ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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*注意*
第四十一話をお読みになってからご覧ください。

次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。




第四十一話閑話 黒衣の道化師の暗躍

 

大魔宮(バーンパレス)内に存在する壮麗ではあるが、華美に過ぎぬ絶妙なバランスで作られた謁見の間。

玉座に佇み微動だにせぬのは大魔宮(バーンパレス)が主たる大魔王バーン。

額の鬼眼が淡い光を放っているが、大魔王自身は瞑目している。

 

玉座の右横にはキング・マキシマムが立ち、オリハルコンの兵士(ポーン)が、

大魔王の前に立ち微動だにせず四体で彼を守護している。

さらに城兵(ルック)が控え、常に大魔王バーンへの攻撃があった場合、

キャスリングで肩代わりする構えだ。

玉座の前に傅く三名は、ミストバーン、キルバーン、デスカールの三者である。

 

竜魔人バランが大魔王バーンを急襲した際、

マキシマムは竜魔人を前に、指揮系統が混乱してしまい、

右往左往していた魔界の魔物達を一喝して統率。

その後、オリハルコン兵士たちで大魔王バーンを守護する構えを取り、

竜魔人と対峙し、撤退に追い込んだことを、大いに賞賛された。

実際の所、すでに意識を失っていたバランを逃がすことを選択していた、

自己防衛本能が単純に敵勢力からの撤退を選んだだけで、

戦闘に及んでいたらマキシマムはこの世にいなかったであろう。

 

様々な偶然が重なった結果、マキシマムは過去最大の評価を受けていた。

ただでさえ肥大化した自尊心を持つマキシマムのプライドは、

今現在、ギルドメイン山脈より高くそびえたっている。

 

ミストバーンに軽んじられている事は知っていたので、

これを機会に大魔王バーンから叱責してもらおうと思ったマキシマムは、

ミストバーンの短慮に対しての追及を行ったが、

大魔王の判断はマキシマムの願望からは外れていた。

 

 

「よい、ミストバーンの行動はすべて許そう」

 

「バ、バーン様、宜しいのですかっ!?」

 

 

不敬にならぬように頭を下げ、不満を言葉から滲ませつつ大魔王に問うマキシマム。

それに対して、微動だにせぬまま魔法力でみなに声を伝える大魔王バーン。

 

 

「うむ……。余がバランの様子を見てまいれと念話を送ったのだ。

戦闘に入ってしまったのは命令外ではあるが……。

一重に余への忠誠心からしたこと。魔影軍団を動かしたことも不問に付す」

 

「寛大なお言葉、感謝いたしますバーン様……」

 

「お、お、お優しいですなバーン様は……」

 

 

申し訳なさそうに大魔王バーンに詫びるミストバーンとは対照的に、

キング・マキシマムは忌々しそうに皮肉を口にする。

元々、マキシマムはミストバーンが嫌いであるからだ。

大魔宮(バーンパレス)の掃除屋と侮られている事を知っているので、大変な失態を犯したタイミングで、

大魔王バーンから厳しい沙汰が下ると思っていたのだが、

そうならなかったことを無念に思っている。

 

前後するが竜魔人バランが大魔王バーンと戦闘した折、

ミストバーンはギルドメイン山脈にて鬼岩城建設の任務についていた。

バーンはバランのギガブレイクを鬼眼に受け、その後、竜魔人が大魔宮(バーンパレス)から脱出した際、

念話でミストバーンにバランを探す様に伝達。

 

バーンの本意としてはバランの動向を監視させるつもりだったが、

それを言う前に意識を失ってしまっていた。

それゆえに、ミストバーンが大魔王の指示を、"バランを探し出して殺せ"という、

バラン抹殺命令(・・・・・・・)だと解釈してしまった。

つまり、サババの海岸における、激怒したミストバーンの戦闘行為は、

命令伝達の断絶による、事故のようなものだと大魔王バーンは考えていた。

 

現在の大魔王バーンの状態は、身体の能力の全てが、

鬼眼修復に全力を傾けているという状況である。

そのため不眠不休で動くオリハルコンの兵たちが、彼を守護しているのだ。

魔法力によって大魔王は部下たちに意志を伝達しているわけなのだが、

それすらも断続的な眠りによって遮られてしまっている。

 

バランが無我夢中で放ったギガブレイクは、大魔王バーンの冠を破壊し、

鬼眼を著しく傷つけていたのだ。

恐らくは竜の(ドラゴン)騎士の戦いの遺伝子が、本人(バラン)が意図しておらずとも、

大魔王バーンから放たれる力の源泉が鬼眼にあると判断し、それを断つべく攻撃したのだろう。

 

