ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
ダイの大冒険本編の8年前の話が開始しました。
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
第三十四話 夢の中の魔女
新年からクロコダインは老師の下へ赴き、修行に明け暮れている。
彼としては皇帝との戦いは衝撃的だったようで、
「本来ならばオレ一人で戦いたいところだった。
彼奴の心根はともかく、その絶大な暗黒闘気も卓越した剣技も優れた戦士のそれだ」
そこで彼方を見てため息をつき、頭をかくクロコダイン。
「……もしも、皇帝が覇者の剣や冠を身にまとっていたなら勝てなかっただろう。
オレはまだまだ力が足りないと、思い知らされたよ」
己の心に驕りがあったと思ったらしく、ブロキーナ老師から更なる修行を受けるという話だった。
以前からその傾向はあったが、本編のクロコダインよりも更にストイックであり、
己に厳しく求道的な感じだな今の彼は。
原作でのダイとの戦いにおいての、自分の流儀に合わない戦いを強いられた苦悩からの敗北。
それによって、やはり己の信じる道を貫くべきと覚悟を決めた彼とは、
また違う方向への精神的な成長を遂げているようで好ましくはある。
私はテラン城へ赴き、新年のフォルケン王との初の会談を行った。
いま、私は一月に数度、城を訪問してはフォルケン王に助言を行っている。
今回、
国ごとに対応を考えて返信する内容を協議している。
たとえば、カールの場合はホルキンス殿経由なので、
公にテランから送ったという形ではない。
だから、フローラ女王からの個人的な礼の書状になっているのだ。
リンガイアはテオドル王から、
士気も高くなってきているという内容の手紙が送られてきている。
リンガイアとテランの定期的な貿易便が、実際に動くことになり、
先月から行き来が活発になっていた。
ウルスの魚介類の干物や、ウルスで作った塩なども品質が良く好評であり、
ベンガーナに比べて運ぶ日数が短いので、輸送費が嵩まないのも良い点であるそうだ。
外交的な話をした後は、内政的な話になるが、現在、テランの人口は600人を超えた。
最初に訪れた時、150人であり、未来には50人になってしまう国とは思えない発展だ。
それでも、大国でいう大きい街程度の人口規模ではある。
大国並みとは言わないが、1000人ほどの人口になれば、防衛も容易になるだろう。
フォルケン王はあれから更に精悍さが増し、
以前は床に臥せっていたのが信じられないレベルの元気さだ。
最近では拳に集中した闘気で、モンスターを一人で撃退したと聞いて驚くほどではある。
以前より、民の中に入るようになり、考えも変わったそうだ。
「私は以前は、知識を集めそれを己一人でうちに秘めて、
自分の中で答えを作り出してゆくことが楽しみでした……」
幾つかの問題に対しての方針を話し合った後、お茶を飲みながら雑談している際、
フォルケン王はそのように私に話した。
「多くの事を知ると、己の中でそれを自分なりに形にしたい。
そのような欲求は私にもありますな」
「ですが、知識とは人々の役に立ててこそ。特に私は為政者として王としてあるのです。
ならば、得た知識を民の為に、生活の為に使う事こそが本義であろうと……、
遅まきながら気づきました」
「遅くなどありませぬぞ。真理と言うやつですな。
王には様々な形があり、己の才能と武ですべてを平らげる覇王の道もありましょうが……。
ですが、それでは肩が凝ります。
民の為に知識を用いるという、フォルケン陛下のなさり方はよいモノであるとワシは思いますぞ」
クロコダインの変化もそうだが、フォルケン王も大分変化している。
王であるのに隠者であるかのような生き方をしていた原作の彼だが、
知恵を自分の為だけに発揮するのではなく、
民の為に知識を用いる事はまさしく正しい教養であるだろう。
いまのフォルケン王の傾向は、素晴らしい事だと私は感じている。
数日後、ヨミカイン魔導図書館にマトリフ殿が訪ねてきた。
「よぉ、あれから調子はどうだい?」
調子というのは、実は私が
契約が出来ているのに、
目まぐるしかった為にすっかり忘れていたのだが、
先日、
それを話したところ、オーザムで氷の樹木を拾ってきてくれて、それを煎じて飲ませてくれた。
「昔、オレの弟弟子に、まぞっほってのがいたんだ。そいつが、あんたと同じ症状でな」
"属性が足りない"という事が起こることがあるらしい。
その呪文と契約ができる事と、その魔法使いの呪文属性との適応はまた別の話らしい。
たとえば、
その場合、呪文を行使する才能はあるが、
どうすればいいかと言えば単純な話で、その属性を宿した樹木なりを、
適切な方法で処理して体内に摂りこむことをすればいいだけだ。
魔法使いとしては比較的基本的な話らしかったので、
私が知らなかったことにマトリフ殿が驚いていたくらいである。
「しかし、
「
「氷の樹木は煎じた汁が飲めなくはない程度だが、炎の樹木は地獄みてぇな辛さでな」
まるでその味を思い出すかのように、
顎に手をやって忌々しさを噛みしめているようなマトリフ殿。
これはまさか……?
