ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
本年最後の投稿になります。
お付き合い頂きありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
それでは、よいお年を。
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
ヨミカイン魔導図書館の応接室に二人を案内した。
ラーハルトはこの時、まだ14歳くらいだったか?
表情は生真面目だが、好奇心を抑えられず、興味深げに図書館内を見ている。
バランの方は堂々たるものだ。
本編より若いせいか、髭のボリュームがそれほどではない。
ボリクスと同質の力を持ちながら、それが既に完成されている彼からは、
戦士としての落ち着いた存在感を感じる。
バラン編における呼吸する災害のような、威圧感を振りまく危うさは見受けられない。
一応、魔導図書館の入り口でケインを置いて、
ボリクスを呼んできてもらうよう取り計らってはある。
私は別室で茶の用意をしながら、どう行動するべきか考えているところだが……。
彼についての記憶を手繰り、いくつかエピソードを思い出して検証してみよう。
バラン編の最後、ダイのわからずやという言葉に、バランはこう返した。
"……いまさら……生き方を変えられん。……大人とはそういうものだ……"
そのバランの言葉を受けて、見守ったヒュンケルの内心の述懐はこうだ。
"……バランは……人間の心を取り戻したのだ!
だからこそ自らの罪を清算するため、自分の息子に討たれることを望んでいる……!!"
ここで言う罪とは、本来は世界のバランスを保つ者であるはずの
世界のバランスを崩す者である大魔王バーンの軍門に下り、
魔王軍の超竜軍団団長となって世界のバランスを崩す側に加担したという事実だ。
然る後、リンガイアとカールを滅ぼし、
直接・間接的にも多くの人間を殺してしまっている事もあげられる。
更に言えば、血を分けたダイと骨肉の争いを行ったことも、
彼の自責の念を強めているのではないか?
その後の戦いでも、ダイの為に戦い、彼を守るためにバランは命を落とした。
ヒュンケルの説得はバランの逆鱗に触れてしまったが、あれは正論ではあった。
しかし、完全に感情で行動しているバランに対して、
正論での説得は得策ではなく逆鱗に触れ、竜魔人化を招いたのだ。
うむ……やはり、バランの説得は難しいな。いま、私に切れるカードがほとんどない……。
だが、バランの雰囲気が少し気になるから、様子を見ながら対応してみるとしよう。
二人は席についており、私が紅茶を注ぐ。
ラーハルトが自分が毒見をと言ったので、バランが叱責するシーンがあったが、
私はお気になさらずと言っておいた。
まだ、年若いせいかラーハルトの忠誠心が空回りしている感じがあるな。
私もお茶で口を湿らせた後、バランが大魔王バーンから、
祝辞の書簡を預かってきたと切り出してきた。
一体、何に対しての祝辞だろうかと訝しく思いつつ中を開く。
ギルドメイン帝国の皇帝とアンデッドの軍勢を倒した事を素直に賞賛し、
見事な戦いだったというその場で戦った者たちと私への祝福の言葉だった。
「まず、勘違いしないでいただきたいのは、私は大魔王バーン殿からこの書簡を預かっただけだ。
あなたに何かして欲しいであるとか、魔王軍への勧誘を依頼されてはいない。
彼の部下ではないからな。そこは安心していただきたい」
「それはご配慮いただきありがとうございます、バラン殿」
随分と親切な気づかいだな。
そして、重要なのは、バランが大魔王バーンと主従関係ではないという事だ。
やはり、この時点では、大魔王バーンの対等な交渉関係にあるということか。
それはともかく、大魔王バーンの意図を推測するとしよう。
こういう書状を大魔王バーンから送られることで、
人類と私への離間工作かと思えないでもない。
しかし、あの場で戦った者たちも含めての祝辞なので、それはないだろう。
元々、勇者アバンや一部の存在を除いて、大魔王バーンは人類を重く見ていない。
今回のバランに書簡を持たせた事についてだが、後日バランから、
私の人物についての感想を彼から聞こうという事だろう。
まず威圧することで私を部下にするというなら、ミストバーンを送ってくればいい。
人選がバランであるという所に、この来訪の妙があるだろう。
私の人柄をバランに見極めてもらい、大魔王バーンが気に入ったのなら、
その後にスカウト……だろうか?
