ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
地の神の祭壇へ到着した。
竜水晶が魔法陣を描き、直接大地の精霊に話しかけている。
レオナ姫がその横で祈りを捧げているのを見ながら、私は周囲に
興味深そうに見ていたダイが、私に話しかけてきた。
「
父さんが心配してたよ」
「ほう、バラン殿がワシをかね?」
「いま、デルムリン島にいられるのも、
必ずお礼がしたいってよく話してる」
「いやいや、ワシの力ではない。お前さんの父上が新しく人生を……いや。
ダイの父上が偉いのじゃよ」
「へー、そうなんだ!」
難しい言い回しになりそうだったので、単純な言葉でまとめてしまった。
バラン殿は恩を感じてくれているのはありがたいが、ここまで来たのだから、
彼には最後まで生き残って欲しいという気持ちがある。
彼の死後にダイとバランの、親子としての絆が強まるのはあまりにも悲しい。
間近にして本人たちと接してしまうと、幸せに暮らして欲しいという思いが強くなるのだ。
そう考えていると竜水晶の呼ぶ声がした。
竜水晶がレオナ姫に手を貸しているので、大地の精霊も呼応が早かったらしい。
薄い立体映像のような姿で、大地の精霊が姿を現す。
石を組み合わせて作られたような姿で、精悍な表情をしている。
「聖母竜……いや、違うな。竜水晶……か?
その姿は一体、何があったのだ」
「聖母竜は邪悪な力によって限界がきていた。
それゆえに彼女の力を、我が引き継いだのだ大地の精霊よ」
「そうか。つまり、世界的に良からぬことが起こっているのだな」
「失礼、大地の精霊よ。ワシはザボエラと申します。
状況を説明したいのですが、よろしいですかな?」
鷹揚に許可した大地の精霊に、簡潔にまとめて現状についての説明をする。
その話を聞き終わって、大地の精霊は疑問をまず一つ提示した。
「私が協力して戦うのはやぶさかではないが、
既に風と炎と水の精霊は囚われているのだな。
私までグラコスに吸収された場合、地上が終わるのではないか?
海王グラコスの支配のもとに……」
「そこが問題ではありますな。
一つ案があるのですが、その前に水の精霊殿に尋ねたいことがあります」
話を振られると思ってなかったのか、ビクッとなってこちらを向く水の精霊。
「な、な、なんでしょうかザボエラさん」
「風の精霊と炎の精霊は、グラコスの背中に背後霊の様に浮いていたと?
これは間違いないわけですかな?」
間違いないと答え、自分の本体も同様に、背後に捕らわれることになったと説明した。
つまりだ。身体内部に吸収して、グラコスが精霊たちの力を自分で振るうわけではない。
言ってしまえばジョジョの奇妙な冒険のスタンドのように、
わざわざ背後に出現させているということから、
精霊をそのままの姿でなければ捕えられない可能性がある。
「大地の精霊殿。
あなたはアミュレットのような姿になることは可能ですかな?」
「可能だ。本来は私の加護を人間に与える為、護符として授けていたものである。
勿論、私自身がアミュレットと化し、強力な力で持ち主を守ることも可能である」
「この場の誰との縁が一番強いですかな?」
答えは出ているだろうと思ったが、一応、大地の精霊に確認を取る。
大地の精霊はレオナ姫を指差し、儀式を行った彼女と縁が結ばれていると話した。
「私に祈りをささげた巫女よ。そなたを守るために力を振るいたいがどうか?」
「ありがとうございます、大地の精霊よ。
あたしを守ってくださるという申し出、嬉しく思います。
ですが、あなたの力を、あたしはみなを守るために使いたく存じます」
「……見事。その滅私の心根と精神こそ、貴きものなり。
我はそなたを守る盾となり、そなたが振るう矛となろう」
大地の精霊は手の平大のアミュレットとなった。
レオナ姫がそれを首から下げ、静かにみなにいう。
「さあ、反撃の狼煙を上げましょう。敵の横っつらに一撃を入れてあげるのよ!」
そう拳を上げて宣言するレオナ姫につられて、我々は思わず掛け声を上げてしまった。
我々は水晶の竜と化した竜水晶の背に乗り、
竜水晶のドラゴン化は、長時間できるわけではないので、ここぞという時にしか使えない。
いまがその時だというわけだ。
敵はエビルタートルを戦車の様に扱い、その背に乗っているデスキャンサー、
たつのこナイトが降りて攻撃をしてくる。
エビルタートルの横に食らいつこうにも、隙間を埋める様にしびれマイマイがおり、
