ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
猛暑でバテましたので、暑さに慣れた頃にまた書き始めます。
皆様も暑いときは無理をなさらないで、ご自愛ください。
次回更新は8月1日木曜日の23時頃を予定しております。
魔界の情勢はままならないものであった。
ヴェルザー軍の主力を撃破して、魔界にある冥竜王城へ攻め入ったものの、
強力な結界で城が封じられており、解けなくはないが時間がかかるとの見解が出された。
不可解な点としては、外部から侵入できないのは分かるのだが、
内部から外部へ出る事もできぬほどに強力なのである。
実質、中にいる者達を封印しているのではないかと、ガルヴァスは判断した。
その直後である。
冥竜王陣営の弱体化と、相次ぐ戦闘によって大魔王陣営が疲弊しているのでは……?
そう判断した魔界の在野にいる猛者、軍勢たちが大挙して押し寄せてきたのだ。
かつての八大実力者による全方位からの大魔王領、冥竜王領への侵攻の再現である。
しかも、今回は大魔王領に対してのみの攻撃となる。
更に面倒な事というべきか、彼らは連携しているわけでも、協調しているわけでも、
裏面で共謀しているわけでもないのが厄介極まりない。
魔界の大魔王軍は、勝手気ままに攻めてきて、
叩き潰しては湧いて来たり、遠方から別勢力が増えてくるような、
面倒くさい敵勢力との戦いに引きずり込まれてしまったのだ。
ひっきりなしに別勢力から攻められる大魔王領であるが、
ミストバーンは地上の
キング・マキシマムは大魔王バーンその人の身辺警護を務めている。
魔界の
侵攻してくる魔界の強豪たちの撃退の仕事が増えてしまったガルヴァス。
ザングレイ、ブレーガン、ベグロム、メネロ、ダブルドーラを部下として与えられており、
彼らは各地で戦功をあげて敵を撃退しているのだが、終わりのない戦いに疲れ切っていた。
そこへ、デスカールが一人の戦士を伴って姿を現したのだ。
その戦士の名はヒュンケル。
ロン・ベルク作の鎧の魔剣を与えられており、大魔王バーンのお気に入りだとは聞いている。
少年期を脱したばかりの人間であり、2mほどのガルヴァスからすれば小柄だが、
そのヒュンケルのまとう鬼気迫る殺気は、内心で冷や汗をかかせるものだった。
「それは、ミストバーン様の命令なのだなデスカール」
「左様ですガルヴァス殿。
ヒュンケルに試練を与え、戦士としてより高みへ登らせることが目的でございますれば」
「ふむ……だが、戦況は悪くはないが、まるでモグラたたきの様相だ。
無理な転戦を余儀なくされる過酷な戦場である。
その厳しい戦いを全うできるのか? ヒュンケルとやら?」
鎧の魔剣の兜を小脇に抱え、鋭い目つきでこちらを睨むように見つめるヒュンケルに、
厳しい言葉をつきつけるガルヴァス。
「お任せくださいガルヴァス殿。
大魔王様の敵は悉く、このヒュンケルが滅ぼして御覧に入れます」
「貴様は大魔王様のお気に入りらしいが、敵は大魔王様の名で手加減してはくれんぞ?」
「大魔王様の名を飾りにするつもりはありません。
頂戴したこの鎧の魔剣と身につけた技で、大魔王様の敵は生かしておくつもりはございません」
多少皮肉を混ぜても特に臆せずいうヒュンケルに対して、若干鼻白んだガルヴァスであったが、
まずは口ばかりではなく力を見せろと戦場へ送り出した。
部屋に残ったデスカールに、ガルヴァスがヒュンケルについて確認を取る。
「事前に聞いておいたが、別にヒュンケルを守る必要はないのだな?」
「怪我の治療などはお願いしたいのですが、蝶よ花よと守るようなことは不要でございます」
「ふむ……それを聞いて安心したぞ」
「ミストバーン様からも魔界の戦士として一人前となるよう、
厳しい戦場でヒュンケルの心身を磨くべしとのお達しでございます。
もし、その過程で力及ばず命を落としたのなら、
そこまでの男であったかと判断するのみとのこと」
