ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
*呼称について
ザボエラ……主人公の事です。
真ザボエラ……現在、ガルヴァスの肉体を乗っ取った、本物のザボエラの事です。
魔界──
大魔王バーンの魔軍司令ハドラーとの謁見から数日後。
デスカールは取り乱したことをミストバーンに謝罪した後に、直接命令を受けた。
なんでも、ガルヴァスが諸勢力を押し返し始めたらしいが、
その戦術があまりにも残忍なもので、どういう意図か詰問するという役割である。
ガルヴァスの執務室を訪れたデスカールは、社交辞令などなく、
用件をすぐに切り出した。
「単刀直入に伺うがガルヴァス殿。
どのような意図から用いているのか、ご説明いただけますかな?」
その詰問に対して、ガルヴァス=真ザボエラは激昂寸前のいら立ちを抑えていた。
普通の相手だったら、
だが、相手は大魔王の側近である、ミストバーンの懐刀として名高いデスカールだ。
あまり無下にすることもできず、返答を考えていた。
戦いに次ぐ戦いによって、大量の屍が転がる魔界において、
溢れかえる
そうガルヴァス=真ザボエラは嘯いていた。
死者を操る
植え付けられた死体は、意志も何もなく特攻するだけの存在ではあるが、
剣であるとか牙や爪を食い込ませ、ゴムのように取り込み武器などを奪う。
そして、そのまま相手に掴みかかり、
これによって魔界での大魔王勢力は、各戦線で敵を押し返すことに成功はしている。
だが、あくまでも自分の力で戦いたいザングレイからは、
とても強い不満の声が上がっている。
さらに親ガルヴァス派だったはずのメネロからも、
部下の士気が下がるから控えてもらえないかという苦言を呈されている。
魔界の強豪たちはこの戦術を卑劣・外道のやり方として、
大魔王バーンを討つべしとの謎の機運が高まり、
勝つには勝っているが大魔王領の包囲は一切緩まっていないのだ。
敵の死体だけを使えばまだ良かったのだが、
大魔王軍内部の士気を下げる事件が起きてしまう。
ガルヴァスは"死んだ後でも役に立てば本望だろう"そう
味方の死体であっても魔法玉を植え付け、
特攻兵器に変えてしまったのだ。
それが知られてしまったためか、大魔王陣営内部でも、
自分も
そう考え、大魔王軍に所属する魔物たちの離脱が相次いでいる。
詰問に来たデスカール自身もアンデッドであることは確かだ。
彼以外にも多くのアンデッドモンスターが、大魔王軍には所属している。
しかしながら、彼らは自由意思を持ち、己の考えで動き、行動しているのだ。
ところが、
自由意思のない、まさしく動くだけの屍として、
特攻兵器にされては立身出世以前の問題だ。
残酷であっても勇猛で、己の力を頼む魔界の魔物たちですら、
鼻白む外道なやり方が、
デスカールは憂慮すべき事態だというミストバーンの懸念を受けて、
ガルヴァスに彼の代わりに用件を告げに来たのだが、
「ワシ……おっと、私は大魔王バーン様から任じられた、
私に何か言いたいのであれば、バーン様直々の命令でもない限り聞くつもりはない」
そう言ってのけ、デスカールとの面談を打ち切ってしまった。
待つように声をかけたが、仕事が忙しいと邪険にしてガルヴァスは去ってしまう。
デスカールは強い違和感と困惑のただ中にいた。
ガルヴァスは、尊大さと短気な部分はあったが、ここまで無体な人物ではなかった。
元より彼はハドラーに何かあった場合は、魔軍司令を務めるべく存在している。
斯様な重責を担う人材であり、非常に有能な男であるのだ。
話は通じるし、無暗に権限を振りかざすようなことはしないタイプだった。
"やはり、あのガルヴァス殿はなにか違和感を感じる"
妙なひっかかりと覚えたデスカールは、
さらにガルヴァスの額を飾る見慣れぬ水晶の存在を思い出した。
"あの水晶、歪な魔力の流れを感じたが。
ガルヴァス殿はあの手の飾りは嫌いなはずなのに、おかしいのではないか……?"
