ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
確かキングヒドラはおしゃべりだったはずだ。
何か話しかけて、情報を引き出そうと思った所、あちらから話し出してくれた。
「見よ! あの見事な城。冥竜城
ヴェルザーが作った地上との間に作られた拠点だったが、
この俺様が改良を施し、地上へ出現させたのだ!」
「では、冥竜王ヴェルザーは、既にあなたが倒したのですかな?」
喋りたくて仕方ないタイプだ。
情報を引き出すために、わざとモノを知らない愚かな質問をしてみる。
「ジジイ! 愚かなものだな。まぁいい!!
愚者に説明してやるのは、賢竜たる俺様の仕事だ」
それを聞いて、キングヒドラの五本の首は大笑いをした。
私は二人が何もせぬよう目配せをしたので、
クロコダインとアバン殿は静観して見ていてくれている。
「残念ながら不死の魂を持つヴェルザーは、殺せんのだ!
故に天界の精霊に封印されて、いまは置物になっておる!」
そこで左右の首が、ちょっとだけ上下したので、
彼流の肩をすくめたという感情表現なのかもしれない。
「俺様はいま一人の協力者と、
他のヴェルザー十二魔将をそそのかして激発させたのだ。
賢しげで臆病者のキルバーンめが死んだようだからな。
馬鹿どもを止めるやつはいない。
いま、大魔王バーンの軍勢に、蹴散らされている所だろうよ!」
「なんと、そのような事になっているとは……」
「俺様は
どちらか先に地上を侵略した方を、
王として仰ぐという話になっているのだ」
「で、その協力者とはどなたですかな?
キングヒドラ殿ほど偉大な方が、
もう一人いるのは想像もつきませんのう」
「ハッハッハ! 貴様のような卑小な者には想像もつかぬだろうな!
協力者は海王グ……」
キングヒドラが協力者の名を言いかけた所、
私に
アバン殿が海破斬で迎撃してくれて、ともに距離を取る。
三又の槍を持ち、水色の服を着た精悍な面持ちの魔族が、
油断なくこちらを見ながら、キングヒドラに諫言している。
「キングヒドラ様。あまり喋ってはなりませぬ」
「いいではないか! どうせこいつらは死ぬだけだぞ!」
「お気をつけください!
キルバーンの報告にあった、ザボエラという魔族ですぞ我が主!」
「キルバーンがなんだというのだ!!
あの臆病者が何を言ってたか知らんが、気にするな!」
あの魔族は何者だろうか……と足を見ると、
靴の代わりに金属の鳥の爪の様になっていた。
……まさか、"知られざる伝説"で、
バラモスに仕えていたサタンか?
エビルマージなのではと言われていたが、どの程度強いのだろうか。
サタンが右手を振ると、控えていたヒドラ三体とマクロベータが20体、
ライオンヘッドに乗ったデスストーカーが20体現れる。
「もういいか、ザボエラよ?」
「構わんよ。倒せそうかねクロコダイン」
「あのデカいのはオレがなんとかしよう」
「では、我々で残りを担当しましょうかザボエラさん」
クロコダインとアバン殿がそう話しかけてくる。
アバン殿に、槍を持った魔族は強いから、
気を付けるよう注意をして、
自然と闘いの火蓋が切られた。
クロコダインを遮ろうとしたヒドラが一体、
鳳凰流星脚で粉砕される。まさに一蹴と言った感じだ。
それを見たキングヒドラが、ニヤリと嬉しそうな顔をして、
巨体に似合わぬ速度で、クロコダインに向かっていくのが見えた。
マクロベータが間断なく
その援護の下突っ込んでくるデスストーカー。
サタンの指揮は的確ではあるが、私には
マクロベータの放った
私自身は
こちらへブレスを吐いてきたヒドラに叩きつけ、
ブレスを押し返す形で進む巨大な
ヒドラに直撃して巨大な炎となって、ヒドラ自身を焼き尽くす。
「なんだあの呪文は……」
「お前さんはサタン殿かな?
魔界でも名をはせた、ヴェルザー十二魔将たる、
キングヒドラ殿に仕えた勇将と聞く」
「確かに我はサタンだが、我が主はヴェルザーに歯向かって長らく封印されていたのだ。
貴様が我が主の名を知るはずが……」
急に言葉を途切れさせ、口をつぐんでこちらを睨む。
カマをかけたことに気づいたかな……?
「フン。口の上手いジジイだ。
死神キルバーンが貴様を危険視していたが、
口ほどに腕が立つか見てやろう!」
「ほぅ、死神キルバーンがワシのことをのう」
やはりキルバーンは危険だったな。
ヴェルザー陣営に、地上の情報を流していたのだ。
あの時点で倒すことができて良かったのかもしれない。
策を弄する謀略系の人材でありながら、
搦め手ではあるがトップクラスに食い込む強さを持っていた。
自由に行動させるには、危険すぎる男だったからな。
「貴様らはあの人間を抑えよ! 我は魔族のジジイを叩く!!」
サタンは攻撃目標を私に向けてくれた。
こちらを見るアバン殿に頷く。
次の瞬間、
その猛攻をケインが爪を伸ばして捌きながら、
私も
距離を取ろうかと思ったがその瞬間に、
サタンは両手に魔法力を集中させている。あれはまさか……!
