悪で力を振るってはいかんと老師から教わっただろう」

 

「せやかてクロコダイン!!!」

 

「だが、友人を傷つけられた事への義憤は別だ。敵を憎むな、その非道へ憤れ」

 

「わからんが……わかったで!!」

 

 

凄まじい闘気でガルヴァスたちへ向き直るクロコダイン。

その闘気に気圧される一堂の中、ガルヴァスだけがクロコダインに返答する。

 

 

「き……貴様、一体何者だ!?」

 

「オレの名はクロコダイン。武神流の弟子のひとりにして、貴様らが傷つけた男の友よ!」

 

 

その吹きあがる闘気に、敵兵の魔界の魔物たちも(おのの)き、浮足立っている。

ガルヴァスが兵たちを叱咤するように声を張り上げ、残った兵力を糾合し号令を下す。

 

 

「全員でかかれ!

あの男を殺した者はバーン様に言上(ごんじょう)し、一兵卒でも将軍に取り立ててやる!!」

 

 

地響きを立てて雪崩れ込んでくる魔界の魔物たち。

火炎呪文(メラ)系、氷結呪文(ヒャド)系、閃熱呪文(ギラ)系の呪文が叩き込まれるが、青鍛鋼(ブルーメタル)の鎧は全てを弾き、

クロコダインは一切意に介さず、右手を回し始める。まさかこれは……!?

 

 

「ゆくぞ、武神流窮鼠文文拳!!」

 

 

本編での使い手であるチウは、リーチが足りないことを指摘されていた。

欠点が補われ、チウを遥かに超える力の持ち主が放てば、どれほどの威力だろうか?

その答えが眼前で繰り広げられていた。

20体以上の魔物が凄まじい勢いで吹き飛ばされる。

直接食らった魔物は全て絶命しているが、技の威力で吹き飛ばされた体は止まらない。

その背後にいた魔物たちが、飛んできた味方の体に大ダメージを食らっている。

たった一つの技で、これほどの威力だ。

まるで極大爆烈呪文(イオナズン)でも落ちたかのような音がしたのだが……。

 

数人の鉄球魔人を真空の斧で易々と両断し、拳は容易くサイおとこを鎧ごと貫く。

近づいてくる地獄の門番を、尻尾の一閃で絶命させる。

膝を叩きこめばシャドーサタンの腹を突き破り、踵落としは炎の戦士の頭を砕く。

あっという間に武闘派の魔物たちを片付けてしまった。

まさしく、全身凶器だ……凄まじいなクロコダイン。

 

部下たちの多大な犠牲の末、クロコダインの間近まで迫るザングレイ。

咆哮とともにザンバーアックスを振るい、攻撃を叩きこんでくる。

数号撃ち合った所で、ザングレイが闘気を集中してザンバーアックスを振るう。

 

 

「食らえ! 蒼天魔斬!!」

 

 

ザングレイの技を片手で軽々と受けるクロコダイン。

合わせるように繰り出した拳の一撃で、ザングレイの腹甲にクロコダインの拳の形の穴が空く。

ザングレイは口から苦鳴(くめい)吐瀉物(としゃぶつ)を吐きながら、大きな音を立てて倒れる。

合わせただけの拳で、あれほどの威力が……。

 

そのクロコダインの活躍の間も、ボリクスは竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)を振るいながら、

魔界の魔物たちをあっという間に切り裂いている。

ホバー移動して巨体に似合わぬスピードで距離を詰めるダブルドーラを、

大上段から真っ二つにしようとして……。

いかんあいつは左右に分離できるはずだ!?

