ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
現在、クロコダインが粘っていて、
ちょっと想定外の動きをしていますので、
予定が変わるかもしれませんが。
キルバーンの言葉を受け、険悪さを隠さずに問うバラン。
そのバランの言葉に宿る感情は、既に敵意の領域に達して、
刃の如くキルバーンに突きつけられている。
「どういうつもりかとはこちらのセリフだ、死神キルバーン。
大魔王バーンは、人間を滅ぼし、この地上に理想郷を築いてみせると言った。
人間を滅ぼすことと、地上を吹き飛ばすのは話が随分と違うのではないか?」
「ウッフッフッフッフッ……冥竜王ヴェルザーが喋っちゃったからねぇ。
まぁ、言い逃れはできないかな……?」
常人ならすくみ上りそうなバランの敵意を受け流し、
キルバーンは図々しく言ってのけた。
ピロロを見ると特に彼の調子も変わっていないので、好き嫌いはともかくとして、
その動じない精神力は大したものだと言っていいだろう。
それにしても、この場に死神キルバーンがやってくるとは。
さらに、ピロロがいるのは狙い目でもあるな。
ここで始末できれば……かなりこちらとしては有利に働くだろう。
だが、ピロロは
ヨミカイン魔導図書館内におびき寄せる事ができたら、マトリフ殿と一緒にやった"対策"で、
キルバーンは暗殺者という立ち位置でありながら、誰一人殺せなかったという部分で、
若干、揶揄されるところもあるが、
実はボリクスとクロコダイン、ケインとマトリフ殿には、彼の存在を話してあるのだ。
危険な罠を使う人物だという話はしてあるので、ボリクスは突っ込もうとはしていない。
「ほぅ……それは認めたという事か?
大魔王バーンは地上を吹き飛ばすと言っているようなものだぞ」
「その辺りは言葉の解釈次第と言っておこう。キミがどう考えるかは自由だよ、バラン君。
ウフフフフッ……」
と、そこで鎌をくるんと一回転させると、カン高い風切り音がする。
おっと、いかん。キルバーン対策に準備した、感覚の不調を治す薬を調合せねば。
恐らく、ボリクスとバランは大丈夫だ。
だが、私とラーハルトは怪しい所があるだろうな。
念のため彼にも注入できる準備をしておかねば。
「大魔王バーンは、最初から嘘を前提にこの私と交渉してたということか!
随分と舐められたものだ!!」
「さて、ボクはバーン様ではないから、それには答えられないかな」
怒りを露わにするバランに対して、いけしゃあしゃあと言ってのけるキルバーン。
彼は鎌を軽く振って、音を響かせる事を止めない。
武芸は素人の私でも殺気がない事は分かる動きである。
そして、武芸に優れた三人も、意味のない行動だと思い、見過ごしているのは確かだ。
そこも実は上手い。この聞き取れない高周波で相手の五感を狂わせるのだから。
「キルバーン殿とやら。それ以上その鎌を振り回すなら、ワシは攻撃とみなしますぞ」
「おやおや。ボクの癖が気になっちゃったかな?
こんな他愛のない遊びのようなことにムキにならないで欲しいね」
「ワシの耳は特別でしてな。その鎌が出す高周波の唸りを、聞き取ることができます。
聞くものの感覚を狂わせる、死神の笛の嘶きを……」
「なに!? キルバーン貴様!!」
バランが意味合いに気づいたのか、キルバーンを責める。
キルバーンは"おっと、怖い怖い"と言って鎌を振るうのを止めて、初めて私を見る。
「そんな指摘を受けたのは初めてだ。油断ならないねザボエラ君」
「ラーハルト殿、治療するので動かぬようにしてくだされ」
私はキルバーンを無視して、ラーハルトの横に行き爪を刺す。
「薬を注射した。お前さんの感覚は少しずつ元に戻るはずじゃ」
「あ、ありがとうございます、ザボエラ殿……」
これで感覚への攻撃は防いだが……。
さきほどから気になっているのは、ピロロがまったく喋らない事だ。
原作でも重要なシーンでは彼は喋ってはいなかったが、いると見せかけた幻覚の類かもしれない。
そう考えていると、キルバーンがバランとの話を再開する。
「バラン君。ボクの今回の用件は、大魔王バーン様がキミを呼んでいるということなんだよ。
素直についてきてくれれば、関係ないザボエラ君たちには手出ししないと約束しよう」
「状況をよく理解できていないようだなキルバーン。
最初から私に対して嘘を付いているような輩を、信用できるとでも思うのか?
