ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
今回は閑話も同時に投稿されますので、
お時間がある時にお読みいただければ幸いです。
視界がかなり高くなった。
恐らくは180cmくらいの身長だろうか?
服装も変わっているが、脳内に響いたグレゴリーアの言葉では、
"全裸じゃカッコつかないだろ"との話だった。
配慮してもらったのは助かると言わざるを得ない。
私の横にやってきたケインは、身長に合わせていつもより長い杖に変化している。
彼の忠誠心に感謝し、右手で杖を握りしめ魔法力を込める。
「……貴様、一体何者だ……!?」
ミストバーンは
だが、その超高速の爪を、右手に握ったケインが容易に薙ぎ払う。
理力の杖を取り込んでいるので、私の魔法力を通わせることで強度を高めたからだ。
「なにっ!?」
「
だが、味方とミストバーンの距離を遠ざけるために使用した。
驚くほどの威力が出ており、キラーアーマーやさまようよろいを巻き込みながら、
400mほど吹き飛んでいったので、その隙にバラン殿にベホマをかける。
呆けたような顔で、レイラ殿がこちらを見ているが説明している時間はない。
「時間制限在りでしてな。バラン殿をお願いしますぞ」
「え……あ、はい。お任せください」
相殺したように見えたが、闘魔最終掌で
中の肉がえぐれて血が止まらないようになっている……。
私は渾身の
「貴様ぁあああああーッ!!」
怒りを露わにして向かってくるミストバーンに、
私はミストバーンのいる方向に向き直り、ケインを構えて魔法力を高める。
立ち上がったミストバーンは、暗黒闘気の煙のようなものを吹き出しながら激昂する。
「なんなのだ、その力は!!」
「種明かしをするつもりはないのう。行くぞ……
「ぐおおおおおお……!!」
私は宝石魔術で五芒星の魔法陣を作り、そこから
煙のような暗黒闘気を噴出しながら、ダメージを受けるミストバーン。
この状態の私の魔法力は、過去の自分と同等になっているのかと予想していた。
だが、真ザボエラの手記に書かれていた時よりも、明らかに強くなっている。
理由は推測できるのだが、恐らくは鍛錬を積んだせいだろう。
老いた姿で極大呪文が使えるまでに修行し、
様々な強敵と戦って、私自身も
それも加味した上で、この姿に戻って力が増幅しており、
さらに五芒星魔法陣の力で破邪力が増強されている。
現に私の放った
用意していた魔法玉を魔力で浮遊させ、五芒星魔法陣を二つ展開する。
「この威力が
「驚くのは早いなミストバーンよ。ここからが本番じゃ!!」
私の横に展開した二つの五芒星魔法陣が、
私自身は前面に展開した魔法陣から、
ミストバーンが呼んだ魔影軍団は、少し掠るだけで、蒸気のように暗黒闘気を噴出し、
バタバタと倒れてゆく。
ミストバーンを守るために立ち塞がったキラーアーマーも、さまようよろいも、
彼らは物言わぬ空の鎧となり、海岸に無数の残骸を散らばらせることとなった。
理論上はできていたがやはり、この魔法陣を展開して、
そこから攻撃呪文を撃ちだすのは使える。
コツが分からなかったのだが、この使ってみた感覚を引き継げれば、元の姿でも使えそうだ。
そう考えながらも一切、呪文の手は緩めていないので、前面の敵は数を減らしている。
とうとう煙のような暗黒闘気を発しながら、倒れ込み動かなくなるミストバーン。
今のうちにミストバーンをなんとかできないだろうか。
例えばこの魔法力で
そう考えていたところ、私に
咄嗟に張った
私の
「お初にお目にかかる。私はデスカール。ミストバーン様の側近を務めている者だ」
「ほう、お前さんがのう……」
「……デスカール……」
ミストバーンと私の間に入り、彼を守るように立ち塞がるデスカール。
紫色のバリアーのようなものに、嫌な予感がするので出方を見てみるとしよう。
「ミストバーン様、大魔王様がお呼びですぞ」
「なに!?」
「このまま逃がすと思うておるのか!!」
これは一体、なんだ? 単純な呪文の無効化というよりは……むしろ。
躊躇した瞬間に四体のナイトリッチが降りたち、
ミストバーンの方を見やると、デスカールが彼を魔法力の球体で包み、
私に殺到するナイトリッチは、
そろそろこの姿を解除するべきだろう。
"実は3分オーバーしてたけど、おまけしとくよ。30年分でいい"
グレゴリーアのありがたい言葉が頭の中に響く。
視界が低くなり、元の姿に戻ったようだ。
鏡を持っているわけではないから確認できないが。
時間にして3分あまりだが、30年の寿命が対価なのは、非常に厳しい。
私が何年生きられるか分からないが、現在882歳だとして912歳になってしまった。
1000年生きられるならいいが、950歳の寿命だったらあと一回使ったらまずいな。
デスカールとミストバーンの会話を考えれば、
恐らくは何か大魔王バーンに差し迫った事態が起こったのだろう。
何か状況が好転したから、デスカールが呼びに来たとかそんなところか?