大魔王バーンが鬼眼の傷を癒す間、ミストバーンに全権を委任。

デスカールは補佐となる。マキシマムは大魔王バーン親衛隊長の任を仰せつかった。

もちろん、進行中の地上侵攻計画はそのまま進める。

 

ただ、ハドラー復活を二年早め、彼に修行を施すことを大魔王の名において決定した。

バランの生死が不確かである以上、敵に回った彼と、

魔軍司令たるハドラーの力が離れすぎているのは危うい。

復活後はミストバーンが手ずから修行をつけ、暗黒闘気を増強させるという話になっている。

その後、大魔王バーンは、また力を回復するための眠りに入ったところだ。

 

白い宮廷(ホワイトガーデン)にある最高幹部たちの会議室へ、ミストバーンたちは移動する。

会議へは加わるつもりがないマキシマムは、意趣返しとしてミストバーンを揶揄する。

 

 

「失態を挽回してバーン様からの信頼を回復せねばならんなぁ、ミストバーン?」

 

「……言われるまでもない。だが、礼は言っておくぞマキシマム」

 

「はぁっ!? あ、い、いや、なぜ、我輩に礼を……?」

 

 

ミストバーンの意外な言葉に困惑するマキシマム。

思わず間抜けた声を出してしまったが、ミストバーンはそれを無視して、

マキシマムに対して心からの感謝の言葉を紡ぎだす。

 

 

「私が大魔王様のお言葉を曲解してしまったにもかかわらず、

窮地のバーン様をお前は守護し奉ってくれた。

不心得者がいてバーン様のお命を狙った場合、どうしようもなかったのだ。

その点に関しては、重ねて礼を言わせてもらう。今後も、よろしく頼みたい」

 

「え、あ、いや……ようやく我輩の存在感が理解できたようだなミストバーン。

任せるがいいぞ。バーン様は必ずやこのキング・マキシマムがお守りする!!」

 

 

マキシマムは大魔王バーン守護の為に戻ってゆき、会議室にはミストバーンとデスカール。

それにキルバーンの三者だけ残った。

今後の対応について協議に入ることになったが、口火を切ったのはデスカールだ。

今回、ミストバーンを救出した事で、信任を受けている。

更なる勲功をあげることで、魔王軍内部での立場を確固たるものにしたい意志があるのだろう。

 

 

「彼奴等が攻めてくる可能性を考慮するべきでは?

裏切り者のバランから大魔宮(バーンパレス)の秘密を聞いているかもしれませぬ」

 

 

ミストバーンにそう話しかけ、ヨミカイン魔導図書館への侵攻作戦を提案するデスカール。

 

 

「そして、わざわざ大魔宮(バーンパレス)の位置を教えるのかいデスカール?

マザードラゴンが飛んできたんだ。ボリクスかバラン。

もしくは両方の竜の(ドラゴン)騎士が死んだかもしれないよ。

ボクは様子見をするべきだと思うな」

 

「なればこそ好機。

いまこそ、彼奴等にバーン様の玉体を傷つけた報いをくれてやる時ではありませんか?」

 

「……」

 

 

ミストバーンは黙して考えている。

大魔王バーンの危機において、主の命令外の戦闘行動を行ってしまった。

暗黒闘気生命体の自身が滅ぼされても、

大魔王バーンの肉体は凍れる時間の秘法で守護されている。

とはいっても、信頼されて任されている主君の玉体を、危険に晒してしまった事は万死に値する。

処刑されてもやむなしといえる失態であった。

 

だが、主君大魔王バーンは寛大にもすべてを許してくれたのである。

主君の大いなる寛大さゆえに、ミストバーンは新たに行動をすることを躊躇っていた。

キルバーンとデスカールがヨミカイン魔導図書館を攻めるかどうかについて、

激論を交わしているのを横目に聞いているのである。

 

 

「どうやって攻めるんだいデスカール?