デスカールの言葉を聞き、ため息をついて話し始めるガルヴァス。
「特定人物を守れるほど甘い戦場ではなくてな。
ザングレイが非常に頭角を現して、敵を粉砕してるが……。
こうも連日の小競り合いが続くとは思わなかったわ」
疲労を滲ませた顔でいうガルヴァスに、デスカールは思い出したように話し始める。
「ところでガルヴァス殿。
ギルドメイン山脈のギュータを攻めた際、立ち向かってきたのがザボエラであり、
あなたたちを殺したのは援軍でやってきたクロコダインと、
少女の戦士だという事は、確かですかな?」
骸骨であるために表情が分からないデスカールを睨みつけながら、
ゲンナリとした口調でガルヴァスが話始めた。
「何度目だデスカールよ。
確かに急な蘇生によって、私とザングレイ以外が死んだ時のことを覚えてない故、
確認したいという気持ちは分からないではないが……」
「申し訳ございません。
重要な話ですので、何か思い出したことはないかと確認させていただいております」
本来はあと数年かかるはずだった蘇生が早まったためなのか、
ガルヴァスとザングレイ以外が、死んだ時の記憶が欠落してしまった。
更にザングレイはクロコダインという男への憎しみと無念が強く、
クロコダインの事しか覚えて無かった為、ほとんどガルヴァスが説明することとなった。
その後、デスカールに聞いてみると、クロコダインはあの
ザボエラはミストバーンを戦闘不能に陥らせるほどの猛者だったという。
死んでいたから報告できなかったのはやむなしということで許されたが、
その話をミストバーンにしている時のガルヴァスの気持ちは、
処刑台の階段を上がっているそれだった。
鬼神のような強さを見せたクロコダインについて話し終えると、
ミストバーンがポツリと話した。
"……あの男なら、その程度の事は可能であろう"
ガルヴァスはその時初めて、ミストバーンの声を聞いたのだった。
それから、ことあるごとにデスカールがその戦いの話を尋ねてくるので、
ガルヴァスは若干うんざりしていたのだ。
ミストバーンからの指示であるのは明白なので、
邪険にはできず、皮肉を言うに留まっている。
「強さにおいて頭角を現し始めているのは、ザングレイとメネロですかな?」
「そうだな。
ザングレイは、私ですら戦場であの男の前に立つのは恐ろしいほどだ」
ガルヴァスを筆頭にザングレイたちはみな、暗黒闘気を受ける事で蘇生した。
クロコダインへの憎しみの強さ故か、炎の暗黒闘気である魔炎気を身につけ、
文字通り自分自身を燃やしながら、ザングレイは連戦を繰り返している。
"ある男"の研究の成果を受け、強力な再生能力や炎への耐性を身に着け、
魔炎気との相性も悪くはない。
ザンバーアックスに魔炎気をまとわせ、燃え盛る斧を縦横に振るう姿は、
敵味方の畏怖の象徴でもあり、魔界の大魔王軍で中心人物であると言える。
「メネロも"手術"で多様で強力な能力を手に入れるに至っておる。
"浮遊樹"を大量に操り、戦場を偵察、映像で情報を得られるのは助かるな。
草木を使った技も多彩で、私は妖魔士団長に推挙しても良いと思っている」
「悪魔の目玉とは別系統の、情報を得られる手段があるのは重要ですからな」
「ブレーガンたちも死からの蘇生後、修練を重ねて強くなっている。
ザボエラとやらと再戦したら、次は後れを取ることは無いだろう」
そう自負を滲ませるガルヴァスに、デスカールは別の話題を振ってきた。
「ところで、ガルヴァス殿。例の男は役に立っておりますか?」
「ザムザか。あの男のモンスターの能力を付与する研究は、非常に有用ではあるな。
ザングレイはあの研究に好意的だ」
「左様ですか。
よい結果が出ましたら、ザムザに報告をあげるよう言伝をお願い致しますガルヴァス殿」
デスカールは一礼して地上の
机から酒を出し、半分ほど煽った後、ガルヴァスは吐き出す様に言った。
「デスカールめ……。人間あがりの分際で、いつの間にかオレを下に見おって!
