ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第五十三話 デルムリン島決戦 ~前編~

地の神の祭壇へ到着した。

竜水晶が魔法陣を描き、直接大地の精霊に話しかけている。

レオナ姫がその横で祈りを捧げているのを見ながら、私は周囲に破邪呪文(マホカトール)を敷いておく。

 

興味深そうに見ていたダイが、私に話しかけてきた。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)ちゃんは、いつも忙しそうだな。

父さんが心配してたよ」

 

「ほう、バラン殿がワシをかね?」

 

「いま、デルムリン島にいられるのも、ザボ爺(ざぼじい)ちゃんのおかげだから、

必ずお礼がしたいってよく話してる」

 

「いやいや、ワシの力ではない。お前さんの父上が新しく人生を……いや。

ダイの父上が偉いのじゃよ」

 

「へー、そうなんだ!」

 

 

難しい言い回しになりそうだったので、単純な言葉でまとめてしまった。

バラン殿は恩を感じてくれているのはありがたいが、ここまで来たのだから、

彼には最後まで生き残って欲しいという気持ちがある。

 

竜の(ドラゴン)騎士バランが死んでしまうエピソードは、全編を通して美しい下りの一つではあるが、

彼の死後にダイとバランの、親子としての絆が強まるのはあまりにも悲しい。

 

間近にして本人たちと接してしまうと、幸せに暮らして欲しいという思いが強くなるのだ。

そう考えていると竜水晶の呼ぶ声がした。

 

竜水晶がレオナ姫に手を貸しているので、大地の精霊も呼応が早かったらしい。

薄い立体映像のような姿で、大地の精霊が姿を現す。

石を組み合わせて作られたような姿で、精悍な表情をしている。

 

 

「聖母竜……いや、違うな。竜水晶……か?

その姿は一体、何があったのだ」

 

「聖母竜は邪悪な力によって限界がきていた。

それゆえに彼女の力を、我が引き継いだのだ大地の精霊よ」

 

「そうか。つまり、世界的に良からぬことが起こっているのだな」

 

「失礼、大地の精霊よ。ワシはザボエラと申します。

状況を説明したいのですが、よろしいですかな?」

 

 

鷹揚に許可した大地の精霊に、簡潔にまとめて現状についての説明をする。

その話を聞き終わって、大地の精霊は疑問をまず一つ提示した。

 

 

「私が協力して戦うのはやぶさかではないが、

既に風と炎と水の精霊は囚われているのだな。

私までグラコスに吸収された場合、地上が終わるのではないか?

海王グラコスの支配のもとに……」

 

「そこが問題ではありますな。

一つ案があるのですが、その前に水の精霊殿に尋ねたいことがあります」

 

 

話を振られると思ってなかったのか、ビクッとなってこちらを向く水の精霊。

 

 

「な、な、なんでしょうかザボエラさん」

 

「風の精霊と炎の精霊は、グラコスの背中に背後霊の様に浮いていたと?

これは間違いないわけですかな?」

 

 

間違いないと答え、自分の本体も同様に、背後に捕らわれることになったと説明した。

つまりだ。身体内部に吸収して、グラコスが精霊たちの力を自分で振るうわけではない。

 

言ってしまえばジョジョの奇妙な冒険のスタンドのように、

わざわざ背後に出現させているということから、

精霊をそのままの姿でなければ捕えられない可能性がある。

 

 

「大地の精霊殿。

あなたはアミュレットのような姿になることは可能ですかな?」

 

「可能だ。本来は私の加護を人間に与える為、護符として授けていたものである。

勿論、私自身がアミュレットと化し、強力な力で持ち主を守ることも可能である」

 

「この場の誰との縁が一番強いですかな?」

 

 

答えは出ているだろうと思ったが、一応、大地の精霊に確認を取る。

大地の精霊はレオナ姫を指差し、儀式を行った彼女と縁が結ばれていると話した。

 

 

「私に祈りをささげた巫女よ。そなたを守るために力を振るいたいがどうか?」

 

「ありがとうございます、大地の精霊よ。

あたしを守ってくださるという申し出、嬉しく思います。

ですが、あなたの力を、あたしはみなを守るために使いたく存じます」

 