逆に気に入られなかった場合、暗殺される可能性も考慮せねばならんな。
大分、胃が痛い話であるが、バランに一切戦う気配が見られないので、
このまま穏やかに話をして終わるという方向性もあるが……さて。
大魔王バーンがバランに使者を頼んだ理由は、
まず、単純にバランを信頼しているという意図を示しているだろうな。
さらに、人を見極める目利きで、あなたの力を頼りにしている、
暗にそういわれればバランとしても悪い気はしないだろう。
実際、バランの眼鏡にかなうのなら、大魔王バーンも喜ぶ有能な人材が手に入るわけだ。
つまり、大魔王バーンとしては、バランに手紙を持たせ、
私に渡すだけで部下候補の実力を推し量ることができる。
バランも大魔王バーンから信頼されているのだという心証になり、
彼の部下になってもいい方向に気持ちが傾くだろう。
まさしく、一石二鳥の布石だ。流石は大魔王バーン。
「あまり驚いてはいないように見受けられるなザボエラ殿?」
バランがそう私に声をかけてくる。
その声音は落ち着いており、バラン編の激昂しやすく剣呑な雰囲気の彼とは違う。
もう少し彼の心底を探るためにも、会話をしてみるとしよう。
「いやいや、私も魔族の端くれですからのう。
大魔王バーン殿から、このような書状を頂けば驚きもいたしますぞ」
「だが、大きく取り乱してはいない。
普通、大魔王バーン殿から祝辞を貰えば、もっと浮かれてしまうか委縮してしまうはずだ」
と、そこで紅茶に口をつけるバラン。気に入ったのだろうか?
「あなたはどちらでもない。微妙な驚き……その程度だ」
「なに、年の功と言う所ですかな」
ここで、初めてバランが好奇心を顕わにして、私に問いかけてきた。
「ところで、私はそのギルドメイン帝国の皇帝と、
アンデッドの軍勢について知らないのだが……。
よければ、その時の戦いについて教えていただけないだろうか?」
私は彼の言葉に対して頷き、ギザン峡谷での人類と、
ギルドメイン帝国皇帝の軍勢との戦いについて語った。
私の話を聞く彼の表情は、複数の感情が入り混じった、複雑なモノであった。
バランが何か言おうとした瞬間、ラーハルトが激昂して席を立つ。
そして、私を指差して、こう言い放った。
「お前は魔族なのに、なぜ人間などと協力して戦えるのだ!」
「協力してはいけない法でもあるのかね?
種族を超え、友であり仲間であるなら、助け合うのが普通ではないかな?」
右手は握りこぶしを作りつつ、左手を大きく振って、
私の言葉を否定するかのように話し出すラーハルト。
「オレの母は人間からの差別の末、命を落とした!
オレはその後、村から追い出され、一人で山で生きて人間を憎んだ。
そんな時に助けて下さったのは
「お若いの。ワシの言った通りではないかね? バラン殿が
種族を超え、助け合う事ができているとはいえんのかね」
絶句したラーハルトは鎧の魔槍を構え、私に向けて一閃したがそれをバランが止めてくれた。
手に集中した
「バ、バラン様!?」
「ラーハルト……私の顔をつぶすつもりか?」
「も、申し訳ありません!!」
席を立ち、片膝をついて頭を下げるラーハルト。
「大変失礼しました。これは借りとさせて頂きたい」
「で、私の人物の見極めはできましたかなバラン殿?」
「ほう……見抜かれておりましたか。これは、やはりザボエラ殿は大した人物だ」
「なに、いまは留守にしておりますが、
腕の立つ友人がワシを守る時と同じ空気をあなたに感じましてな。
恐らく、お若いお連れが激昂しても、あなたが止めてくれると確信しておりましたぞ」
「なるほど、肝が据わってらっしゃる」
バランは紅茶を飲み干し、もう一杯いただけるかなと私にお代わりを要求した。
彼は紅茶が好きだとメモっておいてもいいかもしれない。
なんなら、茶葉を差し上げてもいいだろう。
そこへ扉をバンと開けてボリクスが走って入ってくる。その後に竜水晶がついてきていた。
「ボリクス! お客様じゃぞ。礼儀正しくしてもらえんかのう」
「ハハ、悪いな
そういって、一目散にバランの側へ寄っていく。
バランも少し驚いているが、子供であるせいか鷹揚だ。
しかし、ボリクスの身のこなしを見てか、油断は一切見せない風で対峙している。
「なぁ、聞きたいんやけど。
ヴェルザーの性悪は、最期なんか見苦しい事いうてたんちゃう? 教えて欲しいんやけど!」
とバランに言ってのけた。
ラーハルトが無礼者!と一喝するが、バランに睨まれてシュンとしている。
「君は何者だ? なぜ、ヴェルザーの事を知っている?」
「ああ、うちは元は雷竜ボリクスや。いまは、
「……!? そ、それはどういう……」
バランが絶句している。変な事をボリクスが口走らないように、私が介入して事情を話す。
ボリクスと魔界で出会った事や、彼女が
地上に出てからの話を掻い摘んで話した。
「そうか……
まさか、竜族が保有していたプロトタイプの肉体があったとはな。流石の私も知らなかった」
「
なぜ、テランの竜の神殿に訪れなかったのか?」
そう口をはさんだ竜水晶に対して、
一瞬バランが怪訝な顔をしてから逆に彼女に問いを投げかけた。
「失礼だが、あなたは?」
「我は竜水晶。テランの竜の神殿の奥深くに坐していたが、
ボリクスたちの要請により人間態をとっている」
