ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
パプニカのマトリフ殿と、デルムリン島にいるアバン殿に、
ハドラーが急襲してきた後すぐにメタッピーを送り知らせておいた。
現在は精神体であることを付記し、対処について一筆書いてある。
二人とも
ミストバーンの様子からして、あの状態のハドラーが単身でうろつくことは、
ありえなさそうではあるが……。用心に越したことはない。
その後、私自身はケインと共にヴィオホルン山にやってきていた。
何をしに来たのかと言えば、ハドラーの精神体が急襲してきた為、
地底魔城を今一度、調べ上げておく必要を感じたのである。
なぜかと言えば、あの時のハドラーは私をスカウトに来た。
だが、それは叶わず、妖魔士団長の席が空席になっているのだ。
恐らく適任者を探すのだろうが、人は身近な所からまず考える生き物である。
何が言いたいかというと、ガンガディアを禁呪法でアンデッドにして、
妖魔士団長に就けるかもしれないという危惧があるという事だ。
私がそう考えたのには理由があった。
自明のことではあるが、ハドラーは禁呪法を得意としている。
バルトスとグランナードを創ったことから、それは分かっている事だ。
歴戦の戦士六名の腕をつけることで、強力な剣士としての強さを誇る地獄の騎士。
そのような強力なアンデッドを創り上げる禁呪法を、ハドラーは習得している。
だが、例に出しはしたのだが、バルトスを復活させるという事はありえない。
ハドラーにとってバルトスはアバン殿に地獄門を通らせた裏切り者であるからだ。
わざわざ、自ら処刑した存在……、
さらに"裏切り者"を甦らせようとはしないだろう。
となると、自分の息のかかった存在を妖魔士団長に就けたい場合、
私がハドラーであったらすぐに頭をよぎるのは、かつての腹心であったガンガディアの事だ。
しかしながら、彼は死んでしまっているし、たとえ
10年の歳月が経った彼を蘇生できるとは思えない。
そうなると、ハドラーが出来る事はアンデッド化の禁呪法を使い、
ガンガディアを腹心として復活させる可能性が出てくるのだ。
原作で魔王軍六大軍団の内、百獣魔団・妖魔士団・氷炎魔団は、
ハドラーの息がかかっていた子飼いが団長だ。
つまり、ハドラー派閥だったと言ってもいいだろう。
現状、妖魔士団長として
百獣魔団長にクロコダインを勧誘するのも無理。
となれば、氷炎魔団長にフレイザードを据えたとしても、
ハドラー派閥の軍団長が少なすぎる。
そのクロコダインにもハドラーの精神体が勧誘に来たという話をして、注意を喚起しておいた。
勿論、ハドラーの勧誘には乗らないし、もし来たら効くまで殴るとは言っていたが。
話は逸れたが、ハドラー派閥が六大軍団長に少ない事を危惧した場合、
かつての部下たちを蘇生、もしくはアンデッド化をもくろむ可能性が出てくる。
もっとも、原作においてデルムリン島でブラス老に再会しても、
まったく無反応だったので、彼を勧誘しに来ることはないだろう。
再度いうが、反逆者を部下として招かないだろうという事で、バルトスは除外。
となると、本命はガンガディアのアンデッド化。
更に言えば、可能ならキギロをなんらかの形で蘇生する可能性もある。
彼は種子一つから蘇った存在だ。
どこかに分身を残しているかもしれない。
そう考えて地底魔城へケインと共に調査しに来た。
まず我々が訪れたのは、マトリフ殿とガンガディアが戦ったコロシアムだ。
思ったより荒れてはいないが、逆に虫などもおらず、
死体や骨が散乱している感じではない。
「大分、寒々としておるのう、ケイン」
「デストロールの死骸もなにもありませんね
在野のモンスターに食べられてしまったかもしれません」
「なにせ10年の月日が流れておるからのう……」
最終決戦において、
火炎袋を撃ち抜かれ、燃え尽きてしまったガンガディアであるが……。
丹念に探した所、既に骨も遺骸も残ってはいなかった。
キギロについては、地底魔城の階段をくまなく探し、
彼が罰として置かれていた、地下への階段を丹念に探して回った。
キギロのものか判別はつかないが、枯れ枝や枯れ葉が落ちていたので、
ケインと手分けして
その後、グランナードがいた一本道を通り、地獄門の方も見て回る。
バルトスをアンデッドとして再構成できれば、ヒュンケルの説得が楽になるかもしれない。
そう考えて地底魔城、魔王の間に続く地獄門の前にある回廊も調べて回ったが、
最後灰となってしまった地獄の騎士バルトスの遺品は何も存在しなかった。
「こちらも何もありませんね
「ある程度予想はしておったが、ふむ……」
途中、魂の貝殻を拾っておいた。