大魔王バーンの下には行かぬ。交渉はこれで打ち切りだ」
「……フフッ。でも、キミは僕についてくることになると予言しよう!」
二枚のカードを出したキルバーン。
鮮やかな手並みでこちらに投げてくるので、一枚を私が
バランがもう一枚を
だが、私の背後から一枚のカードがふわりと飛んできて足元に落ち、ポカリと穴を穿った。
「危ない!!」
ラーハルトが私を突き飛ばしてくれたおかげで私は助かり、
ボリクスが私の腕を引っ張ってくれた。
だが、ラーハルトは穴に落ち、なぜかキルバーンの隣に転移している。
さらに
これは、未知の
「キャハハ!! やっぱりキルバーンの言った通りだね! 罠を二重に張って良かった!」
「そうだろうピロロ。ボクは臆病だから慎重に策を練るんだよ」
甲高い声で喋り、キルバーンの横に急に出現するピロロ。
同時にキルバーンの肩の辺りに浮遊していたピロロは消える。
つまり、最初にキルバーンの隣にいたピロロは、幻覚か何かだったのだ。
キルバーンと、隠れていたピロロで手分けして
……なんてやりにくい相手だ。
「ラーハルト! キルバーン貴様……!!」
「おっと、言われなくても分かっているだろうが動かない事だ。
なぁに、安心してくれていいよ。別にこの坊やを殺すつもりはない。
キミが大人しく一緒にバーン様の下へ行ってくれるだけでいいのさ……ウフフフフッ……」
原作ではバーンパレスに
そして、それはバーンパレスに設置したというだけで、
別に彼が携帯できないとは言われていない。
こういった状況も考えるべきだった……。
「……分かった。お前に同行しよう」
「バラン様! オレが足手まといになるなら、オレの事は捨ててください!」
「言うな、ラーハルト……。
ディーノは確かに我が息子だが、お前も等しく私の子だと思っている」
「……バラン様……」
バランの温かい言葉に、涙が止まらないラーハルト。
私を見て手はないかと目で訴えるボリクスだが、
流石にこの状況でできることはない。
私は力なく首を横に振った。
それを見たボリクスは立ち上がり、怒りを込めた瞳でキルバーンを睨みつける。
「ザボエラ君。キミらも追ってこない事をお奨めするよ」
「なぁ、おい……! お前、キルバーン言うたな?」
腸が煮えくり返っているであろうボリクスが、怒りがにじみ出る言葉を絞り出す。
「次、
「ウッフッフッフッ……怖いね。なるべく、会わないようにしたいところだよ。
それでは、シーユー♪」
「
ボリクスが抜刀して
誰もいないはずの空間から紫色の血が迸り、斬られた相手がその姿を現した。
「ギャーッ!!」
絶叫を残して倒れるきりさきピエロ。
それと同時に、きりさきピエロが10体あまり姿を現し攻撃してくる。
私は両手から
ボリクスは怒りを叩きつけるかのように、
きりさきピエロの持つ
やはり、信用ならないな、キルバーンは。
" 関係ないザボエラ君たちには手出ししないと約束しよう"
などと言っていた舌の根の乾かぬ内に、姿を消したきりさきピエロに私たちを襲わせた。
言葉に重みが無く、一切信用に値しない。
まさしく、息を吐く様に嘘をつく男だ。
……落ち着こう。憤りは抑えて、状況を考えねばなるまい。
ボリクスに二人を追おうと言われるが、流石に時間が経過しすぎている。
やむを得ないので、一旦ヨミカイン魔導図書館へ戻ろうと説得する。
しかし、実は恐らく向かった場所の見当はついている。
死の大地。そして、その奥深くに建築されている
かといって、そこへ挑むには戦力が足りない。
だから、この記憶の神殿へ来る前に、
竜水晶にメタッピーを使って連絡を出しておいてもらったのだ。
レイラ殿とマトリフ殿、そしてクロコダインに。
修行中のアバン殿に連絡が取れないことが痛恨ではあるが……致し方ない。
ヨミカイン魔導図書館へ戻ると、レイラ殿とマトリフ殿、
そしてクロコダインが待っていてくれた。
もちろん、竜水晶とロカ殿も迎えてくれる。
いつも明るいボリクスが気落ちしているので、ロカ殿が肩を叩いで励ましてくれた。
応接室で茶を用意しながら、現在の状況を説明する。
私の話が終わった途端、場に重苦しい空気が満ちてしまう。
それを打ち破るかのように、マトリフ殿が苦り切った表情で話を始める。
「やべぇ状況だな。そのバランって
