ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
4月6日23時ごろ閑話を投稿しました。
第四十七話更新は、4月18日23時ごろの更新になります。
荒涼とした魔界の片隅。
魔女たちの村の場所について説明した所、
ロン・ベルクが知っている地方の近くだと判明した。
つまり、彼に道案内を頼める。
私は魔界にあるラボの一つに
ロン・ベルクの案内でボリクスと一緒に魔界を旅することになった。
だが、最初に訪れた時と同様、魔界は危険な場所だった事を、
到着した途端に思い知らされた。
「
私が
その間にもロン・ベルクが見事な剣技で、りゅうき兵らしきモンスターたちを倒し、
ボリクスが火炎大地斬を叩きこみ鬼棍棒を一撃で屠っていた。
クロコダインとケインの三人でやってきた時と比べれば、
一回の戦闘でへとへとにならない分、楽な魔界散策ではある。
だが、気楽な旅と言えるかといえば、そうも言ってられない状況だ。
なぜならば、この突発的な遭遇からの戦闘が、すでに五度目であることから窺える。
更に言えば、遭遇したモンスター達が装備が整い統一された、明らかな軍属だからだ。
力自慢のモンスターが小集団を形成しているという感じではない。
「なんや、戦争でも起こっとんのか?」
「かもしれんな。元々、ヴェルザーもバーンも別にお友達ってわけじゃあない。
よく分からない休戦が続いていたが、何かの拍子に争わない事もないだろう」
ボリクスの疑問にロン・ベルク殿が答えている。
ヴェルザーとバーンの間にある盟約を、彼は知らないからの発言だ。
だが、しかし、本当になにか戦争でも起きているのではないかという、異様な雰囲気はある。
「さして距離があるわけではない。早く村へ行き、用事を済ませて帰った方がいいだろう。
ヴェルザー十二魔将に出くわしたら流石に危険だ」
「ロンは今の魔将は誰がいるか、知っとんの?」
「ベリアル、バズズ、アトラスの三人くらいしか知らんぞ。
風の噂で、数年前、
ヴェルザー自身と奴の一族は倒されたらしいからな」
「ロンも知らへんのか。まぁ、後任は数合わせの小物ちゃう?」
話しながら移動し、魔界は人工の太陽があるため、一応、昼も夜もあるのだが、
薄暗い夕方らしき時間まで歩き、ようやく魔女たちの村にたどり着いた。
「しかしこれは……随分と荒れ果てて、風化している所もあるな」
「めっちゃさびれてるやんか……」
二人の反応も、尤もな感じであり、生活の跡すらない。
ギリギリ建物は形を保っているが、ほとんど消え去りそうな廃墟である。
幾度かここで戦いがあったのか、家屋類が吹っ飛んだ形跡もあるくらいだ。
「ここを当てもなく探し回らねばならなかったら、骨が折れる所だったなザボエラ」
「まったくですな。探索できる呪文がなければ、調べる気にならぬ場所でしたわい。
さて、始めましょうかのう……
私が唱えた
私とケイン、ロン・ベルク殿とボリクスは、手分けしてその場所を探索しようとした時……。
一切気配がなかったのに、背後から声をかけられた。
「まさか、この村を訪れるものがいるとは思わなんだ」
ロン・ベルク殿とボリクスは既に抜刀している。
ケインは爪を展開して、私を守る位置に移動していた。
声のした方、青白い
大分、さびれてはいるが、その形に見覚えがある。
兜から除く双眸は赤く光っているが、その顔は伺い知れない。
ドラムーンのゴロアの昔話で登場した不死身の剣豪だ。
つまり、彼が……。
私が脳内で推測の組み立てをしている間に、ロン・ベルクが相手に話しかけた。
「その剣、オリハルコンだな。あんたが、剣豪ヒュンケルか?」
「生きてたんか、さすが不死身やな!」
「不死身というのはあだなだ。我は既に死者である。
いまの我は、たんなる亡霊にすぎぬ」
そう話す剣豪ヒュンケルの亡霊は、落ち着いているというより元気がない雰囲気で、
生者への恨みに凝り固まっている様子は無く、淡々と話していた。
「なにか思い残したことがある……。という事ですかなヒュンケル殿?」
「そうだな……そう、見えるか……?」
「ワシは以前にも亡霊といいますか、怨霊に出会っておりますが……。
あなたのように、冷静な話ができる雰囲気ではありませんでしたぞ」
私の言葉に頷き、その思いを吐露する亡霊のヒュンケル。
彼は戦士として誇り高き男で、最後は負けてもかまわないから、
できれば誰か猛者と戦った上で、死にたかったらしい。
だが、グレゴリーアの母に、欺かれた上での暗殺という死を遂げてしまった。
戦って死にたかったという悔いが、非常に強く残ったという。
そして……気付いた時には亡霊となっていたらしい。
訪問者を待っていたが、自分を振るうのに相応しい猛者は一切来なかった。
それどころか、魔女の村の薬草類や、魔法の道具を手に入れて一獲千金を目指す者や、
盗人の類ばかりが村を訪れたため、その手の輩は全て斬って捨てたそうだ。
……所々に、やや新しい死体が転がっているのはそのせいか。
「ご老人。おぬしは……魔法使いだな?
