ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
竜魔人バランが破壊した箇所の修理が済み、以前の静けさが戻ってきた
大魔王の間において警護するマキシマムは、
バーンが意識を取り戻している際には話し相手となっている。
そして、眠りに就いている時は
主人たる大魔王バーンを守護していた。
その働きは非常に献身的で、大魔王バーンのマキシマムへの評価を、
変化させるに至っている。
300年ほど前に魔界において、
彼を己の麾下に加えた時、バーンは非常に期待をしていたのだ。
魔族や竜族は確かに優れている。
だが、
生半可な武器では傷一つ負わぬ強靭な肉体。
マキシマムが生まれながらに持った、種族としての隔絶した強さというアドバンテージ。
バーンは彼がどれほど強くなるか、期待を持って見守っていた。
だが、マキシマムは一切の努力、成長をしなかったのだ。
自分の強さが生物として、最初から持ち合わせている能力と考えれば、
破格の最高峰であるがために何もしなかった。
極大呪文を受けてもどこふく風。
怪力の巨体モンスターに殴られても相手の拳が粉砕される。
キングが己の拳を振るえば、相手は耐えられず潰され屍を晒す。
努力しなくても最強クラスであるという己の強さという、
生まれながらのギフトに
だが、竜魔人バランを目の当たりにして、マキシマムは初めて恐怖した。
己の肉体と同質のオリハルコンで出来た剣を持ち、
更に
粉砕するに足る威力を持っているだろう。
逃げたかった。心の底から恐ろしかった。
だが、誰に認められたわけでもない、
それに縋ってバランの前に立ち塞がったことで、
彼の中で生まれて初めて精神的成長が起こったのだ。
それを大魔王バーンは観察した上で、見抜いていたのである。
意識があっても動けないのでは退屈を持て余す。それゆえの座興……のはずだった。
最初は大魔王バーンからマキシマムへのちょっとした疑問から始まった。
「マキシマムよ。
余はそなたを見ていたのだが、己が分身ともいうべき
そなたは一々、言葉にして命じねばならぬのか?」
「ハッ……申し訳ございませんバーン様……」
「余は怒っているのではない。ただ、疑問をそなたに尋ねているだけだ」
マキシマムはポツリポツリと話し出した。
場合によっては、考えるだけで動かせる時もあるが、言葉で命じないときちんと動かせないと。
それを聞いて大魔王バーンは、マキシマムにこう言った。
「では、そなたに課題を与えよう。
次に余が目覚めるまでに、一体でも構わぬから命令を口にせず動かせるようにせよ」
「つ、次でございますか!?」
「気まぐれな眠り故、一時間で目覚めたらその場合は、そこから三日与えようではないか。
なに、座興ゆえ別に罰など与えぬから気楽にせよ」
急な大魔王バーンの言葉にマキシマムは焦り、
バーンが眠っている時にやってきたミストバーンに尋ね、
何かいい方法はないかと聞いてみた。
ミストバーンとしてはマキシマムには借りがあると考えるし、
マキシマムはそこまで思い至っていないのだろうが、
思考するだけで
幾つかのアドバイスを送り、マキシマムが真面目にそれをこなした結果、
次の眠りから覚めた大魔王バーンに、
言葉を発せずに頭で命じたままに動かせる"結果"を見せる事に成功した。
「見事だ、マキシマムよ。
努力の末の結果が実を結ぶのは、悪い気持ちではなかろう?」
「はい。なんとも、気分が良いものですな!」
機嫌の良いマキシマムの声を聞いた大魔王は、
褒美として一つ真実を話して聞かせた。
「余はな、なぜお前を蔑ろにし続けたか分かるか?」
「いいえ……大魔王様のご期待に沿えなかったのだと理解しております」
「そなたは存在として、最強の種の一つであろう。
だが、それがゆえに生まれ持った力に満足していた。
その停滞を余は嫌ったのだ。だが、いま、努力をして成長を見せた。
それをこそ……余は評価する」
マキシマムは深々と大魔王バーンに頭を下げ、そこから更に研鑽を積み重ねてゆく。
一言も発せずに
大魔王バーンはマキシマムを親衛隊長から一歩進め、近衛師団長の職責を与えるに至った。
この場合、
最優先で命令を下せる立場を得ており、
いままで、
親衛隊長の地位を得て、更に近衛師団長の役職まで与えられた。
大魔王バーンに認められて、要職を得た事で彼の中で様々な事が変わるようになった。
努力に貪欲になり、大魔王バーンに褒められたい一心で、
様々なことに挑戦していくようになった。
数日後、バーンから
珍しくマキシマムから上司である大魔王バーンに対しての質問が投げかけられた。
「バーン様は古代拳闘についてご存じでありましょうか?」
「随分と骨董品の技術に興味を抱いたものだなマキシマムよ」
動けないからこそ、大魔王バーンの話し相手がマキシマムか、
居合わせたミストバーンとなってしまう。
ただ、ミストバーンは大魔王バーンの代理として働くので、
会話する頻度はマキシマムの方が増えてゆくこととなる。
その会話の都度、成長し続けるマキシマムを大魔王バーンは、
楽しみを覚えて観察していた。
なぜかと言えば、一度、失望させられた相手が、