竜の(ドラゴン)騎士の最強戦闘形態(マックスバトルフォーム)と互角に渡り合い、ミストに奥の手まで出させるクロコダイン。

凄まじい魔法力をもって、ミストを倒しそうになったヨミカイン魔導図書館館長、ザボエラ。

竜の(ドラゴン)騎士を守護する竜水晶。勇者アバンの仲間も三人いる。

さらに生死不明の竜の(ドラゴン)騎士もいるじゃないか」

 

 

サババの海岸の様に魔界のモンスターの屍を大量に並べるつもりがあるなら、

お好きにどうぞというキルバーンの言葉に、不満げに黙り込むデスカール。

ニヤニヤしているキルバーンは、そこで急に一堂に言葉の爆弾を放り込む。

 

 

「実はこの一件をヴェルザー様に報告していてね……命令を預かっている」

 

「……それはつまり、冥竜王ヴェルザーから送られた協力者と言う立場を捨てるのかキル?」

 

 

キルバーンに向き直って詰問するミストバーン。

両手をあげておどけたポーズをとるキルバーンは、

気楽な口調でミストバーンに対して返事をする。

 

 

「それがねぇ……。実はヴェルザー様からはいままで通り、協力しろと言われているんだよボク。

だから、ボクらの友情はまだまだ続くのさ、ミスト」

 

「……そうか……」

 

 

毒気を抜かれたかのように言葉少なに答えるミストバーン。

デスカールから超竜軍団団長として、誰を据えるかと言う話題に移る。

交渉中ではあったのだが、大魔王バーンはバランを超竜軍団団長にするつもりだったからだ。

魔界の猛者の中で誰かを軍団長にするという話も出ているが、

次回大魔王バーンが起きた時にその話を詰めようという事になった。

 

 

 

 

その場を去り大魔宮(バーンパレス)内をゆっくりと移動するキルバーン。

彼は、さてどう動こうかと策謀を脳内に巡らせていた。

先ほどのヴェルザーの言葉は嘘である。

実際の所は、ヴェルザーからは、良い機会だからバーンを暗殺しろと言われたが、

キルバーンが別の提案をして一旦、その命令を宙に浮かせているのだ。

 

数年前の事だが、大魔王バーンが竜の(ドラゴン)騎士バランを部下にしようと交渉している情報を、

主である冥竜王ヴェルザーに伝えたことがある。

激怒の返信をもって答えたキルバーンの主(ヴェルザー)は、

キルバーンに二人とも黒の核晶(くろ コア)で吹き飛ばせと命じた。

 

ただでさえ大魔王バーンが賭けに勝ちそうで、自分は何もできない状況のヴェルザーに対して、

その窮状へ彼を追い込んだ憎き怨敵であるバランが、

大魔王の配下に就くかもしれないという一報。

憤懣(ふんまん)やる方ならず、かつてないほどの憤怒を見せるのもやむを得ない話だ。

その時もキルバーンはヴェルザーの勘気を宥めて抑えている。

 

大魔王バーンとの交渉の間、キルバーンはそれとなくバランの行動を監視することにしていた。

竜騎衆を探していることも知っていたし、行方不明になった実子を探している事も、

キルバーンは掴んでいた。

ヨミカイン魔導図書館についても、単純な好奇心で見に行ったのだが、

そこで驚愕するべき人物を発見したのだ。

 

もう一人の竜の(ドラゴン)騎士ボリクス。

ただでさえ、一世代に一人のはずの竜の(ドラゴン)騎士が、二人も存在する。

その事実に驚いたキルバーンは、このボリクスが何かの間違いで、

大魔王バーンの軍門に下った場合、

それこそ二人の竜の(ドラゴン)騎士を擁した大魔王バーンは無敵となるだろう。

魔界のヴェルザー領も容易く滅ぼされてしまう可能性に思い至った。

 

魔界に連絡して、すぐ動ける部下を送ってもらい、記憶の神殿で襲撃。

その後、ラーハルトを人質にしてバランを大魔王バーンと戦わせることに成功した。

竜魔人と化したバランが、大魔王バーンに必殺技を食らわせて、

バーンを倒せはしないものの、

いつでも始末できるであろう状態にしてくれたことは感謝している。

 

このまま始末するべきか? 黒の核晶(くろ コア)なんて野蛮なものを使わずに……?

