ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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アニメが会心のできだったことや、
スピンオフの勇者アバンと獄炎の魔王ですっかり刺激を受けて、
長年の妄想を文章という形にして出力しております。
暑い盛りですがお時間があればお付き合いいただければ幸いです。


第四話 杖、喋る

 

本編で呪法が登場する姿として、最もポピュラーなのはアイテムという形だ。

素材を加工して魔法力を付与する事で、

物質(マテリアル)に特殊な効果を与える技術体系のことである。

 

例えば、アバン先生が作り上げたアバンのしるしである輝聖石。

破邪の秘法と共に使用する聖石を加工したシルバーフェザーと、

輝石を同様に加工して羽根状にしたゴールドフェザー。

魔弾銃(まだんがん)もアバン先生自身の技術力で銃の機構を作り上げ、

呪文をストックしておく聖石それ自体は呪法によるアイテムだ。

 

調べて分かった事だが、デルパ・イルイルで有名な魔法の筒。

あれも呪法によるアイテムだった。

イルイルのキーワードでモンスターを格納。

必要になったらデルパの言葉で外へ出して戦わせることが可能。

服従させたモンスターもしくは、支配下のモンスターに対して使用できる。

本編の魔法の筒は分からなかったが、

収納する事で内部のモンスターを治療する筒もあるらしい。

収納力が便利なので、実際に幾つか作りアイテム袋として活用している。

 

そしてもう一つは禁呪法だ。

名前の通り、使用を禁じられた呪法であり、

人間の魔法使いの間では使用者は村八分にあってしまう。

作中で知られた禁呪法は、

フレイザードやハドラー親衛騎団を作り上げた、

無生物に生命を与えるものが有名だ。

物質(マテリアル)を触媒として生命を与え、

その属性を引き継いだ生命

──フレイザードなら氷と炎であり、

ハドラー親衛騎団ならオリハルコンの身体──

を作り出す禁断の術である。

 

禁呪法はともかくとして、呪法は非常に便利な技術だ。

幸いな事に学ぶべき書物は、

このヨミカイン魔導図書館に山のように存在する。

 

これから呪法・禁呪法に対しての知識を蓄える事は必要だ。

今後、これらの技術を用いた敵は山のように出てくる。

ハドラーその人もそうであるし、

フレイザードも氷炎結界呪法やレオナ姫を凍らせた禁呪法。

キルバーンの死の罠(デストラップ)

あれも破邪の秘法以外有効打がない極めて危険な罠だ。

 

呪法という技術に対して、無知であることは、

自分や味方に向けられた際、対応ができないという事だ。

まだ、入門書を読んでいる範囲ではあるが、

作中後半で大魔王バーン陣営が乱用した重要アイテム。

黒の核晶(くろのコア)も恐らくは禁呪法に類する技術なのだろう。

あれへの有効な対処法は氷結呪文(ヒャド)だけだったので、

もっと明確に動作を停止させる方法を探りたい。

 

 

つまり──私のやるべき事が増えたのだった……。

 

 

その日から呪文の修行に並行して、呪法の研究を行う日が続いた。

試しに魔導図書館の倉庫に置かれていた、壊れたまどうしの杖を修復。

一から作り上げるのには時間がかかるが、魔法玉が破損している程度なら、

魔法使い数人分の魔法力を注げば修復できた。

ザボエラは普通の魔法使いに比べて、

圧倒的に多い魔法力を誇っているため、比較的容易に元通りにできる。

気を良くした私は、次は普通の杖を街の武器屋で購入し、

そこに火炎呪文(メラ)を封じ込めるかなどと考えながら、

何気なく妖魔の杖の隣にまどうしの杖を置いておいた。

 

その後、お茶を淹れて戻ったら……まどうしの杖が消えていたのだ。

そして、直立している妖魔の杖が私にこう語りかけてきた。

 

 

「まさか、(わたくし)の存在を思い出して、力ある杖を頂戴できるとは思いませんでした御主人様(マスター)

 

 

呆然としていたのだろう。

自失して言葉にならない私に対して、

妖魔の杖は再度話しかけてきた。

 

 

「おや、どうされました御主人様(マスター)

 

 

再度話しかけてくれたので、

そこでフリーズしていた思考が戻ってきた。

 

 

「どうした、ではないだろう。なぜ、お前は口をきいているんだ?」

 

「お忘れですか御主人様(マスター)?」

 

 

肩をすくめた妖魔の杖が呆れたように私に話しかけてくる。

いや、杖に肩などないのだから、肩をすくめるはずはないのだが、

声音に込められた杖の感情(?)が私にそう錯覚させた。

 

 

「250年ほど前に(わたくし)が饒舌過ぎた為、御主人様(マスター)が私の意識を眠りにつかせ、

機能を停止させなさったのでございます。

その際、

 

"封印解除の条件はまどうしの杖を横におくことじゃ。

貴様が目を覚まし隣にまどうしの杖があれば食らえばよいじゃろう。

まぁ、そんなことはありえんがのう。キィ~ヒッヒッヒ!!"

