ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
今回から本編開始、六年前です。
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
第四十八話 ヴェルザーの置き土産
ロン・ベルク殿が鍛冶の傍ら、己が剣技をギュータで磨いているという。
ギュータにも優れた剣士たちがいるのだが、やはりロン・ベルクには及ばない。
だとしても、一人で黙々と剣術を磨くよりは、実戦形式で剣を交えるのが一番だという話だ。
たまにボリクスが赴き、勝負を行っており、その迫力に村の者たちも驚いているらしい。
ちなみにボリクスの剣は既に打ってあるのだが、ルーン文字の定着に時間がかかっている。
初日、私が全魔法力を込めて刻んだDの文字は、薄っすらと刀身に刻まれたが、
これでは特別な力を持たない状態である。
ロン・ベルク殿とも話し合ったが、かなりの難事業だ。
これを魔法力を帯びたルーンとして、一文字完成させるのにどれだけの時間がかかるのか……。
一文字刻むだけで魔法力を使い果たし、その日は何もできなくなってしまう。
現在、暇があれば、マトリフ殿に外交で各国へ連れまわされている為、
剣の完成に注力することができなくなっている状態だ。
その間、ボリクスを丸腰にしておくわけにもいかない。
現在、ボリクスは
これは私とロン・ベルク殿が共同作業で作ったもので、ボリクスが
全力で発揮しても短時間なら使用に耐える剣となっている。
私とロン・ベルク殿で、正位置で"防御"という意味がある文字を刻んだ。
さらに全力で
ボリクスが全力で使用しても、3分は耐えうるくらいの硬度はあるという事だ。
デルムリン島へ赴いた際、アバン殿に魔界の情勢について話をした。
戦争の気配については何とも言えないが、ある程度偵察を行う必要があるだろうというのが、
私とアバン殿との統一見解である。
現状、明らかになっている魔界から地上への入り口は、
デルムリン島の洞窟と、ギルドメイン山脈にあるかつてのギュータにあった逢魔窟だ。
破邪の洞窟もあるのだが、あちらはあまりに奥深いので、
軍勢規模の侵攻ルートとしてあまり相応しくはないのではないかと考えている。
どうやら他にも行き来できる道はあるようなのだが、現状それは分かっていない。
予定を合わせて魔界へ様子を見に行こうとしていた矢先、その事件は起こった。
アバン殿に会ってから一週間ほど経ってからの事。
やるべき仕事が多く、今日のスケジュールについてケインと話し合っていた所、
ドタバタと走る音が聞こえた。
チョコマとボリクスの慌ただしい声が響き、私の部屋がノックもなくバタンと開く。
「ザボエラ大変だ! ベンガーナに魔物の軍隊が攻めてきた!」
「テランも兵士出したみたいやで
私は一瞬、思考が硬直したがそれを押し隠して、二人から詳しい話を聞いた。
ベンガーナの南西。旧アルキード王国に近い場所に、"それ"は姿を現したそうだ。
漆黒の城。
その邪悪な様相は、まさしく魔物の城だとしか考えられぬ姿だという。
精強な魔物の群れは、ベンガーナ王都まで凄まじい勢いで進軍した。
王都には
何者か分からない軍勢の侵攻は放置してよいものではない。
私はチョコマに、デルムリン島にいるアバン殿に対して連絡を取るよう話をして、
ボリクス、クロコダイン、ロカ殿を連れてベンガーナへ赴いた。
王城へ着くと、先行していたフォルケン王がクルテマッカ王と話をしていた。
フォルケン王は胸当てをしており、ゆったりとした武道着をまとっている。
手にはギュータで作られた炎の爪を装備していた。
クロコダインの話だと、なかなかの腕だという。
一礼したフォルケン王にこちらも会釈を返す。
落ち着いているフォルケン王に対して、クルテマッカ王は取り乱してはいないものの、
かなり切羽詰まった印象がある。
説明を聞くと、ベンガーナ南西の海上に城が突如出現。
魔物の軍勢が村々を滅ぼして北上してきたそうだ。
報告を聞いたクルテマッカ王は、敵侵攻方向にある村々の避難誘導を行い、
ベンガーナ王都から、戦士団と砲兵隊が出撃したらしい。
その戦士団と砲兵隊が、手痛い敗北を喫したという。
国民の避難は上手くいったそうだが……。
王都には私とマトリフ殿が張った
ベンガーナ王都を迂回した魔物が、テランまで達したらしく、彼らを倒しながらフォルケン王が、
とうとう戦士団となったテランの精鋭と、ギュータの達人を連れてやってきたらしい。
しかし、話を聞いても攻めてきている敵に、一向に心当たりがない。
いま、クロコダインとボリクスが
ベンガーナ軍の生き残りと、テラン戦士団に協力して戦っている。
私は地図を見ながら考えていて、ようやくその違和感に気づいた。
これはもしや、冥竜王ヴェルザーが築いた前線基地か?