あとで、バランが目を覚ましたら、何があったのか尋ねてみる必要があるだろうな。
そう考えていると、天空から白い竜がこちらへ飛んでくる。
あれはまさかと思い、マトリフ殿たちの方へ駆け寄るが、バランとボリクスを収容して、
去ろうとしているのを竜水晶が押しとどめているようだ。
このままボリクスとバランを連れ去られては事だ。
私は竜水晶の隣に
「竜水晶。マザードラゴン殿に、私をお前さんと共に同行させてもらえるよう話してくれぬか?」
「分かった。マザーよ。願いがあるのだが聞いてもらえないだろうか」
その間に、マトリフ殿に皆を連れて、ヨミカイン魔導図書館へ戻るように伝えておいた。
マザードラゴンの事も説明し、申し訳ないが後事を頼みたいと話すと、
「バカ野郎。水臭えこというんじゃねえよ。
ボリクスの嬢ちゃんもバランの旦那も、その竜の神の使いに連れて行かれないようにしろ」
気さくな物言いで私に発破をかけてくれるマトリフ殿。
「勿論のことだが、お前さん自身も竜水晶の姉ちゃんも、ちゃんと無事で戻れよ」
「面倒な事をお願いして申し訳ない、マトリフ殿」
"気にすんな。行って来いよ"とニヤリと笑い、みなをまとめているマトリフ殿。
その姿を見ながら、私と竜水晶は、光に包まれてマザードラゴンに連れて行かれた。
やや薄暗い雲の上に我々は立っている。
マザードラゴンが作り出す一種の異空間なのだろうが……。
聖母竜が中心におり、意識のないバランとボリクスが横たわっている。
私と竜水晶が並んで聖母竜に対峙しており、説明を行っていた。
私の推測としては、前例のない二名の
莫大な
ドラゴンの表情はよくわからないが、目をつぶって私の話を聞いていたマザードラゴンは、
少しため息をつきながら、事情はわかりましたと納得してくれた。
「元来、
私が立ち入る無礼については平にご容赦頂きたい」
「いいえ……。しかし、まさか、ボリクスが……
「ご存じでしたか、マザードラゴン殿」
「彼女の祖父である雷竜祖タレスは、竜の神に仕えた良き竜でした……」
そんな家柄だったのかボリクスは。
話をしている間に、ボリクスとバランの傷をマザードラゴンが癒してくれた。
「ザボエラといいましたか……。あなたは人間の神の残留思念と出会ったのですね。
彼の残滓を感じます」
「そのような事もわかりますか、さすがはマザードラゴン殿」
そして、原作のように"ある邪悪な力によって命尽きようとしていること"を
我々に語るマザードラゴン。
あと、ボリクスはすぐに
バランは一旦、
だが、いずれ、時がくれば回復するので、それを待つようにとの話だった。
「あなたは不思議な魔族だ、ザボエラ。人間の神の残留思念が、あなたに会った気持ちがわかる。
そして、私はいまの力を全て……竜水晶。あなたに託します」
「我にですか、マザー?」
「私はもう
これからは、あなたが彼らの助けになってあげてください」
発光するマザードラゴンから光の球体が竜水晶に移った。
竜水晶の衣装が変わり、力が強大になったことが分かる。
「我が
「ありがとう……。
あなた方の道行きが光に満ちたものであることを祈ります……」
光に包まれた私たちが空中を浮遊し、超スピードで移動している。
呪文なのか分からないが、
よく見ておこうと思ったら、見慣れたヨミカイン魔導図書館の前に立っていた。
少し姿が変わった竜水晶が、バランを背負っており、私はボリクスを背負っていた。
