ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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勇者アバンと獄炎の魔王からの新事実は、
今後もフィードバックできそうな部分を使わせてもらう事になります。
ご了承いただければ幸いです。


2024年5月30日 追記
次回更新を"6月6日木曜日の23時"に、
延期させていただきます。
申し訳ありません。


詳細は活動報告の方にございます。


https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=313187&uid=270770



第五十話 不死鳥のかがり火

私とクロコダインは、ギュータへやってきていた。

最初、パプニカに向かって、バダック殿に鎧の修復を頼もうかと話していたのだが、

破損の度合いがかなりひどい。

端的に言って、粉々といった状況である。

もう、既に修復という段階ではないし、思いついたことがあって、

試みにロン・ベルク殿に頼んでみる事にした。

 

我々は雑然としたロン・ベルク殿の作業小屋におり、私は小さな椅子に腰かけている。

クロコダインは座れる椅子がないので、立っているが本人は気にした様子もない。

興味深そうに、鍛冶場を眺めている。

 

 

「……なるほど。破損してしまうから、自己再生する鎧というわけか……。

確かにオレの作った鎧の魔剣、鎧の魔槍共に自己再生できるが……」

 

 

粉々になっている鎧の破片を手に取り、眺めながらロン・ベルク殿は付け加えた。

 

 

「オレが例えばクロコダインの為に、自己再生する鎧を作ったとしても、ここまでの破損……。

というより粉砕に近い損傷となると、鎧の自己再生に半月は時間がかかるだろうな」

 

 

私としては半月で自己再生するのかという驚きが先に立つが、

ロン・ベルク殿はそれでは足りぬだろうと、

言い添えて腕を組んで考えている。

 

 

「そこで一つ、提案があるのです。

素人の思い付きゆえ、専門家たるロン・ベルク殿の意見を伺いたいと思いましてな」

 

「あんたを素人扱いするつもりはないし、無駄な話を聞いた記憶もない。

言ってみてくれ。提案という奴を」

 

 

実はここへ来る前に、サババのディードック殿の所へ寄ったのだ。

彼から不死鳥のかがり火を買い取るためである。

三万(ゴールド)という法外な値段であるが、いまの私には安いものだ。

倍の六万(ゴールド)ほどの価格を支払った。

ディードック殿に一つ頼みごとをした上で、だ。

 

"もしも、珍しいアイテム類を手に入れたら、優先的に連絡をして欲しい"と。

 

ディードック殿は、首をぶんぶん振って引き受けてくれた。

その話をロン・ベルク殿にして、不死鳥のかがり火を差し出す。

骸骨の器の頭をカポッと開けて、中の炎を観察し、食い入るように凝視するロン・ベルク殿。

 

 

「オレも見るのは初めてだ。随分と貴重なものを手に入れてきたものだな……」

 

「で、どうでしょうかな? 鎧の自己再生速度や、再生力の足しになりますかのう?」

 

「なる。飛躍的に能力の向上をもたらすことが可能だ。だが……」

 

 

器の頭を閉じて、テーブルの上に置き、ロン・ベルク殿は我々に言った。

 

 

「かがり火に内包された不死鳥の力は、おおよそあと一回分だな。

それを注いだ武器、防具は一度しか作れまい」

 

「そうか。ならば、ロン・ベルク殿。オレの防具はいい。

剣で悩んでいるボリクスのために使ってやってくれ」

 

 

クロコダインは少しも悩まず、自分の事は置いておいて、ボリクスに譲った。

ロン・ベルク殿はチラリと見て、嬉しそうな顔をしながらクロコダインに語り掛ける。

 

 

「仲間の為に譲る心か……。

一目見た瞬間から、大した腕だという事は分かっていたが、心映えまで見事だとはな。

こちらから頼みたいくらいだ。あんたの鎧を作らせてほしい! とな」

 

「オレを認めてもらえたのは嬉しいが、ロン・ベルク殿。

ボリクスの剣の助けになるなら、オレの事は二の次で良いのだが……?」

 