「我が極大呪文を食らうが良い!
私はケインを抱えて
間一髪で退避に成功したが、
作り上げた
敵が
敵の動きが早すぎて食らってくれそうもないな。
だが……マトリフ殿の戦法を真似させてもらうかな。
私も彼に
彼の弟子のようなものだ。
師の戦い方に学ぶのもよいだろう。
「逃がさぬぞザボエラ!!」
私の
サタンは
槍で攻撃してくる戦法を行ってくる。
こちらはケインが対応しているので、
サタンの攻撃が私に届くことは無い。
だが、ヒット&アウェイを繰り返されるので、
強い呪文での反撃ができない。
ちょっとした千日手状態だが、私は距離を取って
一気に五個作り上げた
サタンはそれを煩わしそうに槍で捌いている。
私の作り出した
「見損なったぞザボエラ。
貴様を優れた魔法使いだと思ったのに、このような小細工を弄するとはな」
「さて、小細工かどうかは、最後まで見てもらおうかのう……?」
「なに?」
私は同じように
勝機を感じて距離を置く。
サタンは槍で適当に捌いているが、
サタンの右足の側にある
何か危機感を感じたのか、飛びのこうとしたサタンの右足を、綺麗に消滅させていた。
「ぐああああああ!! な、なんだ、これは!?」
私は既に
「この隙を作り出すための布石じゃよ!」
「そ、それは────」
最後まで言葉を紡ぐことができず、サタンは私の
「お疲れさまでした
「目視で計算した感じでは、四つの置き
サタンをそこで倒せるはずだったんじゃがのう。
成功は一つか……」
「オーザムでは一度も成功しませんでしたから、進歩なさっているのではありませんか?」
そうケインと話していると、アバン殿がやってくる。
あれだけいたライオンヘッドに乗ったデスストーカーや、
マクロベータの軍勢を一人で片付けてしまったのか。
「強敵の指揮官を引き付けて下さったので、各個撃破できましたよ」
「いやはや、お見事ですなアバン殿」
私たちはクロコダインの援護をしようと思い、
キングヒドラとの戦いを続ける彼の下へ向かった。
増援に向かった我々は、そこで凄まじい光景を目の当たりにする。
キングヒドラの首の二本が折れており、
周囲には彼の夥しい血がまき散らされている。
対するクロコダインも無傷ではなく、
鎧が破壊され、真空の斧が砕かれている。
魔法玉は無事なようなのだが、
両者の怪我が激闘のすさまじさを物語っている。
今のクロコダインが押し切れない相手か、キングヒドラは……。
彼には悪いが、援護させてもらおう。
「
「
私の
だが、バシッという音と共に弾かれてしまう。
これはまさか……しまった。
「そのような呪文は俺様には通じぬわ!」
毒々しい霧のブレスをこちらに放ってくる。
恐らくは猛毒の霧だな。
私には毒は通じないが、アバン殿が青い顔をしている。
アバン殿に近寄って
いま思い出したが、キングヒドラには
恐るべき耐性能力……!
通じるとしたら
そう考えていた所、クロコダインから声がかけられる。
「手を出さないでくれ二人とも! オレとこいつの戦いだ!!」
「うむ、そうさせてもらうかのう!」
やや距離を取り、丁度良いのでアバン殿の毒を消し去ってから、傷の治療を行う。
正直、戦いづくめでアバン殿も疲労している。
キングヒドラとクロコダインの戦いに割って入るほどの力は、
私にもアバン殿にも残ってはいないかもしれない。
少しでも回復して、何かあった時にクロコダインを連れて、
クロコダインとキングヒドラの対決を見ると、
首を二本へし折られたキングヒドラは不利なように見える。
しかし、クロコダインはキングヒドラのブレスを、
巧みな回し受けで捌いている。
キングヒドラが、魔法力を集中させ始めているがもしや……?
「俺様とここまで戦えた男は貴様が初めてだ、クロコダイン。
だが、俺様の首を二本へし折った罪は許せん!
ここで死ねぇッ!!」
「さて、そう容易く死ぬわけにはいかんな!」
キングヒドラが吠え、彼の足元に魔法陣が出現する。
クロコダインとの会話は、魔法力を集中させて、
魔法陣を出す時間稼ぎか!
あれはまさか、攻撃力を高める邪竜の秘紋か!?
