ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は今週の土曜日23時頃に閑話を予定しております。




第四十四話 極寒の王国にて

 

私とマトリフ殿はオーザムのアギロ王と面会の約束を取り付けていた。

今回はパプニカ、テラン、リンガイアと、三国の王が親書を認めた上で、

私の身分保障をしてくれる。

特にリンガイアはやはりというかオーザムとは親戚であり、

現在のアギロ王の妹がリンガイアのテオドル王の母親だという。

それ以前から、両王家は交流が深かったということだ。

 

原作で超竜軍団の侵攻の際に、リンガイア最強の戦士であるノヴァが救援に送られた。

ただの隣国であるオーザムにノヴァを送ったという判断は、

おかしい話だと長年思ってはいたのだが……謎が解けた感じではある。

 

マトリフ殿と協議して、死の大地に近いオーザムは対魔王軍戦線として、

非常に重要な土地であるので、なんとか戦力の底上げをしたい。

そういう方向で意見が一致したので、

マトリフ殿が各国に働きかけて親書を預かってきてくれたのだ。

 

私としても、原作の無残な最期を知っているので、

オーザム国民全滅という悲惨な結果だけは避けたいと思っている。

 

親書に目を通したアギロ王は、感心したようにニヤリと笑った。

アギロ王は禿頭で長いひげを蓄え、肩幅が非常に広く、

胸板も分厚い戦士タイプの王だった。

 

実際、狩猟王と呼ばれる強者然としたアギロ王は、

オーザムの北の魔物を狩る戦士たちの中でも最強の人物らしい。

ただ、呪文への備えはしてないような感じなので、

原作では最強の騎士という二人がやられた頃に前後して、

フレイザードに倒されてしまったのかもしれないが……。

 

 

「話は分かったが、そのゴーレムを作る呪法ってのは、

具体的にどんなもんだ?」

 

「まず、かなり大量の氷を必要としますな。

材料が豊富にあるのでオーザム向きではなかろうかと思います」

 

 

私はアギロ王に対して、ゴーレム作りの概要を説明した。

魔王軍対策として、アイスゴーレムを作る呪法を、

オーザムの魔法使いたちに伝授するという話の流れだ。

 

子供の頃に読んだドラクエ3のゲームブックに、

ストーンマンが落とす"生ある石"というものが登場した。

それを大量の土くれで作った人形に埋め込んだことから、メルキドを守る巨人が誕生したと。

 

マトリフ殿に話したら、倒したストーンマンが落とした石を持っているという話だった。

二人で解析した結果、生ある石と同質の魔法玉を作り上げる事に成功する。

その上で土くれではなく、氷を原料としてアイスゴーレムを作る呪法を組み上げたのだ。

 

大量の氷を使って触媒とする必要があるので、

オーザム以外ではかなり使いづらい呪法である。

私とマトリフ殿が、氷結呪文(マヒャド)を10回唱えて出来た大量の氷を使って、

ようやく人間の子供サイズのアイスゴーレムが作れる程度だった。

広い国土に膨大な氷を有するオーザムに向いた呪法ではある。

 

力は大きさに比例するが、人間の子供サイズのアイスゴーレムでも、

大体、大人並みの腕力があったので腕っぷしは期待できる。

更に分厚い氷で作られた身体は、生半可な刃が通じるものではない。

 

修理なら氷系呪文(ヒャド)でも可能だし、破損個所に氷を当ててやると自動で修理される。

魔法玉が破壊されればそこまでだが、粉々でなければ私やマトリフ殿なら修理可能だ。

取り扱いは非常に簡単だと言える。

 

もちろん良い所ばかりではなく、弱点をあげるならまず第一に、

水に浸かると機能が停止してしまうという点である。

当たり前だが素材が氷なので、水に浸かって動かなくなると、

そのまま溶けてしまう。

川の側や海辺で使う場合には注意が必要だろう。

 

第二に恐らくはギルドメイン山脈以南、温かい土地では使いづらいという事だ。

気候が温暖なパプニカで試験用に作ったアイスゴーレムが、

一日で水たまりと魔法玉を残して消えてしまっていた。

ロモスだったら半日で同じことが起きている可能性がある。

 

アギロ王はそのたくましい腕を組んで私の説明に頷いていた。

一通り話を聞いてから、我々に疑問を投げかけてくる。

 

 

「ありがてぇ話だが、いいのか? もしもだ。

オレの後の王が野心を持って、アイスゴーレム軍団を仕立てて他の大陸を攻めたら?