「……見事。その滅私の心根と精神こそ、貴きものなり。

我はそなたを守る盾となり、そなたが振るう矛となろう」

 

 

大地の精霊は手の平大のアミュレットとなった。

レオナ姫がそれを首から下げ、静かにみなにいう。

 

 

「さあ、反撃の狼煙を上げましょう。敵の横っつらに一撃を入れてあげるのよ!」

 

 

そう拳を上げて宣言するレオナ姫につられて、我々は思わず掛け声を上げてしまった。

 

 

我々は水晶の竜と化した竜水晶の背に乗り、

破邪呪文(マホカトール)の外で戦っている味方を救うべく、敵陣に攻撃を開始した。

 

竜水晶のドラゴン化は、長時間できるわけではないので、ここぞという時にしか使えない。

いまがその時だというわけだ。

 

敵はエビルタートルを戦車の様に扱い、その背に乗っているデスキャンサー、

たつのこナイトが降りて攻撃をしてくる。

エビルタートルの横に食らいつこうにも、隙間を埋める様にしびれマイマイがおり、

デルムリン島のモンスターがマヒさせられては、

仲間のモンスターが救助に人数を割かれてしまう。

 

ラーハルトやバラン殿が敵陣に穴を空けても、

すぐに次のエビルタートルがデスキャンサーたちを満載して現れ、

自陣に空いた穴を埋めて、進軍を再開してくのだ。

 

個々の強さでゴリ押ししてきたキングヒドラたちとは違った、

魔物の性質をよく理解した上での役割分担。

兵種の性能を互いに補い合う戦術。

このグラコスには、戦慣れした強さを感じざるを得ない。

 

当たり前だがデルムリン島のモンスターは、軍隊ではない。

強いモンスターもいるのだが、集団で連携を取って、

軍勢を相手取って戦うのが上手いわけではないのだ。

 

このままでは押し負けてしまうので、横合いから竜水晶が光のブレスを叩きつける。

私も彼女の背から極大閃熱呪文(ベギラゴン)を撃ち、それで空いた隙間に、

レオナ姫がアミュレットをかざして叫ぶ。

 

 

「大地の精霊よ! 敵が容易く超えられない壁を!」

 

 

高さ5mほどの石の壁が、敵陣とこちらの破邪呪文(マホカトール)の間に築かれる。

我々は奮戦していたラーハルトやバラン殿、モンスターたちに声をかけて一旦、退かせる。

彼らを治療しながら、大地の精霊を連れてきたことを話した。

 

怪我人たちには下がってもらい、ブラス殿が治療をしている。

まだ元気なモンスターや、バラン殿たちで壁の側まで行くと、

ちょうど敵の攻撃で壁が破壊された瞬間だった。

 

私はレオナ姫に声をかけ、顔を出したエビルタートルたちに、

二人分の極大爆烈呪文(イオナズン)を叩きつける。

巨大質量ではあるが、動きは鈍いので直撃してくれた。

 

レオナ姫が極大爆烈呪文(イオナズン)を使えるのは、

竜水晶の背中に乗って飛んでいる間に聞いたことだ。

マトリフ殿の指導が功を奏しているのだろう。

なかなかどうして、大したものだ。

 

第一陣のエビルタートルを倒せたのだが、すぐに第二陣がやってくる。

レオナ姫は、大地の精霊の力で、石を出現させては、

それを敵へ飛ばして味方の援護をしている。

 

エビルタートルが満載していた歩兵のたつのこナイトや、デスキャンサーたちを、

ラーハルトが近接型のハーケンディストールで一掃する。

そのラーハルトを上空から攻撃しようという空の魔物たちは、

バラン殿が電撃呪文(ライデイン)真空呪文(バギクロス)で迎撃していた。

 

 

一息つけるかと思ったところへ、小規模な津波が押し寄せてくる。

それに乗った六体のくもの大王が、夥しい数のベビークラウドをひきつれ、

ギズモ、ヒートギズモ、フロストギズモと雲の魔物を従えて現れる。

 

露払いのように彼らがずらりと並び出来た道から、

2.5mほどある巨体の半魚人が浮遊しながら現れた。

確かにグラコスだ。

グラコスではあるが……体色は紫色で、ヒレは赤色になっている。

 

違う……!? グラコスではないな。

確かグラコスは体色が緑色で、ヒレは黄色ではなかったか?