「あなたは竜水晶だったのか。まさか、そんなことができるとは……」
互いに少しずつ情報交換して、まず、最初のボリクスの質問に対してバランが回答する。
ヴェルザーは型通りの恨み言をいって、死んだ瞬間に不死の魂が飛び去ろうとした。
同行した天界の精霊が封印して魔界のいずこかに送った後、彼女らは天界へ帰ったという話だ。
「ざまぁ、見晒せヴェルザー! バランすごい奴やな!」
「バラン様と呼べ! 小娘が! 失礼だぞ!!」
「別にうちは部下でもなんでもないで。様付けなんてせぇへんわ」
また口を挟んだことにバランが怒りを発し、ラーハルトに口を挟まぬよう厳命した。
ラーハルトは見るからに気落ちしているのがかわいそうになる。
そして、竜水晶の質問にも答えた。
14歳の時に天界から精霊がやってきて、バランを迎えにきたという。
そこで、冥竜王ヴェルザーが魔界と地上の間に前線基地を作り上げつつあると聞く。
だから、
以後はロモスの南の小島にある神殿で修行を繰り返したという。
先代の竜騎衆を揃え、天界の精霊たちも準備を整えた矢先のこと……。
魔王ハドラーが地上へ侵攻して人類と戦争になった。
そこでバランは迷う事になる。
冥竜王ヴェルザーと戦いに魔界へ行くか?
地上を守るため魔王ハドラーを先に倒すか……の選択にだ。
ヴェルザーとの戦いの準備を進めながら、ハドラーの動向を見ていたバランは、
勇者アバンと彼の仲間たちの快進撃を知る。
天界の精霊たちからの助言もあり、勇者アバンの戦いを幾つか見守る。
最終的に、勇者アバンの活躍をロロドの戦で確認した彼は、
魔王ハドラー討伐を彼に任せ魔界へ向かう。
最初、ヴェルザーが支配する大陸にでるが、激しい戦いの末に、
業を煮やしたヴェルザーは
辛くも命を拾ったバランは、別の大陸のヴェルザーの居城を落とす。
そこからしか行けない地上と魔界の間に作られた、
ヴェルザーの前線基地に攻め入って彼を討ち果たした。
そのため、テランに竜の神殿があることは知っていたが、
そこへ訪れる時間がなかったと言って謝罪した。
竜水晶はそういう理由ならばと、何やら偉そうな雰囲気でバランを許した。
ここまでの話し合いで明確になったが、やはりいまのバランは非常に理性的だ。
ラーハルトが若さゆえに激昂しやすいため、抑え役に回っているからというわけではない。
私はパーフェクトガイドブックの年表で、長年気になっていた項目がある。
それは、本編開始二年前に"ハドラー復活" "六大軍団結成" と記載されているが、
下段の
年表によるとアルキード王国消滅後の同年に、大魔王バーンはバランに勧誘をかけていた。
その時点で部下になっていたのなら、わざわざ本編開始二年前に、
超竜軍団長に就任したという文言はいらないだろう。
私の考察は二つある。
第一にはバランはこの本編開始二年前まで、
正式に大魔王バーンの部下になっていなかったのではないか、ということである。
これは、本人の口からさきほど確認できた。
そして、バランが大魔王バーンの部下になるまでの間、何をしていたかというと、
息子のディーノ=ダイを必死で探し回っていたのだろう。
それと並行して、竜騎衆の海戦騎と空戦騎を選定していたのではないかということだ。
恐らく、バランは大魔王バーンの交渉のテーブルについた際、
彼にこう条件をつけたのではないだろうか。
魔軍司令に就任するハドラー復活までの時間、息子を探させてほしいという事と、
ヴェルザーとの戦いで失った竜騎衆に、似つかわしい猛者を見つけ出したいという話だ。
陸戦騎はラーハルトが成長したことで彼が就任し、
獣人族からガルダンディーとボラホーンが選ばれた。
竜騎衆の人選は順調にいったが、本編では息子のディーノ=ダイは発見することはできなかった。
見つかるかもしれないというバランの希望が踏みにじられ続ける日々が、
彼の中で息子を行方不明にし、妻を殺した人類の憎悪を育てる苗床となったのだろう。
恐らく、超竜軍団団長に就任して以降のバランは、
本編同様の復讐鬼となっていたことは間違いない。
第二に大魔王バーンは、バランの息子をただの人間だと思い込んでいたということだ。
私はいままで、大魔王バーンがバランの子供であるダイを、
なぜ探索する手助けをしなかったのかという事が疑問だった。
実際、バラン編では
バランがダイを連れてきた場合、魔軍司令の座を用意すると明言し上機嫌になっていた。
つまり、バランの息子が
悪魔の目玉の総力をあげて捜索したに違いないからだ。
だが、それについては
私たちはダイが
さらに、たった一人の騎士に継承され続けるはずの
子供に遺伝してしまうとは誰も知らない情報のはずだ。
となると、大魔王バーンはバランの息子が、ただの人間だと思い込んでいたのだろう。
バランの息子であろうと、ただの人間を必死に捜索する必要もない。
バランの気のすむまで息子の捜索をやらせてやれば、
結局、発見できなかった時の底なしの絶望感は凄まじいものだろう。
それによって、踏ん切りがつき、人間への復讐心で凝り固まった
そう考えていたのかもしれない……。
いまならまだ魔王軍、超竜軍団団長バランではなく、
そう考えていたら、いつの間にかラーハルトとボリクスが言い争い、
喧嘩一歩手前の状態になっていた。
「オレは貴様に決闘を申し込む!