海水に浸かると動かなくなるって言ったって、デカイ船をこしらえて乗せればいいんじゃねぇか?

あと瞬間移動呪文(ルーラ)とかよ」

 

 

随分と率直に話をしてくれる。

アイスゴーレムを使う上で気をつけねばならない部分に対して、的を射た発言をしてくれている。

船は……アイスゴーレムの大きさ的に、ちょっと無理ではないかと思うが。

それはともかく、そんな戦力を軽々しく与えて大丈夫なのかとこちらに問いかけているのだ。

 

それについては、ゴーレムを一言で氷の塊にもどすコマンドワードを定めてあるので、

対人間の戦争に使用した場合、一言でそうなるだけなのでご安心をというと、

アギロ王は大笑いした。

 

 

「ガッハッハッハ!

こいつはいいぜ。あくまで人類が外敵と戦う時だけに使えってか!」

 

「そういうことだなアギロ王。もっとも、力仕事ができるからいい働き手になるだろうからな。

土木工事やら街の番人として、もちろん、普段のモンスター対策。

その辺りに好きに使ってもらっていいぜ」

 

「なにか問題があればヨミカイン魔導図書館へご連絡ください。

メタッピーを飛ばしていただければ対応いたしますアギロ王……。

数羽置いてゆきますので、お使いくだされ」

 

 

その後、フォルケン王から権限を貰ってあるので、

オーザムとテランの貿易を行いたいという申し出をした。

オーザムは鮭やカニが良く採れ、豊かな漁場を誇っている。

 

アギロ王もリンガイアがテランと定期便を作ってやりとりしていることを知っており、

二つ返事で快諾された。

オーザムからテランのウルス村への定期便を作って、

定期航路を調査するために一隻送ってみることまで決まった。

判断が早く、即断即決するタイプで、仕事ができる中小企業の社長(オヤジ)といった感じだ。

 

もう確認しようがないが、原作においては前線に立って戦い、

真っ先にフレイザードに殺されてしまったのかもしれないなアギロ王は……。

せめて彼が生きていれば、船団を組んでオーザムからリンガイアへ、

少数なりとも国民を逃がせただろうに。

今回はそうならぬよう、付き合いの中でオーザムを強化する策を進言してゆこう。

 

 

 

その後、オーザムのはずれにある人気(ひとけ)のない、放棄された砦をアギロ王の許しを得て借りた。

なにをするかと言えば、私が極大消滅呪文(メドローア)を覚えるための特訓である。

 

何週間か掛かるかと思ったが、極大消滅呪文(メドローア)の修行自体はあっという間だった。

始めてから三日で体得できた。

元々、二種類の呪文を使うという事自体、何度もやってきたことなのである。

二つの呪文の魔法力を等しく揃える事も、いずれ極大消滅呪文(メドローア)習得のために、

暇を見つけてはやっていたのだ。

その成果がいま、出た。

 

 

極大消滅呪文(メドローア)……!!」

 

 

誰もいない氷山の前で放たれた極大消滅呪文(メドローア)の光球は、

遮るものは何もないかのように眼前に立ち塞がる氷塊に穴を穿ちながら飛んで行った。

 

 

「おお、やるじゃねぇか。まあ、オメェさんは元々、二つの呪文の同時使用ができてたんだ。

あとまぁ、魔法力制御のセンスが必要だったが、色々器用にやってたしできると思ってたぜ」

 

「いやはや、感無量ですな。

しかし、てっきり極大消滅呪文(メドローア)をマトリフ殿が私に向けて撃って、

それを対消滅させるのが習得方法かと思いましたぞ」

 

「おいおい、オレをなんだと思ってんだよ……。

流石のオレだって、そこまで危ねぇ真似をするわけねーよ!」

 

 

右手をヒラヒラさせて、苦笑しながら否定するマトリフ殿。

もしかすると、以前から考えていた私の推測が当たっていたかもしれない。

 

恐らくだが、あのポップの時の極大消滅呪文(メドローア)習得訓練は、

マトリフ殿が自分の寿命が尽きる可能性があることと、

魔王軍の強敵の出現で時間がないという、

その両方の状況下で考えた末の、荒っぽい教え方だったのではないだろうか……。

 