案の定、左右に分離されたが、ボリクスが電撃呪文(ライデイン)を自分に落とした。

その姿を見たメネロはあざけりの声をあげる。

 

 

「アッハッハッハッハ! 馬鹿なガキだね! 折角の呪文を……」

 

 

と言いかけたが、最後までその言葉を口に出来なかった。

雷を帯びて発光するボリクスは、

まるでピオリムが重ね掛けされたかのような速度で距離を詰めた。

メネロの胴を真っ二つにし、返す刀で背後のダブルドーラを……。

 

 

電撃闘気剣(ライデインブレード)!!!」

 

 

雷を帯びた闘気の剣(オーラブレード)を巨大化させて、大上段から闘気の力と電撃呪文(ライデイン)の呪文で、

塵も残さぬほどダブルドーラを粉砕しつくす。

すぐ、私の下に戻ってきて、指を立ててにやりと笑う。

 

 

「どや、強うなったやろ?」

 

「まったくじゃな……見事というほかはないのう」

 

「だけど、クロコはもっと強いで。本当、すごい事になっとる」

 

「おい、あんまり喋らせるな。死にかけてたんだぞ、ザボエラは」

 

「わかってるわ! ザボ爺(ざぼじい)頼むで、マトリフ!」

 

 

マトリフ殿からの注意にそう答えて戦いに戻るボリクス。

放電する体で竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)を振るい、魔界の魔物たちを倒して回っている。

魔法剣は呪文と剣を同時に使う竜の(ドラゴン)騎士特有の技だ。

自身に電撃呪文(ライデイン)を落とし、その呪文の属性で身体強化を図るとは……。

これが竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を使いこなすという事なのだな、ブロキーナ殿。

クロコダインはどうしたのかと思い、見てみるとすさまじい光景が広がっていた。

 

豪魔六芒槍を持ったガルヴァス、暗黒闘気をまとわせた剣を振るうベグロム、

炎と氷を操るブレーガンを三人同時に相手取って、まったく引けをとっていないのだ。

その三人に加勢しようとする魔界の魔物は、

クロコダインの尻尾や後ろ蹴りで吹き飛ばされている。

 

 

「ザングレイ! いつまで倒れているのだ! 私と代われ!!」

 

「うおおおおお!!」

 

 

その一瞬の隙をつき、クロコダインの突き出した右手から、

巨大な気の塊が飛んで行きベグロムがまともに食らう。

ベグロムは向こうの丘にまで吹っ飛ばされ、その姿が見えなくなった。

 

 

「武神流……龍撃波動拳!」

 

「お、おのれ!!」

 

 

気を全身に廻らせ、体毛を鋼鉄の針のようにして戦うザングレイと、

三節根を真ん中から二つにして、炎と氷を全開にして両手で振るうブレーガン。

サイ男やシャドーサタンも加勢してくるが、彼らは一撃で倒されたり、

ザングレイの体毛に突き刺されて絶命している。

剛力で振り回されるザングレイのザンバーアックスと、

氷炎を放ち左右から変幻自在に繰り出されるブレーガンの三節根。

その猛攻を防ぎながら、ザングレイのザンバーアックスをもつ腕を、

クロコダインが肩口から切断する。

 

 

「ぐわああああああ!!」

 

 

その隙を逃さず、三節根の炎を2m以上噴き上げて跳躍するブレーガン。

 

 

「出かしたザングレイ! 奥義! 轟炎殺!!」

 

「唸れ真空の斧よ!!」

 

 

三節根を合体させて巨大な炎の塊にして叩きつけるブレーガンの必殺技を、

真空呪文(バギクロス)をまとわせた真空の斧で受けるクロコダイン。

 

 

「なにぃ! 馬鹿なぁ! オ、オレの技を!?」

 

「武神流……猛虎破砕拳!!」

 

 

空いた右手に闘気が集中し、ブレーガンに猛虎破砕拳を放つ。

使用者にもダメージがいく危険な技だが、クロコダイン自身が鋼鉄の皮膚を誇り、

青鍛鋼(ブルーメタル)の鎧を着ているのでダメージは気にすることはないだろう。

猛虎破砕拳を喰らったブレーガンの胸板に虎の形の亀裂が刻まれ、

一歩遅れてクロコダインの腕が通れそうな巨大な穴が空き絶命した。

 

部下の死すら道具に使うガルヴァスは、極大閃熱呪文(ベギラゴン)の準備が終わったようだ。

 

 