この体色とヒレの色という事は、つまりグラコス五世という事か。

 

 

「こんな小島のモンスターどもが、

随分と小うるさく歯向かってくれるものだ。

このグラコス二世に対して!」

 

 

二世……。五世ではないようだが、つまりグラコスの子ということか。

話をしてくれそうな雰囲気があるので、会話してみるとしよう。

情報を引き出すにも、コミュニケーションは大事である。

 

 

「ワシはザボエラと申します。あなたが、グラコス二世殿ですか?」

 

「ザボエラ? どこかで聞いた気が……」

 

「緑色の体色で、黄色いヒレのグラコス殿とは別人のようですな」

 

「待てお前、父を知っているのか?

長年、大魔王バーンに尾びれを振り続けた臆病者の父を」

 

 

この言い方はつまり、親子仲は悪いという事か……。

 

 

「左様。大魔王殿の臣下にグラコス殿がいらしたはず。

似てらっしゃるので、縁戚の方かと推察いたしましたが、親子でしたか……」

 

 

別に面識があるわけではないのだが、口裏を合わせてみた。

ジャミラスがいるくらいだ。大魔王臣下にグラコスがいてもおかしくはあるまい。

しかし、デュランやアクバーもいるのだろうか。

前者は強さ的に、後者はもし使えたらマダンテが怖いが……。

 

 

「父は魔界でヴェルザー十二魔将を焚きつけた後、

大魔王領侵攻での戦いで死んだという報を聞いたわ」

 

「それはお悔やみを申し上げますぞ」

 

「なに、あのような愚物。死んでも当然の男よ」

 

「ところで、ヴェルザー十二魔将を焚きつけたとは?」

 

「私とキングヒドラで賭けをしてな。

お互い違う方法で地上を侵攻しようという話だ。勝った方の下に就くとな……」

 

 

そこで何がおかしかったのか、大笑いを始めるグラコス二世。

 

 

「ブッ、ブッ、ブクルルルルー!

あの間抜けのキングヒドラめが! 人間共にやられたというではないか!

労せずしてこの私の勝ちではないか……!!」

 

 

キングヒドラとグラコス二世が、他のヴェルザー十二魔将を扇動し、

大魔王バーンの領土へ攻め込ませたわけか。

その間に、自分たちは地上へ侵攻したのだな。

さぞや、魔界は混乱しているだろうな……。

 

呼吸を整えたバラン殿や、ラーハルトが私の側までやってくる。

ひとしきり笑った後、何か気づいたのかこちらを見て急に真面目な顔で問いかけてきた。

 

 

「……思い出したぞ。貴様、ザボエラと言ったか?」

 

「左様ですが何かありましたかな?」

 

「キルバーンめが言っていたのは貴様か!

妙な魔族がいて、地上の計画を狂わせていると!

キングヒドラを倒したのも貴様だな! 恐るべき話術。色々喋ってしまったではないか」

 

 

苦笑しながら、バラン殿が話しかけてくる。

 

 

「ザボエラ殿。聞きたいことは、既に十分聞けたのではありませんか?」

 

「そうですな。……グラコス二世。この島を攻めたのがお前の失敗じゃ!」

 

 

私は左右に火炎呪文(メラ)氷系呪文(ヒャド)を用意して、極大消滅呪文(メドローア)の準備をして、グラコスに放つ。

だが、私は極大消滅呪文(メドローア)の強さと、グラコスのあまりにも迂闊な様子に、

やはり、彼を甘く見てしまっていたのかもしれない……。

 

グラコスの背後に炎、風、水の精霊が背後霊の様に出現して、

別々に呪文を唱え始める。

 

 

火炎呪文(メラゾーマ)!」

 

真空呪文(バギクロス)!」

 

呪文返し(マホカンタ)!」

 

 