何度か訪れたが、他にやることがあったために回収を忘れてしまっていたのだ。
極めて重要なアイテムであり、何かの拍子に破壊されてしまうと、
ヒュンケルの説得が不可能になってしまう。
厳重に保管しておいて、彼を発見したら魂の貝殻からのメッセージで、
翻意を促してみるべきだろうな。
取り敢えずハドラーが利用できそうな、かつての部下の遺品がないことは確認した。
我々はレイラ殿とグランナードが戦った辺りまで来たが、
急にケインが私に注意を喚起してくる。
「
「ほう、どのような気配かのう?」
「
大分、弱い反応でございまして」
「ふむ……興味深いのう」
元々、ケインはかつて真ザボエラが作り上げた禁呪法生命体だったが、
お喋りすぎて封印されてしまっていた。
真ザボエラが作った禁呪法生命体なのに、まったく性格が似ていない事が気になり聞いた所、
自分の性格に似た禁呪法生命体は信頼できなかったようで、
作られるときに性格を変えるアイテムを一緒に合成されたらしい。
切れ者になる"あたまがさえる本"であるとか、頑固者になる"いしのカツラ"のようなものが、
どうやらどこかにあって、真ザボエラはそういうものを使って、
ケインの性格を自分とは違うものにしたようだ。
などと考えていた所、この花崗岩に囲まれた道を探索しているケインが呼ぶので、
私は彼が手というのか触腕というのか、それを振る方へ歩いてゆく。
なんとそこには、見たことがある顔が刻まれていた。
「お前さん、もしやグランナードかのう?」
「……ヒュー~~♪ ひ、人違いじゃねぇか?」
「ワシはレイラ殿と知り合いでな。確認してもらおうかのう?」
「ちょ、待ってくれよ! 細々と生きてるだけなんだぜ、もうここから出れねぇし!」
必死になって弁明するグランナード(顔だけ)が、事情を説明してくれた。
レイラ殿に禁呪法生命体としての
砕くために使われた杖が神の加護があるためなのか、
微量の生命力を残して助かったらしい。
彼が産み出された花崗岩が周囲にたっぷりあったのも功を奏して、
半年ほどで顔だけ復活したそうである。
この花崗岩がある範囲では、ある程度動けるらしい。
「……なんてこった。あの戦いからもう十年も経っちまったのか」
ざっと何があったのかを話すと、彼は驚愕しながら嘆息するという器用な事をしていた。
「ところで、お前さんはハドラーとの繋がりはどうなのかのう?」
「ああ、もう何もねぇよ。
いや、ハドラーからの魔力供給は絶たれちまったぜ」
「ふむ……そうかね」
話をしている間に感じたが、グランナードが穏やかになっている印象を受けた。
口調こそ乱暴ではあるが、レイラ殿と戦った時に、
相手への攻撃性を前面に出していたグランナードとは違う。
「しかし、大人しくなったのではないのかね、グランナード?」
「あのねーちゃんから何を聞いてるか知らねぇけど、
十年も経てばオレも落ち着くさ。そりゃーな」
新生六大将軍がいる時点で、この世界は原作漫画のダイの大冒険とはちょっと違ってはいる。
そして、私という異分子がいるおかげで、かなり世界の歴史が変わっていくだろう。
原作通り、ヒュンケルが不死騎団長になるか分からないし、
フレイザードがやってきてヴィオホルン山に活を入れて、
地底魔城をマグマに沈めるかどうかも定かではない。
だが、その危険性があるとして、この男をこのままにしておくのもなんだ。
袖すり合うも多生の縁ともいうし、一つ提案をしてみよう。
「グランナードよ。
ワシから一つ提案があるのだが、受けてみる気はないかのう?」
「なんだ? 地底魔城の管理をしてくれとか、そーいうことか?」
「いや。ここから出て、ワシらの仲間にならぬかな。
一つ宛があるのじゃよ。お前さんの肉体を作って、動けるようにしてやってもよい」
私の提案にグランナードは思案したが、受ける事を決断した。
彼曰く、"殺そうと思えば幾らでもできるのに、別にそんな素振りもないからな。
アンタよりいい奴が来る保証もねぇし"という事だった。
私は収束させた
呪法で私と魔力のラインを繋いで死なぬようにして、
さらに
大地の精霊にグランナードの事を頼みに行く。
地上に仮の神殿が作られており、島のモンスター達が、
ありがたがって供え物を置いたりしているそうだ。
地下の神殿も整えられていて、腕を組んで立つ大地の精霊は、
クロコダインより大きな巨体もあってか、威圧感がある。
「静かじゃのうグランナードよ」
「いやぁ……そりゃ、オレも地属性モンスターの端くれだぜ。
この旦那が途方もない、オレの上位者だってわかるってもんよ」
尋ねるとグランナードは同じ地属性の存在として、
大地の精霊に対して畏怖を抱いているようだ。
その大地の精霊が、低く響く声で私に語り掛けてきた。
