ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回はGW明けの5月9日木曜日、23時頃を予定しております。
ギュータの村にある鍛冶場。
最初は手狭な小屋で、生活用品のフライパンや農具を作っていた。
私が地底魔城から
鍛冶職人たちのやる気に火が付き、様々な試行錯誤が行われるようになる。
鉄の爪に魔法玉を埋め込んで炎が生じる武器を作ったり、
防具も
その鍛冶場へロン・ベルク殿がやってきたのだ。
私が彼らの恩人であり、私自身が魔族であるので、
ギュータの鍛冶師達が魔族ゆえに彼を差別することは無かった。
しかし、職人という存在ならではの、違う問題が生じてしまった。
職人たちの中でも古参の者が、腕前を見せてもらわねば、
鍛冶場を触らせるわけにはいかないと言ったのだ。
ロン・ベルク殿は怒るでもなく、その言葉を肯定した。
「それは道理だ。彼らが正しいだろう。
剣でいいか? それが一番分かりやすいんじゃないか?」
そう言って、修理前の剣を一本手に取り、鍛え始めたのである。
その姿を見て、職人たちの目の色が変わった。
鍛え終わり、見事に輝きを取り戻した剣を、
古参の職人が手にし、束ねてある薪を縦にして、横薙ぎに一閃した。
ギュータの者であるので、なかなかの剣の腕前ではあるが、本人が一番驚いていた。
ロン・ベルクが鍛え直した剣は、鋭利な切れ味で、
束ねられた六本の薪を真っ二つにしたのである。
しかも、その切り口は滑らか。まるで丹念にヤスリで整えたかのようだ。
職人の世界は厳しくもあるが、単純でもある。
卓越した技を見せたロン・ベルク殿は、ギュータの鍛冶職人達から尊敬と共に迎えられた。
彼はギュータの村に居を構え、昼に夜に様々な武具を修理し、
勘を取り戻すためなのか、一心不乱に武具を打っていた。
ロン・ベルク殿が
錬金術の研究を紐解いていた。
元々が魔女たちが行う合金の技は、
だが、研究していた魔女は、ミスリル銀やその希少種である
いずれは伝説のオリハルコンすら凌駕する金属の精製を考えていたらしい。
志半ばになってしまってはいたが……。
その研究データを整理し、ロン・ベルク殿に渡しておいた。
メタルスライムが死ぬと落とすメタルゼリーを触媒にして、オリハルコンと混ぜて精製。
ロン・ベルク殿は完成したオリハルコンと
ギュータの職人たちが代わる代わるロン・ベルク殿の為に、
炉の火を絶やさぬよう取り組んでいる。
三日三晩の魂を込めたかのような
付き合っていた職人たちの方が、床で死んだように眠り、里の者に担がれて行った。
休むように言われたが、ロン・ベルク殿はただただ、
その完成した剣をじっと見つめている。
「できましたかな?」
「……ああ……。だが、こいつを全力で振るうには、オレの腕がまだまださび付いている。
里の者達にも世話になったからな。
皆の手助けに恥じぬよう、オレの剣術の腕を鍛え直さねばならん」
そういって酒瓶を持ち祝杯をあげるロン・ベルク殿。
私はすぐに持参した樽酒を、ギュータの里長であるガナッシュ殿に渡して、
皆に振舞ってもらう。
お祭りムードのギュータの里から、離れた場所にある切り立った断崖。
見上げると首が疲れてしまうその崖の前に、ロン・ベルク殿と私は立っている。
「理論上の話であり、可能かどうかは分かりませぬぞ?」
「分かってるさ、ザボエラ。正直、オレも怖い。
星皇十字剣を放ち、技の反動に耐え切れず、
腕が破壊された記憶は……たまに悪夢として見るほどだ」
「でしたら、剣術の腕を十全にするべきではありませんかな」
