ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。


第四十話 竜魔人

ゴツゴツとした岩の多い海岸に、

竜魔人と化したバランが魔界の魔物の屍の上で佇んでいる。

静かなものだが、さきほどのラーハルトのように戦闘範囲に近づけば、

竜魔人から苛烈な攻撃を加えられてしまうだろう。

 

仕掛ける先鋒は私だ。

岩石獣化呪文(レゴール)火炎呪文(メラ)を付与した、

溶岩煮えたぎる巨大な岩の蛇をバランにけしかける。

わざわざ火を噴きながら突き進むのは、注意を惹くためでもある。

 

逆方向にいるマトリフ殿が、地爆呪文(ジバリカ)を放つ。

一切遮蔽物がない海岸は危ういので、地形を変える勢いで巨大な岩の柱を何本も隆起させた。

私も溶岩蛇を突っ込ませた後は、地爆呪文(ジバリカ)で遮蔽を作る。

 

それに身を隠しながら、ボリクス、ラーハルト、クロコダインがバランに迫る。

岩石獣化呪文(レゴール)で作り出した溶岩蛇を粉砕したバランが、彼ら三人の接近に気づく。

バランが迎え撃とうとそちらを向いた瞬間、私とマトリフ殿が閃熱呪文(ベギラマ)爆烈呪文(イオラ)を、

三連射、四連射して手数でバランを引き付ける。

 

マトリフ殿の方にバランが閃熱呪文(ベギラマ)を一撃撃ったが、

それは彼の前にいるロカ殿が豪破一刀で薙ぎ払う。

 

布陣としてはマトリフ殿をロカ殿、レイラ殿が守り、マトリフ殿の呪文主体で援護する。

私は岩石獣化呪文(レゴール)の大蛇に乗り、ケインと竜水晶が防御を担当し遠隔から攻撃する。

呪文を弾くだけでも、ある程度竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を減少できるらしいので、

無効化されたとしても無意味ではないのだ。

 

その間にボリクス・ラーハルト・クロコダインが無事に接近することができ、

上手くバランに取り付けたようだ。

バランは原作において、クロコダインのようなタイプが一番危険だと評していた。

 

 

"あらゆる呪文をはじくこの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)も、

それ以上のパワーや闘気をもってすれば貫かれ、

私の身体も傷つけられてしまうからな"

 

 

竜水晶に聞いたところ、パワーや闘気で貫かれる方が、竜闘気(ドラゴニック・オーラ)の減少は大きいという。

つまり、危険だが近接戦を挑まなければならないのだ。

実は更に竜水晶が考案した秘策が一つある。

 

ボリクス達三人に迫るバランに、先手必勝とばかりクロコダインが地面に拳を突き立てる。

 

 

「武神流──土竜昇破拳!!」

 

 

クロコダインの剛拳が形になったかのような、

まるで火山の噴火のごとき凄まじい爆発がバランを見舞う。

宙高く吹き飛ばされた所に、ボリクスがアバンストラッシュアローと、

ラーハルトが真空波のハーケンディストールを撃つ。

 

空中のバランが竜闘気(ドラゴニック・オーラ)でそれを受け止め、背中の翼を展開して地上へ戻ってくる。

岩石獣化呪文(レゴール)で作り上げた岩の大蛇の頭に乗り、

私の横に立っている竜水晶がいまの攻撃を評価した。

 

 

「いまのは効果的な攻撃だった。竜闘気(ドラゴニック・オーラ)をある程度減らせた」

 

「もう少しかのう竜水晶?」

 

「次で行けそうだな」

 

 

バランがクロコダインの龍撃波動拳を受け止め、

引き裂いた所にラーハルトが近接ハーケンディストールを叩きつける。

動きが止まった一瞬、ボリクスがバランの背中に張り付く。

引きはがそうとするが、クロコダインとラーハルトが攻撃をして、

バランがボリクスへ集中できないようにする。

 

 

「いまじゃ、竜水晶!」

 

「任せろ……。バランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を捕捉した。

ボリクス、竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を展開しろ」

 

 

竜水晶がボリクスの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を、バランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)に同調させているのだ。

本来、ボリクスはバランと血のつながりがあるわけではないので、簡単にはできないのだ。

それを、竜水晶が中継することで、バランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)との同調を行う。

同調した竜闘気(ドラゴニック・オーラ)をバランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)にぶつけるのは、

ボリクスが必死でやっているところだ。

これが一番、バランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を減少させることができる。

 

