ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第三十話 覇者の鎧

ホルキンス殿に別れを告げ、カールから瞬間移動呪文(ルーラ)でヨミカイン魔導図書館へ戻った。

丁度、ロカ殿が外で子供たちに剣を教えていて、そこで些細なトラブルが起きてしまった。

ロカ殿の指導にマァムが加わっていて木剣を携え、豪破一刀の構えを行っていたからだ。

それを見たレイラ殿がロカ殿に怒っていたが、私が入って仲裁を行う。

 

 

「将来僧侶にしたいというレイラ殿の気持ちも分かりますが、

そこはまずこの子(マァム)の好きにやらせてみてはいかがかな?」

 

「そうなんですが……刃物を持つのは僧侶の戒律としては許されてませんから……」

 

「でも、お前、これ木剣じゃないか……」

 

「それとこれとは話は別々でしょう! 大体、あなた(ロカ)は──」

 

 

その場はアバン殿と私で仲裁をして、マァムがせっかく会えた父との思い出が欲しいというから、

好きにやらせてあげればいいのではないかという事で落ち着いた。

まだ、幼いのだから先々を決定するには早すぎるし、

色々試してみて向く向かないがあるのではないだろうかと諭した。

それこそ、まさしく僧侶戦士という道もあるわけだし、

可能かどうか分からないが、パラディンという道も選択できるのではないだろうか。

 

 

破邪の洞窟で拾った物の整理を終えて、ケインが横で目録を作り、竜水晶が収納している間に、

私は留守にしていた六日間ほどで起きたことについての報告に目を通していた。

 

テランに作られている新生ギュータは、人がいなくなった村がそのまま現存していたため、

ギュータの優れた達人たちが手を入れる事で意外と早く使えるようになったらしい。

ついでというわけではないが、北にある漁村ウルス村との道を整備し、

海産物を効率的に運ぶ経路を作る計画が立っているとのことだった。

私がフォルケン王に渡した産業振興策の一つで、ウルス村に塩田を作るというものがあり、

ギュータの達人たちの知恵の下、それが上手くいきそうだという報告も届いている。

 

また、新生ギュータのある村の場所はいままで放置されていたせいか、

モンスターがそれなりに出現するようで、まだ危険度が高いそうだ。

もっとも、ギュータの達人たちなら十分対処できるレベルではあるらしいが。

それをある程度排除するまで、子供たちを預かってほしいという嘆願も来ている。

いっそ、落ち着いたら私が赴いて、破邪呪文(マホカトール)で村を囲ってあげてもいいかもしれない。

私の破邪呪文(マホカトール)がどの程度役に立つかの実験にもなる。

 

書類を片付けながら、破邪の洞窟で依頼された件について改めて考えている。

人間の神の残留思念に頼まれた真ザボエラの抹殺だが、なかなか難易度が高い話だろう。

彼は現在、ザムザと共におそらくは魔界にいるらしい。

つまり、彼のこれからの行動は三つ考えられる。

一つ目は一足早く大魔王バーンの麾下に馳せ参じ、ハドラーの復活を至近で待ちわび入れ替わる。

二つ目はヴェルザー陣営に取り入り、キルバーンの応援要員としてバーン陣営に食い込む。

三つ目は私の知らない魔界の彼のラボに籠り、ザムザと共にハドラー復活を待つ。

 

現状は一つ目が一番可能性が高い。最短ルートではあるからだ。

確実に魔王ハドラーの目覚めの時、一番無防備な瞬間に立ち会えるだろう。

だが、何をもって取り入るかという事だ。

ザムザはそれなりに強いが魔王軍で厚遇されるレベルではない。

超魔生物の研究をかなり完成させているとしたら、興味を持たれるかもしれないが……。

 

二つ目は考えてはみたが、ほぼありえない話だ。

遠回りなのもあるが、敵中に入り込むスパイという時点で、

まずヴェルザー陣営に信用される必要がある。

あるのだが、バランとの戦いで、ヴェルザー一族は全滅しているため、

有能な幹部クラスを求めている可能性は出てくる。

ボリクスに聞いたところ、ヴェルザー十二魔将というのがいたらしい。

その内、九名がヴェルザー一族だったので、全滅しているとしたら幹部が足りないだろう。

そこを上手く立ち回れたとしたら、わずかながら可能性がないでもない。

 

