ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

45 / 117

これから七年目に入ります。


次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。




原作前(ダイの大冒険本編の7年前)
第四十三話 竜の(ドラゴン)親子と剣豪の手がかり


キルバーンを倒した後、大魔王バーンの動きが鈍い様なので、

いつ彼が本腰を入れて侵攻してきてもいいように、各国を回って下準備を始めていた。

特にパプニカは魔法兵団の育成や戦士団の増強など、王や三賢者のパルナス殿が陣頭指揮を執り、

マトリフ殿もレオナ姫の呪文の手ほどきをしながら、精力的に飛び回っている。

 

そんな中、私はある親子の再会をお膳立てするために、

瞬間移動呪文(ルーラ)で何人か連れてデルムリン島へやってきた。

まず、原作冒頭で島のモンスターたちが、大魔王の邪気で暴走したが、

それを防ぐため破邪呪文(マホカトール)の魔法陣をアバン殿と一緒に設置した。

原作より頑強なものであり、中心に魔法玉を置くことで、破邪呪文(マホカトール)の破邪力を高めていた。

だが、今回の用事はこれがメインではない。ダイとバラン殿の対面が目的なのだ。

 

私とボリクス、アバン殿、ラーハルト、ブラス殿が見守る中、二人が向かい合っている。

バラン殿はしゃがんで目線を合わせ、きょとんとしているダイと話をしていた。

 

「おじさんが……お父さんなの? 爺ちゃんとは違うのか?」

 

「ブラス殿は賢明な方でお前を育ててくださった素晴らしい方だ。

私は……お前と血のつながりがある父親、ということだな」

 

バラン殿はダイに対して、親子であるという事を丁寧に噛み砕いて説明をしている。

原作での親子としての対面の過程は竜の(ドラゴン)紋章の力で記憶を吹き飛ばし、

竜魔人の姿で相対して、竜の(ドラゴン)紋章を親子の証明とする強引なやり方だった。

いまの、この穏やかな対面に私は安堵を感じている。

 

恐らくは会話の切り札になるであろう事について、私は隣のアバン殿に尋ねてみた。

 

竜の(ドラゴン)紋章はどの程度もちますかな? いまのバラン殿は?」

 

「全力戦闘で1分。呪文を受ける程度でしたら、3分は持ちますかね」

 

一年でその回復なのか。

まぁ、もっとも、完全に使えなくなった状態から回復しただけでもよいのだろうが……。

マザードラゴンに必ず回復するという言葉を聞いていなかったら、心配するところだ。

 

 

「これを見て欲しい……ダイ……」

 

 

バラン殿が額の紋章の力を開放する。

それに呼応して、ダイの紋章も小さな光を発する。

 

 

「ほんとうだ……! おじさんは嘘ついてない! おじさ……お父さんだ!」

 

「ああ……長年、この時を、待っていたんだ……ディーノ……」

 

 

感極まったバラン殿がダイを抱きしめる。

それをみた、ラーハルトが微動だにせず、滝のような涙を流して立ち尽くしている。

ダイが照れているのか硬直しているので、ボリクスが助けに入る。

 

 

「おっちゃん、ダイがびっくりしてるで」

 

「あ、ああ、済まない……ダイ」

 

「あ、じゃあ、ボリクスはおれのお姉ちゃんなの?」

 

 

そう問いかけるダイに、どう説明していいか考えあぐねるバラン殿。

ボリクスがそこに助け舟を出す。

 

 

「まあ、うちは親戚のねーちゃんって所やな。そやろ?」

 

「ああ、うむ、そうだ。そんな感じだ、ダイ」

 

 

しかし、原作では酷い親子の再会だったというのに、それがこんなに平和裏に終わるとはな……。

私としては非常に嬉しい事だし、ダイにとってもバラン殿にとっても幸福な事だろう。

少なくともこの世界では、親子が骨肉の争いをすることはなくなったのだから……。

感慨に浸っている私の横をアバン殿が歩いてゆき、三人に話しかける。

 

 

「ダイ君初めまして。私はアバンといいます。ボリクスの剣術の先生をしています」

 

「こんにちは! ボリクスの先生なんだ。すごいや!」

 

「これから、君の先生にもなるのですから、

ダイ君にもそう呼んでもらいたいですかね」

 

「おれの先生に?」

 

 

ブラス殿に許可は取ってある。

ここ数年で起こったことはブラス殿に全て話をして、

大魔王が侵攻を開始した場合の危険性についても説明した。

ブラス殿は名残惜しそうにしながら、肉親であるバラン殿にダイを返そうとした。

だが、バラン殿がそれを拒み、自分とラーハルトも一緒に、

デルムリン島で暮らさせてほしいと頼んだのだ。

 

