ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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本来は来週の木曜日に投稿する予定の話を、
間違えて投稿してしまいました。
気付いたのが一時間後でしたので、
このまま投稿しておきます。

最後の部分書き直したのですが、
訂正が反映されてませんでいたので、
手直しして再アップいたしました。

次回は4月18日木曜日の23時頃を予定しております。





第四十六話閑話 魔界動乱

 

大魔宮(バーンパレス)白い宮廷(ホワイトガーデン)にある執務室。

ミストバーンは様々な計画の進行を統括し、意思決定・判断を行っていた。

マキシマムが近衛師団長となり、大魔王バーンの側近(そばちか)くを守っている間、

大魔王の代理として、決定権を与えられて、ほとんどの判断を下しているのである。

 

ミストバーンからの命令は、デスカールが承って、

彼から間接的に担当者に届くようになっていた。

つまり、他の者はミストバーンの声すら聴いたことがないので、

この段階では正体不明の謎の男という存在感は保たれている。

 

そんな中、大魔王バーンの先のアドバイスに従い、

魔界へ向かっては暗黒闘気生命体と真っ向から勝負し、

その上で相手を倒したのちに取り込むことを繰り返している。

 

幾つかの指示を済ませた後、一人になり自分の成長について、

考えを巡らせるミストバーン。

大魔王のアドバイスに従った結果、事実として、

暗黒闘気の総量が単純に増加したのだ。

衝撃波を使う事も可能であるし、無数の球体を出現させて、

敵に叩きつける事もできるようになった。

 

長らく大魔王バーンの真の肉体を守護する仕事だけが、

自分の全てであると考えていたミストバーンである。

いまここで長い生の中で初めて、成長することの楽しみを感じていた。

 

魔界へ赴き、自分と同質の魔物と戦い、倒すことで己を成長させる。

努力が自分の成果になるという事実は、麻薬的な喜びをミストバーンに与えていた。

幾つかの仕事が一段落したため、大魔王バーンの許可を得て、

魔界へ行こうかと考えた所、デスカールがノックもせずに入室する。

 

一瞬、咎めだてするべきかと考えたミストバーンだが、デスカールは忠臣だ。

その彼が礼を失したという事は、つまり、緊急事態という事になる。

案の定、入室したデスカールが発したのは陳謝の言葉だった。

 

 

「お騒がせして申し訳ございません、ミストバーン様。非礼の段、ご容赦を」

 

「……何が起こったのかデスカール」

 

「魔界にてヴェルザー軍が、バーン領内に進軍いたしましてございます。

既に国境の守備隊は壊滅。大魔王城(バーンキャスル)近隣におきまして、激しい戦いを繰り広げております」

 

 

ミストバーンは一瞬、呆然とした。

何を聞いているのか判断がつかなかったからだ。

冥竜王も大魔王もお互いの計画を推進し、成功した方に従うという盟約を結んでいた。

バランに敗れたヴェルザーは計画がとん挫し、現在は魔界で石化して大人しくしているはず。

 

勿論、魔界のモンスターたちは気性が荒いので、互いの末端に所属する者たちが、

いざこざを起こす事はあるが、それはせいぜいが10~20程度の小集団だ。

だが、デスカールの話では軍勢規模だという事である。

 

 

「敵軍の声明に依りますれば、

 

"冥竜王ヴェルザーには既に一軍の将たらんとする覇気はなし。

ゆえに我らが新冥竜王軍としてバーン領に侵攻し、

魔界らしく力による領土の奪取を図るものなり"

 

とする檄が飛んでおります。

……どうやら新参のヴェルザー十二魔将たちが、権力を掌握したようですな」

 

「ベリアル達との連絡はとれんのか? まだ、話し合いができる者たちだったはずだが」

 

 

デスカールは歯切れ悪く、連絡が取れていない事を説明した。

そうなると考えられるのは、ヴェルザーと古参のベリアル達は殺されたか、

封印されている可能性が高いだろう。

そこでふと、ミストバーンは気ままな友人であるキルバーンの事を思い出す。

 