全精霊が同時に攻撃できる事よりなにより、私は最後の呪文に恐怖した。

極大消滅呪文(メドローア)は強力無比な呪文ではあるが、注意しなければならないのは呪文返し(マホカンタ)だ。

すべてを消滅させる呪文である極大消滅呪文(メドローア)であっても、

呪文であるという属性からは逃れられず、呪文を反射する呪文返し(マホカンタ)の前には無力なのだ。

 

それに呪文返し(マホカンタ)の性質として、一度呪文返し(マホカンタ)で跳ね返された呪文を、

呪文返し(マホカンタ)で跳ね返す事はできない。無効化されて素通りするだけだ。

それゆえに、魔法力の消耗が激しいが、

極大消滅呪文(メドローア)極大消滅呪文(メドローア)で対消滅させなければならない。

 

真空呪文(バギクロス)を鎧の魔槍で受けながら無効化し、槍の一閃を叩きこむラーハルト。

火炎呪文(メラゾーマ)を海破斬で撃ち落とすバラン殿。

私は必死に極大消滅呪文(メドローア)を用意し、反射されたそれを対消滅させた。

 

最初の極大消滅呪文(メドローア)がかなり魔法力を込めて作ったものだったので、

それを対消滅させるために迎え撃った極大消滅呪文(メドローア)にも同等の魔法力を込めざるを得なかった。

その結果、かなり魔法力を消費させられることになってしまった。

以後は注意して呪文を使う様にせねばならんな……。

 

 

「貴様、なにか強力な呪文を使ったなジジイ!

危険な存在は全力で排除する! くらえっ、絶対零度!」

 

 

グラコスからの絶対零度が私に迫るが、回避する余力もない……。

と、ボリクスが瞬間移動呪文(ルーラ)で私をひっかけて、竜闘気(ドラゴニック・オーラ)で防御しながら、

そのまま飛翔呪文(トベルーラ)で上空へ飛び去った。

 

 

「危なかったなザボ爺(ざぼじい)!」

 

「まずいのう……呪文返し(マホカンタ)を使ってくるとは。

極大消滅呪文(メドローア)は封じられてしまったわい」

 

「うちらで叩きこめばええやろ! あとは任せときや!」

 

 

私を破邪呪文(マホカトール)の内側に連れて行き、ラーハルトたちの戦列に加わるボリクス。

ハーケンディストールを叩きこもうと飛び上がるラーハルト。

風の精霊がしんくうはでラーハルトを先んじて攻撃して、技のでがかりを潰されてしまった。

そういえば、風の精霊はメタルキングより素早さが高かったはず……!

 

真空呪文(バギ)でなく、通常攻撃なのか風の刃で切り刻まれるラーハルト。

更に追い打ちでグラコスが槍を薙ぎ払うと、

流石のラーハルトも避けきれず吹っ飛ばされてしまう。

それを見たボリクスが、飛翔呪文(トベルーラ)でラーハルトを回収にいく。

 

いかんな……。

ボリクスが攻撃に集中するというより、苦戦している味方を助ける側に回っている。

だが、それをやめて攻撃に専念してくれといったら、こちらが不利になってしまう。

味方が足を引っ張ることになるとは……。

 

バラン殿が電撃呪文(ライデイン)を使い、ライデインストラッシュでグラコスを攻撃するも、

炎の精霊がはげしい炎を吹き付け、水の精霊の水流呪文(ザバラーン)で威力を相殺されてしまっている。

 

レオナ姫が大地の精霊のアミュレットで、石の壁を各所に隆起させて味方を守り、

竜水晶が巨大な水晶の剣を出現させて、グラコスに叩きつけるが、

炎の精霊が五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)を繰り出してきて、吹き飛ばしてしまう。

 

竜水晶とレオナ姫を、竜の(ドラゴン)紋章を展開させたダイが守り抜くが、

竜闘気(ドラゴニック・オーラ)の制御が未熟なせいか、そのまま気を失ってしまう。

そこへ殺到してきた、くもの大王とギズモを、竜水晶が水晶の剣を無数に作り出して阻む。

 

私は魔法力を大分失ってしまったので、閃熱呪文(ギラ)閃熱呪文(ベギラマ)のような、

直線でピンポイント攻撃できる呪文を使いわけた。

それから、呪文返し(マホカンタ)を無効化する地爆呪文(ジバリア)などを設置して、

グラコスの移動を阻害し、味方を守る行動にシフトした。

 

