ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
特にロカの動向は気にしております。
木曜日の更新で幾つか書いた話に手を入れる可能性があるかもしれません。
実は展開が違った場合で二種類のルートを書いているのですが、
両方の予想が外れた場合、次回更新が再来週になりますのでご了承ください。
みなが戻るまでに自分自身で、ギュータでの行動を振り返ってみるが……冷や汗が出る。
確かにケインに怒られるのもやむを得ないだろう。
しかし、竜水晶とケインと協力して三人で戦ったとしても、勝ち目がなかった。
あの時点でケインは既に戦闘不能だ。私と竜水晶の二人で戦う事になるが……。
竜水晶はガルヴァスとザングレイ以外なら、一対一で戦えば勝てる実力はある。
あるのだが、流石に一斉に攻められると戦い抜ける気がしない。
魔法使い職である私の役割は、呪文を使い大火力で戦局を打開する事を求められるのだ。
だが、竜水晶一人で前衛が支えきれない場合、
敵は私が極大呪文を用意する隙など与えてくれない。
……やはり、打つ手がないわけだ。
二人を逃がした選択は、あの瞬間は正解だっただろう。
最初、私は自分がザボエラになっていることに驚き、
死なないために行動を重ねてきたはずなのだが……。
まさか、"ここは任せて先に行け"をやってしまうとは、心境の変化に驚くばかりだ。
しかし、様々な漫画で味方を逃がして敵を引き付ける役割は、
大体において死亡フラグが立つ行為である。
私が今回生き延びることができたのは、完全に幸運でしかない。
敵勢力の最高幹部直属のエリート戦闘部隊と、彼らが率いる精鋭軍団を相手に単身で戦ったのだ。
端的に言って、自殺行為だったとしか言いようがない。
私としては竜水晶やケインの事を考えての行動だったが、
彼らには怒られてしまったし、信頼を損なわない為にも無茶は慎まなくては。
だが、最終的には大魔王バーンや最強クラスの連中と事を構える可能性があるのだ。
このくらいの危機は、私が単身で乗り越えられるようにならなくては……。
幾つか当てはあるので、呪文の研究やら対策を考えなくてはいかんだろうな。
懸念だった悪魔の目玉についてだが、マトリフ殿が
対モンスター用に作った
彼によると、それらしい反応はなかったらしい。
激しい戦闘が繰り広げられたから、巻き込まれたかもしれないな悪魔の目玉。
長々と考えている間に、みなが揃ってきてくれたようだ。
ヨミカイン魔導図書館内にある私の私室に、
クロコダイン、ボリクス、マトリフ殿、竜水晶、ケインといつものメンバーが集まってきた。
その上で、彼らが知らない情報を共有する為に、私があの時の状況を話し始める。
竜水晶とケインを逃がして、一人で戦っている時の事だ。
ギュータに攻め込んできたのが魔影軍師ガルヴァスと魔影五人衆という、
大魔王バーンの臣下であるという説明をした。
実は既にマトリフ殿には魔王ハドラー復活の話と、その背後にいる魔界の実力者、
大魔王バーンの存在について、秘密裏に説明しておいたのだ。
それを聞いたマトリフ殿は、混乱を招かない為にも、余人には話せないなと首肯し、
ハドラー復活までの間、パプニカを強くしておくぜと言ってくれている。
「つまり、ギルドメイン山脈に城を建てるってのかい? 大魔王バーンというやつは」
「山脈の麓の村を潰しているのは、建設を邪魔されないためか」
マトリフ殿の言葉を受けて、意見をいう竜水晶。