自分がアルキード王国にダイと引き離された事をブラス殿に説明。

息子を長い間立派に育ててくれた恩人から、

無下に引き離そうという気持ちはないと告げた。

 

実の所、自分一人で上手く育てられる自信がない。

そう、こっそりと私にバラン殿が教えてくれたのは内緒の話だ。

 

ブラス殿はバラン殿とラーハルトがデルムリン島に住むことを許可した。

その上でアバン殿が、バラン殿とダイに対してアバン流刀殺法を教える。

バラン殿は竜闘気(ドラゴニック・オーラ)がいずれ戻るにしても、

その間に闘気技を習っておくことは無駄ではない。

ダイに関しては、きっちり修行してやれば原作より更に、

安定した環境で自分の力と向き合う事ができるだろう。

 

ラーハルトは師としてバラン殿だけに教えを請うといって拒んだが、

ボリクスがアバン流槍殺法覚えたらけっこう面白いのではと言ったら、耳がぴくぴく動いていた。

アバン殿はこの一年の間、独自に修行を積んで、アバン流を深く極めて理解するため、

槍などの他の武器にも精通するようになっていたのだ。

 

アバン殿が、バラン殿たちが住む家の場所を見繕っている最中、

ブラス殿がなにか箱を持ってやってきたので、もしやと思ったら私に話があるそうだ。

 

 

「ザボエラ殿、見ていただきたい物がございます。

これはかつての魔王ハドラーから預かった金の魔法の筒ですじゃ」

 

「ほう……これはどのようなものですかな?」

 

「魔王はこう記された書状を同封しておりました。

"はるかなる時空の彼方より来たれり者がこの中に眠る。

万が一、島に危険が及んだ時にはこれを使え"と」

 

 

実は知っているのだが、まぁ、初めて見たかのように返事をした。

これは原作では拾われなかった要素ではあるが、

ハドラーは別世界……入っていた魔物を考えると、

ドラクエ4の天空の世界と繋がる暗黒回廊を開いていたようだ。

この場合、闇の世界へ繋がるわけではないから、次元回廊とでもいうべきか。

恐らくは戦力の拡充のために、研究を進めていた可能性がある。

 

ハドラーが研究を更に進めなかった裏には、

なんらかの不都合があったのではないだろうかと考えられるが……。

次元回廊の安定性か、それとも在野のモンスターで戦力が足りたので、

別世界からわざわざモンスターを呼び寄せる必要性を感じなくなったのか……?

その推測は後日に回すとして、ブラス殿から金色の魔法の筒を受け取る。

 

自分が持っているよりは、私に預けた方が有効に使えるだろうという信頼からの言葉だ。

ありがたく頂戴して研究を進める事を約束した。

そして、ブラス殿にも一枚の紙を渡した。

 

 

「これは……なんですかな? 呪文が書いてあるようですが……」

 

「ブラス殿に習得していただく呪文ですな。

なに、アバン殿がちょくちょく訪れるようになります。

ダイと一緒に学ばれるがよろしかろう」

 

「で、ですが……ワシにできますかな……」

 

 

私はブラス殿の不安を消すために説明をした。

無理強いをするつもりは一切ない。

ただ、習得できれば便利な呪文を列挙しただけだと。

 

瞬間移動呪文(ルーラ)はまず重要になる。使い手は多い方がいい。

真空呪文(バギ)系は応用が利くし、火炎呪文(メラゾーマ)も強力な呪文だ。

あと幾つかの呪文をリストに載せているが、それは契約ができればの話だ。

 

 

「じいちゃん、おれに勉強しろって言ってるのに、自分は嫌なのずるいよな」

 

「なにを言うかダイ! わかりました。やりますぞワシも!」

 

 

ダイの発破でブラス殿が首を縦に振ったことで、和やかな笑いがデルムリン島に満ちた。

あとはデルムリン島の自治権を獲得するべく、

ロモス王国へ寄るのだが……こちらはほぼ確認作業だ。

パプニカのレオポルト王から書状を受け取ってあるし、

元から怪物島と呼ばれて付近の漁師も近づかなかった場所。

 

誰の持ち主でもないのだが、あとから何か言われないためにも、

こういう事はきっちり筋道を通しておくのが、後腐れなくてよいのだ。

この辺りもマトリフ殿からアドバイスを受けている。

 

それにこちらもデルムリン島の自治権を獲得する事以外の、メインの目的が存在するのだ。

 