三つ目は何を行うか読めない所が怖いのだが、私が真ザボエラの立場だとしたら、

現状で唯一の手駒であるザムザを、不安定な超魔生物にする危険な橋は渡らないだろう。

どうするかと言えば、ハドラー復活まで彼を褒めたたえ、修行させて成長させる。

もしも極大呪文一つでも修められればウリになるはずだ。

さらに研究も超魔生物学を推進させ、実績を作ってハドラー復活まで待つ。

ザムザの価値をかつての自分レベルまで高めるのだ。その上でハドラーから声がかかれば御の字。

 

三つ目が可能性が高いだろうが、三つ目プラス一つ目の可能性もあるか。

判断が難しいな。やはり、情報が足りない。

この件は一旦保留にして、まずは情報を集める必要があるだろう。

魔界は最初に苦労したイメージと、土地勘がないこともあり、

軽々しく訪れる事に抵抗感がある。

大魔王バーン、冥竜王ヴェルザーの二大巨頭の本拠地が存在するから、

あてもなく闇雲に探索する事は難しい。

たとえば瞬間移動呪文(ルーラ)などが使えない結界で阻まれる可能性もあるのだから、

それを考慮するとなにか正確な情報をもっていない限り、気軽に行く気になれない。

 

実は魔界について一つだけ当てがないわけでもないのだ。

それについて人間の神の残留思念に対して話を聞いてみたら、

極めて危険であるし、交渉を持てるほど正気であるか怪しいと言われてしまった。

引き受けてしまってなんだが、かなりの難題だなこれは……。

 

 

あと、仲間達に私がザボエラに憑依した地球の人間であるという話をするかは、

長い間悩んだのだが、人間の神の残留思念から依頼を受けた所で、覚悟を決めた。

その際に聞いたのだが、私の現在の状態は世界から見ると、どういう扱いなのかと尋ねたのだ。

ザボエラの体にザボエラの魂として宿り、

この世界の魂の戸籍のようなものをザボエラとして得た状態だという事。

つまり、魂は別人(わたし)のものではあるが、世界から見た場合、完全なザボエラであるのだ。

真ザボエラが引き起こした実験の結果ではあるが、私は(ザボエラ)の肉体を奪ったという事になる。

 

そして、彼を殺害する依頼を受けた以上、せめてその罰として、

憑依した人間ではなく、本物のザボエラとして生きようと決める事にした。

地球世界の■■■■■という人間は死んだ。

ならば、私は死ぬまでザボエラであるという嘘を付き通そうと考えた。

だからこそ、ザムザも救ってあげねばならないという事も、私のエゴとして決める。

その話を、人間の神の残留思念に説明すると彼はため息をついた。

 

お前は事故の被害者のようなものだから、責任を感じる必要はないとは言われたが、

だとしても相手の人生に成り代わったのだ。

ならば、最後まで成りきった方がいいだろう。

ただし、(真ザボエラ)のように策を弄していくのではなく、

良い存在として彼の名声を高めてやろう。

そこは、恐らく魔王軍で成り上がりたかった彼に対しての、意趣返しにもなるのではないかと。

 

人間の神の残留思念は、お前は生真面目ではあるが、大分変っているなと呆れられた。

そんな、破邪の洞窟での問答を思い出しながら、書類を片付けていると、

外が暗くなっており、夕食の時間になっていた。

ケインから夕食が出来ておりますと声をかけられ、彼について部屋を出ていくのだった……。

 

 

明くる日、ネイル村にレイラ殿とマァムは帰る事になった。

ロカ殿は滝のような涙を流しているが、マァムは手を振ってまた来るねと言っている。

英霊として蘇ったロカ殿の事も含めて、アリアム殿にきちんと説明しておこうという話だった。

アバン殿もアリアム殿には世話になったのに、礼も言っていなかったので、

二人を送るついでに挨拶をしたいと言い、三人は瞬間移動呪文(ルーラ)でネイル村に戻っていった。

 