ケインに頼み中から誰か呼んでもらおうと思ったら、
チョコマ殿を筆頭にギュータの者たちがやってきた。
どうやら、我々がいなかった間、ヨミカイン魔導図書館を守っていてくれたらしい。
バランとボリクスをギュータの者たちが抱え上げてくれる。
私が指示をしながら、ヨミカイン魔導図書館の中へ入っていった。
三日後。
バランとボリクスは体調的には問題がなかったが、目を覚ますまで時間を要した。
マザードラゴンについての説明と、
その後、マトリフ殿にはあの姿について尋ねられて、一応、理由を説明はしておいたが、
苦り切った顔で大分怒られてしまった。
「あんまり無茶をするもんじゃねぇぞ……。
いま、おめぇさんがいなくなったらヤベェんだからな。
二度は使わねぇ方向にしておこうぜ、なあ?」
と言われてしまった。心配をかけてしまったようだ。
バランとボリクスが目を覚ましたというので、まずは食事を摂って貰って、
ゆっくりしてから話を聞きたいと言っておいたが、食事の後にすぐバランから話が合った。
大魔王バーンとの戦いで何があったのかという件について、当事者であるバランから聞いてみた。
やはりすぐに光魔の杖を抜いてきたそうだが、
何度か切り結んでカイザーフェニックスや
超圧縮した暗黒闘気での中距離戦闘に切り替えたそうだ。
隙をついて竜魔人となって戦ったため、
真魔剛竜剣が折られなかったという事はよかった。
しかし、その場にミストバーンがおらず、
キルバーンも死んだわけでもなかろうに姿を消していたということだ。
……千載一遇の大魔王バーンを倒す好機だったわけか。
埒が明かず焦ったのか、大魔王バーンが額の第三の目から、
魔法力を照射してバランを支配しようとしてきたらしい。
意識が遠くなり、凄まじく嫌な予感がして、バランは
防御に徹して大魔王の隙を探りながら、状況を好転させようと機会を狙っていたということだ。
ただ、支配と言うのは恐らくは違うのではないだろうか。
鬼眼の力としては、真大魔王バーンが使った、相手を瞳化する力が有名だ。
それ以外にも、最終的に自分に施し、鬼眼王という魔獣と化した変化の力もある。
ドラムーンのゴロアを誕生させたようなあれだ。
ドラムーンというのは太鼓に手足が生えただけの小さな姿だが、
大魔王の鬼眼による超魔力で四本腕のトロルのようなモンスターに変じていた。
恐らくは、バランを魔獣化させた上で理性を飛ばし、
なんらかの方法で服従させて手駒にしようと考えたのかもしれない。
とはいっても、大魔王バーンの本意ではないだろう。
ただ単に暴れる魔獣よりは、理性ある
これまで、恐らくは4年あまりを費やして、バランと交渉を行ってきたのは、
鬼眼で魔獣にした元
バランの話の続きだが、この先はあまり話はない。
膠着状態を崩したのは、魔界のモンスターがなだれ込んできたおかげで、
その一瞬の混乱をついて、大魔王バーンに対して渾身のギガブレイクを叩きこんだそうだ。
実際、鬼眼の力に抵抗するため、精神力を振り絞っていたせいか、
そこでプッツリとバランの意識の糸は切れてしまったらしい。
その後はそれこそ、心配げに自分を見ている、
ラーハルトとボリクスの姿が最初の記憶ということである。
つまり、あのサババの海沿いでのシーンでその辺りの記憶は私たちも共有している。
「大魔王バーンを倒せたかどうかは分からん。だが、無事だとしたら姿を見せないのは奇妙だ。