その私の問いに、ロン・ベルク殿は困ったような苦笑いを浮かべて言った。
「職人としてのオレが最高の剣が打てたと確信している。
その確信が剣士としてのオレに言うんだ。"昔の悔いを取り戻してみないか"……ってな?」
「ふむ……そうまで言われるなら、ワシに止める言葉はありませぬが……」
最悪、ここでロン・ベルク殿がリタイアしたら、
色々と武器を作ってもらう計画が水の泡になってしまう。
理屈では無理にでも止めるべきだが、感情的には分からないでもないのだ。
昔の失敗をなんとかして、取り戻せるなら取り戻したいという気持ちは……。
星皇十字剣の術理を聞いてみたのだが、どうやら闘気には激しい性質と静かな性質があるらしい。
その二種類の異なる闘気を、左右の剣に分けてまとわせクロスする。
それによって、闘気で破壊できるものであれば、万物を切り裂くことができる斬撃を作り出す。
私は闘気を使う事ができないので、雑感ではあるが恐らくこれは闘気技で言う所の、
出力調整が難しい
私がそう考えている間、星皇剣を構え、静かに闘気を高めていくロン・ベルク殿。
永劫の時間のようでもあり、一瞬の時間のようでもある、張り詰めた緊迫感の中、
裂帛の気合と共にロン・ベルク殿の声が響く。
「……行くぞ……星皇十字剣ッ!!」
見上げるような崖だった。
30mはある崖に、巨大な十字の亀裂がビシッと刻まれた。
一体、どこまで続いているか分からない亀裂を見ていたが、
剣を取り落とした音がして、私は急いで駆け寄った。
「
「成功だザボエラ。オレの腕は折れてはいるが、呪文で回復可能な程度だ」
「確かにそのようですな! ……痛みはありませんかなロン・ベルク殿?」
回復を終えたので、手の様子を尋ねてみる。
手を握っては開くことを、繰り返すロン・ベルク殿。
「大丈夫だ。
オレの腕への反動をかなり抑える事ができた」
嬉しそうに地面に落ちている星皇剣を拾い、誇らしげに掲げて言葉を続ける。
「回復呪文によって治せる程度の腕の損傷。
この星皇剣は、技の威力に耐える事ができたんだ!
なによりヒュンケル……あんたのおかげだ……ッ!」
二刀の星皇剣を眺め、軽く頭を下げて、この機会をくれた剣豪ヒュンケルへの
感謝の言葉を口にするロン・ベルク殿。
「剣は意地を見せてくれた。腕が折れたのは、オレの腕が鈍っているせいだ。
ならば、鈍った腕前を万全にすることができれば、使いこなすことが可能となる」
「おめでとうございます。ロン・ベルク殿。長年の願いが叶いましたな」
「ありがとうザボエラ。心から感謝するよ。いや、真魔剛竜剣のおかげでもあるな。
あいつに出会えなければ、あんたたちとの出会いもなかったのだから……。
そうなると、バランに感謝するべきか?」
そうちょっとした冗談を交えながら嬉しそうに語るロン・ベルク殿。
彼を促してギュータに戻り酒を飲もうと声をかけた瞬間と、
ギュータから探しに来たチョコマが壁の巨大な亀裂に驚くのは、ほぼ同時だった。
明くる日、ボリクスを連れてギュータの村へやってきていた。
ロン・ベルク殿が打ち直して、私が魔力を込めた魔法玉を埋め込んだ鋼の剣を握り、
全力の
30秒ほど耐えたが、原作でいう鎧の魔剣のように崩れてしまう鋼の剣。
「こんな感じやな。で、なんか参考になるんかこれ?」
「凄まじいな。これが
そういって顎に手をやって考えているロン・ベルク殿。
さて、ここで破邪の洞窟へ潜り、人間の神の残留思念に尋ねた情報を出してみるか。
「ロン・ベルク殿はルーン文字をご存じか?」
「知っているのかザボエラ? やり方は知っているが、文字の意味が分からなくてな……」
「なんやそれ?」