 

と仰いましたがお忘れでございますか御主人様(マスター)?」

「う、うむ、そのような事があったか……のう」

 

 

ようやく落ち着いてザボエラらしい口調で杖に応じる。

と、そこで疑問が生じたので、彼……妖魔の杖に尋ねてみた。

 

 

「隣に置いておいた、まどうしの杖はどうなったのか……のう」

 

「美味しく頂戴致しました御主人様(マスター)

 

「それは、食べたということ……なのかのう?」

 

「はい、左様でございます。どうやら御主人様(マスター)はお忙しさのあまり、

(わたくし)に関する事をお忘れのご様子。

説明する時間を頂戴いただけますれば幸甚でございます」

 

 

やけに馬鹿丁寧な口調でそう尋ねてきた妖魔の杖に、

説明を許可して彼の話を聞いてみる事にした。

どうやら彼はザボエラが禁呪法で作り出した成長する杖らしい。

簡単に言うと、彼は魔法の能力を宿した杖を、

吸収して力を取り込むことで、幾らでも能力を増強することが可能だという。

 

例として、先ほどのまどうしの杖は、

魔法力を消費する事がなくメラが使える魔法の杖である。

それを吸収した妖魔の杖は、これからメラの呪文を使用する事ができる。

ただ、まどうしの杖は比較的流通している魔法の力を宿した杖で、

以前食べたことがあったため、元からメラを使うことができたらしいが。

 

そして、何故、ザボエラが彼の意識を封印したかといえば、

ザボエラに細かいツッコミを入れ続けていたら、

ザボエラに鬱陶しがられてしまったせいであると。

破壊されなかったのは、作る際に貴重な素材を使い、

膨大な魔法力を必要としたからだからだとか。

そう、妖魔の杖は訥々と私に語ったのだ。

 

 

「ご清聴ありがとうございました御主人様(マスター)

ところで、暫くお会いしない内に、落ち着かれましたか?

以前でしたらこのような長広舌、お許しにならなかったと記憶してございます」

 

「なに、よく喋るものじゃと感心しておったのだ。ところで、妖魔の杖よ」

 

「はい、なんでございましょうか御主人様(マスター)

 

「おぬしの名前はなんというのじゃ。妖魔の杖というのは物の名であろう。

何か生命体のような名があるのではないか?」

 

 

例えばおおねずみのチウ。彼の種族名はおおねずみで、個体名がチウだ。

明らかに個体名とは思えない妖魔の杖に、疑問を抱いたのだ。

普通は名前をつけるものだろう、と。

これほどまでの個性(パーソナル)があるのなら尚更である。

 

そう尋ねた時、初めて妖魔の杖が力を落としたというか、

人間であればしょんぼりしてしまったというか、

元気がなくなってしまったような印象になってしまった。

 

 

「……名前を、頂いた記憶がございませんので……」

 

「ふむ……これだけ流暢に喋れるお前さんを、

妖魔の杖と呼び続けるのものう……」

 

 

確かにうるさいぐらい喋ってくるが、私としては話し相手ができたのは僥倖だ。

若干、慇懃無礼な印象はあるのだが、悪意は感じられない。

ザボエラの喋り方をロールプレイする相手になってくれると助かる。

 

それにしても、この雰囲気は名前を欲しそうにしているのではないだろうか?