 

「いや、待て。キルはどうした。長らく姿が見えておらぬが。

ヴェルザー陣営については、キルが詳しいだろう」

 

「キルバーン殿は、自由なお方でございますれば、私も動向を把握しておりません。

ですが、このような事態を、坐して黙認されるとは思えませぬ」

 

「……新参のヴェルザー十二魔将に倒されたか、

ベリアル達と共に封印、もしくは閉じ込められているかだな」

 

 

ミストバーンは暫し沈黙して考えた。

キルバーンの安否は気になるが、彼は強かな男だ。

何かあっても、どこかへ逃れているに違いない。

それよりは、ヴェルザー軍に攻められている事の方が問題ではあるが……。

 

 

「四諸侯に連絡を取れ。既に対応しているかもしれぬが、このような事態のために、

魔界の大魔王城(バーンキャスル)の守護を任せているのだ」

 

「それが……既にグラコス殿戦死。ジャミラス殿重傷とのことでございます」

 

 

ため息の代わりに一言唸り、座っていた執務机から立ち上がるミストバーン。

既にやることは決まった。あとは指示を出すだけである。

 

 

「分かった、デスカール。

お前は先行して精鋭を連れ、大魔王城(バーンキャスル)の守護に着け。

私はバーン様に魔界への出撃の許可を取ってくる」

 

「畏まりました。

目を覚ましましたガルヴァスたちを連れて、魔界へ参りたいのですがよろしいでしょうか?」

 

 

ミストバーンはデスカールの進言に許可を出すと、急ぎ瞬間移動呪文(ルーラ)大魔宮(バーンパレス)へ向かった。

タイミングが悪く大魔王バーンは眠りについていたが、

近衛師団長を拝命したマキシマムがバーン様に伝えておくといい、

ミストバーンは最近、非常に信頼度があがった彼に後事を託して魔界へ向かった。

 

 

 

 

魔界へ到着したミストバーンの下には悪化する戦況が届き、

四諸侯最強のデュランまで討ち死にしたとの報告が入る。

ミストバーンは軍勢の指揮をデスカールに任せ、アクバーにデスカールの補佐を命じた。

 

 

「ミストバーン様はいかがなさいますので?」

 

「図に乗った者たちに対して、誰に弓を引いたか知らしめねばならぬ。

お前たちは防御を固めればよい。

これ以上大魔王城(バーンキャスル)を戦場にするのは、許されることではないからな」

 

「ハハッ! ご武運をミストバーン様……」

 

 

デスカールたちの返事を背後に聞き、

瞬間移動呪文(ルーラ)で移動したミストバーンは、ヴェルザー軍の前に立ちふさがった。

猿のような顔をしてピンク色の(たてがみ)と、緑の羽という、

目に痛い色合いの巨大な魔物──キマイラロード──がおり、

ミストバーンを嘲笑する言葉を投げかけてくる。

 

 

「大魔王バーン不予はキルバーンから聞き及んでいる。

こんなチャンスは二度となかろうよ! ヴェルザーの腰抜けはベリアルたち共々閉じ込めてある!

このまま大魔王城(バーンキャスル)を落としてオレが次の大魔お……」

 

 

ビュートデストリンガーが、よくしゃべるキマイラロードの頭を簡単に粉砕した。

どよめきが起こるヴェルザー軍勢を無視し、ミストバーンは怒りを迸らせる。

 

 

「かつてのヴェルザー十二魔将はいますこし、礼節をわきまえていたがな。

貴様らは野盗、害虫の類よ。

大魔王様が居城たる大魔王城(バーンキャスル)に、これ以上踏み入れる事は許されん!」

 

 

"一人で何をいう!" "叩き潰してやれ!!" "八つ裂きにしてくれる!"