大魔王バーンに関わる事以外は、冷静に判断できるデスカールは、
ガルヴァスに何があったのか気になり、まずは周辺から情報を集める事にした。
百獣魔団長に決まったザングレイと、妖魔士団長に選ばれたメネロを迎えに行き、
魔界でガルヴァスとの付き合いが長い彼らから、直接話を聞くという選択を取った。
そして、ガルヴァスの言い様から話の続行は不可能だと判断。
デスカールは地上の
二人を連れて魔界を後にすることにした。
この時のデスカールの決断は、後で称賛されることとなる。
なぜなら、彼がザングレイとメネロを地上へ連れてゆかねば、
百獣魔団長と妖魔士団長を、一気に失う可能性もあったからだ。
地下にある超魔生物の研究施設。
その奥底には、秘密の部屋があり、ザムザ一人がその研究に携わっている。
そこにあるのは、かつてない規模の暗黒回廊だ。
幾つかの装置を経由し、
1mほどある巨大な黒魔晶が坐している。
その内部には異世界の魂を加工し、膨大な魔力としてため込んでいた。
片っ端から異世界の魂を集めているザムザだが、
ガルヴァスの姿を見て急ぎ駆け寄って話しかける。
「父上。このような強大すぎる魔力、このまま溜めておくのは危険かと……」
危険性を進言するザムザに対して、ガルヴァスの姿をした真ザボエラは激昂して殴りつける。
肉体を得てからのガルヴァス=真ザボエラは以前より獰猛であり、
息子を強靭なガルヴァスの肉体で簡単に殴りつけてくるのだった。
そのせいで、ザムザは青あざができ、腫れあがった顔を晒し、
痛々しい姿をしていた。
「このワシに口答えするかこの間抜けめ!
お前は言われた通り魔力を貯め込んでおけばいいのだ!」
数発蹴りつけた後、怒りを収めた真ザボエラは額の水晶を指差して話始める。
ザムザは己に
ガルヴァス=真ザボエラの目につくように回復すれば、
難癖をつけられてまた殴られるからだ。
「ワシの額の水晶は、この巨大な黒魔晶と繋がっておる!
ワシは無限に等しい魔力を得て、超絶の魔法力を以て君臨することがかなうのじゃ!
大魔王はいま眠りの病に取りつかれているという。
十分な魔力を得たら、排除してワシが大魔王になってもよいな!!
キィ~ヒッヒッヒ!!!」
ザムザは力に取りつかれた父の姿に愕然としてしまった。
真ザボエラは、権力欲を持っており、己を当時の魔王ハドラーに高く売るつもりだったが、
その時はまだ
ザムザは心の奥底に、父に認めてもらいたいという気持ちがある。
だが、ザムザの功績である超魔生物の研究を奪われ、己の生み出したものだと、
かつてのハドラーに対して披露された際は、流石に憤りを覚えた。
だとしても、親としての父を慕う感情が、ザムザには深く流れていた。
ザムザのその気持ちはあまりにも悲しいものではある。
そんなザムザが子としての父を慕う気持ちがあったとしても、
現在手を染めている父の研究に対しては恐怖が上回ってしまう。
あまりの魔力に驚き計測した際に、空間への歪みを検出したからだ。
報告したガルヴァス=真ザボエラの対応は、かつてない魔力を集めれば、
空間が歪むくらいは起こると一顧だにしなかった。
「作業を続けろザムザ。お前はワシの道具じゃ。
かつて言うたであろう。知識と力を身に着けてワシの役に立てとな。
道具として役に立てぬのであれば、貴様は放り捨てるまでじゃ。
よーく覚えておけよ」
血も涙もない言葉を実の子に叩きつけ、去っていく真ザボエラ。
あまりにも酷な言い様に呆然とするザムザだが、
その時、地上の隠れ家に置かれた手紙を思い出す。
"ザムザよ。ワシはある研究の為に一旦魔界へ戻る。
お前は己の研究を続けるように。このアジトは自由に使えばよい。
留守は長引くかもしれぬが心配は無用じゃ"
父の筆跡で書かれた言葉。
記憶装置に宿った真ザボエラは、すぐに焼くように言った。
その後、ザムザは己の記憶装置に宿った、父を名乗る存在の命令にずっと従順に従っていた。
かつてない危地に陥った父をサポートすることで、
父がザムザを認めてくれるのではと考えて……。
しかし、その間、ずっと心の奥底にあった、泥のような疑惑が付きまとっている。
──本当にそれは、父であったのか……?