まさか、移動する岩の巨人の城を建ててるとはいえないので、
大魔王が地上を攻めるために作る城だから、並大抵ではないだろうと話した。
「あれほどの兵力が襲ってきては、普通の村ではひとたまりもあるまい。
賢明なのは逃げてしまうことだろうな」
「その兵力を二人でなんとかしちまった奴が言っても、説得力ねぇな」
慎重な意見をいうクロコダインに対して、ツッコミをいれているのはマトリフ殿だ。
ここでマトリフ殿は、建設的な意見を出してくれた。
ギルドメイン山脈の生き残りの村は、リンガイア領の村がほとんどだ。
そこへ介入する権限はパプニカにはない。
その権限を持っているリンガイアへ、パプニカ王国から親書を出してくれるというのだ。
無論、マトリフ殿が手ずから使節として、リンガイア王国へ持っていくという。
ギュータは縁があったし、リンガイア領側ではなかったから協力したが、
管理者が決まっている村はそちらから手を回した方がいい。
「しかし、ギルドメインにゃ、容易く手が出ねぇぜ。
そんな強い連中がごろごろできてきたら流石にヤバイからな」
「当面はギルドメイン山脈には、近寄らないのがいいでしょうな」
「放っとくんか? バーンが城作って攻めてくるんやろ?」
「嬢ちゃん。魔界の魔物ってのが兵として大分強い。
訓練された人間の兵士5~10人分の強さがある。
パプニカ、カール、ベンガーナ、リンガイア辺りの兵力を集めても、
魔界の魔物が同数だったら確実に負ける」
そう。魔界の魔物自体が強い上に、六大軍団のためのモンスターを揃えている頃だろう。
六大軍団+魔界の魔物と戦うことになったらまず勝てない。
最適なのはこちらが準備を整え、敵が準備を完了する前に攻めることだが……。
「こちらから攻める際、やはりミストバーンという男が問題なんじゃよ……」
どこまでミストバーンの複雑な背景について説明する?
実は大魔王バーンの若い肉体を暗黒闘気生命体のミストが覆い隠している。
その若い肉体には凍れる時間の秘法がかけられていて、あらゆる攻撃が無効化されてしまう。
説明できる話ではないな……。言えるのは暗黒闘気のくだりか。
私は強力な暗黒闘気を使うという部分をクローズアップして、
魔影参謀ミストバーンについて説明した。
みな一様にため息をつくが、竜水晶は自分なら戦えるのではと話す。
「圧倒的なんじゃよ、その暗黒闘気の力が。勿論、他の者が戦うよりはよいじゃろうが……」
「実際に相対してみないとわからないか?」
恐らくは竜水晶なら
ただ、ミストバーンは近接戦闘でも、ロン・ベルクと互角に戦えるほどの男だ。
簡単に対抗することは難しいだろう。
そう話し合っていると、マトリフ殿はお茶をグビッと飲み干して、盛大なため息をついた。
「大魔王バーンに、数千年付き従う側近の男か。
しかも、強力な暗黒闘気の力を誇って、呪文を反射することも可能なぁ……。
一応、尋ねるがガルヴァスが話してるのは、別の幹部って線はねぇのかい?」
「彼らにカマをかけたところ、ミストバーンの直属だとうかがえる発言でしたのう」
「カマかけるなんて悪いやっちゃ、
ボリクスがニヤニヤしながらそう言う。
会話をしている間、ふと思い出したことがあった。
ロン・ベルクがミストバーンの
長剣を投げて潰したことがあったが、あれはどういうことだったのだろうか。
第一に考えられるのは通常の闘気技でも、相手の闘気を上回れれば勝てる。
ミストバーンの
作中でミストバーンの闘気を上回る存在がそういなかったからか?
