ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
クロコダインは書いていると楽しいですね。
勇者アバンと獄炎の魔王で明らかになった、
ザボエラとクロコダインの付き合いが実は古かった件を追記いたしました。
「……かくして、勇者アバンは魔王ハドラーを倒し、
世界には平和が戻ったというわけじゃ」
「そのような大戦があったのですね。
ではまだ、世界は復興のただなかにあるのでございますか?」
「ワシが見て回った範囲は、戦火の傷跡を感じさせなかったかのう。
この5年、復興が順調に進んだのじゃろうな」
「左様でございますか……。
いま、私は妖魔の杖──ケインを伴って、
ロモスの南に広がる魔の森を歩いている。
途中、襲ってくる魔物は、
呪文で蹴散らしつつある物を目印に探している所だ。
勇者アバンと獄炎の魔王で明らかになった事だが、
マトリフとブロキーナ老師が参戦したウロド荒野での戦い。
それは原作のバーンパレス最終決戦、ホワイトガーデンで語られた、
凍れる時の秘法で勇者アバンとハドラーの時が止まった時の話だ。
マトリフが隠していた時の止まったハドラーを、
ガンガディア達が必死に捜索していたのに対して、
ザボエラは彼らに先んじてその場所を特定。
"魔法を使う者には不利な場所"だったので、
ザボエラからの依頼でハドラーを救出したのがクロコダインだった。
てっきり、六大団長が顔合わせした時からの付き合いかと思っていたが、
実はそれより更に前からクロコダインとザボエラは知り合いだった。
その縁を使ってなんとかクロコダインを魔界行きの際の前衛として、
連れて行きたいものだが有効な説得材料がないな。
この時点でのザボエラとクロコダインの関係性がどの程度なのか。
そこにかかっているが、勇者アバンと獄炎の魔王で登場した際、
クロコダインは真空の斧を携えていなかった。
彼が欲しているならその捜索を手伝っても良い。
などと考えていた所、ケインが話しかけてきた。
「ところで
そのクロコダインという方はどこに居を構えてらっしゃるので?」
「うむ……それが正確な位置が分からぬのじゃ。
魔の森は彼のテリトリーだと踏んだのじゃが……」
そういいながら、私はクロコダイン初登場時の、
ワニの様な岩を探していた。
あれは目立つし、
彼の居場所の手掛かりはそれくらいしかないのだ。
「では、次に出てくる魔物は、
追い払わず話を聞いてみましょうか」
「話す? 魔物と話せるのかケインよ?」
「ええ」
「何故先に言わなかったのじゃ。
大分、無駄に歩き回ったではないか?」
ケインに顔はないが、きっとしれっとした顔で言っているのだろうな……。
「聞かれませんでしたので
「……ふん……」
まさしく、しれっとした顔をした声で、こういってきた。
相変わらず顔があるわけではないのだが。
ケインが話しかけるべく魔物を探しているのだが、
遭遇する魔物たちは大体逃げてしまう。
その辺りはドラクエの常か、野生の勘なのか、
こちらの強さを嗅ぎ取ってしまうようだ。
どうするべきか思案している所、
ケインが私に注意を促してきた。
「
いま空を飛んでこちらへ来る魔物は、恐らく強いですよ」
「お前がわざわざ注意をするという事は、相当に強いという事じゃな」
そう言い終わるか否かの辺りで、巨大な鳥が羽根を数度瞬かせ、
眼前の巨大な岩にスッと止まった。
茶色い体毛をした知性の高そうなまなざしだ。
落ち着いており、攻撃をしてこない。
そして、私は彼を知っていた。
クロコダインの部下であるガルーダだ。
彼はクロコダインの命令に従う、直属の部下だったはず。
「ケインよ。彼に話をしてみてくれぬか。
知恵がありそうな雰囲気をしておる」
「畏まりました
そう言って、ゆっくり近づいていくケイン。
ガルーダの側に近づいて、少し距離をとって止まった。
ケインから鈴の鳴るような音がする。
それに応えるようにガルーダが鳴き声にしか聞こえない声で、
グワーッ! ケーッ!!と返事をしている。
おそらくは会話をしているのだろう……。
しばらくして、ケインが戻ってきた。