地上と魔界の狭間にある空間に作り上げたという例の……!?
丁度、チョコマをデルムリン島へ送ったところだが、バラン殿に確認を取らねばと思った矢先、
チョコマとアバン殿がやってきた。
私はアバン殿に現状を説明する。
「……恐らくは敵はまだ本気ではないでしょうな。
であるのにここまでの強さ。敵は恐らく魔界の精鋭じゃろう。
冥竜王ヴェルザーか、大魔王バーンの正規軍の可能性が高いかと……」
「急に現れたかのような敵の軍勢。
ザボエラさんはどこから侵攻して来たと思いますか?」
「かつてバラン殿が戦った冥竜王ヴェルザー。
彼が作り上げた、地上と魔界の間にある空間の拠点……。
それをなんと呼ぶかは分かりませぬが、
そこを拠点としているのではないかと推察しとりますな」
「お見事。恐らくはそれで間違いないかと思います。
デルムリン島へ迎えに来たチョコマさんから話を聞き、
バランさんが"冥竜城
冥竜王ヴェルザーが、地上侵攻の為に作り上げた、前線基地とのことです」
バラン殿にも協力願いたいところだが、彼が目立つことは危険だからな。
いまでも十分に強いのだが、バーンその人やミストバーンが出てきたら流石に危うい。
魔王軍では消息不明になっているだろうし、大魔王バーンに重傷を負わせたのだ。
見つけ次第、即刻処刑くらいの命令が出されていてもおかしくはない。
「ザボエラ! 敵の軍勢がすごい来てやばいぞ!
もう、みんな
ボリクスとかクロコダインはまだ外で戦ってる!」
「うむ……では、アバン殿参りましょうか。
チョコマ、フォルケン陛下とクルテマッカ王に伝えて欲しい。
「わかった! 気をつけろよザボエラ!!」
アバン殿は腰のガイアの剣に手をやり、こちらを向いて言った。
「そういえばまだ、修行の成果をお見せしていませんでしたね。
ボリクスたちに追いつけたかはわかりませんが、
彼らと肩を並べて戦えるようにはなったつもりです」
「期待しておりますぞ」
私は
ボリクスとクロコダインは懸命に戦っているがなにせ敵の数が多い。
ロカ殿はその剛力で負傷した戦士を5人も抱え込んで、
私は彼らを治療しながら、その戦いを見守っている。
「状況はどうですかロカ!」
「遅いぞアバン! ヤバイ。敵の強さが尋常じゃないぞ。
見てくれオレの剣。紫色の骸骨と斬り合ったらこのざまだ」
ロカ殿が、刃こぼれが数か所ある己の剣を見せる。
私は彼の発言の"骸骨"に嫌な予感がして尋ねてみる。
「まさか、ソードイドではありませんかの?」
「種族までは分からないが、緑の鎧の骸骨だ。腕が六本あって相当に強い。
何人もあっという間にみじん切りだ。助けて回るので精一杯だった」
それを聞き、推測が当たっていたことに驚く。
私は二人に知識を披露する。知らねば命に関わってくるからだ。
六本腕のスケルトンは骸骨剣士、地獄の騎士、ソードイド、更には恐らくいないだろうが、
デーモンソードという順に強くなっていく。
「ソードイドですか……。
ハドラーの部下であった、地獄の騎士バルトスさんを、
超える強さとは……驚く限りです」
「恐らくおらぬとは思いますが、
灰色の骸骨で金色の鎧をまとったデーモンソードが出てきた場合は、
十分に注意して、決して一人では当たらぬように気を付けてくだされ」
「出てこない事を祈るぜ……」
ロカ殿が嫌そうな顔をしている。
我々が話している間も、少しでも戦線を押し上げようと、
クロコダインやボリクスが土煙をあげながら、
敵を蹴散らして土煙の向こう側へ走っていった。
空を飛ぶスノードラゴンがカゴのようなものから、
デスストーカー、マクロベータを30体以上降ろして部隊を展開してくる。
ブレスを吐き、援護してくるスノードラゴンに守られ、