第二にロン・ベルクが暗黒闘気を身につけているから干渉できたという考えもあるが、
別に魔族だから暗黒闘気を身につけなければならないわけではないという話だったはず。
第三にあの剣が特殊だった説だが、ロン・ベルクが手を抜いて作った剣ということだ。
暗黒闘気を無効化できるという能力がある剣だったら、そんな評価ではないだろうな。
また、長々と考えてしまったが、ミストバーンを甘く見るのは危険だ。
ちゃんと、注意喚起をしておこう。
「ワシらにとって一番相性が悪い相手じゃのう。
強大な暗黒闘気の力は、それに対抗できる光の闘気でなくば断ち切れぬのじゃよ」
そうみなに注意喚起をしているところ、
腕を組んで聞いていたクロコダインがボリクスに話しかける。
「ボリクス。光の闘気とは、老師に伺った至高の闘気という奴だ」
「あー、なんかよーわからんかったな。ふわふわっとわかったよーなわからへんよーな」
それは分かってないのではないかと思うが……。
どうやら、ブロキーナ老師が二人を指導している際に、
闘気の種類について語ってくれたらしい。
通常の闘気というのは、クロコダインの使う獣王会心撃などだ。
物理的な威力を増幅させる、いわゆるバトル漫画などのオーラという力だろう。
暗黒闘気は魔族やアンデッドなどの暗黒生命体が使う、呪術的な方向性の闘気のことだ。
直接的な攻撃力もあるが、より呪い的な側面が強い。
そして、光の闘気である。
人間や精霊族の精神が上乗せされた、至高の領域にある闘気と言う話だ。
「竜水晶だけに無理をさせられんな。オレもなんとか習得してみよう」
「まぁ、その白い外套の幽霊みたいな奴に会ったら、全力で逃げた方がいいって事だな」
「そうなりますのう」
「しかし、今回の事で確信したのだが……」
私を見たクロコダインが軽くニヤリと笑ってから話を始めた。
「ザボエラはいたずらに好戦的な人物ではないというのに、
どうも戦いに巻き込まれることが多いな」
「まぁ、そやなー」
「くっくっく……ちげぇねぇ」
「これからは、
自分でも納得しかけてしまったが、やや不承不承として話を聞いた。
未来の知識があっても、それ自体がけっこうスパンが長いことではある。
オフィシャルガイドブックにあった年表では、この辺りから6年ほどは、
特に事件もなく"ハドラー復活" "六大団長結成"まで飛んでいるのだ。
確定した事件はないが、知られざる何かしらがあるのかもしれない。
注意して行動した方がいいだろう。
「オレも老師から皆伝は頂いてきた。これからはなるべく同行しよう。
どうも、オレがいないときに強敵が現れる気がする」
「うちもいるでー」
「へへ、最強の用心棒じゃねぇか」
「心強い話じゃのう……」
しかし、今回は本当に死にかけたので、当座は彼らの好意に甘えるとしても、
自分でなんとかできるように対策を講じなければならないだろう。
そういえば、テランのフォルケン王に、ギュータの民を受け入れてもらうよう、
説明をしてくる必要があるな。
さて、では出かけるか。
まずは事後承諾を詫び、王にギュータの民の移住の件の許可を取らねば……。
そう口にして出かけようとしたら全員に通せんぼされ、
「「「「「いいから寝てろ」」」」」
と言われてしまった。
だが、ギュータの民のテランへの受け入れの件は、早急に手続きが必要だ。
事情を記した手紙を書いて、ボリクスにフォルケン王の下へ運んでもらった。
すぐにフォルケン王が了解し、ギュータ代表のガナッシュ殿と会談をする。
テランとウルス村との中間に住民がおらず放棄された村があるので、
そこをギュータという名前でもらい受けることになった。
彼らはフォルケン王に忠誠を誓ったが、命を救われた恩があるので、
第一の忠誠はザボエラにと言ったらしいが、フォルケン王はそれは当然だろうと話したそうだ。
"ザボエラ殿は自分など及びもつかない賢人だ"ということらしい。
……勘違いも甚だしい気がするが……。