そちらの少女と男は戦士か?」
「左様ですが……それがなにかありますかの?」
「一手、所望いたす……」
私の返事を聞いた途端、ぽつりと一言つぶやくヒュンケル。
風のように動き、まずボリクスに一閃。
凄まじく速い。ボリクスが剣で受けてようやく、私が剣を確認できたくらいだ。
ボリクスは剣と
ヒュンケルに蹴りを放ち、海破斬を撃つが回避されてしまう。
「マジか!? ホンマに強いやん!」
そのままロン・ベルク殿の方に消えるように移動し、
瞬時に真横に姿を現して、袈裟懸けの一閃をロン・ベルク殿は受け流し、
巻き込んでそのまま突きを食らわすが、霞のように消え去って少し離れた場所へ出現した。
「二人とも強いな……近年まれに見る使い手だ。
フッ……嬉しいぞ。盗人を斬り捨てる日々は飽いていたのだ……」
「オレたちも盗人かもしれんぞ」
「嘘を吐くな。剣に生きる者の性根は、剣を合わせればわかる。
久しく会わなかった清廉な者たちだ」
と言って、剣豪ヒュンケルは何か震えているようだが……もしかして笑っているのか?
「……できれば、手合わせを願いたい」
「ええで。うちが戦ったるわ」
「すまぬ。少女に刺されてしまったせいで、少女に対しては気後れする。
できれば、そちらの男と戦いたい」
「なんやー、残念やなー」
すねるボリクスは、ニヤニヤ笑いながらロン・ベルク殿の手の辺りを叩いて、
"自分の番やで"と声をかけた。
「剣豪ヒュンケルを満足させられるかどうかわからんが、オレも全力を尽くさせてもらおう」
「……頼んだ我が言えた義理ではないが、おぬし二刀流ではないか?
できれば、二刀と戦いたいのだが」
そうヒュンケルからの言葉が投げかけられ、躊躇するロン・ベルク殿。
と、鞘に入ったボリクスの剣が、ロン・ベルク殿のもとに放り投げられた。
「貸してやるさかい、二刀流見せてや。見た事ないんや、うち」
「恩に着るぞボリクス」
二刀を構えてヒュンケルと対峙するロン・ベルク殿。
「名を聞いておきたいのだが」
「オレはロン・ベルク。剣士としては落第もいいところだ」
「……おぬしの剣はそうはいっておらぬぞロン・ベルク」
一瞬で間合いを詰め、私の目では一条の閃光にしか見えない、
高速で鋭い剣閃を放ってくるヒュンケル。
あのロン・ベルク殿が防御に回らざるを得ないほど、
鋭いヒュンケルの剣閃ではあるが、流石というか上手く捌いてゆく。
ボリクスのアバン流の流れを受け、生来の身軽さを生かした剣。
カール騎士団正統の攻防一体でありながら、雄大なロカ殿の技。
カール騎士団の剣技の影響を感じるが、独自の剣技として昇華されたアバン殿の剣技。
バラン殿の両手で大剣を構えた堂々たる剣。
そのいずれとも違う、一切の手加減がない、確実に必殺の一撃を繰り出す剣。
それが、剣豪ヒュンケルの剣だ。
「最初から三合までの剣、ロンのおっちゃんよく捌いたなアレ。
どれも、受けにくいし逸らしづらいうえに、おっそろしく鋭利でめっちゃ速い剣技や」
「もしかすると二刀でなければ、ロン・ベルク殿は危うかったかもしれぬな」
「少なくとも、うちやと三合目の剣は、
受けきれへんかったかもしれへんな」
そう話している間も、変幻自在の二刀の軌跡を描くロン・ベルク殿の剣技と、
一撃一撃が速く、異様に鋭い剣閃を描く必殺剣を繰り出すヒュンケルとの戦いは、
十合を超え、二十合を超え、三十合を超え……五十合を超えた。
「すっげ……いまの剣閃、今度うちもマネしてみよ!」
「ワシは素人じゃが、凄まじいものを見せられているのは分かるぞ」
「クロコにも見したりたかったなぁ、これ!!」
興奮して手が動いて観戦しているボリクス。
そこから更に七十合を超えた辺りで、ふと間合いを取ったヒュンケルによって剣戟が止まった。
肩で荒い息をつくロン・ベルクに対して、亡霊ゆえに疲労が無いヒュンケルが語りかける。
「おぬし、なにかでかい技を隠しているのではないか?」
「そんなこともわかるのか。だが……」
「武器もおぬしの体も耐えられぬ。そういったところか」
ロン・ベルク殿の奥義は専用に作った剣ですら耐えられなかった。
いや、専用の剣を彼は原作中において、完成させることができなかったのだ。
武器も彼の身体も耐えられぬ、未完の使う事ができぬ奥義の存在を、
剣を合わせた剣豪ヒュンケルは見抜いたか……!