デルムリン島のモンスターがマヒさせられては、
仲間のモンスターが救助に人数を割かれてしまう。
ラーハルトやバラン殿が敵陣に穴を空けても、
すぐに次のエビルタートルがデスキャンサーたちを満載して現れ、
自陣に空いた穴を埋めて、進軍を再開してくのだ。
個々の強さでゴリ押ししてきたキングヒドラたちとは違った、
魔物の性質をよく理解した上での役割分担。
兵種の性能を互いに補い合う戦術。
このグラコスには、戦慣れした強さを感じざるを得ない。
当たり前だがデルムリン島のモンスターは、軍隊ではない。
強いモンスターもいるのだが、集団で連携を取って、
軍勢を相手取って戦うのが上手いわけではないのだ。
このままでは押し負けてしまうので、横合いから竜水晶が光のブレスを叩きつける。
私も彼女の背から
レオナ姫がアミュレットをかざして叫ぶ。
「大地の精霊よ! 敵が容易く超えられない壁を!」
高さ5mほどの石の壁が、敵陣とこちらの
我々は奮戦していたラーハルトやバラン殿、モンスターたちに声をかけて一旦、退かせる。
彼らを治療しながら、大地の精霊を連れてきたことを話した。
怪我人たちには下がってもらい、ブラス殿が治療をしている。
まだ元気なモンスターや、バラン殿たちで壁の側まで行くと、
ちょうど敵の攻撃で壁が破壊された瞬間だった。
私はレオナ姫に声をかけ、顔を出したエビルタートルたちに、
二人分の
巨大質量ではあるが、動きは鈍いので直撃してくれた。
レオナ姫が
竜水晶の背中に乗って飛んでいる間に聞いたことだ。
マトリフ殿の指導が功を奏しているのだろう。
なかなかどうして、大したものだ。
第一陣のエビルタートルを倒せたのだが、すぐに第二陣がやってくる。
レオナ姫は、大地の精霊の力で、石を出現させては、
それを敵へ飛ばして味方の援護をしている。
エビルタートルが満載していた歩兵のたつのこナイトや、デスキャンサーたちを、
ラーハルトが近接型のハーケンディストールで一掃する。
そのラーハルトを上空から攻撃しようという空の魔物たちは、
バラン殿が
一息つけるかと思ったところへ、小規模な津波が押し寄せてくる。
それに乗った六体のくもの大王が、夥しい数のベビークラウドをひきつれ、
ギズモ、ヒートギズモ、フロストギズモと雲の魔物を従えて現れる。
露払いのように彼らがずらりと並び出来た道から、
2.5mほどある巨体の半魚人が浮遊しながら現れた。
確かにグラコスだ。
グラコスではあるが……体色は紫色で、ヒレは赤色になっている。
違う……!? グラコスではないな。
確かグラコスは体色が緑色で、ヒレは黄色ではなかったか?
この体色とヒレの色という事は、つまりグラコス五世という事か。
「こんな小島のモンスターどもが、
随分と小うるさく歯向かってくれるものだ。
このグラコス二世に対して!」
二世……。五世ではないようだが、つまりグラコスの子ということか。
話をしてくれそうな雰囲気があるので、会話してみるとしよう。
情報を引き出すにも、コミュニケーションは大事である。
「ワシはザボエラと申します。あなたが、グラコス二世殿ですか?」
「ザボエラ? どこかで聞いた気が……」
「緑色の体色で、黄色いヒレのグラコス殿とは別人のようですな」
「待てお前、父を知っているのか?
長年、大魔王バーンに尾びれを振り続けた臆病者の父を」
この言い方はつまり、親子仲は悪いという事か……。
「左様。大魔王殿の臣下にグラコス殿がいらしたはず。
似てらっしゃるので、縁戚の方かと推察いたしましたが、親子でしたか……」
別に面識があるわけではないのだが、口裏を合わせてみた。
ジャミラスがいるくらいだ。大魔王臣下にグラコスがいてもおかしくはあるまい。
しかし、デュランやアクバーもいるのだろうか。
前者は強さ的に、後者はもし使えたらマダンテが怖いが……。
「父は魔界でヴェルザー十二魔将を焚きつけた後、
大魔王領侵攻での戦いで死んだという報を聞いたわ」
「それはお悔やみを申し上げますぞ」
「なに、あのような愚物。死んでも当然の男よ」
「ところで、ヴェルザー十二魔将を焚きつけたとは?」
「私とキングヒドラで賭けをしてな。
お互い違う方法で地上を侵攻しようという話だ。勝った方の下に就くとな……」
そこで何がおかしかったのか、大笑いを始めるグラコス二世。
「ブッ、ブッ、ブクルルルルー!
あの間抜けのキングヒドラめが! 人間共にやられたというではないか!