 

「昔、ガンガディアって魔王軍の幹部がいたんだが、

あいつが両手に火傷を作りまくっても習得できなかったみてぇだからな……」

 

「ほう……。

前魔王軍幹部のガンガディアは、極大消滅呪文(メドローア)をマスターできなかったんですな?」

 

「あんた同様、両手で呪文を使う事はできてた。

だがまぁ、直感的な魔法力制御のセンスが必要になってくるからな。

あの努力することを惜しまない男ができねぇってなら……」

 

 

"努力で埋める事ができねぇ部分が必要なんだろうよ"そうマトリフ殿は締めくくった。

私もその話を知っていたので不安だったが、なんとか習得できて助かった。

 

ホッとした事で、マトリフ殿に話すべきことを一つ思い出した。

以前地底魔城に行った際に手に入れたメモを見せてみるとしよう。

 

 

「そのガンガディアの執務室から幾つか本とメモ書きを拾いましたが……。

参謀として魔王軍全体を統括しながら、様々な実務を取り仕切るという、

かなり忙しい人物だったようですのう彼は……」

 

 

見せたのは姿を潜めたミストバーンが、ガンガディアの腕を闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)で操り、

机の紙に書かせた凍れる時間の秘法を解呪する魔法陣のメモだ。

そのメモを見て驚きながら、丁寧に魔法陣を読み解いてこちらを見るマトリフ殿。

 

 

「……ガンガディアがこいつにたどり着いたってわけか? 独力で?」

 

「さて、そこまでは分かりませんな。ワシはあの部屋のメモを拾ってきただけですからな。

この魔法陣を……凍れる時間の秘法をかけた時間と真逆、

正午にかけたのであれば夜中24時に魔法力で活性化できれば……」

 

「凍れる時間の秘法を破ることはできる。

だが、あの時、オレがこいつをアバンに使わなかったのは、

ハドラーも復活しちまうことが分かってたからなんだよな」

 

 

凍れる時間の秘法は、アバン殿がハドラーにかけたものだ。

二人とも時間が止まってしまったが、

別にアバン殿が自分とハドラーに別々に施したわけではない。

 

アバン殿がかけた凍れる時間の秘法が暴走して、

対象のハドラーは勿論、術者(アバン殿)にもバックファイアが起こってしまった。

だからこそ、アバン殿とハドラーを捕えていた凍れる時間の秘法は、一個の禁呪法だ。

アバン殿を解除すれば、ハドラーも解放されてしまう。

なぜなら、両者にかけられた秘法は一つなのだから。

 

"一つの凍れる時間の秘法の影響下にある二人の内、片方だけを解呪することはできない"

 

そこをなんとか、アバン殿だけ助けられないものかと手を尽くしたのが、当時のマトリフ殿だ。

魔王軍のガンガディアの場合は、ハドラーを助けられれば問題はないので、

そのまま魔法陣を使って凍れる時間の秘法を解呪したのだろうが……。

 

雑談の後、置き極大消滅呪文(メドローア)の訓練もしたが、あれは大分難しかった。

正直、自分で放った火炎呪文(メラ)の炎の魔法力の量を、目視で見極めた上で、

まったく同質の魔法力を宿した氷系呪文(ヒャド)をぶつけるというのは神業の領域だ。

 

マトリフ殿も落ち着いてやればできるもんだが、戦闘中に動き回っている時に、

自分が放った火炎呪文(メラ)の魔法力を見極めるのは至難の業だろうと話していた。

 

更に一週間ほど滞在し、極大消滅呪文(メドローア)の使用自体は問題ない程度に習熟した後、

オーザムを離れる事になった。

アギロ王と側近たち。さらに作られた三体のアイスゴーレムが手を振って見送ってくれたのは、

なかなかの見ものだったし、技術がちゃんと伝わっている事が確認できてよかった。

 

 

 

 

マトリフ殿と別れ、ヨミカイン魔導図書館へ戻ると、

クロコダインが待っていた。

 

 

「ザボエラ。明日でいいのだが、ロモスへ送ってもらえんか?」

 

「構わぬよ。ブロキーナ老師の所へ行くのかねクロコダイン」

 

「ああ。前回の戦いはバラン殿が命を落とすことなく正気に戻ったことでよしとしたいが、

ミストバーンとの戦いは完全なオレの敗北だ……」

 