そう考えたキルバーンだったが、大魔宮(バーンパレス)守護の魔物たちの乱入による場の混乱。

マキシマムと彼の部下たるオリハルコンの兵士たちがすぐに駆け付け、

大魔王バーンを守護した迅速な手並み。

普段の間抜けさから思考の外にあったが、マキシマムの配下の駒たちの能力は非常に優秀だ。

兵士(ポーン)が立ち塞がり、城兵(ルック)が大魔王バーンを守護している以上、

致命の一撃ですら一度は城兵(ルック)がキャスリングで完全に防いでしまう。

そうなれば、隙だらけのキルバーンを、オリハルコンの兵士たちの拳なり武器なりが、

ズタズタにしてしまうだろう。

 

優秀な暗殺者であるキルバーンはゴリ押しを止めた。

一旦、機会を失ったならば、拘泥せずに切り替えねば命とりである。

 

距離を置いて監視していた所、悪魔の目玉からの緊急の伝令があった。

ミストバーンがサババの海岸において、

バランを討ち取るために戦闘状態に入ってしまったらしい。

どうやら念話でミストバーンに語り掛けた大魔王バーンが、

連絡途中に意識を一旦失ったため、中途半端な情報でミストバーンが行動したようだ。

 

キルバーンも好奇心として、バランとボリクスの二人の竜の(ドラゴン)騎士がどうなるか気にはなる。

たった一人でも天地を揺るがす力を持つ竜の(ドラゴン)騎士だ。

きちんと動向を確認せねばならないだろう。

サババの海岸へ監視を送り、状況の把握に努めた。

 

サババの様子を確認していたキルバーンは、一部始終を見て表面的には、

軽く舌打ちをしただけだが、それ以上の失望があった。

竜魔人バランは止められ、その後に激怒して現れたミストバーンも撃退されてしまったのだ。

バランとボリクスたち、二人の竜の(ドラゴン)騎士はマザードラゴンに連れ去られ、

どうなってしまっているのかは不明な状況である。

 

キルバーンの主人であるヴェルザーは、いまの大魔王バーンを殺せと言うが、

その命令には反対である。

彼としては、喫緊の課題としてヨミカイン魔導図書館勢力を潰さねばと言う気持ちの方が強い。

特に一瞬だが見せたヨミカイン魔導図書館館長、ザボエラのあの力は異常だ。

 

彼らが魔王軍に捕捉されたのはギルドメイン山脈における、

皇帝の死者の軍勢を倒した辺りからである。

だが、実際は調べ上げてみると、魔界に出かけた痕跡があるし、

テラン、パプニカ、カールなどでその足跡が確認されている。

なにより、ミストバーンを圧倒する絶大な魔法力。

 

あれほどの力を持つ魔族が、急に湧いてきたというのは考えづらい。

本人の外見的な年齢を考えると、あの年齢まであそこまでの力を隠し、

地上でひっそりと生きてきたというのは尋常な生き方ではない。

それになにより、あの若返った……老人ではあるが普段の姿からすれば、

若返っていると言っても過言ではない、あの姿に見覚えがあったからだ。

 

キルバーンは大魔宮(バーンパレス)白い宮廷(ホワイトガーデン)をわざわざ歩きながら、記憶を手繰り寄せ、

必死に見覚えのある、あの姿への既視感の正体を明らかにしようとしていた。

 

キルバーンはかつて魔界の八大実力者を、彼がたった一人で暗躍し、

瓦解させた仕事の記憶を思い出すことに成功した。

あの時、手を変え品を変え、流言飛語、嘘の命令、裏切りの捏造、密告者etc……

それによって八大実力者を一人ずつ狩ったのだが、直接殺せなかったものが一人いた。

魔女グレゴリーアである。

もっとも、ヴェルザーに対して特攻めいたヤケクソな攻撃を行ったせいではあるが、

その魔女グレゴリーアの陰に隠れて完璧なバックアップをしていた男。

深緑の枢機卿という異名だけ伝わる謎の人物だ。

 

てっきりグレゴリーアが倒れた後、行方不明になっていたので死んだかと思っていたが……。

直接見たわけではないが、部下から聞いていた魔法陣を展開して、

呪文を放ってくる戦闘スタイル……。彼独自のものだ。

まず、並みの力量では魔法陣を一つ展開して、維持するだけで魔法力が尽きる。

頭の左右に魔法陣を展開し、そこから退散呪文(ニフラム)を連射。

本人は未確認の退散呪文(ニフラオン)という強力な光の呪文を使った。

三つの呪文を高密度で連射し、あのミストバーンを完封した。

 

正直な所、いままでならともかく、現在の大魔王バーンを始末するなら、

奥の手(黒の核晶)を使えばいつでもできる。

それよりは、謎の勢力を糾合しているヨミカイン魔導図書館。

そこに居座るザボエラの勢力を潰すべきだろう。

目的が読めない以上、不気味さがあり、構成メンバーの強さを考えると、

早々に全力で潰しにかかる必要がある。

おそらく、放置しておくと手が付けられなくなるのはこちらだ。

 