「すまんな、クロコダイン。

役に立つなら選択肢として考えたいのだが、ボリクスの剣には必要はないんだ。

ボリクスの剣に必要なのは、あくまであいつの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)に耐える力だからな」

 

 

なるほど、そういうことか。

ボリクスの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)に耐えて、共に戦える剣でなければならないからな。

欲しているのはボリクスの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)でボロボロにならない強さで、

再生能力ではないのだから。

いま、ルーン文字を刻んでいるのも、そのためであるのだから。

 

現状のボリクスの剣に、自己再生能力を必要としているわけではない。

ボリクスの剣に埋め込まれた魔法玉が健在なら、幾らでも鍛え直すことも可能だ。

それに、既に鍛え上げた後なので、不死鳥のかがり火の力を宿すのは無理だという事だった。

 

 

「そういう事なら、喜んで鎧作りをお願いしたい」

 

「では、少し付き合ってくれんか。お前さんの癖とかも見たいからな」

 

 

星皇剣ではないが、普段使い用に作った二刀の剣を腰に下げ、

ロン・ベルク殿がそうクロコダインに語り掛ける。

 

 

「ロン・ベルク殿のお眼鏡に適うかわからんが、お相手させてもらおう」

 

「ザボエラ。死なないようにやるつもりだが、興が乗ったら分からん。

あんたの回復呪文(ベホマ)が頼りだぞ」

 

「……止めても無駄なのは分かりましたぞ……」

 

 

二人して"すまない"と私に口にしたのがハモって面白かったが、

すぐに私の眼前で、とんでもない名勝負が繰り広げられた。

 

あとでこの話をボリクスにしたら、

"なんでうちを呼ばんのや! ザボ爺(ざぼじい)のアホ!"

と怒られてしまった。

 

死闘の後に意気投合した二人は、ロン・ベルク殿が川の水で冷やした麦酒を無言で仰ぎ、

大笑いしながらお互いの健闘を褒め合っていた。

 

その後、クロコダインは鎧が完成するまでの間、

ロン・ベルク殿の所で厄介になるという事になる。

 

鍛冶をするために大量の薪も必要になることだし、

両手に丸太を10本抱えて山から下りてくるクロコダインは、

ギュータの民にすぐに一目置かれるようになったという。

 

 

 

クロコダインをギュータに送ってから、数日後。

ベンガーナからメタッピーで書簡が届いたので、私はマトリフ殿とかの地へ飛んだ。

 

国内の復興を行っているクルテマッカ王から、幾つか相談を受けることになった。

元来、ベンガーナが基本的な国防の際の仮想敵としているのは、

東にあるギルドメイン山脈から降りてくるモンスターたちである。

 

そのため、今回は旧アルキード王国辺りの海に出現した、冥竜城影ノ城(かげのしろ)から出てきた敵が、

ベンガーナ王都へ向けて進軍していく中、点在している村々が甚大な被害を受けてしまったのだ。

 

ベンガーナとしては盲点の南──正確には南西だが──から攻められ、もろさを見せてしまった。

そのため、クルテマッカ王から如何にして、悪意を持った侵略者から、

国民を守るかという課題に知恵を貰えぬかと依頼されたのだ。

 

私とマトリフ殿が首をひねった結果、幾つかの方策が提案された。

まず、ベンガーナは国土がかなり広い。

全体を遍く守り抜くことは無理だ。

たとえばテラン国内では村々に一個頑丈な建物を作っておき、

破邪呪文(マホカトール)で厳重に守護しているのである。

何かあればそこへ逃げ込む。避難訓練などもしているくらいだ。

 

それを踏まえ私が考えた対策としては、幾つかの村ごとに、

大き目の砦規模ほどもある強固な建物を作る。

そこに破邪呪文(マホカトール)を施すことで、魔物の襲撃があった場合、逃げ込む避難場所とすることだ。

ただ、そのままでは飢え死にするだけなので、建物の最上階に狼煙台を設置し、

ベンガーナ王都から確認できるようにする。

 

あと、瞬間移動呪文(ルーラ)を使える者を増やすため、村々で呪文契約をしてみる。

使えるか使えないかが分かるだけで、特にリスクもないのだから。

瞬間移動呪文(ルーラ)一つでもいいから呪文を修め、

ベンガーナ王都まで行けるようにしておけば、緊急の際の助けになるだろう。

 