まがい物が偉そうにするなど片腹痛いわ!」
「なんやお前偉そうにいうやんか! ええで、表でろや!」
「ラーハルト!
いい加減にしろ。私に恥をかかせるつもりか!」
もう、何度目か分からないが、バランがラーハルトを制止する。
本編では冷静なタイプだったが、少年の頃は忠誠心過多で、
危なっかしい感じの不器用な人物だったのだな、ラーハルトは。
「お待ち下されバラン殿。ここで、遺恨が残ってもよくはないでしょう」
「ザボエラ殿、一体なにを仰るのか……?」
困惑するバラン殿に、私は
更に竜水晶も回復呪文が使えるので、多少の怪我程度はまったく問題ないと。
それに、危険な場合はバラン殿が、間に入っていただけるのでしょうと尋ねてみた。
「……あなたはどうにも読めない方だ。しかし、これになんの意味があるのか?」
「遺恨を残したくないと申し上げました。つまり、ワシはあなた方と仲良くしたいのですよ」
「フッ……正直に仰るものだ。困った方だな……。
では、私が立会人になる。場所はどこが宜しいか?」
ヨミカイン魔導図書館から少し離れた場所に、少し開けた場所があるのでそこはどうかという。
バランは了承して、竜水晶の案内に同行し、ラーハルトを促して外へ出る。
私はボリクスを伴って、
「うちの方が強いやろ?」
「彼の携えている鎧の魔槍は、呪文を無効化する伝説の武具じゃぞ」
「ふーん。
鋭い指摘だ。どこで習ったのかと聞くと、アバン殿の座学で習ったと言っていた。
いやはや、ありがたい話だな。
「ボリクス。勝てるかのう、彼に?」
「どうやろ? 勝てると思うけど、まぁ、遺恨残らないようにしたるわ。
そういうの、多分、
「よくわかるのう」
そういうと、付き合いもそろそろ長いからと言われたが、
ボリクス自身もバランには親近感があるという。
この後、私はボリクスの戦闘力を見誤っていたことに気づかされる。
大雑把な換算になるが、今のボリクスの能力はオリハルコンの剣を持っていない、
鬼岩城を倒した時点のダイくらいの強さだったことを忘れていたのだ。
独自設定
ロモスの南の小島にある神殿
インフィニティ・ストラッシュの収穫の一つです。
あんな場所に神殿があったんだ……と。
ラーハルト
思春期です。落ち着かないです。
恩師であり父だと慕っているバランにいい所を見せたくて空回りしてます。
バラン
本編の13年前
バランがヴェルザーを討伐
本編の12年前
ダイ誕生
本編の11年前
アルキード王国崩壊/ブラスがダイを拾う/バーンがバランを説得
本編の2年前
ハドラー復活/鬼眼城完成/六大軍団結成
バラン、超竜軍団長に
これが公式の年表ですが、11年前から2年前までの間、
バランが何をしていたのか長らく疑問でした。
先代竜騎衆の可能性を考えると、ヴェルザーとの戦いで失った後任の人選。
あと、この期間は必死にディーノ=ダイを探していたのでは、
というのが私の考えになっております。
息子は死んだと諦めをつけ、ならばせめて人類を滅ぼそうと覚悟を決めたのが、
超竜軍団団長に就任した時だと考えております。
つまり、その時点までは大魔王バーンの部下ではなく、
対等な交渉相手ですね。