労せずしてこの私の勝ちではないか……!!」
キングヒドラとグラコス二世が、他のヴェルザー十二魔将を扇動し、
大魔王バーンの領土へ攻め込ませたわけか。
その間に、自分たちは地上へ侵攻したのだな。
さぞや、魔界は混乱しているだろうな……。
呼吸を整えたバラン殿や、ラーハルトが私の側までやってくる。
ひとしきり笑った後、何か気づいたのかこちらを見て急に真面目な顔で問いかけてきた。
「……思い出したぞ。貴様、ザボエラと言ったか?」
「左様ですが何かありましたかな?」
「キルバーンめが言っていたのは貴様か!
妙な魔族がいて、地上の計画を狂わせていると!
キングヒドラを倒したのも貴様だな! 恐るべき話術。色々喋ってしまったではないか」
苦笑しながら、バラン殿が話しかけてくる。
「ザボエラ殿。聞きたいことは、既に十分聞けたのではありませんか?」
「そうですな。……グラコス二世。この島を攻めたのがお前の失敗じゃ!」
私は左右に
だが、私は
やはり、彼を甘く見てしまっていたのかもしれない……。
グラコスの背後に炎、風、水の精霊が背後霊の様に出現して、
別々に呪文を唱え始める。
「
「
「
全精霊が同時に攻撃できる事よりなにより、私は最後の呪文に恐怖した。
すべてを消滅させる呪文である
呪文であるという属性からは逃れられず、呪文を反射する
それに
それゆえに、魔法力の消耗が激しいが、
私は必死に
最初の
それを対消滅させるために迎え撃った
その結果、かなり魔法力を消費させられることになってしまった。
以後は注意して呪文を使う様にせねばならんな……。
「貴様、なにか強力な呪文を使ったなジジイ!
危険な存在は全力で排除する! くらえっ、絶対零度!」
グラコスからの絶対零度が私に迫るが、回避する余力もない……。
と、ボリクスが
そのまま
「危なかったな
「まずいのう……
「うちらで叩きこめばええやろ! あとは任せときや!」
私を
ハーケンディストールを叩きこもうと飛び上がるラーハルト。
風の精霊がしんくうはでラーハルトを先んじて攻撃して、技のでがかりを潰されてしまった。
そういえば、風の精霊はメタルキングより素早さが高かったはず……!
更に追い打ちでグラコスが槍を薙ぎ払うと、
流石のラーハルトも避けきれず吹っ飛ばされてしまう。
それを見たボリクスが、
いかんな……。
ボリクスが攻撃に集中するというより、苦戦している味方を助ける側に回っている。
だが、それをやめて攻撃に専念してくれといったら、こちらが不利になってしまう。
味方が足を引っ張ることになるとは……。
バラン殿が
炎の精霊がはげしい炎を吹き付け、水の精霊の
レオナ姫が大地の精霊のアミュレットで、石の壁を各所に隆起させて味方を守り、
竜水晶が巨大な水晶の剣を出現させて、グラコスに叩きつけるが、
炎の精霊が
竜水晶とレオナ姫を、
そこへ殺到してきた、くもの大王とギズモを、竜水晶が水晶の剣を無数に作り出して阻む。
私は魔法力を大分失ってしまったので、
直線でピンポイント攻撃できる呪文を使いわけた。
それから、
グラコスの移動を阻害し、味方を守る行動にシフトした。
グラコス軍には状態異常を起こす魔物が何体もいる。
彼らの攻撃で毒やら麻痺に陥った味方モンスターを、
その間にも火傷を負っているバラン殿の近くへ行き、
戦場へ戻ったボリクスとラーハルトが見事なコンビネーションで、
グラコスと三精霊を足止めしているが、分が悪いのは変わらない……。
私も局面を変えるような魔法力もないので、一旦、撤退するかという考えがよぎるが、
空には無数の魔物が飛び交っており、逃げる事も難しい。
味方のモンスターたちも戦っており、敵を近づけないようにしてくれているが、
如何せん数が違いすぎる……。
傷が癒えたバラン殿が、
決意を漲らせた表情で私に語り掛けてきた。
「ザボエラ殿。いまから私が竜魔人となります。
時間を稼ぐので、その間にみなを逃がしてください」
「バラン殿いけない。それはあなたの命に関わりますぞ!!」
竜水晶とバラン殿の身体について話し合った時、竜魔人化は
恐らく足りない
つまり、現状の竜魔人化は、彼の命を損なう可能性があるだろうという話になった。
ゆえに竜魔人化は厳に慎むよう話し、彼も納得したはずだったが……。
「やっと、あなたに恩を返せる時が来た。ダイや若い者たちのため……」
「バラン殿、グラコスの攻撃が!!」
私はとっさに
炎の精霊から飛んできた
「
そう叫ぶボリクスに、風の精霊から
ラーハルトを抱えて回避するボリクスを、エビルタートルの背に乗った、
デスキャンサーやたつのこナイトの第二陣が追っている。
グラコス軍の増援が、二人を囲んでそちらでの戦いが始まってしまった。
「ブクルルルー!