まさかの努力と才能の羽ばたきを見せたのだ。
喜びと共に興味深さが否が応でも増す。
言葉を交わす機会を得られる度に、
マキシマムは大魔王バーンの深淵なる英知に感服していった。
自然、マキシマムにとって大魔王は疑問の答えを授けてくれる、
良き師という立場となっていったのである。
ある日、マキシマムは"古代拳闘"について大魔王バーンに尋ねた。
それを聞いたバーンは、懐かしさを声に滲ませながらこう答えた。
「余が手刀での戦闘技法を確立するまでは、使っていたことがある素手の技術だな。
小刻みなフットワークと、上半身のみで拳を振るうという戦い方は……。
なるほど、そなたに合っているかもしれぬ」
大魔王バーンは目が覚めている間、
マキシマムに古代拳闘──簡単に言えばボクシングなのだが──、
それについての技術を教え込んだ。
マキシマムは大魔王バーンに褒められることが嬉しく、様々な技術を水を吸う砂のごとく、
旺盛に吸収しては、身に着けて行ったのだ。
ある日、大魔王の間から凄まじい爆音が響くことになり、ミストバーンが急いで向かった。
そこには壁に大穴を穿つマキシマムの姿があった。
ミストバーンは驚いてマキシマムに対して詰問する。
「マキシマム、これはどういうことだ!?」
「よい、ミストバーン。よいのだ。余がやってみせよと命じたのだ」
「バーン様がお命じに……!」
その返答もミストバーンの想定外にある言葉だった。
マキシマムは索敵系の能力を持ってはいたが、
このような威力の技など持っていなかったはずだが……。
ミストバーンの中に疑問が嵐のように渦巻く中、大魔王は満足そうにマキシマムに話しかける。
「見事だマキシマム。
そなたの
そうファイナル・ブローと名付けよ」
「ハハッ!! ありがとうございますバーン様!! これからも精進いたします。
どうぞ、ご指導ご鞭撻のほどをお願いいたします!」
うむと鷹揚な言葉を投げかける大魔王バーンの姿と、
別人のように真摯で誠実な努力家であるマキシマム。
彼はミストバーンの方に向き直り、頭を下げてから説明を始めた。
「お騒がせして申し訳なかったなミストバーン。
バーン様のお許しがなければ、我輩もこのような無礼を働くつもりはなかったのだ。
どうか許されよ」
ミストバーンは大分混乱していた。
まるで師弟のような大魔王バーンとマキシマムの二人についてである。
バランの襲撃以来、マキシマムは態度が改善して、
努力家の面を見せるようになってはいた。
確かにバランからバーンを守った功績はあるし、
ミストバーン自身も感謝はしていたのだが……。
混乱しているミストバーンに対して、
上機嫌な大魔王から声がかかる。
「ところでだ、ミストバーンよ」
「ハッ、なんでございましょうかバーン様」
「鬼岩城の建設作業は、他の者に任せてよい工程にまで進んだのだな?」
先だって大魔王バーンが起きている時に見せた進捗では、
既にミストバーンが直接指揮を執るほどではない。
現在は、デスカールが鬼岩城の建設に対して、専任として現場で指揮を執っている。
だが、それを確認するのはどのような意図があってのことだろうか?
そう訝しく思っていたミストバーンに、大魔王バーンが言葉を重ねる。
「そなたたちから見れば、眠りについているだけのように見えるだろうが、
余はこの眠りの間に世界を渡っている事もあるのだ」
「世界を……でございますか?」
理解の範疇を超える大魔王の話についていけていないが、
答えぬのも非礼ゆえに面白みのない返事をするミストバーン。
特にそれを咎めず、大魔王バーンは話を進める。
「竜の王が勇者に打ち倒される世界。
邪教の徒が破壊神を呼び出し、勇者の末裔に退治される世界。
古の大魔王が不死鳥の加護を得た勇者と仲間たちにより、
闇の世界へ送り返される世界……などなどだ。
意識だけの旅で、見るだけではあるが、そこで幾つかの知識を得たのだ」
「……左様でございますか……」
突拍子もない話ではあるが、大魔王バーンの言葉は粗略にはできない。
「そなたは暗黒闘気に心が宿った生命であり、
成長の余地があるタイプではないと思っていたが間違いだったやもしれぬ」
「それはどういうことでございましょう、バーン様」
「魔界にいるそなたと同質の暗黒闘気生命体。
彼らを真正面から戦って倒し、己が身に取り込めば……
そなたの暗黒力はいまより増える事だろう。
試してみよミストバーン。念願の"成長"が叶うやもしれぬぞ」
ミストバーンは、大魔王バーンが心底楽しそうに笑う姿を見て、畏敬の念に打たれた。
やはりこの方は格が違う。
一見動けぬようになったお姿ではあるが、その英知に一点の曇りもない……と。
早速、魔界へ行き、己と同質の魔物を倒し、取り込むことで暗黒闘気が増すことに気づき、
時間があれば魔界へ行くことになるミストバーンであった。
独自設定
ファイナルブロー
ドラクエ10で仲間のゴーレムが習得する技ですが、
ミストバーンの成長
この人の強さの源泉は暗黒闘気なので、
その総量が増えるという感じです。
ただ、暗黒闘気生命体がそんなにたくさんいるわけではないので、
急にすさまじいパワーアップするという感じではありません。