デスストーカーたちが殺到してきた。
だが、私は怪我人の治療を行っているので、戦闘に参加できない。
「ロカ、久しぶりに肩を並べて戦いましょうか」
「ハッ、悪くねぇな……」
「ケイン。ロカ殿の背中にしがみついて防御に専念するのじゃ」
「お任せを。ロカ殿、よろしくお願いいたします」
「ああ、頼むぜケイン。後ろは任せた!」
スノードラゴンが吹雪のブレスを吐き、
怯んだところをデスストーカーたち歩兵が薙ぎ払う戦術のようだ。
私は重症の兵たちを治しながら、アバン殿たちの戦いを見守る。
スノードラゴンが不注意にもブレスを叩きつけてきたのは成功体験ゆえだろうが、
ここにはアバン殿とロカ殿がいるのだ。
「アバン流刀殺法──海破斬!」
「カール騎士団・正統! 初撃!! 豪破一刀!!!」
「
アバン殿とロカ殿の息の合った剣技が、ブレスを切り裂いてスノードラゴンたちに直撃する。
まさか、上空の彼らが攻撃を受ける事はないと油断したのだろうが、
そこへケインの
「ベンガーナ砲兵の意地を見せよ! 標的! 上空のドラゴン。撃て!!」
堂に入った号令を下すのはアキームだ。クルテマッカ王も兵たちに指示を出している。
スノードラゴンたちが落とされても、デスストーカーたちはまったく意に介さず、
突っ込んでくる。
アバン殿とロカ殿、テランの戦士団とフォルケン王が迎え撃った。
「フォルケン陛下!?」
「ザボエラ。大丈夫だ。心配ないぞ。王様、拳法だけで言えば、ギュータで誰もかなわない」
「そ、その
見ているとギュータの達人たちが周囲を固めつつも、デスストーカーの斧をかるく捌きながら、
炎の爪を叩きこんでいるし、飛び蹴りをくれてマクロベータを一撃で倒していた。
なるほど。クロコダインのなかなかの腕というのは、世辞ではないのだな。
デスストーカーたちを撃退した後、
疲労から荒い息をつくボリクスが
「
「大丈夫かボリクス! 誰と戦ったんじゃ!?」
「なんや、緑色の動く石像と戦ってたんやけど、4分全力で戦ってしもた!
剣がこないなってもうた!」
ボリクスは頭をかきながら、刃こぼれしてヒビが入った剣を見せてきた。
クルテマッカ王が駆け寄り、ドラゴンキラーを手渡した。
「お嬢ちゃんこれを使ってくれ。ワシが持っていても役に立たんからな」
「お、良いもんやん! ありがとな王様!」
ある程度治療が済んだので、ロカ殿とボリクスがここに残り、王たちを守ることになった。
私とアバン殿は、最前線で一人で戦っているクロコダインに、
合流して、彼の戦いを援護することを決定する。
大魔神が30体近くが、その屍を晒していた。
その激戦の跡に、よく4分程度で終わらせたなという、
共通の感想を私とアバン殿は抱くことになる。
だが、それを超える光景をこれから目にすることになった。
20体近くのソードイドが、倒されて地面に転がっている奥で、
三体の金色の鎧をまとった骸骨と、たった一人で戦っている男がいた。
「クロコダイン! いまワシらが助けに……」
「来るなザボエラ!!」
その声が届くと同時に私めがけて矢が飛んできて、それをケインが爪で防ぐが、
ケインの爪が破壊されてしまっている。
それを見てアバン殿は抜刀し、周囲を警戒する。
私は
矢からの護りにしようかと思った。
しかし、見えぬ射手からの矢は、頭を砕き、胴を砕き、
容易く
クロコダインは、金色の鎧をまとい、灰色の骸骨を晒すデーモンソードたちと戦っている。
一体は剣を六本の腕に持ち、二体目は小ぶりな斧を構えている。
三体目は槍を六本の腕で両手持ちして、三本装備していた。
いずれも暗黒闘気をまとわせた武具を、凄まじい速さで繰り出し、
クロコダインと互角以上の戦いをしている。