 

やはりそのことを気にしていたのか。

正直、竜魔人バランと戦った後、ミストバーンと戦ったのだ。

最強クラス二人と戦って、生き残っただけでも大したものだと思っているのだが、

どうにもクロコダイン自身としては悔しいという気持ちがあるらしい。

 

 

「最強に近い力がぶつかり合うというのは、非常に凄惨な戦闘になるという事だ。

それに、いずれ大魔王バーンという男と相見える事になるのだろう?」

 

「ふむ……避けては通れぬじゃろうな」

 

「バーンがミストバーンより弱いとはオレには思えん。

いたずらに力を求めるというわけではないが、

いざとなったらどんな相手でも止められる強さを得たいとは考えている」

 

 

クロコダインのロモス行きの理由は、前回の指導で老師がポツリと漏らしたことが原因だ。

実は老師自身が考案した技ではあるが、自分自身で身に着けられなかった技があるという。

話を聞いた限りでは、恐らくクロコダインに合っているので、習得したかったが、

老師が理論上の技だから人に教えられるレベルまで錬磨すると、次回へ持ち越しになったそうだ。

……どんな技なのだろうか気になる。

 

 

「先日、マトリフ殿についていって、パプニカに行ったが、さすがにバダックから怒られたよ。

貴重な青鍛鋼(ブルーメタル)の鎧を何回壊すんだとな」

 

「うむ、まったくじゃな。

今度、ヨミカイン魔導図書館に置いてある青鍛鋼(ブルーメタル)を手土産に持って行ってよいぞ」

 

「ハッハッハ!! バダックが喜ぶだろうな」

 

 

その後、ロカ殿がやってきてネイル村へあいさつに行きたいというので、

クロコダインに同行することとなる。

私は明くる日、クロコダインとロカ殿を瞬間移動呪文(ルーラ)でブロキーナ老師のもとへ連れて行った。

 

 

 

クロコダインをロモスへ連れて行ってから数日後。

朝方、食後に書類の整理を行っていたら、ボリクスがやってきた。

どうも私に客がやってきたらしい。

竜水晶が応対しているそうだが、相手は魔族とのことだ。

 

この時期に魔族。一体誰だろうか。

原作には未登場の地上へ逃れた魔族か?

まさか、ザムザではあるまいな……?

色々と推測を脳内に並べながら、ボリクスに尋ねてきた魔族の情報を聞いてみる。

 

 

「その御仁は名乗っておらんかったかのう? 別に魔族全てを知っているわけではないが……」

 

「ろ……なんやったか? なぁ、ケイン」

 

「お客様はロン・ベルクと名乗っておりましたよ。

(わたくし)の記憶ではベルクというのは魔界でも名が通った鍛冶職人の工房の名でございました。

その一門の人物なのでしょうか、御主人様(マスター)

 

 

ケインの言葉が後半、私の耳に入っていなかった。

まさか、ロン・ベルクがやってくるとは……。

困惑と動揺を押し込めながら、竜水晶が案内した応接室へ向かうのであった。

 

 




独自設定

アギロ王
オーザムは明らかになっていない設定が多いので、
ゼロから設定を作ると親しみがなくなると思い、
ドラクエ10の聖天の使いの外見を採用することになりました。
名前はドラクエ9の時の彼から取っています。

オーザム最強の騎士という二人がやられた後、
フレイザードは去っていますから、
ある程度戦える戦力があれば逃げる事も可能だったのかと思っています。
なので、恐らく原作では王も既にその時点で死んでいたのではと考えました。

あと、原作ではリンガイアが恐らくは最強の戦士であったノヴァを、
自国の守りではなく隣国に送ったことについても理由付けをしました。
まぁ、親戚かなと。


生ある石
ドラクエ3のゲームブックの設定です。


解説
置き極大消滅呪文(メドローア)
勇者アバンと獄炎の魔王の作中でマトリフが披露した極大消滅呪文(メドローア)です。
マトリフがばら撒いた小さな火炎呪文(メラ)の炎の内、
ガンガディアの足元に散らばった炎の魔法力量を見極め、同量の小さな氷系呪文(ヒャド)を投射。
小規模な極大消滅呪文(メドローア)を起こして戦いを勝利に導いた一手です。

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