冥竜王ヴェルザーにはヴェルザー十二魔将という強力な幹部たちがいる。

だが、ここ数年で代替わりが激しいのだ。

なぜかと言えば、竜の(ドラゴン)騎士バランにほとんど倒されてしまったからである。

生き残っていたのは、魔界のヴェルザーの居城を守る、

ヴェルザーが契約している悪魔、ベリアル・バズズ、アトラスの三名だ。

ヴェルザー十二魔将は、十二人の内、九名がヴェルザー一族の竜族であったが、

その九名が悉くバランに倒され、盟主ヴェルザーも封印されてしまっている。

 

その後、ヴェルザー軍の猛者を登用して、形だけはヴェルザー十二魔将を立て直しはしたが、

内実は新参の九名が古参のベリアルたち三将を凌駕する武勲を立てようと必死なのだ。

それをヴェルザーが抑えているという形になってはいる。

そこで大魔王バーンが重傷を負って動けぬとなれば、

バーンを倒すべしという主張が大勢を占めてしまう事になるのもやむを得ない。

 

大魔宮(バーンパレス)を出て、地上の死の大地に立つ。

この不毛な光景も、不純物が存在しないという観点から考えれば、

悪いものではないかもしれないとキルバーンは考える。

 

 

「大魔王バーン暗殺の話も、新参の十二魔将からの発案だろうな。

慎重なベリアル君たちが、そんな馬鹿な事を言うわけないだろうし」

 

 

念のためトランプ占いをもう一度行ってみるキルバーン。

トランプがシャッフルされる音が響き、選び出されるカードはまたよくないものだ。

 

トランプ占いで危険なカードが出たことを確認し、

瞬間移動呪文(ルーラ)で死の大地から飛び立ちながら、

キルバーンはこれからの行動を決定した。

 

 

「ウフフフフ……決まりだ。

潰すか。ヨミカイン魔導図書館と、ザボエラ君を……」

 

 

基本的に単独行動ではあるし、数百年ほど大魔王バーン陣営にいたため、

直属の部下などが見られなかったキルバーンではあるが、

実はヴェルザー臣下で唯一、主人の許可を得ずして直属の軍勢を動かす権限を有している。

 

これは八大実力者を瓦解させた時の功績で、諜報も行っているキルバーンの軍勢の行動を、

一々、ヴェルザーにお伺いを立てていては、

機を逸するというキルバーンからの嘆願によるものだ。

ヴェルザーも目障り極まりなかった八大実力者を叩き潰した功績として、

キルバーンの嘆願を受け入れ、彼に権限を与えている。

 

その一点だけでいえば、キルバーンはヴェルザー十二魔将以上の権限を持っている事になる。

キルバーンはトランプを何枚か取り出し、虚空へ投げる。

カードたちは自らの意志を持ったかのように鋭角的な動きをして、

それぞれ別の方角へ飛び去り消え去った。

 

 

「さて、ザボエラ君に見せてやろうじゃないか。

このボクが率いる、キルバーン黒道化衆の恐ろしさを……」

 

 

彼直属の癖のある部下たちを使い、ザボエラたちヨミカイン魔導図書館の勢力を潰す。

しかる後、大魔王バーンも黒の核晶で始末すれば、その後はヴェルザーを地上へ呼んで、

じっくりと封印解除の方法を地上を侵攻をしながら考えればいい。

天界へ攻め入る事を考えてもいいだろう。

なんにしろ、"その後"であれば時間はたっぷりあるのだ。

 

瞬間移動呪文(ルーラ)で降りたち、地上の隠れ家の一つに到着した彼の周囲に、

幾つもの見知った部下たちの気配が増えていく事を確認する。

その懐かしくも邪悪な雰囲気に満足感を覚えながら、

キルバーンは己の策略が実を結ぶことを信じて疑わなかったのであった。

 

 




独自設定
"ヴェルザーの許可を得ずして直属の軍勢を動かす権限を有している"

キルバーンに謀反されたらまずいのですが、
八大実力者を相当に鬱陶しいと感じていたヴェルザーは、
キルバーンが彼らを瓦解させたことが、よほど嬉しかったようで、
珍しく気前よくキルバーンの嘆願を受け入れました。

キルバーン黒道化衆
最初、キルバーン黒道化連にしましたが、
それ転生したら〇ライムだった件じゃないかと思って没にしました。

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