子供の頃の薄っすらとした記憶がある。
当時、魔界から地上へ逃げて来て、父は研究の為外出が多かったが、
物心がつくまでの間、父は自分に優しかった記憶がある。
母は死に、命を狙われているから、
地上へ落ち延びたと説明された。
だが、いずれ必ず魔界に戻る。それが父の口癖だった。
父は出かけては戻るたびに、ザムザを撫でてくれた記憶がある。
真実はそうではない。
ザムザが受けていたのは、父からの優しさではないのだ。
真ザボエラは地上で様々な書物に当たり、己の呪いを解くための方策を探していた。
流石に分別が付かぬザムザを正面から罵倒したり、殴りつけたりはしなかったというだけだ。
ただ、戻るたびに幼少のザムザは泣きもせずにいることを、
単純に褒めただけだったのである。
もちろん、そこには将来自分の手足になる存在を、
無下にしても意味がないという打算もあった。
真ザボエラが呪いを解くのに行き詰まった頃、
少年に成長したザムザが、研究面で頭角を現しだしたのだ。
己の呪いは解けない。
息子は自分の才能を超える片鱗を見せる。
真ザボエラは嫉妬のあまり、ザムザを何度か殺そうと考えたが、
ある日、ザムザの研究を我がものとすればよいと考えた。
我が子の成果は父である、己の成果だと……。
だが、感情は抑えきれず、ザムザへの冷淡な態度にそれは現れてしまった。
そんな真ザボエラの内面は知らぬザムザは、
いつか幼いころの優しい父が帰ってくるのではないかと考えた。
それが殴られ、罵倒されても真ザボエラに付き従った、ザムザの父への愛情だった。
ザムザが渇望した優しさの片鱗が、手紙にはあったのだ。
ガルヴァス=真ザボエラが去った後、ザムザは考えた。
やはりあの父はおかしい。
ヨミカイン魔導図書館にいるザボエラに会ってみるべきでは……と。
真ザボエラからは、かつての父の姿をした存在は、
まったく別のものであり敵だと言い含められてきた。
実験に失敗して、邪悪な精神生命体に肉体を乗っ取られてしまったと主張していたのだ。
その言葉を信じたザムザは、この5年ほどの間、父だと思っている記憶装置の中の存在に従った。
しかし、肉体を得てからの真ザボエラの傲慢さは、ザムザの許容範囲を超えてしまった。
強靭なガルヴァスの肉体で平気で殴りつけてくる。
意見をいうだけで、筆舌に尽くしがたい罵倒をしてくる。
さらに研究の危険性を訴えても、一顧だにしない。
かつても危険な研究を行った事はあったが、
リスクとリターンを考えて、リスクを取ることはなかったのだ。
やはり、
その結論を掴み取ったザムザは、更に一つの閃きを得た。
父だと思っていた記憶装置の中の存在は、偽物であり邪悪な精神生命体とはそやつでは、と。
"ヨミカイン魔導図書館にいる存在こそが、父なのでは?"
その考えに至ったザムザは、すぐに行動を起こした。
ザムザは
そして、黒魔晶にこれ以上異世界の魂を貯め込めぬよう、
暗黒回廊を作動させるキーになる魔法玉を取り外した。
ザムザ177歳。
初めての父に対しての反抗であった。
独自設定
屍操呪法(しそうじゅほう)
劣化超魔ゾンビです。
超魔ゾンビに至る過程で、閃華裂光拳の存在と竜魔人バランというデータが必要だと思ったので、
中の人がダメージを受けない生体パワードスーツという方向性は外しました。
死体を動かして相手の武器を使用不能にして、その狼狽えた一瞬で
非人道兵器という形で落ち着きました。
最初、屍肉呪法という名前にしたのですが、
途中で「あ、これスレイヤーズの屍肉呪法(ラウグヌト・ルシャヴァナ)だ」
と思い出し屍操呪法に変更しました。