危うく魔王軍へ行くところを引き留めたのはよかったが、連れて行かれちまったのはまずい」
「ラーハルト様とバラン様が連れて行かれたのは、
例のギルドメイン山脈にある魔王軍の城ですか?」
レイラ殿がそう尋ねてくるが、そういえば魔王軍の真の拠点は死の大地にある事を知らないのか。
まだ、言っていない情報であるし、下手に明かすと危険ではある。
「違うんじゃないか、レイラ。まだ、城だのはできてないだろ。
大魔王の本拠地っていえば、魔界って相場は決まってるもんだぜ」
「そないなところに連れて行かれたらヤバイで。
バーンの宮廷は第八まであるクソでかい城塞や……」
ロカ殿の発言を受けてボリクスが付け加える。
ボリクスはバーンの宮廷を見たことがあったのだったな……。
実は修行中で居場所が分からないアバン殿はともかく、
ここにいるメンバーにはキルバーンの情報を共有しておいた。
事前にバランやラーハルトにも話しておけばとも思うが、
あの記憶の神殿で彼の意志が固まったのだ。
その前に妙な話をしても疑心を招くだけだったろう……。
しかし、色々な情報を事前に知っていても、どうにもならない事態があることが歯がゆくもある。
そう考えていたら、外で何かが着地する音がした。
腕を組んでいたクロコダインが、ポツリと呟く。
「
「
だが、ギュータに向かったチョコマ含めて、このヨミカイン魔導図書館を知っていて、
「じゃあ、敵ちゃうか!?」
と言ったボリクスの言葉で、全員で魔導図書館の外へ出て侵入者を確認する。
外に出た我々が見たのは、倒れ伏すボロボロの鎧の魔槍をまとったラーハルトだった。
ボリクスが一番に走り寄り、ラーハルトを抱きかかえる。
「ラーハルト!!! 大丈夫や!
助けてや
「大丈夫じゃボリクス。
荒い呼吸が落ち着いてゆき、安定していく。
レイラ殿も加わり、毒などを受けてないか確認してくれている。
傷も癒えたし体力も補ったが、意識がまだ戻らない。
外にずっといるのも不用心ではあるから、
クロコダインがラーハルトを背負いヨミカイン魔導図書館へ戻る。
ボリクスがずっと手を握っており、レイラ殿が様子を見ているので、私は水を用意してきた。
ボリクスの喜ぶ声で、ラーハルトが目を覚ましたことが分かる。
「ボリクス……お前に貰ったキメラの翼が……役に立った……」
「ヨミカイン行のキメラの翼を渡しておったのか?」
「飯を食いに行った時に渡しておいたんや。こいつ、
「ほう、でかしたのうボリクス」
褒められたボリクスは嬉しそうにしている。これはボリクスのファインプレーだ。
しかし、戻ったのはラーハルトだけというのが気になる。
そう思っていたら、ラーハルトがボリクスに頭を下げて頼んできた。
「バラン様を助ける手伝いをして欲しい! いままさに、大魔王バーンと戦っているはずだ!」
ラーハルトから驚きの言葉が出たが、落ち着かせて何があったのか尋ねてみる。
キルバーンに伴われて、死の大地にある
そこでどよめきと質問が幾つか出たが、
「質問はそのラーハルト坊やの話を全部聞いてからにしようぜ」
そうマトリフ殿から提案があり、ラーハルトに話の続きを促した。
実はその先はあまり細かい話はないのだ。
大魔王バーンからの詰問に対して、バランが真っ向から怒りを露わにし、
一触即発の状況の中、キルバーンが拘束を解きラーハルトに囁いたという。
"君に時間をあげるから、ボクを一発殴ってバラン君を助けたまえよ"と。
ラーハルトが後ろ手でキルバーンを殴ると、キルバーンはわざとらしく倒れ、
無我夢中で大魔王の背後にハーケンディストールを叩きこんだらしい。
その隙に、バランが
バランはラーハルトに逃げるように言い、ラーハルトは我々に助けを求める為、
大魔王の結界の外に出たため、キメラの翼を使ってヨミカイン魔導図書館へ来たらしい。
竜魔人になるのはいい判断だ。話の流れ的に、大魔王バーンは光魔の杖を抜いていない。
それに、ミストバーンがいないようなのも助かる。
もしかすると、ギルドメイン山脈で、鬼岩城建設の陣頭指揮を執っているのかもしれない。
だが、キルバーンがラーハルトを逃がしたのが気になる。
恐らくだが一連のキルバーンの行動はやはり、
彼がこの状況を大魔王バーンの寝首をかく好機と捉えたのだろうか?