「
彼の主人、クロコダインというリザードマンが、
重傷を負って動けないそうでございます。
その名はお探しの御仁ではありませんか?」
「クロコダインが重傷を負っているじゃと!?」
「はい、左様でございます。
案内を頼みますか、
「うむ。ワシは
先導してくれと伝えてくれぬか」
ケインがガルーダに話をつけ、彼について私は
クロコダインはひっそりとした洞窟の中で倒れ伏していた。
かなりの重傷を負っており、
ガルーダは回復呪文を使える魔物を探していたらしい。
そこで、明らかに魔族に見える私に交渉を求めたという事だった。
私がクロコダインの知り合いとは知らなかったのだろうが。
私は
傷を治癒して塞ぎながら、きちんと体力の回復も行う。
未熟だったレオナ姫の
実は
習得して初めて分かる呪文の作用というやつか。
治療している間にガルーダは、
クロコダインが起きた時の為、食料を探しに行った。
「……ここ……は……」
傷を塞ぎ体力を補った後、5分ほどしてクロコダインが目を覚ました。
驚異的なスタミナだと言えるだろう。
私の見立てでは常人だったら、
一時間は寝ているだろうと予想していたからだ。
「ガルーダが戻ったら褒めてやるとよいじゃろうな。
彼が瀕死のおぬしを連れて、この洞窟に匿ってくれたのじゃぞ」
「ザボエラ……どういう……風の吹き回しだ……
オレを、助けるなどと……」
「なに、知らぬ顔でもないからのう。
傷は癒したが腹は減っておろう。
血も大分失っておるから、動くでないぞ」
そう私が注意をしたところで、ガルーダが戻ってきた。
食料を仕入れてきたので、
ケインが器用に切り分け火であぶった。
その肉をクロコダインは旺盛な食欲で平らげる。
「ガルーダ。世話になったな。
オレの為に骨折りをして疲れただろう。呼ぶまで休んでいてくれ」
そうねぎらったクロコダインの声に、
嬉しそうに一声鳴いたガルーダが空へ帰っていく。
横で眺めていた私に向き直り、クロコダインが頭を下げる。
「礼を言わせてくれザボエラ。いや、ザボエラ殿。
オレは誤解していたのかもしれん。
もっと狡い男だと思っていたが、真摯にオレを治療してくれた」
「なに、お前さんに貸しを作っておくことは悪くはなかろうて」
随分と好反応だ。
ただ、ザボエラ殿は背中が痒くなるから止めてくれと頼んだが。
それから、重要な事を尋ねた。
一体、何と戦ってそこまでの重傷を負わされたのかということだ。
尋ねると若干顔色をなくすが、
思案するように言葉を紡ぐクロコダイン。
「……実はこの魔の森の奥に烈風の風穴という場所がある。
そこには伝説の武器の一つである、真空の斧が安置されているのだ」
真空の斧!?
そうか! 獄炎の魔王に登場した時点のクロコダインは徒手空拳だった。
いつ真空の斧を手に入れるか気になっていたが、ここでだったか……。
「それを求めて行ったところ、なにか先客か守護者でもいたかね?」
「コキュードスというアンデッドだ。
恐らく強力なドラゴンゾンビだろう。
あやつは真空の斧を取り込み、宝玉から力を得て恐るべき強さを誇っている」
「そのコキュードスに敗北したわけか……。
しかし、おぬしほどの剛の者に対し、
相手はどんな戦い方をしたのじゃ?」
クロコダインはコキュードスとの戦いの様子を話しだした。
コキュードス自身は幾つかのブレスを使いこなす強力な存在だが、
正面から戦えれば恐らく、
コキュードス単体とは五分だったと自負していた。
だが、コキュードスは多数のコープスフライを率いていたのだ。
彼らをクロコダインにまとわりつかせ、
離れたかと思えば
その戦術になすすべもなく撤退したらしい。
「それは、おぬし一人ではどうにもなるまい」
「たとえガルーダを連れて行っても、あやつも小回りが利かん。
「ならば、ワシも手を貸そうではないかクロコダイン」
自然にそう言葉が出てしまった。
だが、彼の反応を見ながら、協力を取りつけねばならない。
彼の重傷を治癒させたことで、彼からの好感度も高い。
魔界行きへの同行を了承してもらうために話を進めてゆこう。
「よいのかザボエラ!?