ヨミカイン魔導図書館の外で、チョコマ殿が火炎呪文(メラゾーマ)を使えるようになったので、

それを見せてもらっている。

その後、私が岩石獣化呪文(レゴール)を使ってボリクスとチョコマ殿が二人して乗っていた。

岩石獣化呪文(レゴール)で作り上げた岩の大蛇は、術者が乗れば細かい指示が出せるが、

そうでない場合は"さくせん"くらいの大雑把な命令を聞く感じになっている。

 

地系の呪文は地爆呪文(ジバリア)もそうだがアレンジが利く。

岩石獣化呪文(レゴール)火炎呪文(メラ)を掛け合わせてあげると、通常の火を吐く蛇ではなく、

岩石が灼熱した真っ赤な蛇が出てきて、口から溶岩を吐いてきた。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)。これやと、熱すぎて乗れへんで」

 

「失敗だぞザボエラ。チョコマたちのお尻が焼けてしまう」

 

「乗るという方向性で考えれば失敗じゃが、乗らんでもいいかもしれん」

 

 

不思議そうな顔をする二人に説明する。

 

 

「完全に使い道を戦闘に振ってやればよいのじゃよ。

数を頼む敵が殺到してきたら、突っ込ませてやればどうかのう?

大混乱を起こせるじゃろうし、大打撃を与えられそうだ。そういう使い道があるかもしれん」

 

 

考えを滔々と述べる私に対して、ポカーンとしていた二人がニヤリと笑う。

 

 

「「また、ザボ爺(ざぼじい)はえげつないこと考える~」」

 

 

と冷やかしてきていた。

さて、氷系呪文(ヒャド)でも実験をするかと思ったら、ボリクスが叫ぶ。

 

 

「チョコマ構えろや! ザボ爺(ざぼじい)、誰か飛んでくるで!!」

 

 

と、一瞬遅れて瞬間移動呪文(ルーラ)の光が見えて、そこには傷だらけのマトリフ殿がいた。

チョコマ殿が走ってマトリフ殿に駆け寄る。

 

 

「マトリフ!? どうした、なにがあった!」

 

「しっかりしなされ、マトリフ殿! 回復呪文(ベホマ)!」

 

 

状況を聞くまでもなく、私が回復させる。

マトリフ殿なら傷を癒してからこれるはずだが、

つまりそれより瞬間移動呪文(ルーラ)で戻ることを優先した。

それは緊急事態が発生したという事に他ならない。

 

 

「助かったぜ、あんたがいてくれて。とんでもねぇことになった」

 

「マトリフ、無理をするな!」

 

 

心配げに尋ねるチョコマ殿に、優しく頭を撫でて心配ないぜと言うマトリフ殿。

だが、その様子は疲労感から苦しげではある。

 

 

「少し休まれた方がいい。ボリクス、中へ運んでくれ」

 

「おう。マトリフ、うちが背負ってやるさかい」

 

「あと、五年後くらいに頼みたかったな……」

 

 

軽口を叩きつつも、終始緊張を解かないマトリフ殿。

私たちはヨミカイン魔導図書館の一室で話を聞いた。

薬湯を飲み落ち着いたマトリフ殿は、リンガイアで起こった事件について説明を始めた。

 

マトリフ殿はギルドメイン山脈の麓にあるリンガイアの村を退避させるため、

権限がないパプニカではなく、リンガイアの力を借りるために赴いていた。

 

ギルドメイン山脈の麓にある村は、リンガイアに所属する村が5個所。

その内、3つは間に合ったが2つの村は間に合わず既に焼き尽くされた後だった。

だが、偵察していた戦士たちが、それとは別にギルドメイン山脈の側にある、

地図にない小さな祠の村が滅ぼされていたという報告を入れてきた。

その直後、リンガイア王テオドルは顔を青ざめさせ、

バウスン将軍とマトリフ殿だけを連れて、別室に行き話を始めた。

 

前置きとして事態が事態だからあなたの力を借りる必要があるかもしれない。

王家の秘事であるので、他言無用でお願いしたいと念を押されたという。

いかなる話かというと、その祠のある村には、覇者の鎧が厳重に封印されているという事だった。

 

 

 