 

 

瞬間移動呪文(ルーラ)でロモスへ到着。

ロモス城へ招かれ、大掛かりな謁見ではなく、応接室に招かれての会談となった。

今回は私とアバン殿の二人だ。私だけでもよかったのだが、私一人では先方も不安だろう。

実際、ロモスの騎士たちが王の背後に緊張した面持ちで立っている。

それを知ってから知らずか、シナナ王はパプニカからの親書を読んで明るくこう切り出した。

 

 

「あいわかった。もっとも、パプニカ王国がザボエラ殿の身の証を立てずとも、

秘密裏にアリアムから貴殿の事は聞いておったのだよ」

 

「え!? ザボエラさんの事、ご存じだったのですかシナナ王?」

 

「ほう。アリアム殿がワシの事を陛下に話されましたか……」

 

 

ロモス咳の特効薬の件で薬効が証明された後、再度アリアム殿は召し出された。

それは一度辞退した褒美についての話である。

その際、アリアム殿は褒美を受ける権利を返上して、王との面談を望んだという。

 

その面談の際に、シナナ王にだけ真実を告げていたということだった。

曰く、薬の出どころはザボエラという魔族のもので、彼は賢明で誠実な人物であると……。

 

賢い選択ではある。最初から魔族の薬だと言われたら広まらないかもしれない。

ならば、きちんと効果がでて、救われた人たちという確かに実証がなされたあとであれば、

王たちも真実について受け入れやすい所があるだろう。

 

 

「そうでしたか……。

マトリフ殿に話してレオポルト陛下に用意してもらった親書が、

無駄になってしまいましたか?」

 

「いやいや。パプニカの後押しは助かる。

やはり、権威があるからな。

これで、ロモスも公的にザボエラ殿の身の証を得て、

貴殿と交友を深める事ができるだろう」

 

 

デルムリン島の自治権に関しては、遡ってもロモス王国が所有していた証はないらしい。

パプニカの後ろ盾の下、ロモス王国もその自治を認めて、

自治権を保証する旨、公文書として残すことになった。

 

自治権についての文書を、第三国であるパプニカの公文書館に保存する事も、

快く了承してくれた。

 

デルムリン島についての話が片付いたので、いま一つの書状をロモス王に渡した。

これはリンガイア王テオドル殿からのもので、ギルドメイン帝国の話が記されており、

一昨年の皇帝復活にまつわる事件と、それを解決した勇者アバンや(ザボエラ)に対して、

便宜を図って欲しいという内容だった。

 

読み終えて深いため息をつくシナナ王。

情報量が多すぎるという顔をしてるな。

分かる。私も聞いた時は同じ気持ちになった。

 

 

「ワシもリンガイアとロモスは兄弟国だという事は知っていたのだが、

ロモス建国王が自分の出自をあまり詳しく記録に残さなくてのう。

あまり尚武の気風でない理由も得心が行くものであったよ」

 

「覇者の鎧は両断され、皇帝の怨霊も倒しましたので、最早危険はないかと存じますが……」

 

 

そこまで言うと、シナナ王は手を挙げて話を遮った。

 

 

「いやいや説明頂くには及ばぬよ。覇者の剣と冠の件は、ザボエラ殿にお任せする。

正直、リンガイアと同じことがロモスで起きた場合、ロモスは持たぬだろうからな」

 

「えっ! よろしいのですか、シナナ陛下? 覇者の剣と冠は国宝ではありませんか?」

 

 

シナナ王の思い切りのいい発言に、説得に来たはずのアバン殿も驚く。

私も正直、驚いてしまっていた。

ニセ勇者一行に覇者の冠を授けてしまったり、ザムザに説かれて武術大会を開いたりと、

迂闊な行動が多い人物だが、暴君ではないし話せば分かってくれるタイプではある。

それが良い方向へ作用したと思えばいいだろう。

 

覇者の剣と冠は、ロモス王から正式にヨミカイン魔導図書館に、

寄贈されることになった。

表向きは研究目的の貸与だが、実際の所は譲渡になる。

その返礼というわけではないが、後日、パプニカに依頼してあった、

青鍛鋼(ブルーメタル)の武具一式を、ロモス王家に届ける事になった。

 

紋章は勿論、ロモス王家のものであり、覇者の剣や冠の代わりに、

ロモス王家の新たなる家宝の武具にしてもらえればと。

シナナ王は非常に喜び、これに相応しい勇者が現れたら、

授与してもよいかもしれぬと言っていた。

 