グラコス軍には状態異常を起こす魔物が何体もいる。

彼らの攻撃で毒やら麻痺に陥った味方モンスターを、

解毒呪文(キアリー)麻痺解除呪文(キアリク)で快復してまわった。

その間にも火傷を負っているバラン殿の近くへ行き、回復呪文(ベホイミ)で治療している所だ。

 

戦場へ戻ったボリクスとラーハルトが見事なコンビネーションで、

グラコスと三精霊を足止めしているが、分が悪いのは変わらない……。

私も局面を変えるような魔法力もないので、一旦、撤退するかという考えがよぎるが、

空には無数の魔物が飛び交っており、逃げる事も難しい。

 

味方のモンスターたちも戦っており、敵を近づけないようにしてくれているが、

如何せん数が違いすぎる……。

傷が癒えたバラン殿が、竜の牙(ドラゴンファング)を手にし、

決意を漲らせた表情で私に語り掛けてきた。

 

 

「ザボエラ殿。いまから私が竜魔人となります。

時間を稼ぐので、その間にみなを逃がしてください」

 

「バラン殿いけない。それはあなたの命に関わりますぞ!!」

 

 

竜水晶とバラン殿の身体について話し合った時、竜魔人化は竜闘気(ドラゴニック・オーラ)が完全に戻らないと、

恐らく足りない竜闘気(ドラゴニック・オーラ)の代わりに、バラン殿自身の生命力を吸う可能性がある。

つまり、現状の竜魔人化は、彼の命を損なう可能性があるだろうという話になった。

ゆえに竜魔人化は厳に慎むよう話し、彼も納得したはずだったが……。

 

 

「やっと、あなたに恩を返せる時が来た。ダイや若い者たちのため……」

 

「バラン殿、グラコスの攻撃が!!」

 

 

私はとっさに瞬間移動呪文(ルーラ)で彼を回収して、

炎の精霊から飛んできた火炎呪文(メラゾーマ)を回避した。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)逃げろ!!」

 

 

そう叫ぶボリクスに、風の精霊から真空呪文(バギクロス)と、水の精霊から氷結呪文(マヒャド)が飛ぶ。

ラーハルトを抱えて回避するボリクスを、エビルタートルの背に乗った、

デスキャンサーやたつのこナイトの第二陣が追っている。

グラコス軍の増援が、二人を囲んでそちらでの戦いが始まってしまった。

 

 

「ブクルルルー!

キルバーンめが貴様を過大評価していたが、どうやら大したことはなかったなザボエラよ!」

 

「……」

 

 

私は返す言葉もない。完全に失策だった。

統制が取れており、兵種ごとの役割分担が完璧な軍隊。

三精霊の力を振るって、自分含めて一ターンに四回行動してくるグラコス。

せめてロン・ベルクかクロコダインのどちらかに、

声をかけるべきだった。

 

グラコスの絶対零度が放たれたが、それは私が防御光膜呪文(フバーハ)を展開して防いだ。

バラン殿が竜の牙(ドラゴンファング)に力を込める。

どうすればいいのだ……そう思った瞬間、グラコスの悲鳴が響いた。

 

 

「ギャアアアアアアア!!」

 

 

なんと、水の精霊がこちら側に立ち、氷結呪文(マヒャド)をグラコスに食らわせたのだ。

 

 

「大地の精霊、力を貸してください!」

 

「おう!」

 

 

レオナ姫が首にかけられたアミュレットを外して放り投げ、

4mほどの石の巨人たる大地の精霊が顕現した。

いきなり地面を叩き、地割れを作ってエビルタートルたちを飲み込んでいく。

グラコスの直下にできた地割れからマグマが噴出し、

堪らずグラコスが後ろへ滑るように退避した。

 

 

「ブクルルルー! そんな所にいたのだな!

大地の精霊よ! 古の盟約の下、我が下僕となるがよい!」

 

 

手の平をこちらに向けて、何かしたように見えるグラコスに、

容赦なく水の精霊が水流呪文(ザバラーン)を浴びせた。

 

 

「なにっ!!