私の想像は当たっているようで、伸びる首による猛攻と、
火球や酸のブレス、光り輝く氷のブレスなど、
多様なブレスによる攻撃で、クロコダインを攻撃する。
回し受けで致命傷には至っていないが、
鎧が吹き飛び、彼の鋼の皮膚が割け、血が迸っている。
だが、クロコダインは一切、諦めていない。
「……闘気が極小に……? あれは、まさか……」
「アバン殿?」
「私の知る技に似ているのですが、何か違うような……」
そのアバン殿の声を遮るように、キングヒドラの嘲る笑い声が聞こえる。
「叩き潰してやるぞクロコダイン! 三首竜連撃牙!!」
キングヒドラの首が三つ伸び、
クロコダインをその顎に捕えたかのように見えたが……。
その瞬間、その三つの首が吹き飛ぶ。
何が起こったか分からないが、すぐにクロコダインは距離を詰め、
残ったキングヒドラの肉体に、玄武鉄山靠を叩きこむ。
紫色の毒々しい鱗をまき散らしながら、巨体に穴を穿ち、
凄まじい音を立てて倒れるキングヒドラ。
私とアバン殿は
すぐさま私が
「今のは……一体、何が起こったんじゃクロコダインよ」
「……ハァ……ハァ……あれは……」
息も絶え絶えなクロコダインの言葉を継いで、アバン殿が答える。
「カウンター技ではありませんか、クロコダイン?
相手の攻撃を敢えて受けて、
それをそのまま相手に叩き返すような?」
「さすがだなアバン。老師が作り上げた技の一つだ。
老師自身もモノにできなかったそうだがな」
武神流 玄武裏金剛という技だそうだ。
玄武という聖獣は亀と蛇の側面を持つ。
蛇の攻撃力が玄武鉄山靠であり、亀の防御力によるカウンターが、
玄武裏金剛という技だという。
無刀陣のようなものかと思ったら、どうも少し違うらしい。
闘気をゼロにするのではなく、
闘気を凝縮して限りなく1に近い状態にして溜めておくそうだ。
相手の攻撃を受けてしまうから、ダメージも食らってしまうが、
食らった瞬間にその攻撃に対して、
使い手の体重と溜め込んだ闘気を爆発させ叩きこむ。
故に相手の攻撃と、使い手の体重。
そして、溜め込んだ使い手の闘気が、
三位一体となり超ダメージが敵に炸裂するのだ。
だからこそ、あのキングヒドラの頭を、
ああも容易く粉砕したのだろう。
ブロキーナ老師が若い頃に作り上げた技ではあるが、
小兵の老師には使いこなすことができず、
巨体を誇るクロコダインには最適ではあるだろうが、
自分が習得できなかった技を人には教えられぬ。
そう考えて、伝授できる練度にまで高めていたそうで、
ようやく去年教わることができたという話である。
「実際、オレもまだモノにできていないんだ。
敵の攻撃を受けて、相手の攻撃力と、
オレの体重を上乗せするところまでは行けている。
だが、凝縮した闘気を流し込むのが難しくてな」
凝縮した闘気を相手に流し込めたのは、
どうも25%程度だったらしい。
そう語るクロコダインは、
キングヒドラの三つ首の攻撃を受けて返した玄武裏金剛の破壊力が、
本当に100%発揮できていれば、
キングヒドラの巨体を完全に粉砕出来ていたという話だった。
残念がるクロコダインの話を聞いていたアバン殿と私は、
顔を見合わせて、大笑いしてしまった。
笑う私たちを見て、クロコダインが不思議がるので、
恐らく同じことを思っているであろうアバン殿の言葉を代弁して、
私がクロコダインに説明をする。
「お前さん、これだけの事をしておいて反省するというのは、
謙虚すぎるのじゃよ」
「……そんなものか」
「そんなものじゃな」
私たち三人の笑い声がこだまし、
ベンガーナの方から援軍が来る気配がした。
なんとか勝利を掴み取ったが、完全に想定にない敵の出現である。
キングヒドラが言いかけた海王とは何者なのか、
それを考えるのは一休みしてからにしよう。
私はそう思い、魔法の筒から水を取り出し喉を潤す。
今は、ベンガーナを守り抜けた幸運を噛みしめるべきだろう。
独自設定
武神流 玄武裏金剛
無刀陣のように闘気をゼロにするのではなくて、凝縮して相手に叩きこむので、
ヒュンケルが体を奪おうとしたミストバーンにやった、
光の闘気をため込んでいたようなものです。
相手の攻撃を食らうので、そのダメージもありますし、
返すのが相手の攻撃力+自分の体重+凝縮した闘気なので、
敵が強ければ強いほど、威力がとんでもないことになります。
ケンガン〇シュラの関林という一番カッコイイプロレスラーが使う技、
受け返しというやつです。
サタン
「知られざる伝説」という本に登場したバラモスの側近です。
オルテガと刺し違えて、バラモスに見事と称賛されるくらいの魔物でした。
オルテガ繋がりでキングヒドラの副官になってもらった感じです。
色合いからエビルマージの中身なのではという説があるそうですが、
作中でイオナズンを使用しましたのでアークマージクラスかなとは。