「……もしかして、飲みましたかなマトリフ殿?」
「若い頃にな。苦い思い出ならぬ、辛い思い出ってやつさ」
そう言った彼の表情があまりにも仏頂面だったので、私は苦笑を禁じえなかった。
現在の私の状況だが、
そういえば、ポップは最後まで
それでも
一応、基準として
「ところで、最近、瞑想を行うとなにか己の中に、
別種の魔法力を感じられるようになりましてな」
「……そいつは、もしかすると、例の呪いじゃねぇのか?」
腕を組んで難しい顔で考えていたマトリフ殿は、掌を叩いてそう答えた。
他人の呪いは他人の魔法力である。
例えば戦士が呪いをかけられて、それを異物感で表現することはないだろう。
だが、魔法使いは瞑想によって、自分の魔法力を把握することができる。
昔、マトリフ殿がガンガディアとの戦いで、バラまいた己の
それと同等の
その際、ガンガディアが驚愕していたが、あれは真摯に己の魔法力と向き合い、
瞑想によって完全に自身の魔法力を把握していたからこそできた芸当だ。
つまり、急に異物感が出てきたという事は、
魔法力が増大している事と、魔法力を掌握する力が強くなっていることが、
原因ではないかと言う話だった。
その後、竜水晶に習った
私は適性があったので、上級の
現在使えるのは
マトリフ殿は
威力範囲が竜水晶より広かったので、竜水晶がちょっと膨れていたのが面白かった。
夕食後にマトリフ殿がパプニカへ帰った。
私は手紙を数通認めた後、ボリクスとチェスをして五連勝して眠りに就いた。
そして、意識を取り戻したとき、私は特殊な空間にいる事に気づく。
何か危険な場所と言うよりは、沼地の横にある薬草と毒の臭いがする小さな家。
もっと端的にいえば、おとぎ話の魔女の家のような場所に来ていた。
まさかと思いながら、自分の背後を見ると光るヒモのようなものがついてきており、
直感で理解できたのだがそれを引けばいつでも帰れるようだった。
この家の主が誰なのかは分かるし、恐らくは交渉しても無駄な予想は立っているのだが、
どういう人物であったのか知りたく思って、家の中に入った。
「礼儀がなってないね。外に呼び鈴があるじゃないさ」
青いローブを纏い、薄めの紫色の肌をした女性の魔族が腰に両手を当てながら声をかけてきた。
床までつくほどの長い金髪をなびかせた気だるげな魔女は、
"見当はついてるだろうけど"と前置きしてグレゴリーアだと名乗る。
髪のボリュームがあるので、魔族の特徴の長い耳が見えないほどだ。
若干、淡い感じの金髪だったので、ザムザの髪は彼女からの遺伝かと思わせるものがあるな。
「いやはや、これは申し訳ない。だが、この世界自体がワシの内部世界にあるのじゃろう?
では、ワシの方がオーナーとでもいうべきではないかな?」
「驚いた……アンタ、姿はザボエラだけど、別のやつだね」
しかし、別に奇抜な衣装ではないのだが、大分豊満なので目のやりどころに困る感じだ。
更にはザボエラの日記に記された彼女より、穏やかで会話が通じるので少し拍子抜けしてしまう。
椅子に座るように言われ待っていると、奥からお茶を用意してきてくれるグレゴリーア。
一口飲むとハーブティーらしく、独特な香味がするがすっきりした味わいは嫌いではなかった。
「で、用事はなんだい? 言ってごらんよ。言うのは自由さ」
取り合えず掻い摘んで現状をグレゴリーアに対して説明した。
私がザボエラの肉体に憑依した、別世界の人間であるという事だ。
私を呪い続けても
それで呪いが穏便に解けてくれるなら苦労はしないが、一応やれそうな事はやってみる主義だ。
別に怒りもせずに聞いていた彼女からの回答は、推測の域を出るものではなかった。
「話は分かったよ。話は分かったけどさ……。
もし、アタシが本体だったとしたら、呪いを解いてやらないでもなかったろうよ。
返す刀で一目散にその……真ザボエラかい?