竜水晶の話だと、流石に竜魔人化したバランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)は、

ボリクスよりも多いはずなのだが、現時点ではボリクスより低い量にまで、

低下しているらしい。

戦闘で使って消耗したのかは分からないが、好機ではあるのだ。

 

ボリクスの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)でバランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を減少させるのは、

実はボリクス側も竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を減少の消耗が激しくてその後、戦えなくなってしまう。

だが、続ける事でバランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を、効果的に減らし竜魔人化を解除できるそうだ。

 

ラーハルトやクロコダインは、バランが背中に張り付いているボリクスを引きはがさないよう、

命をかけてバランとの近接戦闘を行っている。

ボリクスの同調による竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を減少させる作戦が上手くいっているのか、

少しずつバランの行動が鈍くなってきている感はある。

 

上手くいっていると思っていたが、マトリフ殿たちが魔界のモンスターと戦っているようだ。

まさか、いつの間にかに魔王軍の援軍が来たというのか……!?

 

 

「こっちは任せろ! それより、そちらに集中しないとやべえぞ!

気を抜くな援護しろザボエラ!!」

 

 

そう言って、マトリフ殿はロカ殿とレイラ殿を連れて、

魔界のモンスターたちを倒している。

私は岩石小獣化呪文(ゴール)で蛇を大量に召喚し、バランにぶつける。

そういえば、真魔剛竜剣を持っていないのは不幸中の幸いだ。

流石にあれがあったら、こんなに容易くは取りつけなかったはず。

 

ラーハルトが転んだ所、バランの抜き手が迫るが、クロコダインが玄武鉄山靠で吹き飛ばす。

背中のボリクスが大丈夫か心配になるが、クロコダインがこちらをチラリをみたので、

ラーハルトの治療に私が飛翔呪文(トベルーラ)で急行する。

 

しかし、クロコダインは老師の下で修行したと言うが、闘気の安定感が違う。

私は相変わらず武に疎いのだが、以前のクロコダインの巨大な気は、

その存在感を感じ取りやすかった。

だが、いまのクロコダインの闘気は、ふと隣を見ると、

仰ぎ見るような巨大な山がそびえ立っているような印象を受けるのだ。

 

 

「これほどの武……。

できればあなたとは、正気の時に手合わせしたかったものだバラン殿!」

 

 

そういいながら、バランの拳を左腕で捌き、右の拳を顔面に叩きこむクロコダイン。

バランの手刀がクロコダインの肩口に叩きこまれ、鎧の肩当てが吹き飛ぶ。

クロコダインの膝がバランの腹に吸い込まれたと思ったら、

クロコダインの顔にバランの拳が直撃する。

本来、竜魔人化したバランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)による拳は、

原作の獣王の鎧をまとったクロコダインの腹を貫通するほどだった。

 

それが真っ向からの殴り合いで良い勝負をしているのは、

クロコダインが原作よりも非常に強くなっている事があげられるだろう。

ボリクスがバランの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を減少させていることや、

その前に大魔王バーンと戦った消耗も関係するかもしれないが……。

そう考えていたら、全快したラーハルトがバランとの戦いに戻る。

体力は万全だが、恩師であり、父と慕ったバランと戦うのは彼も辛いだろう。

 

私も火炎呪文(メラミ)を五つ展開し、バランに叩きつける。

炎で視界が塞がったバランへ、クロコダインとラーハルトが殺到する。

激しい攻防のなか、バランの背中のボリクスが叫んだ。

 

 

「みんな離れろやー!!!」

 

 

クロコダインがラーハルトをひょいと抱え、地面が爆発したような跳躍をして下がる。

私も竜水晶を拾って瞬間移動呪文(ルーラ)で距離を取った瞬間、

バランとボリクスを中心に竜闘気(ドラゴニック・オーラ)が膨れ上がる。

凄まじい爆発を起こした後、竜魔人化が解けたバランの横にいるボリクスが見えた。

 

ラーハルトが一番に駆け寄り、クロコダインも私もそれに続く。

マトリフ殿たちも増援を片付けたようで、こちらへやってきた。

すぐに回復呪文(ベホマ)をかけたので、バランが目を覚ます。

 

 

「ここは……ボリクス……ラーハルト……?」

 

「バラン様!! よかった……!!」

 

「へへ、難儀したでおっちゃん」

 

 