どうして、そこまでフォルケン王の私への評価が高いのかわからないな。
それはともかく、ボリクスの話では、王がギュータの達人の武術に興味を持ったらしい。
激しく打ち合うというよりは、型を繰り返す方で、なんとフォルケン王は才能があるという事だ。
別に戦力になってもらおうとは思わないが、臥せっていた印象が強い方である。
老齢でもあることだし、健康になってくれるのならよいことだろう。
筋肉と言うのは、年齢関係なく成長するという話を聞いたこともあるからな。
フォルケン王が武術に興味を持った事を聞き、私も老師に教えを請うべきかと考えている。
無論、近接格闘技を習得し、クロコダインのように戦えるようにというわけではない。
考えてみればアバン殿について、ポップは一年近く修行を受けていた基礎があるのだ。
アバン流の格闘技は源流として、武神流があるという話もある。
マァムが二週間程度で閃華裂光拳を習得したのも、下地がきっちりあったからだろう。
魔法使いとしても、体術を学んでおいた方がいい。
ブロキーナ老師に私向きの体術を教えていただけるよう、相談に行ってみたいものだ。
それと並行して持ち歩いている魔法の筒に、本来の用途を与えてみようとも考える。
キラーマシンの構造を調べたので、それを応用して"たけやり兵"でも作るかということだ。
確かたけやり兵自体が、キラーマシンの廉価版という設定だったことを思い出した。
作って性能を確かめてからではあるが、先日のような事態に陥った場合、
時間を稼いでもらっている間に私が逃げるということも可能になる。
まず、一体作ってみて、用途をどうするか考えてみるとするか……。
などと考えていたら、眠気が来てそのまま床に就いた。
三日ほど安静にした後、久々に散歩がてらにヨミカイン魔導図書館の外を歩いていると、
ボリクスとチョコマ殿が修行をしている。
というよりは、
チョコマ殿が延々と呪文を繰り出して、肩で息をしている。
「ボリクスのそれ、すごいな! なんでできてるんだ?」
「これが
「
「やってええよ。効かへんからな」
年齢に似合わぬ呪文の使い手だ。
私が歩いてきたのを見て、二人とも走ってやってきた。
「ザボエラ、起きるのが遅いぞ!」
「調子はええんか?
「大丈夫じゃよ。だるさも昨日のうちに軽くなったわい」
「ザボエラ! 呪文を二つ同時に使う方法を教えてくれ!」
チョコマ殿にそう問われるが、あれは習得に時間がかかったな。
確か魔界でドラゴン・ウーと戦う辺りで、ようやく実戦投入できた技術だ。
そうだな……。まずは攻撃呪文を連射することから初めて、
例えば、
攻撃と回復を同時使用するような違う呪文系統は難易度が高いのだ。
そう話したところ、二人とも不思議そうにしていた。
そこへメタッピーが帰ってきた。私が魔法玉とヨミカイン魔導図書館の技術で作ったものだ。
簡単に言うと、伝書鳩の機能を持たせることができる。
魔法玉をボディにつけるだけで簡単に作れた。
行先は一ルートしか記憶できないが、昼夜関係なく飛行できるのがメリットだ。
ただし、場所を教えるのにメタッピーを持って、
これは
なんと、アバン殿がやってきたらしい。事情を話して引き留めているから来て欲しいとの事だ。
疲れ知らずで目的地まで飛び続けるメタッピーは、
ネイル村からなら数時間でヨミカイン魔導図書館までやってくる。
とり急ぎ行こうとしたらボリクスに止められた。
「まーた、
待っときや! クロコ連れてくるよって!」
そして、戻ってくるまでチョコマ殿に見張っててくれと言って
両手を腰に当てて、すごんでいるらしいチョコマ殿が私に話しかけてくる。
「ザボエラはお爺ちゃんなのに落ち着かないのか?」
「そうかもしれんのう……」
私は観念して丁度いいサイズの石に腰掛ける。
私を見張っているチョコマ殿に、
大人しくしておるよと言って、ボリクスたちが戻ってくるのを待つことにした。
独自設定
熟達してくると、魔物の種類まで判別できるようになる。