そいつの所に飛んで行って、地獄の苦しみを味わわせてやったろうね」
"だってアンタ呪っても意味がないんだもーん"と言って、
声が擦れたことに気づいて咳ばらいをするグレゴリーア。
彼女は一口ハーブティーを飲んで、ため息をついて言葉を続ける。
「けどね、この呪い自体がその真ザボエラだっけ? そいつへの憎悪で形作られた呪いなわけよ。
呪い自体が感情の産物だし、アタシは管理してるだけ。停止の権限とかないわけよ」
「やはりそうだったか……。いや、失礼したのう。
あなたが大分話が通じる為、可能かどうか問いただしてみたかったのじゃよ。
もしこの呪いの管理者がいるなら、憎悪で凝り固まっており、
会話にもならない可能性を考慮しておったのでな……」
ふーんと言って、髪の毛を指でくるくるやりながら、次の言葉を考えているようだ。
指をパチンと鳴らして、こちらを向いて話を始める。
「呪い本体は憎悪と絶望で編まれてるからね。
ただ、呪いを管理するアタシ自身は……自分で言うのも変だけど、
だから、本来ありえない"穏やかなグレゴリーア"ってことよ……」
「ではやはり、別人に呪いがかかってるからと言って、穏便に解くことはできんのかね?」
「それは別よ。別の話さね。アタシは呪いを見守るだけ。
そう言うと彼女は掌を上に向けて、お手上げというようなポーズをとった。
色々揺れるから、あまり動かないで欲しいのだが……。
「もっと言っちまうとね。呪いの目的自体が、アンタに不利益になる事を主としてるわけ。
例えばアンタの不利益と引き換えに、呪いを解く以外の何かをするなら、
交渉材料にならないこともないけど」
「呪いを解く以外だったら、交渉の余地があるということかな?」
「まぁ、そうなるさね。代価は重いけど、何がしたいの?」
ここで私は交渉を持ちかけてみた。
だが、可能であるのなら、切り札にならないでもないだろう。
私の話を聞いたグレゴリーア……本体ではなく呪いに付随した、
仮の人格の彼女だというが、その彼女はこう答えた。
「できないでもないけど、正気かい? あんたの寿命が尽きたらそこでお終いさね」
首をかしげて、頭を人差し指で支えながらそう答える。
「この先の戦いで、有利になるための保険が欲しいと思っておってな」
「そのために命を懸けるってのかい? 死んじまったらなにも残らないだろ?」
「死ぬとは限るまいて。それに、ワシが倒れたとしても、世界が平和になるなら……。
それで、みなが笑顔になれるなら良いのではないかと思っておるのじゃよ」
私の話を両手を組んで、その上に顎を乗せて興味深げに聞いていた彼女は、
何か思いついたというような蠱惑的な笑みを浮かべこう言った。
「けどさ、それだと、あんたが守りたい"みな"が、あんたが死んだことを悲しむんじゃないかい?
できれば、その平和な世界を、あんたと楽しみたかったって……さ?」
……そこまで考えが至ってなかった。
その事を、正直にグレゴリーアに話したら、彼女は大笑いしていた。
あまり大笑いしないでもらいたい。色々と揺れて、目のやりどころに困るので。
「フッフッフ……あー、久々にこんなに笑えるとは思わなかったよ。
まったく、アンタは、大馬鹿だねぇ……。アタシは、馬鹿は嫌いなんだよ」
交渉失敗したかと思い、思わず無念さがにじみ出てしまったのだろうか……?
私を眺めてニヤニヤしている彼女が、からかう様に言葉を続ける。
「けどさ、大馬鹿は好きなんだよ。大馬鹿は、予想もつかない途方もない事をする。
それを見るのが、アタシは好きだったのさ……」
そういいながら、私の提案を了承してくれた。
彼女の方からの条件としては、
さらに魔法力と連動してるから、魔法力が尽きた場合そこで
あと、ザムザを必ず見つけ出して、真ザボエラから守ってほしいと。
「アタシは呪いだけどさ。本体がもし生きてたら、そう願っただろうからね……」
ついでに、知る限りでいいから、魔界にあるザボエラのラボの場所を尋ねてみる。
そんなには知らないと言われたが、数か所のラボの場所の情報を提供してくれた。
私が礼を言った瞬間、彼女はかがんで額にキスをしてニッコリ笑う。
その感触に驚くと同時に私は目を覚ましていた。
「あれが武器になるかどうかは……これから次第かのう」
夢の中の話だったはずなのだが、額にキスマークをつけて歩いていたらしく、
ボリクスが指をさして大笑いしていたことを覚えている。
数日後、顔を洗って朝食を摂っている時間帯に、マトリフ殿がやってきた。
ケインが彼を案内して、一緒に食事を摂る。
食卓につきながらの話だったが、マトリフ殿の顔色は優れなかった。
「何が起こったのですかな?」
「困ったことが起きちまってな……。あんたの力が借りてぇんだよ」
それは、ベンガーナとパプニカの間の火種になりかねない話だった。
簡単に言えば、テムジンの置き土産である……。
独自設定
呪文が契約できているのに使えない場合がある。
こういう特殊な事があると面白いかと思って設定してみました。
グレゴリーア
外見の印象はひねりのない魔族の魔女です。
髪の毛が長いので耳が見えてない感じになります。
イメージはこんな感じです↓
【挿絵表示】
グレゴリーアとザボエラの契約