剣を合わせる事で分かることがあると戦士たちは言うが、
やはり剣豪ともなれば、ロン・ベルク殿が長年秘した奥義の存在すら、
察することができたわけだな。
「すまん……あんたほどの戦士を相手に、オレの方が足りない所があるとは」
無念そうな面持ちで詫びるロン・ベルク殿に対して、ヒュンケルは剣を構え直す。
「いや、堪能させてもらった。どうも我の後悔も昇華されているようだ。
満足したという所ではある。……次の一刀にいま使える最高の一撃を繰り出したい!」
「いいだろう……。オレも、いま出せる中では最高の一刀を見せよう!」
互いに内在する闘気が、澄み切って見えるほどの緊張感で対峙している。
──その一瞬の刹那──
対峙した二人が、少し動いたと思ったら、場所が入れ替わっている。
二人の動きを、私はまったく捉える事ができなかったのだ。
ロン・ベルク殿の剣が折れたが、ヒュンケルの鎧の胸甲に軽くヒビが入った。
荒い息を吐き、片膝をついて、ボリクスの剣で体を支えるロン・ベルク殿。
剣豪ヒュンケルとの勝負はやはり、相当な消耗を彼に強いたのだろう。
「よい勝負だった。礼を言う」
「すまないな、ヒュンケル……。
本当はオレが自分の剣術を完成させていたら、あんたをもっと満足させられたかもしれん」
「いや、どうせそろそろ限界が来て、消え去る頃だったのだ。
むなしく消滅するより、最後に最高の剣士と刃を交える事ができたのは、幸運であった」
呼吸を整えて立ち上がったロン・ベルクが、ヒュンケルからの素直な賞賛を受けて、
照れ隠しの様に横を見ている。
「もはや消え去るこの身だが、委ねたいものがある。
受け取ってくれロン・ベルク。我の剣だ」
「……いいのか?」
打ち直して使ってくれと、ヒュンケルがロン・ベルク殿に言っていた。
「この剣もおぬしを気に入ったらしい。
だが、我に合うよう鍛えられた一刀だ。故におぬしに合った刃に、鍛え直してくれ。
この剣もそれを、望んでいる……」
「……感謝する……ヒュンケ……!? ヒュンケル!!」
ロン・ベルク殿が剣を受け取ったとほぼ同時に、かつての剣豪ヒュンケルの亡霊は、
最初からその場にいなかったかのように消え去っていた。
受け取った剣を手にし、微動だにしないロン・ベルク殿に語り掛ける。
「ロン・ベルク殿、ヒュンケル殿の想いを継ぐべきではありませんかな」
「想い……か。そうだな。この剣を打ち直し、放っていたオレの剣術を完成させるか。
ヒュンケルはもっと剣を振るい続けたかったのだろうに、それが断たれてしまった……。
あんたの剣を以て見せてやろう。あんたの剣で放つ最高の技をな……!」
ロン・ベルク殿の空気が変わった。原作で見た厭世的な雰囲気は一切ない。
眼光は鋭く、覇気に満ちている。
大魔王バーンの宮廷を去った後、90年ほども
そして、最高の勝負をして、剣豪にオリハルコンの剣を、彼の願いと共に託された。
くすぶっていたロン・ベルク殿の魂に、死せる剣豪が完全に火をつけてくれたようだな。
その後、村で
更に錬金術の書物も幾つか見つけたので、ありがたく頂戴しておく。
パッと読んでみた所、
これは非常にありがたい誤算と言ってもいい。
魔法の筒へ収納したところ、遠くで怒号のような声が複数響くのを確認した。
私はケインだけを連れて、
その先で見かけたのは、崖の下で繰り広げられる、ヴェルザー軍とバーン軍の激突の姿だ。
これが本格的な戦いなのか、それとも盟約を結んでいるとしても潜在的な敵同士。
それゆえに上層部はともかく、気性の荒い魔界のモンスターは統制を完全に取る事ができず、
こういった小競り合いは日常茶飯事であるのか……?
判断するには情報が足りないが、巻き込まれるのは危険だ。
我々は貴重なオリハルコンで出来たヒュンケルの剣を持っている。
せっかく見つけた
どちらも失うわけにはいかない。
見つからぬように村へ戻り、ボリクスとロン・ベルク殿を回収して、
すぐに
だが、魔界へはいずれまた、訪れねばならないだろう。
グレゴリーアに聞いておいた、私が訪れたことがない、
真ザボエラのラボを探す目的があるからだ。
なぜなら、いずれかの場所に、
ザムザと真ザボエラがいる可能性がなくはない。
本人たちがおらずとも、立ち寄った痕跡があれば、
それを手がかりにして、居場所を特定できないかと考えている……。
やるべき事も考えるべき事も多いが、味方も大分増えた。
一つずつ解決していって、よい方向へ進めて行こうと思いながら、
私は地上への帰途を
独自設定
剣豪ヒュンケルの剣
オリハルコンであるかどうかは、
原作において判明しておりません。
最強の武具で身を包んだ剣豪ヒュンケルの逸話は、
古典の最強の矛と最強の盾のようであり、
最強の者を倒すには最強の者の武器を使えと言う話になっています。
真正面から戦う事が尊ばれる世界で、
あの手の狡猾な逸話が伝わっている所が気になって、
記憶に残るエピソードではあります。