ミストバーン様の側近を気取り、虎の威を借る狐が。いずれ、引きずりおろしてやる」
かつて邪教の僧侶として人間界で迫害され、崇め奉っていた魔界の神である、
大魔王バーンに命を救われ、禁呪法によってアンデッド化したのがデスカールである。
彼の大魔王への尊敬というか、崇拝の念は常軌を逸しているほどだ。
ガルヴァスも大魔王への尊敬の念は強い。
というより、大魔王という魔族の頂点に座す存在が持つ権力と、
大魔王自身が振るう隔絶した力を見ると、いずれ自分もあの領域へという野心もある。
ガルヴァスにデスカールを排除しようという気持ちはない。
死の呪文について、デスカールの右に出る者はないからだ。
いずれ、ミストバーンではなく、自分に頭を下げさせてやろうと思いながら、
酒を飲んでいるガルヴァスの下に、各戦線の報告が入ってその対応と、
作戦指示などに時間を割かれてしまう。
数日後。
猛将としての名が響き渡ったザングレイが、戦場の熱気をまといながら、
ガルヴァスの執務室に入り、何体かの強豪モンスターを討ち取り、
数百の軍勢を打倒した報告をした。
その上で、従軍したヒュンケルの剣技の腕を高く評価し、
決して鎧の魔剣だよりではないと太鼓判を押した。
「あの小僧、なかなかやりますぞガルヴァス様!」
「……ほう……」
ザングレイは単純な男なので、ヒュンケルの評価は曇りなきものだろう。
だからこそ、ガルヴァスは苦り切った内心を押し殺しながら答える。
「……お前が言うのなら、確かな実力なのだろうな。
丁度いい。手ごろな部隊を一つ任せ、ブレーガンの尻を叩かせろ。
馬鹿にしている人間ごときが、ザングレイが認めるほどの強さを見せれば奴も焦ろうものよ」
「取り計らっておきます。では、オレはまた戦場へ。
東の方に悪魔のような強大な魔物が、軍勢を率いて現れたようですので」
バトルジャンキーのように戦場から戦場へ渡り歩くザングレイに、
若干、鼻白みながらもガルヴァスは忠告をする。
「ザングレイ。お前はいいにしても、部下は限界かもしれんぞ。
ほどほどに休ませてやれ」
「お気遣いありがとうございますガルヴァス様。
しかし、超魔手術を受けてから、体の調子が良すぎて困りますな。
ガーッハッハッハ!!」
妖魔学士ザムザが齎した技術が、モンスターの能力を付与する超魔手術だ。
複数のモンスターを組み合わせ、身体をより戦闘向きに変身。
強力な力を得る事ができる超魔生物の研究も、並行して行われている。
超魔手術はともかくとして、超魔生物化は、
呪文が使えなくなるリスクがあるので、ガルヴァスは導入を考えてはいなかった。
現在、超魔手術を受けたのは、強さを渇望するように求めるザングレイと、
能力にコンプレックスがあるベグロム。
植物系のモンスターの力を広範に取り入れたメネロの三名だ。
元々、呪文が使えないザングレイは、超魔生物への調整も思慮に入れているが、
現時点でも十分に強いザングレイになにかあると困るのでガルヴァスが止めている。
ザングレイが去り、部屋が広くなったかのような錯覚を覚え、
酒瓶を取り出して一息つこうとしたガルヴァスの下に、ザムザから連絡があった。
広い部屋に幾つもの巨大な水槽が置かれ、溶液に浸されたモンスターたちが眠りについている。
祈祷師や悪魔神官たちが忙しく走り回り、実験の成果を書き記していた。
ガルヴァスを呼び出したこの研究施設の責任者たるザムザが、
礼を尽くして
「ようこそおいでくださいました、ガルヴァス様。
お忙しい所を、お呼びだてして申し訳ございません」
「多忙だと知って呼び出したという事は、完成したという事だなザムザよ」
「ハッ。さすがガルヴァス様。ご推察痛み入ります」
「世辞は良い。ここにはないようだが?」
ザムザは一礼して、ガルヴァスを奥の部屋へ案内する。
長い回廊を歩きながら、ザムザは急に別の話題を振ってきた。
「ガルヴァス様。ハドラー殿は、いまだ復活されぬのでしょうか?」
「なぜ、ハドラー殿の話を聞くのか?」
「ハッ、面識がございまして、復活されていたらご挨拶をせねばと考えておりました」
「フン……そうか。義理堅い事だな。
ミストバーン様から以前伺った話では、あと数年かかるという事だ。
挨拶などその時にするがいいだろう」
そう話しながら巨大な扉の前に立ち、呪法で施された鍵を開ける為、
ザムザが
「ガルヴァス様、そちらの魔法陣にお立ち下さい。
「随分と慎重だなザムザよ」
「ハッ……この事を知るのはガルヴァス様のみでございますゆえ。
慎重に慎重を期してございます」
「ふむ……。おお、これが超魔生──」
ガルヴァスが魔法陣に立った瞬間、禁呪法の魔力の縄が彼を縛り上げ身動きできなくなる。