ロン・ベルク殿がルーン文字について説明してくれた。
魔法玉に頼らずとも、定められた文字を魔法力で刻むことで、
自己修復や呪文の能力を与えられる技術だとボリクスに話した。
現在、失伝しているのは、文法が分からないかららしい。
私がボリクスの剣に刻みたい言葉は、「DRAGON QUEST」という言葉だ。
これはロトの剣に刻まれていたからという事もあるが、
世界を現わす言葉である。
つまり、ルーン文字が刻んだ言葉の意味を、アイテムに付与できるのなら、
ボリクスの剣に世界を現わす言葉を刻むことで、破壊を防げるのではと考えたのだ。
実は破邪の洞窟で、人間の神の残留思念にした質問の回答として、答えは得ている。
"世界を破壊するのは神の御業。
ボリクスの
その後に続く言葉は、莫大な魔法力を要するだろう……と。
試しにロン・ベルク殿が鍛え直した鋼の剣に、
"DRAGON QUEST"のルーン文字を刻んだところ、
私は
その剣を握り、
最初の鋼の剣はボリクスが
今回は技を放ってもきちんと形を保っている。
ルーン文字の技術なら、ボリクスが全力で戦える剣を作れるか?
「この剣……崩れへんで!! これや! ウーン文字でいけるで!!」
「いや、ルーン文字じゃよ」
「だが、数合打ち合えば折れるぞ。刀身にヒビが入っている」
ロン・ベルク殿の指摘で二人して刀身を見ると、確かにヒビが入ってしまっている。
二人して落胆してしまったが、ロン・ベルクの瞳は爛々と燃えている。
「こいつは凄まじい技術だ。
これなら、オリハルコンを使えばボリクスの
燃え尽きない剣を作れるだろう」
「できるんか、ロン!?」
「だが、オレ一人では作れんな。ザボエラの力を借りねばならん。
時間がかかってしまうだろうが、ルーン文字を刻むのに莫大な魔法力が必要だ」
確かにその通りだ。
ただの鋼の剣に魔法力を注いで、ルーン文字を刻むだけで、
私はほとんど魔法力を消耗してしまった。
オリハルコンの剣を作ったとして、文字を刻み終わるまでどれほどの魔法力を要するのか?
考えるに恐ろしい事だが、折角見つかった打開策だ。やってみるべきだろう。
それに、魔王軍が本格的に動くまでは、時間があるはずだ。
原作通りなのかは、既に分からなくなっている。
だが、彼らが動き出す前に完成できればよいだけだ。
大魔王バーンとの戦いにおいて、強力な武器が手に入る可能性に思い至り、
原作開始七年前の年の残りの時間は、ルーン文字の研究に費やした。
大魔王が動けないなら時間を稼げるはずだとこの時は考えていたが、
後日、私は苦々しい思いで、その考えを思い出すことになる。
ザボエラに憑依した私という存在によって、多くの人を救い、様々な運命を変えてきた。
それによって世界に与えた影響が様々に波及し、
ビリヤードの弾の様に縦横無尽に世界を変えて行った事を、
私自身が気づかされるのは来年の事になる……。
独自設定
星皇十字剣
原作では特に説明されていないので、このような感じになりました。
闘気で破壊できるものですので、超魔ゾンビやオリハルコンを真っ二つにできますが、
例えばキルバーンの殺しの罠は、
星皇十字剣ですら切り裂くことはできません。
ルーン文字
刻まれている武具がそう多くなくて、
大体、そのまま武具の名前が刻まれていたり、
ラーの鏡には意味深な言葉が刻まれていたりしました。
ロトの剣には「DORAGON QUEST」と刻まれてまして、
大魔王ゾーマが三年かけて破壊したそうですが、
逆に言えば大魔王の攻撃を、三年も耐えられたという事は、
十分な強度ではないかと今回のようになりました。