ならば、名前をプレゼントして、仲良くなっておいて損はないだろう。

 

 

「今日から、ケインと名乗ってはどうかのう?」

 

「はっ、ケイン……でございますか御主人様(マスター)

 

「うむ。単純に杖という意味の……古代の言葉じゃがどうかの?」

 

「ありがたく頂戴致します御主人様(マスター)

これからは、(わたくし)の事はケインとお呼びくださいませ」

 

 

嬉しそうだ。小躍りしそうな、飛び跳ねている雰囲気が声に乗っている。

もっと言うのなら、ウキウキしている感じが伝わってくる。

杖だから飛び跳ねる事はできそうだが、小躍りする事はさすがに無理なのだが。

 

 

「ところで、御主人様(マスター)はこちらで何をなさってらっしゃるのでしょうか?」

 

 

そう問うケインに呪文の習得と魔法力の増大。

呪法の研究を続けているという話をした。

 

 

「修行や自己の研鑽がお嫌いでした御主人様(マスター)が……成長なさったのですね」

 

「褒められているのやら、けなされておるのやら分からぬのう」

 

「とんでもございません。心から賞賛しておりますよ、このケインめは!」

 

 

この日から妖魔の杖──ケイン──との生活が始まった。

 

 

 

 

 

彼は予想以上に働き者だった。

杖に生えている被膜がついた爪のような部分を器用に伸縮させて、

掃除も行ってくれたり、

ヨミカイン魔導図書館にある機能を調査してくれてもいる。

近くの川から水を引き、湯を沸かすことができる機能なども発見してくれた。

 

ティーセットもあったので私が変身呪文(モシャス)で変身して村へ赴き、

買いそろえてきた茶葉で器用にお茶を淹れるケイン。

彼と喋りながらザボエラのロールプレイをしている間に、

私自身のザボエラ口調も板についてきた感じがある。

 

そんなある日、魔導図書館では

出来る範囲の研究をやりつくしたという話をした。

意味としては何処かへ行きたいという事ではなくて、

本に載っている呪法を試すにも素材が足りなくて

探しに行こうかという事だったのだが……。

 

 

「ならば御主人様(マスター)。難しいかもしれませんが、

以前使われていた魔界の研究所(ラボ)へ赴かれてはいかがでしょうか」

 

 

研究所……!? ザボエラの研究所か……!!

だが魔界というのが気にかかる。

どういうことなのかケインに問いただしたほうがいいだろうな。

 

 

「ケインよ。ワシは各所にアジトを作っておって、

場所が思い出せないものもあるのじゃ。

魔界にある研究所とはどの辺りなのかのう?

今行ったとして、危険はないのかのう」

 

「危険でございますか。それは……現在安全であると保証はしかねます。

なにせ、私が研究所(ラボ)について記憶しているのは、

250年前の情報でございますから」

 

 

私が気にしているのは、

まかり間違って大魔王バーンの手勢と鉢合わせたら危険だということ。

それに、原作では登場しなかったが、冥竜王ヴェルザーの部下たちだ。

確かラーハルトが語ったバランがヴェルザーその人と、

一族を死闘の末に滅ぼしたという話だったが、

たとえばヴェルザーの部下であるキルバーンは、

ヴェルザー一族=竜族には見えない。

 

そして、ヴェルザーが石になって封印されている場所も、

荒野ではなく、まるで神殿のように整えられているように見受けられた。

つまり、ヴェルザーの一族である知恵ある竜は生き残ってなくても、

魔界に彼の部下が現存する可能性があるのだ。

 

現状、私はダイの大冒険がスタートする時点よりも、

かなり強くなったといってもいい。

だが、それで六大団長の誰かに勝てるかと言えば、正直勝ち筋が見えない。

私はあくまで後衛なのだ。

クロコダインに猛攻を受ければしのぎ切れないだろうし、

ヒュンケルには呪文が通じない。

フレイザードはコアを破壊できないから決め手がないだろうし、

バランにはそもそも勝てない。

ミストバーンも同様。可能性があるとすればハドラーだが、

黒の核晶(くろのコア)が怖いので戦いたくない。

 

その状況で魔界に行ったとして、

最終決戦やバーンパレスに居た魔界の魔物たちが大挙して現れたり、

ヴェルザー勢力の猛者と戦った場合、勝てるか怪しい所がある。

 

そこで私には腹案が一つある。

前衛を探そう、というのだ。

半年ほど世話になったヨミカイン魔導図書館から離れ、

とある場所へ向かおうと考えたのである。

 

 

「ロモスにある魔の森。そこへ向かうとするかのう」

 

御主人様(マスター)。かの地にはなにがございますので?」

 

「上手くすれば古い知人がおるかもしれんのじゃよ」

 

 

私の脳裏には見知った鎧を身につけた姿ではなく、

マントをはためかせた若い頃のクロコダインの姿が思い浮かべられていた。

 

 





独自要素
呪法についての説明のあれこれ。
魔法の筒……呪法によるアイテムだという設定に致しました。
喋る妖魔の杖……あの形でなにもギミックが無いのはおかしいだろうとこういう事になりました。

ザボエラの研究所……本作独自設定です。
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