と罵声やら嘲弄が響く中、

ミストバーンは暗黒闘気を一気に開放する。

その規模はまるで、山のようにそびえたつ壁のごとき堅牢さだ。

 

 

「喜べ害虫ども。貴様らが私の新たなる技の目撃者、第一号となるのだ。

有害な虫ケラである貴様らには惜しい誉よ」

 

 

ミストバーンから放たれた暗黒闘気を恐れもせず、

勢いに乗ったヴェルザー軍は突撃してくるが……。

 

 

「我が暗黒闘気の力の真髄を見るがよい! 闘魔暗黒弾!!」

 

 

ミストバーンの周囲に、人間の頭くらいの大きさの暗黒闘気の球体が、40個以上出現する。

それらが一斉に全方位に対して放たれ、凄まじい威力の暗黒弾が、

敵の頭を吹き飛ばし、腕に当たれば引きちぎり、腹に当たれば風穴を空け、無残な躯を量産した。

一挙に300体ほどの死者が生産され、ヴェルザー軍の進軍は止まった。

 

あまりの被害に突撃を中止し、火炎呪文(メラ)系や閃熱呪文(ギラ)系、爆烈呪文(イオ)系の呪文も飛ぶが、

ミストバーンの強力な暗黒闘気の前にそのようなものが通じるはずもない。

お返しとばかりに更なる暗黒弾のおかわりが放出された。

呪文を使った魔物たちが、無残な屍を量産するに至って、

六本の腕に様々な武器を構えた象頭の魔物が姿を現した。

 

 

「調子に乗るなミストバーンッ!!!」

 

 

怒声と共に象頭の魔物、ガネーシャエビルがはげしいおたけびを、

ミストバーンに叩きつけてくる。

身構えたミストバーンだが、敵の攻撃は届くことは無かった。

 

ガネーシャエビルの頭部が、上空からの巨大な塊に叩き潰されたのである。

象頭を砕かれ、巨人のような肉体は大きな音を立てて倒れ、盛大な土煙をあげている。

 

 

「調子に乗っているのはそちらではないかな? おっと、既に我輩の言葉など届かぬか」

 

 

そこには超金属(オリハルコン)の輝く肉体を誇るように、腰に手を当てたマキシマムがいた。

 

 

「……マキシマム! なぜここに!?」

 

「バーン様から命じられたのよ。"そなたの身に着けた技を実戦で振るって参れ"とな」

 

 

マキシマムからの話では、大魔王バーンが目を覚まし、

彼にミストバーンの助力をするよう命じたという。

アクバーが大魔王バーンに召し出され、主を警護する任に就く。

しかる後、マキシマム自身は兵士(ポーン)四体を残し、

城兵(ルック)に対しては大魔王をその身をもって守るよう厳命。

残る四体の兵士(ポーン)騎士(ナイト)

さらに僧正(ビショップ)を連れてこの戦場へ現れた。

 

 

「何者かは知らんが討ちとってくれるわ!」

 

 

巨大な棍棒を叩きつけてきたギガンテスの攻撃を、軽快なフットワークでかわしたマキシマムは、

爆烈呪文(イオ)系のエネルギーを乗せたパンチを、分厚い筋肉に覆われた腹部に炸裂させた。

 

 

「ファイナルブロー!!」

 

「ぐおおおああああああ!?」

 

 

マキシマムの拳は凄まじい威力で、ギガンテスの上半身を文字通り吹き飛ばした。

ギガンテスの腰から下が、数歩たたらを踏むように移動したあとバタリと倒れる。

 

超金属(オリハルコン)軍団は、マキシマム()からの無言の指示の下、

ヴェルザー軍の魔物との戦端を開いている。

連携もさることながら、呪文が通用しない超金属(オリハルコン)ボディの利点を生かし、

間合いを詰めて縦横に切り裂き、敵軍に打撃を与えているのだ。

 

マキシマム自身も、華麗なフットワークで攻撃を回避。

体重を乗せた世界一硬い(オリハルコン)をもってして、

巨人やら魔獣をまるでスイカのように粉砕してのける、

強力なパンチを繰り出しているのだ。

 