どうやら察したようで、二人に謝るバラン。

大魔王バーンはどうなったか聞きたいところだが、ここにいるのは危険だ。

 

 

「バラン殿、理由の如何を問うのは後にしましょう。

一旦、この場を去りヨミカイン魔導図書館へ戻りましょうぞ」

 

「分かりました。魔王軍の追手があるやもしれませ……」

 

 

そう言ったバラン殿がラーハルトとボリクスを抱きしめ、

己の身を盾にしてその攻撃を背で受けた。

私たちはバランを貫いた鋼鉄の爪が飛来した先を見る。

 

 

表情などないはずのフードつきの白い長套(ちょうとう)に包まれた姿であるはずだが、

怒りが視覚化できるほどに迸っている……沈黙の男、ミストバーンがこちらを見下ろしていた。

 

 

「……よくもやってくれたな。許さんぞ貴様ら……!

この場にいるものは、一人残らず八つ裂きにしてくれるわ!!」

 

 

ミストバーンの暗黒闘気が、まるで黒い太陽が空に具現化したかのように膨れ上がる。

いかん……全員が疲弊したこの状況で、ミストバーンがやってくるとは!

 

 

闘魔滅砕陣(とうまめっさいじん)!!」

 

 

全員が暗黒闘気の蜘蛛の巣に絡めとられ、締め上げられてしまう。

空の技を使えるボリクスは疲弊している。

それに、先に滅砕陣に絡めとられては、動けるものではない。

……だが、その中で動く者が一人いた。

 

 

「舐めるなよ幽霊野郎! カール騎士団伝説奥義! 武鋒・豪破一刀ッ!!」

 

 

ロカ殿の足元に広がる武鋒円から、剣に伝わった光の闘気が滅砕陣を切り裂く。

光刃がミストバーンに直撃したが、ほぼ同時に鋼鉄の爪が伸びて、ロカ殿に深々と突き刺さる。

 

 

「ロカ!!」

 

「大丈夫だ……!」

 

「ロカ、傷を癒さないと……」

 

「オレにあの技は効かない。オレが戦えばいい。あの時みたいにな」

 

 

そういうロカ殿の言葉にレイラ殿が涙して、マトリフ殿は沈痛な表情をしている。

私はバランの傷を癒しているが、遅々として進まない。

もしやこれは、強すぎる暗黒闘気が呪文を弾いているというのか。

こんな時に!!!

 

どうするべきかと焦る私の前に、クロコダインが立ちはだかりミストバーンと対峙する。

 

 

「オレに任せてくれ。大丈夫だ。全員、無事に戻れる。

……命を懸ける時が、来たようだ……このオレがな!!」

 

 

ミストバーンの前に立ちふさがり、膨れ上がるクロコダインの闘気。

全員が激戦を潜り抜け、クロコダイン自身も竜魔人バランとの激闘を終えたばかりだ。

疲弊していないはずはない。

 

 

「死にたいようだな……」

 

「オレは武神流、ブロキーナ老師の弟子クロコダインだ」

 

「では、まずは貴様から血祭りにあげてくれる!

闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)!!」

 

 

暗黒闘気の糸にクロコダインが絡めとられるが、

噴出する闘気が糸を破り、龍撃波動拳でミストバーンを撃墜する。

叩き落されて、立ち上がったミストバーンがビュートデストリンガーを放つが、

クロコダインの闘気に阻まれて、あまり深くは刺さらない。

 

ビュートデストリンガーの伸びた爪を片手で掴み、振り回して叩きつける。

怒りに燃える目でクロコダインを睨みつけるミストバーンに、こう言い放った。

 

 

「オレ相手にそのような技で勝てると思ったのなら、片腹痛いと言わざるを得んな!」

 

「おのれ……!」

 

 

注意を自分に引き付けるためにクロコダインがミストバーンを挑発している……。

両手にデストリンガーブレードを構えたミストバーンが、クロコダインと近接戦を繰り広げた。

 

私はその間に、バランの傷を癒している。ラーハルトが必死に呼びかけているが返事はない。

レイラ殿も加わり、二人掛かりで治療しているが、

回復呪文が暗黒闘気を突破するには至っていない。

レイラ殿がやむを得ず、薬草を併用している。

 

クロコダインは真空の斧と拳で。ミストバーンは両手のデストリンガーブレードで。

お互いに一歩も譲らず、既に三十合を超える激闘を繰り広げている。

闇の衣が所々破れているが、一切傷などがつかないミストバーンに対して、

クロコダインは傷だらけになりながら、地面におびただしい血だまりを作っている。

そんな状態でありながら、クロコダインは怯まずに、

ミストバーンと互角以上の戦いを繰り広げていた。

 