時代はさかのぼり、人間と魔族と竜族が争っている神話の頃の話だ。

人類は一つの帝国に支配され、強大な力を持ったドラゴンや、絶大な魔力の魔族に対し、

大量の人間を戦争に投入することによって戦線を維持していた。

帝国の名はギルドメイン。山脈の名として残っている。

帝国を支配した皇帝の名は、よほど存在を抹消したかったのか一切記録がないらしい。

 

その皇帝は人類最高の鍛冶師と魔法使いを招集し、

探し出したオリハルコンを加工して、覇者の冠と覇者の剣と覇者の鎧を作り上げた。

そして、その武具は揃う事ですさまじい力を発揮したのだ。

曰くそれは支配の力。人間にしか通用しないが、よほど強い意志を持っていないと、

皇帝の言うがままに命を捨てて戦う狂戦士になってしまう。

命を顧みない戦士を幾らでも投入することで、魔族や竜族とも互角に戦っていたのだ。

 

だが、ある時、皇帝の側近であった親衛隊の隊長であるリンという青年が、

人間が戦争で使いつぶされていく様に反発を覚え、皇帝を抹殺して戦争を止める計画を立てた。

覇者の武具を作り上げた鍛冶師と魔法使いも後悔しており、リンに協力を申し出る。

親衛隊の精鋭100人が、魔法使いの作った支配の力が通じぬ薬を飲んで、

鍛冶師の作った青鍛鋼(ブルーメタル)やミスリルの武具をまとい、

オリハルコンの武具に身を包んだ皇帝に立ち向かっていった。

 

リンはガイアの剣という大地を操る武器を携えている。

それはミスリルと青鍛鋼(ブルーメタル)の合金で作られ、

大地を操る力を備えた強力な武器ではあったが、覇者の剣には一歩及ばなかった。

 

親衛隊は皇帝に反旗を翻し、三日三晩の激闘の末に皇帝を倒し、

人類は意志を奪われ、戦争で使い潰される運命から解放されることとなる。

100名の親衛隊の内、リンとその友二人だけ生き残ったが、

皇帝は死に際に呪いの言葉を残した。

 

 

"我が鎧と我が魂は不滅!

幾星霜の後に蘇り、人間族を魔族と竜族との戦に再び駆り出すであろう"と。

 

 

覇者の鎧はオリハルコンで出来ており、

皇帝の怨念と言う名の暗黒闘気が吹き上がるため破壊は不可能だった。

辛うじてガイアの剣を封印の核とすることで、皇帝の怨念を封じる事に成功。

リンは国家の礎となって覇者の鎧を封じてくれたガイアの剣、

自らの愛剣に敬意を表して、治める国の名をリンガイアとした。

つまり、リンはリンガイア建国王である。

そして、二人の友人の一人が代々将軍職を継ぎ、バウスン将軍の家系の祖となった。

もう一人の友人が、南へ覇者の冠と剣を持って行き、覇者の鎧と物理的な距離を遠ざけた。

彼は第二の皇帝を生まぬために、敢えて尚武の気風を封印し、ロモスという国を築くことになる。

 

 

 

覇者の鎧を封じていたのが村の祠であり、50年ごとに封印を強める儀式を執り行っていて、

歴代のリンガイア王は建国王からの口伝で、それを全うし続けた。

その村が滅ぼされたという事は、皇帝の怨念が解放されているかもしれない……。

話を聞いてすぐ、腕利きの精鋭を100名募り、バウスン将軍が彼らを率いた。

マトリフ殿もバウスン将軍と話をして、

もしもの時はテオドル王だけでも逃がしてくれと話をした。

 

マトリフ殿たちがたどり着いた村は──地獄のありさまだった。

蘇った亡者の戦士たちが怨嗟の声をあげる様で、精鋭100名にも緊張が走る。

その最奥に坐した覇者の鎧を身にまといガイアの剣を携えた……闇の中に真っ赤に光る双眸の男。

名も知られぬ皇帝は、朽ちた髑髏の顔をこちらに向け宣言したという。

 

 

「覇者の剣と冠は、遥か南にあるようだな。小癪な真似をしてくれた!