ま、まさか、海底神殿の魔法陣になにかあったのか!」

 

 

グラコスの驚愕の叫びと同時に、私の横にアバン殿とレイラ殿が瞬間移動呪文(ルーラ)で飛んできた。

精霊たちが協力して、グラコスと風の精霊と炎の精霊の動きを止めている間、

バラン殿と竜水晶がグラコスに攻撃している。

 

駆け寄ってきたレイラ殿が、私の治療をしながら話始める。

 

 

「ザボエラ様。ボリクスさんとラーハルトさんは、先に助けて破邪呪文(マホカトール)の中に連れて行きました。

ブラスさんが治療をしてくださっています」

 

「ありがとうございます。案じておりました……」

 

 

アバン殿が飛んできたギズモたちを空裂斬で薙ぎ払い、私の側にきて話しかけてきた。

 

 

「ザボエラさん、遅れて申し訳ありません」

 

「一体、何が起こったのですかな?」

 

 

アバン殿に説明を求めると、パプニカでなにがあったのか話をしてくれた。

レオナ姫がこちらへ来た辺りで、マトリフ殿が海底神殿に真空呪文(バギ)で球体を作り、

海を潜って行き単身で偵察をしたそうだ。

警戒が極めて厳重であり、明らかに怪しかったらしい。

 

丁度、パプニカに来ていたアバン殿とネイル村のレイラ殿に助けを求め、

戻る際にヨミカイン魔導図書館へ寄って、ロカ殿を回収した。

 

三人を連れてパプニカに戻った後、

マトリフ殿とアポロ、それにアバン殿が、共に氷結呪文(マヒャド)で海を凍結させて道を作る。

そして、パプニカの魔法兵団と戦士団で襲撃して、

苛烈な戦いの後、海底神殿を占拠したという。

 

海底神殿の奥にあった、精霊を支配する禁呪法の魔法陣を発見。

マトリフ殿が解析して、一個ずつ破壊しているらしい。

どうやら、最初に未使用の大地の精霊の魔法陣を。

次に水の精霊の魔法陣を破壊したそうだ。

 

なるほど。それで、水の精霊の本体が解き放たれたという事か。

 

瞬間移動呪文(ルーラ)で島にやってこれたのは、近づいたアバン殿が、

デルムリン島の様子を見て普通に飛んでいると、空の魔物に阻まれて近づけないと判断。

 

一計を案じ、海スレスレを瞬間移動呪文(ルーラ)で飛んだそうだ。

その上で同行したレイラ殿が真空呪文(バギクロス)で、

近づく魔物を切り刻みながら、上陸して来たらしい。

 

状況を説明してくれたアバン殿が、締めくくるようにこう言った。

 

 

「海底神殿にいるマトリフとロカが、グラコスが作った禁呪法の魔法陣を解呪し、

禁呪法を解いたものから破壊している所です。

時間をかければ、残りの精霊たちも解放できるでしょう」

 

「助かりますな……。しかし、水の精霊を解き放ってくれたのは助かりましたぞ。

呪文返し(マホカンタ)で呪文を弾き返されましてな」

 

 

そう話している間に、目に光が戻った風の精霊が、

グラコスに蹴りを入れて水の精霊の横に並んだ。

勝ち筋が見えてきた……とようやく一息付けた気がするが、

こういう時こそ油断はできない。

 

 

「舐めるなよ! 我が怒りを受けるがよい!」

 

 

凄まじい勢いでグラコス二世の足元から水が湧き立ち、それが凄まじい勢いで、

陸上の津波となって、全方位へ攻撃をかけてくる。

まさか、海魔神の憤怒か!?

 

そう思った瞬間、私の意識はそこで途絶えてしまった……。

 

 




独自設定
グラコス二世
反目しあっていて、父の死にも悪態をつく息子という構図にしたかったので、
五世(玄孫)は離れすぎているのでグラコスの実子という事になりました。

竜水晶強化
聖母竜マザードラゴンの力を受け継いでいるので、
できる事が増えています。
より、竜属性が色濃くなっているといいますか。

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