「死ねぃクロコダイン! 極大閃熱呪文(ベギラゴン)!!!」

 

「お、お待ちをガルヴァスさ…………」

 

 

長時間魔法力を注いだ上で、渾身の極大閃熱呪文(ベギラゴン)だったのだろう。

通常の極大閃熱呪文(ベギラゴン)よりも、威力が上回る凄まじい規模だ。

射線上にいた魔物たちとザングレイやブレーガンは、哀れな黒焦げた屍を晒している。

だが、クロコダインはそこにはいない。

 

跳躍して回避したのか、ズシンという音と共に、ガルヴァスから5mほどの所に降り立つ。

 

 

「オレは青鍛鋼(ブルーメタル)の鎧を着ているのだぞ。

普通の呪文は通らぬし、極大呪文でも威力は半減だ。

貴様の部下たちが死んでしまっただけではないか」

 

「貴様にしがみつき、動きを封じる気概すらない連中など、なんの価値もないわ!

死んで当然……! 役に立たぬならゴミ同然よ!」

 

「わかった。貴様には情けをかける必要すらないな」

 

「オレに時間を与えたのは失敗だったな! 我が暗黒闘気の精髄を喰らえ!

暗黒衝撃波ーーーッ!!!」

 

 

ガルヴァスの両腕から漆黒の波動が放出される。

あれは確か、劇場版でデスカールも放っていた暗黒闘気の技か。

どうする気だクロコダイン……と思ったら彼の姿が無い……いや遥か上空だ!!

ガルヴァスは狙いを上空のクロコダインに定め、暗黒衝撃波を当てるが……?

クロコダインの周囲を旋回する巨大な気が覆い、

凄まじい蹴りが暗黒衝撃波を切り裂きながら突き進む。

 

 

「ば、馬鹿な……。オレの暗黒衝撃波をものともせーーー」

 

 

クロコダインを覆う闘気が、凄まじい速度で回転をしながらガルヴァスへ突き刺さった。

隕石でも落ちたかのような轟音を立てて、恐ろしい威力の蹴りが巨大なクレーターを大地に穿つ。

 

 

「武神流、鳳凰流星脚。

オレが最初に老師に食らった技だ。地獄で部下に詫びるがいいガルヴァス」

 

 

強い……。本当に強くなったなクロコダイン。

敵の魔物を全部片づけたボリクスが戻ってくる。

 

 

「な? (つよ)なったやろクロコ?」

 

「そうじゃな。もちろん、お前さんもじゃよ」

 

「えへへへ。ザボ爺(ざぼじい)褒めてくれると思てたで」

 

「いやはや……すげぇな。あのクロコの旦那は魔王ハドラーなんか目じゃねえだろ」

 

 

私もそう思う。やってみないと分からないが、たとえば魔王軍六大団長だとしたら、

特殊な存在のミストバーン以外なら大体勝てるんじゃないだろうか。

 

この凄まじいクロコダインの闘気の技なら、まさしくバランがポップに語っていた、

 

"この竜闘気(ドラゴニック・オーラ)も、それ以上のパワーや闘気をもってすれば、

つらぬかれ私の体を傷つけられてしまうからな"

 

という竜の(ドラゴン)騎士が恐れるパワー系戦士の最たるものだろうなクロコダインは。

さすがに竜魔人は分からないが、バランと戦っても容易くやられるという事はないはずだ。

 

おっといかん。ガルヴァスたちの上司がミストバーンだったからな。

いま、奴と戦う準備は整っていない。マトリフ殿に伝えねば。

 

 

「マトリフ殿。すぐにこの場を去ろう。説明する時間がないが、あまり長居をすると危険じゃ」

 

「おう、わかった。クロコダインの旦那~~!! ザボエラの傷も癒えた。戻ろうぜ!!」

 

「分かった! すぐ行く!!」

 

 

クロコダインは戦場を眺め、深々と一礼し、こちらへ走ってきた。

戦い命を奪った者たちへの敬意を忘れない……なるほど。

ブロキーナ老師の目に適った、最高の武道家に、いや、バトルマスターとなったか。

 