ならば、剣と冠を手に入れる旅程で、皇帝たる余の亡者の軍勢を増やすとしようではないか!」

 

 

リンガイアの精鋭は臆せず皇帝を討ちに殺到した。

いずれも闘気の剣(オーラブレード)を使える力量(レベル)の優れた戦士たちだ。

だが、皇帝はそれすら遥かに超える、卓越した力量(レベル)の戦士だった。

ガイアの剣を一振りすれば、暗黒闘気の刃が兵士数名をあっという間に両断する。

マトリフ殿が放った閃熱呪文(ベギラマ)火炎呪文(メラゾーマ)も、覇者の鎧のオリハルコンにさえぎられて通用しない。

リンガイア王はなかなかの使い手だったようで、闘気の剣(オーラブレード)で皇帝の攻撃を数合持ちこたえたが、

流石に力及ばず重傷を負ってしまった。

このままでは全滅するので、残った精鋭が決死の突撃をして時間を稼いでいる間に、

瞬間移動呪文(ルーラ)で王と将軍だけ連れて、命からがら逃げだしたという。

 

 

「そいつ、オリハルコンの鎧だけでも厄介やのに暗黒闘気バリバリかいな?」

 

「もともと、魔族に奴隷として連れていかれた人間の戦士だったみたいで、

魔界で暗黒闘気を身に着けて地上へ戻ってきたようだな。

死んだ直後から、怨念と共にすごい勢いで暗黒闘気を吹き出してたらしいしな」

 

 

苦々しい顔でマトリフ殿は言った。

 

 

「あの野郎、身のこなしが凄まじいし、動きが異常に速くてな。

辛うじて閃熱呪文(ベギラマ)が当たったが、オリハルコン相手じゃ意味がねぇ」

 

極大消滅呪文(メドローア)なら通じそうですが……速い相手には難しいですかな」

 

「あいつの足を止めないと無理だな。

真正面から撃ったらかわされて、次の瞬間オレは真っ二つだ」

 

 

ため息交じりにそういうマトリフ殿。

リンガイアへ重症の王と、バウスン将軍を連れて戻る。

騒然とする場内で、二人を回復させた後、厳戒態勢で城を守るように将軍が通達。

リンガイア王は勇者アバンに頼るほかはないだろうと話し、マトリフに皇帝の排除を依頼する。

一応、極大消滅呪文(メドローア)を当てる事ができるかはともかく、

覇者の鎧やガイアの剣はリンガイアの国宝に準じるものだろう。

簡単に言えば、皇帝を倒す過程でそれらを破壊しても構わないかという、

確認をテオドル王に再度念押ししておいたのだ。

リンガイア王テオドルは、文句を言える筋合いではないし、

もしも破壊できるならしてもらいたいくらいだと話し了承したという。

王から言質を取ったので、急いでヨミカイン魔導図書館へ戻ってきたそうだ。

 

 

状況を聞いた私たちはすぐに行動を開始する。

取り合えずマァムと仲良くなっていたチョコマ殿が、

ネイル村へ行けるようになっていたので、アバン殿とレイラ殿へ連絡をお願いした。

その間に、私とマトリフ殿、ボリクス、竜水晶の四名で偵察へ行く。

ギルドメイン山脈に沿って迂回するような形で進行していたので、

その姿はすぐに見つけることが出来た。

 

 

「マトリフ、すごい数やんか……。あないな軍勢やったんか?」

 

「いや、オレが出会ったときは、村の人間や駐留してた戦士だけだった。

大体、40とか50くれぇの人数だった……はずなんだがな……」

 

 

マトリフ殿も歯切れが悪いし、言葉が続かない。

絶句する光景と言うのはまさにこのことだろう。

私たちは離れた場所から、加速呪文(ピオリム)をかけて高速移動できるようにした、

岩石獣化呪文(レゴール)の岩蛇でその地獄の軍勢を呆然と眺めている。

 

軍勢の規模が異常なのだ。恐らくは千を越える死者の戦士たちが粛々と歩いている。

そこにはガストやゴーストなど、アンデッドモンスターもいて、地獄が溢れたかのようだ。

 

 

「現在、敵の軍勢は1138……1143……1159……」

 

「なぜ増えているのじゃ、竜水晶?」

 

「推測になるが周囲の森に潜むアンデッドモンスターを呼び寄せているようだ。

それと、戦場の跡地には戦死者の肉体が埋まっているだろう?」

 

 

私とマトリフ殿はサーッと青ざめた。

この軍勢は時間と共に、どんどん拡大して膨れ上がっていくのだ。

 

 

「なんで数が分かるんや竜水晶?」

 

「我が光の闘気を使えるからだ。汝も屍たちが放つ闇の生命力を感じてみよ。

このザラつく感覚がアンデッドの存在だ」

 

「ははーん。どれやどれや? ……これやん!