キルバーンめが貴様を過大評価していたが、どうやら大したことはなかったなザボエラよ!」
「……」
私は返す言葉もない。完全に失策だった。
統制が取れており、兵種ごとの役割分担が完璧な軍隊。
三精霊の力を振るって、自分含めて一ターンに四回行動してくるグラコス。
せめてロン・ベルクかクロコダインのどちらかに、
声をかけるべきだった。
グラコスの絶対零度が放たれたが、それは私が
バラン殿が
どうすればいいのだ……そう思った瞬間、グラコスの悲鳴が響いた。
「ギャアアアアアアア!!」
なんと、水の精霊がこちら側に立ち、
「大地の精霊、力を貸してください!」
「おう!」
レオナ姫が首にかけられたアミュレットを外して放り投げ、
4mほどの石の巨人たる大地の精霊が顕現した。
いきなり地面を叩き、地割れを作ってエビルタートルたちを飲み込んでいく。
グラコスの直下にできた地割れからマグマが噴出し、
堪らずグラコスが後ろへ滑るように退避した。
「ブクルルルー! そんな所にいたのだな!
大地の精霊よ! 古の盟約の下、我が下僕となるがよい!」
手の平をこちらに向けて、何かしたように見えるグラコスに、
容赦なく水の精霊が
「なにっ!!
ま、まさか、海底神殿の魔法陣になにかあったのか!」
グラコスの驚愕の叫びと同時に、私の横にアバン殿とレイラ殿が
精霊たちが協力して、グラコスと風の精霊と炎の精霊の動きを止めている間、
バラン殿と竜水晶がグラコスに攻撃している。
駆け寄ってきたレイラ殿が、私の治療をしながら話始める。
「ザボエラ様。ボリクスさんとラーハルトさんは、先に助けて
ブラスさんが治療をしてくださっています」
「ありがとうございます。案じておりました……」
アバン殿が飛んできたギズモたちを空裂斬で薙ぎ払い、私の側にきて話しかけてきた。
「ザボエラさん、遅れて申し訳ありません」
「一体、何が起こったのですかな?」
アバン殿に説明を求めると、パプニカでなにがあったのか話をしてくれた。
レオナ姫がこちらへ来た辺りで、マトリフ殿が海底神殿に
海を潜って行き単身で偵察をしたそうだ。
警戒が極めて厳重であり、明らかに怪しかったらしい。
丁度、パプニカに来ていたアバン殿とネイル村のレイラ殿に助けを求め、
戻る際にヨミカイン魔導図書館へ寄って、ロカ殿を回収した。
三人を連れてパプニカに戻った後、
マトリフ殿とアポロ、それにアバン殿が、共に
そして、パプニカの魔法兵団と戦士団で襲撃して、
苛烈な戦いの後、海底神殿を占拠したという。
海底神殿の奥にあった、精霊を支配する禁呪法の魔法陣を発見。
マトリフ殿が解析して、一個ずつ破壊しているらしい。
どうやら、最初に未使用の大地の精霊の魔法陣を。
次に水の精霊の魔法陣を破壊したそうだ。
なるほど。それで、水の精霊の本体が解き放たれたという事か。
デルムリン島の様子を見て普通に飛んでいると、空の魔物に阻まれて近づけないと判断。
一計を案じ、海スレスレを
その上で同行したレイラ殿が
近づく魔物を切り刻みながら、上陸して来たらしい。
状況を説明してくれたアバン殿が、締めくくるようにこう言った。
「海底神殿にいるマトリフとロカが、グラコスが作った禁呪法の魔法陣を解呪し、
禁呪法を解いたものから破壊している所です。
時間をかければ、残りの精霊たちも解放できるでしょう」
「助かりますな……。しかし、水の精霊を解き放ってくれたのは助かりましたぞ。
そう話している間に、目に光が戻った風の精霊が、
グラコスに蹴りを入れて水の精霊の横に並んだ。
勝ち筋が見えてきた……とようやく一息付けた気がするが、
こういう時こそ油断はできない。
「舐めるなよ! 我が怒りを受けるがよい!」
凄まじい勢いでグラコス二世の足元から水が湧き立ち、それが凄まじい勢いで、
陸上の津波となって、全方位へ攻撃をかけてくる。
まさか、海魔神の憤怒か!?
そう思った瞬間、私の意識はそこで途絶えてしまった……。
独自設定
グラコス二世
反目しあっていて、父の死にも悪態をつく息子という構図にしたかったので、
五世(玄孫)は離れすぎているのでグラコスの実子という事になりました。
竜水晶強化
聖母竜マザードラゴンの力を受け継いでいるので、
できる事が増えています。
より、竜属性が色濃くなっているといいますか。