だが、何もお前に得がないではないか!!」
「実はのう、魔界へ行こうと思っているのじゃよ」
「なんと、魔界へ!?」
クロコダインの声が大きくなる。
少しずつ事情を話していくことにする。
「この妖魔の杖、ケインと名付けたのだがの、
こやつがワシが昔使っていた
直通のキメラの翼を持っていたのじゃよ」
「
口を挟んでくるケイン。
話を聞き、ムゥと唸り言葉を紡ぐクロコダイン。
「その研究所が魔界にあるのか。
つまり、オレに護衛としてついてきて欲しいという事か?」
「うむ。ワシは呪文に関してはそれなりの自負があるがのう。
如何せん前衛向きではないからの。
お前さんの事を思い出して探しておったのじゃ」
「わかった。真空の斧を手に入れる事ができたら、
オレがお前の護衛になろう!」
……えらく簡単に引き受けてくれたなクロコダイン。
てっきり、もうちょっと駆け引き的な事があるかと思っていたが。
「実の所、地上のモンスターたちで、
オレに勝てる者はほとんどいなくなっていた。
強い奴を求めて、魔界にでも行きたいと思っていたところだ」
「そう言って貰えれば助かるのう」
その前にコキュードスを倒し、真空の斧を手に入れねばならないが……。
「コキュードスと一対一で戦わせてくれ」
「ふむ、勝算はあるのかの、クロコダインよ?」
そう尋ねた私に、クロコダインはガハハッと豪快に笑った。
「この獣王クロコダイン。
一度戦った相手に、二度は負けんよ!」
思わずおおっと唸ってしまう。
やはり、カッコいいなクロコダインは。
次の日の朝、我々は連れ立って魔の森の奥へ踏み入った。
目指す烈風の風穴は、太陽が昇ったにも関わらず、
夜と勘違いするほどに暗く、生い茂った木々の間に在った。
……ワニの様な岩がついている洞窟だ。
そうか、あのクロコダインが寝ていた洞窟は、
この烈風の風穴だったわけか。
そんな感慨は横に置き、目の前の敵に集中する。
巨大なドラゴンゾンビが、無数のコープスフライを従え、
こちらを臨戦態勢で敵意を向けて眺めていた。
ざっと見て、百匹は飛んでいるな。
恐るべき数だ。
まるで待ち構えていたかのようではある。
クロコダインの闘志を見て再戦を図ると予期していたか?
アンデッド故に生命ある存在が近づいた事を感知したのか?
しかし、この数の敵戦力と戦って、
生き残ったクロコダインは逆に大したものだ。
私は彼に声をかけて、指示を伝える。
「お前さんは回り込んで、コキュードスに挑んでくれ。
ワシはコープスフライを叩く。すべて任せてくれればよい」
「すべてを!? そんな事が可能なのかザボエラ?」
「なぁに。
とにかく、一直線にコキュードスの下へ行ってはいかんぞ
回り込んでくれ。急がば回れというやつじゃ」
分かったといい、走り出すクロコダイン。
それを見送りながら、ワシはベギラゴンを用意するべく両の手を掲げる。
アーチ状の炎が私の上に現れ極大呪文の準備が整う。
「さあて、コープスフライ共……最上級の閃熱呪文をくれてやろう!
受けてみるがよい──
私の手から凄まじい規模の閃熱エネルギーが、
一直線に進み出てコープスフライ達を焼く。
それが、戦いの開始の合図となった。
コキュードス……ドラクエ10から出張。
烈風の風穴……クロコダイン登場時の爬虫類っぽい入り口の洞窟に
勝手に名前をつけました。