「ザムザ、これはどういうことだ!!」
「申し訳ありませんが、ハドラー殿復活が先となれば……あなたの肉体を頂きます。
ガルヴァス殿!!」
「なに!? 何を言ってい……」
状況が理解できないガルヴァスは、ザムザに問いかけたが、
ザムザが額につけている記憶装置から赤い光が照射された瞬間意識を失った。
「……父上!? 父上、どうでしょうか? 成功いたしましたか、父上!!」
「キィ~ヒッヒッヒ! うるさいぞ、馬鹿者。少し静かにせぬかザムザ!!」
先ほどまで動揺しながらも、怒りの表情を浮かべていたはずのガルヴァスが、
下卑た笑みを浮かべながらザムザを叱責する。
「も、申し訳ございません。成功いたしましたか、父上」
「見て分からんのかザムザよ? ハドラーの肉体が手に入らなかったのは仕方ない。
だが、このガルヴァスもなかなかの強さじゃ……おっと、こやつの話し方を真似るか」
人間の神の残留思念は、真ザボエラとのコンタクトで彼がハドラーの肉体を狙っている事を、
ザボエラに語ったのだが、魔界で大魔王陣営に仕官したザムザが調べた結果、
ハドラーは大魔王から魔力を注がれ、肉体を再生され強化されている最中だった。
それでは手が出せぬので、超魔生物の研究を売り込み功績をあげた。
大魔王陣営で地位を得て、研究施設を任せられるまでに至っていたのである。
超魔生物学はザムザ一人が研究を続けていた分野であり、
基礎研究においてはザムザが詳しい。
だが、基礎研究をまとめてあげ、応用することに長けた真ザボエラが、
息子の研究を改良し発展させたのだ。
特にリスクなく、己に適性があるモンスターの能力を付与する、
超魔手術で信頼を獲得。
その際、大魔王軍の幹部たちの強さを探っていたのだ。
初期は魔界の四諸侯の肉体を狙っていたのだが、最強であったデュランが戦死。
グラコスも死に、ジャミラスは真ザボエラが嫌がり、アクバーも候補だったが、
現在、別命を受けて
強さという意味ではデスカールやミストバーンもよかったのだが、
デスカールは確実にアンデッドであるので真ザボエラが忌避感を示した。
ミストバーンも強すぎる暗黒闘気と、生気を感じない肉体からアンデッドの可能性があったし、
大魔王の側近であるから、禁呪法で捕らえられなかったら、
殺されるリスクが高く候補からはずれた。
最終的に魔族がいいという
ブレーガンは魔族ではあるが、武闘派で呪文が得意ではないので候補から外れる。
そうなると、極大呪文を使える魔法力に、強靭な肉体を誇るガルヴァスが候補となった。
「さて、これからワシは早い段階で、魔界の騒乱を治め地上へ戻るぞ。
武功をあげて、ハドラーを押しのけて、魔軍司令に就任してやろうかのう……!
おっと、ワシはいかん、私じゃ……私だな。
もう少し、若い喋り方をせねばならんのう」
「父上! おめでとうございます!」
すると、ガルヴァスの姿をした真ザボエラは、ザムザを殴りつけた。
「バカ者が! 父上、ではない! ガルヴァス様と呼べ、間抜けが!」
「ハッ、申し訳ございません……。ち……ガルヴァス様……」
「優先的に研究費を回してやるから、超魔生物の研究を進めろザムザよ」
頭を下げるザムザを一顧だにせず、
ガルヴァスの執務室へ歩いてゆくガルヴァス=真ザボエラであった……。
この日、大魔王バーンの軍勢の内部に、獅子身中の虫が誕生した。
それはまさしく、内部から腐敗をまく、毒虫のような存在である。
そして、ガルヴァスが乗っ取られた事を知る者は、ザムザ以外誰もいなかったのである。
独自設定
超魔手術
肉体的にそれほど変貌を起こさず、モンスターの因子を付与して能力を強化する技術です。
ザングレイは炎に強いモンスターや、肉体の再生能力が高いモンスターの因子を取り込み、
魔炎気での肉体の損傷を押さえて、戦い続ける肉体を得ました。
メネロは他の樹木系モンスターを幾つも取り込むことで、
浮遊樹系のモンスターを悪魔の目玉のように操って、
広範囲に情報を得る事ができるようになりました。
更にリーフスラッシュや
一見便利に見えますが、自分の系統のモンスターからしか能力を得る事ができません。
ザングレイだったら獣系モンスターからしか因子を得られませんし、
メネロですと植物系モンスターという感じになります。
解説
ヒュンケル
ちょうど、15歳くらいです。
アバン先生の所からミストバーンの弟子となり、
戦えるレベルで暗黒闘気を身に着けたので、
実戦を経験を積むという目的で来ています。
作中で真ザボエラを元々のザボエラとして、
ただザボエラと表記した場合は、
主人公のザボエラとさせていただきます。
人類の神の残留思念が宣言してから、
話数が経っていますので、登場の度に併記させていただきます。