その他、我々の献策を聞きながら、クルテマッカ王の近況の話となった。

クルテマッカ王は、自分より遥かに年上のフォルケン王が、周囲の護衛より強く、

凄まじい武術の腕で活躍するのを見て、触発されてしまい、肉体の鍛錬を始めたという。

 

まさかこのまま、各国の王が戦えるようになってしまうのでは、

という危惧が起こってしまったが、

フォルケン王のレベルは無理でも、護身が出来る程度の強さがあるのはありがたい。

健康の為にも続けると良いでしょうとアドバイスをしておいた。

 

さらにロモス、パプニカ、テランから食料や物資の援助が行われ、

ベンガーナは諸王国の危機の際には、必ず馳せ参じると話をしていた。

クルテマッカ王は商人の家系で、損得に敏感で計算高い所はある。

だが、それに反して、恩に対しては恩で返す義理堅い面もあるのだ。

 

 

 

クルテマッカ王は破壊された村々と国土の再建を始めたが、

我々はキングヒドラ軍の行った事の後始末が必要だ。

私とマトリフ殿。合流したボリクスの三人で、放置された冥竜城影ノ城(かげのしろ)へ向かう。

影ノ城は地上に出た時点で、魔界へ戻ることはできないようであるが、

そのまま置いておくのは気分の良いものではないし、何か仕掛けがされているかもしれない。

 

我々は内部に入り、危険なものがないか、見て回る。

私より先行していたマトリフ殿が、顔色を変えて飛翔呪文(トベルーラ)で戻ってきた。

 

 

「どうされたのじゃマトリフ殿?」

 

「やべぇぞ、ザボエラ。黒の核晶(くろ コア)が隠されてたぜ、おい!」

 

 

私も心臓が飛び上がる様な衝撃を受け、マトリフ殿の案内で玉座の間へ赴いた。

ボリクスが玉座の背後の空間に安置されていた、大き目の黒の核晶(くろ コア)を確認している。

 

 

「ヴェルザーのやつ……どんだけ黒の核晶(くろ コア)好きやねん? アホちゃうかほんま……。

ザボ爺(ざぼじい)、これ、威力どんくらいやろか?」

 

「ベンガーナとテランは地上から無くなるじゃろうな。場合によってはカールの南も危うかろう」

 

「あのキルバーンって奴の頭に入ってた黒の核晶(くろ コア)より、二回りはでかいからな」

 

 

よく玉座の後ろに隠しておいて、恐ろしくはなかったのだろうかと思ったが、

考えてみれば最初の主はヴェルザーで、次の主はあのキングヒドラだ。

玉座に座れる体ではない。

それでも玉座があるというのは、象徴であるとか形式的な存在で、

実際には使われていなかったのだろう。

 

 

「ザボエラ、おめえアレ成功させたって話じゃねぇか。見せてくれよ」

 

 

置き極大消滅呪文(メドローア)の件か。

二人に距離を取るように話し、興味津々のボリクスを連れて下がるマトリフ殿。

それを確認して、私は一人で黒の核晶(くろ コア)に近づく。

 

まず氷系呪文(ヒャド)黒の核晶(くろ コア)を凍らせた。

その後、同質量の火炎呪文(メラ)を置いたつもりだったが、若干、火炎呪文(メラ)の方が強かったらしい。

想定よりも消滅の規模が大きかった。

 

置き極大消滅呪文(メドローア)のコツとして、消滅範囲の制御があげられる。

威力が出るのは当たり前なので、威力を調整して、

如何にして考えた範囲を消滅させられるかが重要だ。

 

 

「うわっ、なんやアレ! 怖っ!! あれでもまだまだなんか、ザボ爺(ざぼじい)?」

 

「70点と言ったところかのう」

 

「なに、成功しちまえばいいのさ。数こなせば慣れてくるぜ」

 

 