 

「いくぜ、瞬間移動呪文(ルーラ)!!」

 

 

私はマトリフ殿の呪文の声を聞きながら、気を失ってしまったらしい。

呪文の連発で魔法力をほとんど使い果たし、

身体の傷も癒したが死んでいてもおかしくない怪我だったそうだ。

 

そして、ヨミカイン魔導図書館でガナッシュ殿たち、

ギュータの民が私の自室へやってきた。

 

 

「我らギュータの民はこのご恩を生涯忘れませぬ。

ザボエラ殿が命を懸けて逃がしてくださった事は全て、

子々孫々まで伝え恩を返させていただきます」

 

 

深々と頭を下げたガナッシュ殿がそういい、妻のプラリネ殿もこう続けた。

 

 

「何かありましたら我らギュータの民は、ザボエラ殿の為に身命を賭して尽力いたしましょう」

 

「ザボエラ、ありがとう!」

 

「チョコマ! 失礼でしょう!」

 

「あ、ご、ごめん……」

 

「なに、そう、畏まらずに。ギュータの皆様が助かって良かったですのう。

取り合えず、テランのフォルケン王に話を通すまで、ここで逗留してくだされ」

 

 

しきりに礼をいうガナッシュ殿と、プラリネ殿に頭を下げさせられていたチョコマ殿が退出した。

それと入れ違えに竜水晶とケインが戻ってくる。

 

 

「あのような場で(わたくし)を逃がすとは何事ですか!! (わたくし)も最後まで一緒に戦わせてください!」

 

「いや、すまん……」

 

 

所々爪が折れている痛々しいケインを、魔法力を注いで直す。

ケインはザボエラが禁呪法で作り出した生命である。

魔法玉を傷つけられて危ういと思ったから、彼を逃がしたのだが……。

 

 

「ザボエラ」

 

「うむ」

 

「次は我が残る。二度も残らせんぞ汝を」

 

「まぁ、次はもう少しよい手段を考えようかのう。誰かを残すのは、よい手ではないじゃろう」

 

 

彼女なりに心配してくれているようだ。その心遣いに頭が下がる。

そして、マトリフ殿、クロコダイン、ボリクスを呼んでもらう。

話さなければいけないことが数多くあるからだ。

魔影軍師ガルヴァスと魔影五人衆。

そして、彼らの背後にいる魔影参謀ミストバーンについて。

もしも、悪魔の目玉で監視されていたとしたら危険ではある……。

考えなければならないことは山積みだ。

 





独自設定

ザングレイ
蒼天魔斬……ドラクエ8初出の斧の技です。
体毛を鋼鉄の針のようにする技……以前のクロコダインなら苦戦したのでしょうが、
いまのクロコダインなら闘気と鎧で十分防げます。

ブレーガン
轟炎殺……オリジナルの必殺技です。
使用すると三節根の魔力を使い切るので奥の手です。

ボリクス
電撃闘気剣……竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)電撃呪文(ライデイン)を宿した、
竜闘気(ドラゴニック・オーラ)のノーザン・グラン・ブレードです。
使い手と闘気が変わるとあの技も強くなります。

電撃呪文(ライデイン)を身体に宿す。
魔法戦士のフォースで、呪文の種類によって効果が違うと面白いかと思いました。
火炎呪文(メラ)系だと攻撃力上昇、氷結呪文(ヒャド)系は防御力……etc。

クロコダイン
龍撃波動拳……猛虎破砕拳=虎が直接打撃なら龍は飛び道具にしてみました。
闘気弾は高等技術らしいので、
相手に命中できる時点でクロコダインの技量が優れています。
覇王翔吼拳みたいなのが飛んで行ってると思ってください。

鳳凰流星脚……第二十二話で老師が使用した技です。
猛虎破砕拳と同様に、身体にダメージが来ます。
老師にこの技を使わせるくらいに、
クロコダインが強かったという証になります。
あと、仲間から離れて使用しないと味方を巻き込みます。

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