なんらかの手傷を負わせた可能性はあるのだろう」
そうバランは締めくくった。
倒せていたのだったら、それこそミストバーンが闇の衣を取り去ってでも、
私たちを殺そうと息巻いてきただろう。
それをしないということは、バランが大魔王バーンに深手を負わせたため、
その場にいなくて彼を守れなかったミストバーンが、
怒りに任せて私たちを排除に来たという所か。
大魔王バーンについての状況が分からないが、
それこそ復調したら怒り狂って急に攻めてくるかもしれない。
各国に注意喚起の使者を送っておくべきだという話でまとまったので、
マトリフ殿が色々と隠して上手く話をしておくという事で終わった。
その後、バラン殿から相談を受けたのだが、どうやら
それについては、マザードラゴンから戻るという話は聞いているので、
安心して欲しいと話したが、その間に戦う事ができないのはまずいから、
誰か師匠を紹介してくれないかと頼まれた。
すぐに浮かんだのはブロキーナ老師だ。
バラン殿ほどの人物なら格闘もできるだろうが、
やはり剣術となるとアバン殿を探して頼んだ方がよいだろうな。
「勇者アバン殿か……」
「アバン殿を直接ご存じかなバラン殿?」
「いや、ハドラーを凍れる時間の秘法で封じたという報を聞いただけだ。
人間の勇者もやるものだと思いながら、地上を任せ、ヴェルザーとの戦いに臨んだのだ」
感慨深げに話すバラン殿。
そこへラーハルトとボリクスがやってきて、
バランに挨拶をするがボリクスは膨れっ面で私を睨んでいる。
「どうしたのじゃボリクス?」
「
も、もしかしてマトリフ殿から聞いてしまったのか……。
何か良い訳を考えねばならんが、さてどうしたものか。
「うちがもっと強くなる。クロコも! 竜水晶もなんか強くなっとった!
命を削るよな真似はしちゃあかんて、なぁ!!」
「いや、すまぬ。もう、使わぬよ。宝石魔術についても理解できたからのう」
「ほんまか? なぁ、バランもラーハルトも聞いたな?」
そう二人に声をかけるボリクス。
異口同音に答える二人がいて、私には味方はいないようだ。
もう一度謝ると、指切りをさせられた。
この文化があるのか……と思いながら、
慕ってくれるみなの期待を裏切らぬようにせねばと心に誓った。
近々の課題としては、恐らくあの男が動くはずだ。
一段落してみなの緊張が弛緩した隙を、黒い道化師は逃がさぬはず。
だが、このヨミカイン魔導図書館に攻めてくるのなら、
その時がお前と言う
私は食事を摂るためにボリクスに手を引かれながら、
ヨミカイン魔導図書館の長い廊下を小走りに歩んでいった。
独自設定
作中で登場していないので実際に効果があるか分かりませんが、
本作では暗黒闘気に対して有効打になりえるのが
勿論、完全に優位と言うよりは、通じるという感じで、
ミストバーンがクロコダインとの戦闘を経ていなければ、
もう少し戦えたことでしょう。
宝石魔術
過去のザボエラが使っていたことは手記を読むと分かったのですが、
それについての技法が一切体系化されていなかったので、
今回ようやくやり方が分かった感じです。
使えた時代の肉体に戻ったため、身体が使い方を覚えていたというやつです。
雷竜祖タレス
静電気を発見したタレスより。そのままですね。
この辺りは属性ごとの竜が六体いたという程度の設定を作ってあるくらいです。
地・水・火・風、雷と冥。