黒の核晶(くろ コア)を処理したあと、我々三人は城の外に出た。

私とマトリフ殿で極大爆烈呪文(イオナズン)を放ち、

その後、ボリクスが竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)でギガストラッシュを使った。

 

攻撃の規模が違う。

ダイがダイの剣を使って、大地斬で鬼岩城を斬ったことがあるが、

巨大化した竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)は10mほどもあり、

叩きつけられた冥竜城影ノ城(かげのしろ)は、まさしく影も形もなくなっていた。

 

 

「すげぇな、ボリクスのお嬢……。だが、こりゃー対人戦だと使いづらいってか?」

 

「でかすぎるんや。

威力はあるけど、うちとやり合える力量(レベル)やと、逃げられてこっちが危ない」

 

「もしや、こないだのだいまじんはこれで倒したのかのう?」

 

「そうそう、そうやでー。ようわかったな、ザボ爺(ざぼじい)。一掃したら剣があのザマや!」

 

 

ほぼ、細かい瓦礫となった城が、海へ沈んでいくのを眺めながら、

これはなかなか対人戦闘では使いづらいなという印象を抱いた。

 

マトリフ殿はベンガーナ戦の被害を見て、ため息交じりにこう言った。

 

 

「一戦交えてみねぇと、分からない事が山ほどあるな」

 

 

今回のベンガーナの件は、敵の強大さについてのいい説明になるだろうとマトリフ殿が言った。

パプニカの戦士団や魔法兵たちの練度が上がっていく中、

さほど備えは必要ではないのではないか、

そんな厭戦気分が囁かれる事もあるらしい。

 

そういった場合に、気のゆるみを一喝するべく、

ベンガーナでの戦いの被害について報告し、

改めて王から臣下一堂に気を引き締める様に、下知していただく良い機会だと言っていた。

 

 

 

更に数日後。

ベンガーナのクルテマッカ王に提案した件が、採用になり、

まず破邪呪文(マホカトール)を宿した魔法玉を作り、それをベンガーナへ持って行った。

 

どこから話が伝わったのか分からないが、リンガイアから同じ物の要請を受け、

そこから更に細かい部分を詰めたり、連日、日に十回以上の瞬間移動呪文(ルーラ)での行き来が続いた。

 

ケインからの進言もあり、竜水晶から"いいから休め。魔族でも死ぬぞ"と止められたので、

仕事の連絡もシャットアウトすることになり、薬湯を飲んで眠りに就いた。

 

私はその日、妙な胸騒ぎを得ながら夢を見た。

この感触だと、恐らくグレゴリーアがなにか用事があるから、

私を呼んだのだろうと思ったが、その想像は当たっていた。

 

いつもの魔女グレゴリーアの家の前に立っている。

ここも慣れたものだと思っていたが、誰かいるようだ。

余人がいるのは初めての事で、一体何事かと……その人物を見た時、私の思考は硬直した。

 

他を圧倒する威厳に満ちた姿だ。

怒気を発しているわけでもないのに、その存在感に威圧される。

 

耳が長い事から、魔族であることは分かる。

刻まれたシワは深く、長い白髪であり蓄えた髭も同様に白い。

 

突起の多い冠をかぶり、頭部の左右から長大な角を生やしている。

平べったく長い肩当をしており、真っ白いマントを羽織り、上品な白い衣を身にまとっている。

 

 

誰あろう、見紛うことなき大魔王バーン……だ。

 

 

「魔女グレゴリーアから話を聞いておった。この場所はなかなかに面白い所だな。

呪いの主、宿主とでも言えばよいか? ……ヨミカイン魔導図書館館長、ザボエラよ」

 

 

そう語る大魔王は、興味深そうな光を湛えた目で、私を眺めていた。

 




独自設定

不死鳥のかがり火
マトリフが持ち出したのは、札を燃やして不死鳥のかがり火本体から、
少し拝借しただけだったなと思い出して、今回登場することになりました。

鍛えた武具の再生能力を向上させるというのは、オリジナルの設定になります。
通常でもボロボロになった鎧の魔剣とかすぐに修復されていましたので、
さらに再生速度が速い、鳳凰座の聖衣みたいな感じになります。
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