この後、王城に破邪呪文(マホカトール)を施すという提案をしたところ、

王城の側に倉庫を幾つか建てて、何かあった場合の食料備蓄や民衆の匿い先としたいので、

そちらにも破邪呪文(マホカトール)を施してほしいと頼まれた。

 

その他にも幾つかの献策をしてロモスを去った。

そういえば、そろそろフォブスターが16歳くらいになっている時期だ。

それらしい若者がいたら伝えてもらうよう、シナナ王に話をしておいてもいいだろう。

ロモスの未来の宮廷魔導士にしてもいいかもしれない。

 

 

 

ヨミカイン魔導図書館に戻り、椅子に座った所で記憶が途絶えている。

ここ数日、交渉や下準備などであちらこちらを飛び回っていたので、疲労が溜まっていたようだ。

 

私はどうやら机の上で眠ってしまったらしい。

なぜ、らしいなどという曖昧な表現なのかと言えば、

実はいままたグレゴリーアの家に招待されているからだ。

 

そこで待っていたグレゴリーアから机で寝ていると、

大笑いされながら指摘されて分かった事なのである。

 

彼女は笑っているだけではなく、テーブルでハーブティーを用意してくれていた。

ここでハーブティーを飲んで寛ぐことで、精神的に楽になるらしい。

 

 

「大事な宿主殿だからね。倒れられちゃ困るってわけさ」

 

 

最初の時から敵意はなかったし、基本的に彼女は協力的ではある。

真ザボエラの手記のイメージでは、激高しやすく気が強すぎる感じだったので、

いまの穏やかなバーのママのようなグレゴリーアは付き合いやすい点では助かる。

 

何気ない話をしていたのだが、ふと気になって魔界の剣豪ヒュンケルの話を振ってみた。

あまり原作でも詳細が明らかにならなかった人物である。

何か彼女が知らないか軽い気持ちで尋ねたのだ。

返ってきた答えに驚いたが。

 

 

「ああ、剣豪ヒュンケルねぇ。

アタシの母親がぶっ殺したよ。で、奪ってきた剣は……封印されてたわ。確か……」

 

「……それは本当かのう? つまり、少女に変身した魔族は、お前さんの母親か」

 

「あら、そこの下り知ってるんだ。そう、それよ。それそれ。

魔界だとおとぎ話になっちゃってるけどさ」

 

 

話を聞いてみると、彼女が住んでいたのはヘカテーという魔女の集う村だったそうだ。

母親は剣豪ヒュンケルを愛していたが、愛が強すぎて独占欲が湧き、

彼を殺して永遠に自分の物にするという選択肢を取ったらしい。

 

 

「では、お前さんはヒュンケルの血を引いておったのか?」

 

「魔女ってのは素質があるやつをさらってくるのさ。

母親とは血のつながりはないね。勿論、ヒュンケルとも」

 

 

そうは言っても、グレゴリーアは魔女の村を大切に思っていたそうだ。

だが、ある時、ヴェルザーの領土拡大で村ごと滅ぼされてしまった。

命からがら逃げたグレゴリーアは、ヴェルザーへの復讐を誓ったという。

その話のついでのように、ヒュンケルの剣はオリハルコンであるとグレゴリーアは語った。

 

 

「"最強の剣豪が持つ剣こそが、彼を倒せる唯一の武器だったのだ"

そうおとぎ話は結んでるはずだよ。ヒュンケルの剣は、オリハルコンだったってことさね」

 

「ふむ……村の場所を教えてもらえぬかのう?」

 

「滅ぼされたのは300年は前の話さ。廃墟が残ってれば儲けものって感じじゃないかね?

探すのは好きにすりゃいいけど、寿命を使う事にならなきゃいいねぇ……」

 

 

そういいながら、村の場所を教えてくれるグレゴリーア。

オリハルコンの武器が手に入るのは非常にありがたい。

時間を作って魔界を探索せねばと決めた所、目が覚めた。

 

ケインがやってきて、朝食ができたと知らせてくれた。

今日はマトリフ殿がやってくる予定だ。また、行かねばならぬ国があるからな。

 




独自設定
剣豪ヒュンケルの剣
最初期に考えた妄想では、鎧の魔剣の金属と同じもので、
鎧化の武具の一つだったのかなと考えていました。
呪文も通じないし、並みの刀剣では勝負にもならない。
戦っても勝てない=不死身の剣豪という感じで。

ただ、鎧の魔剣の金属の名前が分からないので、毎回説明で鎧の魔剣の金属と書くのが、
どうも私の中で締まらないので、オリハルコンにするかという事になりました。
誰の持ち物になるのかは今後分かります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。