四十合を超えた所で、血で滑ったのかクロコダインの手から真空の斧が落ちる。

すかさずデストリンガーブレードの突きが叩きこまれるが、

鋭利な刃に掌を貫かせてそのまま抑えたクロコダインは、

空いた右の拳で猛虎破砕拳をミストバーンに真正面から放つ。

 

食らったミストバーンは吹き飛んだので、この隙に瞬間移動呪文(ルーラ)で脱出しようかと思ったが、

ミストバーンはすぐに起き上がり、右手に凄まじい暗黒闘気を凝縮し始めた。

まさかあれは……!?

 

 

「いかん! クロコダイン、避けるのじゃ!!」

 

「避けられんさ。オレの後ろにはお前たちがいる!」

 

 

そう言って闘気を高めるクロコダイン。

 

 

「惜しいな……クロコダイン。我らが軍門に下れば軍団長の座も確かであったろうに。

見事な戦士だったが……我が奥義、闘魔最終掌を食らって滅びよ!!」

 

「おおおおおおおおおおおおお……!!!」

 

 

闘気を全開にしたクロコダインが闘魔最終掌(とうまさいしゅうしょう)に自分の肘を叩き込み、

そして身体に宿した莫大な闘気を爆発するがごとき勢いで、

ミストバーンに全力の玄武鉄山靠を食らわせる。

お互いに吹っ飛び、クロコダインは微動だにしない。

私の背筋に嫌な汗がしたたり落ちる。まさか、まさか、クロコダインが……。

 

そう思いクロコダインに駆け寄ろうとすると、

ミストバーンが我々の方に少しずつ歩み寄ってきていた。

 

 

「立派な男だった。しかし、私には一歩……いや半歩足りなかったようだな。

だが、暗黒闘気のほとんどを使い切ってしまった。

まずはバラン……私が手ずから貴様を殺し、他のものは我が軍団で始末しよう」

 

 

軍団……。まさかと思いミストバーンの背後を見ると、

無数の不吉な光の揺らめきを海の中に確認することができた。

まず、魔影軍団のキラーアーマーが一体、海を渡り海岸に現れたのだ。

その背後に大人数のさまようよろいが続く。

また一体、また一体とキラーアーマーの数だけ、数十体さまようよろいが付き従い、

あっという間に、数百体の軍勢が揃う。

 

 

「ザボエラ! バランの旦那を逃がせ!

こいつでも食らいやがれ! 極大閃熱呪文(ベギラゴン)!!」

 

 

マトリフ殿の極大閃熱呪文(ベギラゴン)が敵軍に放たれるが、

ミストバーンがそれを遮り……闇の衣ではじき返される。

咄嗟に真空呪文(バギマ)で防御壁を展開したが、それごと吹き飛ばされた。

 

一瞬、意識が飛んでしまっていたが、ラーハルトとボリクス、

ロカ殿と竜水晶、もちろんマトリフ殿も懸命に魔影軍団と戦っている。

だが、全員が疲弊しており、バランにとどめを刺そうとするミストバーンの歩みを、

止める事はできない。

 

クロコダインの意志を無にせぬためにも……この場で誰も死なせるわけにはいかない。

私は横にいるレイラ殿に、バランを頼む旨を伝える。

 

 

「奥の手がありますのでな。バラン殿をお願いしますぞ。

もし、機会があれば、ワシを置いてでもマトリフ殿たちとお逃げくだされ」

 

「ザボエラ様、一体なにをするつもりですか!?」

 

 

レイラ殿の言葉に答えず、私は目を瞑り我が内面に語り掛けた。

 

 

「グレゴリーア。契約を果たしてもらおう。ワシの寿命を吸うが良い」

 

 

承諾する旨を伝える彼女の声と共に、

私は紫色の煙に包まれ、視線が高くなってゆくのを感じた……。

 

 

 

 

 




独自設定
クロコダインはバランとの戦いの疲労とダメージがなかったら、
ミストバーンに勝てていました。
だとしても、ミストバーンにはダメージが入らないので、
撤退に追い込むという感じになりますが。

魔影軍団
アニメのバルジ島での戦いで、キラーアーマーが隊長のようになり、
さまようよろいを率いているシーンがカッコよかったので採用しました。
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