無論、超金属(オリハルコン)軍団の戦闘は彼を守りながら行われ、

マキシマムと彼の軍団の形成する円陣(サークル)は、

ヴェルザー軍に対して多大な出血を強いる死の陣形と化していた。

 

その様を見て、ミストバーンは数百年ぶりに誰かに対して、理屈抜きに感心した。

 

ミストバーンはマキシマムを、心の底から軽蔑していたのだ。

なぜなら、マキシマムは生物であり成長することが可能なのに、

生まれながらに持ち合わせた最強の素養を腐らせていた。

 

だが、先だって竜魔人バランから、大魔王バーンを守り抜いた功績。

いつの間にかに超金属(オリハルコン)兵団に対して、

言葉を発することなく、動かすことができるようになった努力。

更に魔界に伝わる古代拳闘を身に着け、日々、精進しているというのだ。

 

ミストバーンはいままでの低評価の反動か、

些細なきっかけで努力し、変わることができたマキシマムに脱帽していた。

 

 

「バーン様からは、好きに暴れてよいと命令を頂いておる。

我輩とお前で、どちらが多く敵を倒すか競争といかぬか?」

 

「フッ……私の方が手数が多い。私が勝利するに決まっているぞ」

 

 

そういいながら、ミストバーンは勝敗の行方は気にしていなかった。

ただただ、かつて軽蔑していた同僚の成長と、行動の変化に敬意を抱いていたのである。

 

この日、ヴェルザー十二魔将の内、主を裏切り離反した七名が率いる軍勢七千。

大魔王城(バーンキャスル)に攻め寄せ、留守を守る四諸侯の内、デュランとグラコスを討ち取る。

アクバーは軽傷、ジャミラスは重傷を負ったが命に別状はない。

 

戦いの趨勢は、ミストバーンとマキシマムの参戦、

デスカール指揮の下戦ったガルヴァスらの奮戦により、

ヴェルザー軍は四千の被害を出した。

残り二千は二人の鬼神のごとき戦いを見て散り散りになって逃亡して、

一千は降伏して大魔王の軍門に下ったという。

 

ミストバーンはガルヴァスに魔界を任せ、

ヴェルザーその人とベリアルら三将の探索と捕縛を命じる。

さらに敵対するヴェルザー軍の残党、彼らに呼応する魔界の強豪モンスターの鎮圧を任せ、

地上の大魔宮(バーンパレス)へ戻っていった。

 




独自設定
幻界の四諸侯
ジャミラスがいたことから、他の三人もいてもいいかなと思いこうなりました。
流石に地上に大魔宮(バーンパレス)があるとしても、本拠地
ムドーはちょっと独自性が強いので、除外しておりますが。

大魔王城(バーンキャスル)
魔界の宮廷の名が無いので、第八宮廷までは確実にあるということですから、
かなり巨大な居城が気づかれているのだと思って名称を設定しました。

闘魔暗黒弾
暗黒闘気で作られた爆烈呪文(イオラ)の嵐です。

解説
何が起こったかというと、新参のヴェルザー十二魔将の内、七名が謀反を起こしました。
置物になっているヴェルザーやベリアル達三将を居城ごと封印。
その上で魔界のバーン領に攻め込んできた感じです。

実は引き金はキルバーンの死で、彼が新参のヴェルザー十二魔将たちと、
古参のベリアルたちやヴェルザーの間の緩衝役になっていました。
時にからかい、煽りながらも、均衡を保っていたのです。

その彼がいなくなり、新参vs古参の間の亀裂が、
決定的なものになったのがこの状況です。


前回の話との関わり
ザボエラたちが魔界に来た時、10名前後のヴェルザー軍の斥候が魔界各所へ散っており、
バーン陣営よりの魔物を急襲、もしくはヴェルザー軍以外の者を始末しろという、
大雑把で苛烈な命令がでていたので襲われた感じになります。
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