つまり、最初からミストバーンがいない時を狙った可能性がある。
もしくは自分がいるからミストバーンがいなくてもいいと、
彼をいずこかへ排除した上で、
やはり恐ろしい男だなキルバーン。
好機に上手く乗って状況を作り出し、大魔王バーンすら罠に嵌めたか。
「死の大地となると……サババかオーザムかのう。見渡せる土地は」
「マルノーラ大陸で死の大地に一番近い辺りは、切り立った山脈になっちまってる。
吹雪が酷くて視界も悪いし、サババから観測した方いいんじゃねぇか?」
そして、サババだったらマトリフ殿が全員を
最初ラーハルトをヨミカイン魔導図書館に残そうかと考えたが、
行方知らずのキルバーンがまたやってきて、彼を誘拐して人質にされるのも危険だ。
ラーハルトも同行してもらい、全員でサババまでやってきたが、それはすぐに分かった。
サババから西に行った海沿いに、おびただしい魔物の死体が転がっていたのだ。
その向こうに、ドラゴンの翼を生やした一人の人物が立っている。
ラーハルトは止めるのも構わずバランに声をかけ走り寄り、
クロコダインが割って入らねば殺されていたかもしれない。
一切の声を発さず、
それを止めて、ラーハルトを救い、
バランに蹴りを見舞って距離を稼いだクロコダインもすさまじい。
だが、感心している場合ではない。
私は右手から光量最大・接続時間ゼロの
左手から
バラン自身には
だから、その周囲に
便利な使い方だが、通常の
距離をとって遥か遠方からバランの方を見る我々だが、
現在、彼がどういう状態か考えるべきだろう。
大魔王に洗脳されてしまったのだろうかと言う意見がロカ殿から出たが、私はそれを否定した。
「大魔王バーンに洗脳されたのであれば、味方の魔界の魔物を倒す意味がないじゃろう。
恐らく別の状態……もっと深刻な状況なのかもしれんぞ」
そう言った私に、竜水晶が推測だがと発言した。
「元来、
主に
確かにデルパ・イルイルでのダイの初の紋章の発動や、クロコダイン戦。
顕著なのは明らかに意識がない状態で、魔法剣の使用をしたヒュンケル戦。
竜水晶の言う通り、
だとしても、どうすればそれを解除できるのだろうか。
問題としては、現在彼が竜魔人であるという事で、戦闘力が跳ね上がっているため、
簡単に止める事ができないという事もあげられる。
「解除方法か? 単純だ。自己防衛本能の維持には
バランの竜魔人化も解除されるだろう」
「うむ……。簡単に言ってくれるが、それはなかなかの大事だぞ。
あの御仁、バラン殿の一撃。オレは渾身の闘気を以てしなければ受けられなかった」
そういいながらクロコダインは自分の掌を見ながら話す。
ラーハルトがクロコダインに頭を下げて懇願する。
「頼む! バラン様を助けてくれ!! オレの命ならいくらでもかける!!」
「命なぞ軽々しく賭けるものではないぞ。生き残って無事な姿をバラン殿に見せてやれ」
そのクロコダインの温かい言葉に涙ぐむラーハルト。
私の腹は決まった。バランを助ける事にしよう。
放置して様子を見る事も考えたが、あからさまな魔界の魔物が来ているという事は、
ミストバーンなりがやってきたり、大魔王バーンその人が来た場合、状況が悪化するからだ。
私たちにできるのは、バランの正気を取り戻してこの場から一刻も早く離脱することだ。
竜水晶から
これから挑むのは
そして、彼の
原作ではポップが死ぬほどの被害が出ている。
だが、私は誰一人死なせるつもりはない。
最悪、私の命を削ってでも……みなを守り抜くことを心に固く誓った。
独自設定
落とし穴の
落ちたら別の場所に移動するような罠はありがちなものでしょうし。
きりさきピエロ
キルバーンの部下は、
こういった道化た感じのモンスターが出てくる予定になっています。