うちもなんかわかってきたで。まぁ、これだけいりゃ分かるわな」

 

 

二人は呑気に話しているが、地図を見ながら進行方向を算出して驚愕した。

方角からして、このまま真っすぐ侵攻してくるとテランにぶつかるのは明白だ。

そんなことになったら、テランは容易く滅ぼされてしまうだろう。

私たちは偵察を早々に切り上げて、ヨミカイン魔導図書館へ戻った。

 

 

顔色を悪くしている私たちを見て、クロコダインが声をかけてきた。

 

 

「おお、戻ったかザボエラ!

アバンたちが到着したが……大丈夫か。何があったのだ?」

 

「千を超える死者の軍勢じゃよ。周囲のアンデッドを呼び込み、数をどんどん増しておる。

あのまま真っすぐ行けばテランに直進して侵攻してくるじゃろうな」

 

「なんだと……!? グズグズしておれんぞ」

 

「まず、皇帝と死者の軍勢を迎え撃つ策を考えねばならん。

それが決まり次第、フォルケン王に会って力を借りんとな」

 

 

話している間に考えがまとまってきた。

見渡すと、みなが私を信頼したまなざしで見てくれている。

マトリフ殿と策を話し合いながら、私はアバン殿たちが待つ部屋へ足早に歩んでいった……。

 

 




独自設定
ヴェルザー十二魔将
メンバーの内九人がヴェルザー一族と言う親族経営です。
実は残り三人は一族外の存在で、運よく魔界で留守を任されていたため、
バランに倒されずに済みました。

リンガイア王テオドル
断片的な本編の描写から考えると、この人は自国が攻められているのに、
オーザムに最強の戦士であるノヴァを送り込んでいます。
オーザムと友好関係が強かったもしくは親戚関係だった可能性もありますが、
ノヴァなら早く片付けて戻ってこれる、それとリンガイアの強さを信じていたのでしょう。

実際、超竜軍団によってカールは5日で滅ぼされていますが、
リンガイアは一週間持ちこたえました。
ノヴァがいれば、それがもう少し伸びていたかもしれませんが、
その場合、彼は本編に登場できなかったかもしれません。


覇者の鎧
Q.覇者の冠と覇者の剣があるのに覇者の鎧はなぜ登場しなかったの?
A.揃うと危険な人間支配の魔法が発動するから敢えて封印されていた。

という設定にしました。
覇者という名前がずいぶん厳ついなとは長らく思っていました。
神話の時代は人間と魔族と竜族が血みどろの戦いを繰り広げていた、という話です。
つまり、人間が一方的にやられていないということは、人間の利点は数だから、
数を束ねて敵より多い戦力を投入していたのかなと考えてこうなりました。
簡単に言えば、ロードス島戦記の支配の王笏ですね。
超英雄ポイントを持っていれば支配の魔力に抵抗できます。

あと、本編で話すことがない補足設定としまして、
なぜロモスではその話が伝わっていなかったのかという事です。
ロモスに渡ったリンガイア建国王の仲間が、黙っていた感じですね。
ロモスが呑気な気風なのも、彼が敢えてそうしていたという所があります。
もっとも、ホイホイあげちゃったり、大会の商品にされるとは想像もしていませんでしたが。


補足の補足ですが、皇帝が死んで人類が魔族と竜族によって危機に陥った時、
最初の竜の(ドラゴン)騎士が間に合って彼らを魔界へ追い返しました。



変更点
魔族の奴隷戦士だったみたいで
→魔族に奴隷として連れていかれた人間の戦士だったみたいで

に変更しました。
"魔族の奴隷として連れていかれた人間"という意味合いだったのですが、
ああ、種族魔族で奴隷だった戦士に読めるなと思い慌てて直しました。
皇帝は人間です。日本語難しいですね。


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