対するクロコダインは、左腕の真空の斧で彼らの攻撃を捌き、右腕の拳で闘気の技を放っている。
だが、いま一人の恐らくは弓を持ったデーモンソードが、クロコダインの攻撃の起点を読んで、
仲間への攻撃を妨げているせいで、決定打が打てない。
「アバン殿。
身を潜めた射手を倒さねば、クロコダインがやられてしまいますぞ」
「ザボエラさん。弓が飛んできた角度から、敵の位置が掴めるのですが、
そこまでどうやって行くかですね……」
「一つワシに手があります」
私は
私とケイン、アバン殿を効果範囲に入れて
「
「
私が唱えた
巨大な岩蛇に矢が刺さり、私たちを狙う矢を氷の盾が防ぐ。
「あそこです!!」
「
私は
回避するように高速で走り出していた。
だが、既に
アバン殿を迎え撃とうと放たれた、デーモンソードの矢を海破斬で迎撃し、
アバン殿が放つのは……。
「アバンストラッシュ!!」
弓を持ったデーモンソードは、真っ二つに両断された。
クロコダインは大丈夫だろうかと振り向いた瞬間、勝負は決していた。
弓の援護がなければ、クロコダインの技の起点を潰すことはできない。
剣に、斧に、槍に暗黒闘気をまとわせたデーモンソードたちは、必殺の攻撃を繰り出した。
三位一体の同時攻撃を、クロコダインは凄まじい勢いで捌く。
まず玄武鉄山靠で剣のデーモンソードを砕き、
振り向きざまに猛虎破砕拳を斧のデーモンソードに食らわせた。
槍のデーモンソードの渦巻く暗黒闘気の刺突が放たれたが、
クロコダインは両手に集中させた闘気の塊で槍の刺突を止め、
そのまま放たれた龍撃波動拳が槍のデーモンソードを塵に変える。
「見事じゃなクロコダインよ!」
「いや、危うかった。一人で突出しすぎたのもよくなかったな。
老師が見ていたらオレを叱るだろう」
「いえいえ……。
あの手並みを見せて反省されたら、私たちの立つ瀬がありませんよクロコダイン」
手をひらひらさせて、反省しているクロコダインに突っ込んでいるアバン殿。
クロコダインのストイックさが、老師の下への再修業で更に高まっているようだ。
と、嫌な予感がして振り向くと。
奥からズシーン、ズシーンと巨大な何かが移動してくる音がする。
戦いの中、土煙やモヤが立ち込めていたのだが、
晴れた瞬間にそれが姿を現した。
15mほどもあるだろうか。
紫色の毒々しい鱗に覆われた、威圧感のある巨体。
五本の竜の首が、鋭い目つきでこちらを睨みつけている。
「地上は雑魚ばかりかと思っていたが、まさかデーモンソード四人衆を倒すものがいるとはな」
「オレは武神流門下、クロコダイン。貴様は何者だ?」
「俺様はキングヒドラ。
かつてはヴェルザー十二魔将の一人であったが、既にどうでもいい肩書だ。
なぜならば、この俺様がこの地上を支配する竜王となるのだからな!」
でかい……。
原作でベンガーナを襲撃したヒドラは、
せいぜいが7・8m程度に見えたが、それどころではない。
あと、彼がどの作品を反映したキングヒドラであるかも重要だ。
ドラクエ3のキングヒドラなら、強い事は強いが、我々三人なら十分に勝てるだろう。
だが、ドラクエ10のキングヒドラ強レベルの強さだった場合、手数も恐ろしいし、
何より攻撃手段が多彩で危険だ……。
さてどうするべきかと考えていたが、一つキングヒドラの性質を思い出した。
それに賭けて情報を引き出してみるとしよう。
独自設定
冥竜城
"ヴェルザーが地上征服の為に作り出した魔界と地上の間にある空間"
という説明を毎回するのが面倒なので、このような名を作りました。
恐らく原作で説明はされてませんが、地上征服の為の拠点なので、
最低でも砦もしくは城レベルのものなのだろうと思っています。