「ザボエラよ。彼の核にする魔法玉に、お前の魔法力を注いでくれ」
「それくらいお安い御用ですぞ」
現在のグランナードの状態は、氷河魔人や溶岩魔人のような、
エレメント系のモンスターと同じらしい。
それを精霊よりに作り直すことで、大まかに言えば大地の精霊の眷属になるそうだ。
その作り替えるためのエネルギーとして、私の魔法力を使うという事である。
全てを大地の精霊に任せて、私は一旦ヨミカイン魔導図書館へ戻った。
一週間後、パプニカにボリクスの法術で編んだ服が数着できたというので、それを取りに行く。
なぜか私の法衣も用意されており、ありがたく受け取っておいた。
すると別室でレオナ姫と水の精霊が待っており、
ボリクスに手渡しして話をしたかったと拗ねていた。
だが、ボリクスはいま、ギュータで剣術に熱中している所である。
「今度、ギュータにあたしも連れて行ってよ、ザボエラさん。
一回連れて行ってもらったら、その後は自前の
「父上やマトリフ殿から許可を得てからにしてくだされ。
それをレオナ姫にお教えして、怒られるのはワシですからな」
それまでフヨフヨと浮かんでいた水の精霊が、
我々の会話に口を挟んできて、レオナ姫に注意を促した。
「そうよ、レオナ。あなた、こないだもマトリフさんに怒られたじゃない」
「あーもーうるさいなぁ水の精霊はー」
すっかり、レオナ姫のお付きの魔法生物のようにである。
膨れていた姫だが、真新しい法衣をまとう私の姿を見て、話題を変えた。
「青を基調とした法衣も似合うじゃない、ザボエラさん。
法術で編んだものだから、激しい戦いに巻き込まれやすいあなたに、
丁度いいんじゃないかしら?」
「まさか、ワシの分も仕立てていただけるとは思いませなんだが……」
「あなた、けっこう戦いのただ中にいる事が多いでしょ。
魔法使い同士の戦いだったら、パプニカの法術で編んだ服は有効よ」
一応、いままでのボリクスに仕立ててもらった服の代金を教えてもらったが、
軽く城が買えるくらいの値段らしい。
私が若干慌てると、悪戯っぽい表情のレオナ姫が、
"恩を売りたいから無料よ"という事をこっそり教えてくれた。
「ザボエラさんはいい人だから、貸しにしておけば頼みごとがしやすくなるって、
うちの師匠が言ってたわ」
「左様でしたか。無料だったことを喜ぶべきか、悩みますのう」
そういった時、レオナ姫が急に大声で"思い出した!"と叫んだ。
何事かと尋ねてみると、名前についての話らしい。
「そうそう、水の精霊に名前をつけたいんだけど、何かいい由来はないかしら?
ザボエラさんに水に因んだ、古い言葉とか教えて欲しくて」
ほう。水の精霊に名前をつけたいという事か……。
原作でも固有名は無かったが、つけるとしたら水の精霊の加護を受けた、
オチェアーノの剣にちなむのがよいだろうか?
確かイタリア語で大洋という意味で、英語にするとオーシャンという言葉だったはず。
その辺りを思い出して、レオナ姫にオチェアーノという名を提案した。
「へぇー。いいじゃない。
神秘的な言葉で素敵だわ! ありがとうザボエラさん!」
「オチェアーノですか。私の知性を示すような格調高い名前ですね!」
「……あたしがあなたを呼ぶときは、オーチェって呼ぶわ。
ちょっと、オチェアーノはカッコよすぎるし」
「え、待ってください、レオナ!」
どうやらレオナ姫に弱いのは変わらないようだ、水の精霊……おっとオチェアーノは。
そう思っていたら、水の精霊が大地の精霊から、ザボエラに来てほしいと連絡があったという。
恐らくグランナードの件だろう。
私がそう説明したら、レオナ姫が面白がってついてくると言った。
私の名前を出したことで、デルムリン島行きが、
簡単に許可された事に、レオナ姫は首をひねっていた。
あまりにもあっけなく外出許可が出る事を訝しがっている。
ポンと手を叩き、何か閃いたかのようにレオナ姫がぽつりと口にした。
「……今度からザボエラさん引率っていえば、自由に出られるんじゃ……」
不穏な話をしていたので、一応釘は刺しておく。
デルムリン島に到着すると、ダイと戦っているグランナードの姿が見えた。
以前のまだら模様の花崗岩のような姿ではない。
模様のない白色の大理石のような体を晒しており、顔は若干凶悪な感じだが、
表情から邪悪な雰囲気が抜けている為か、印象が変わっている。
ダイの大地斬を、地面から岩を隆起させて防ぎ、海破斬で受けたダメージもすぐに岩で塞ぐ。
手を地面につけて石を吸着して、伸縮自在の蛇腹剣として振るう攻撃で、
ダイは攻めあぐねていた。
横で眺めているバラン殿に聞くと、三日前に大地の精霊から話があり、
グランナードの肉体が完成したので、身体を慣らす為、
訓練に付き合わせてほしいと言われたらしい。
「グランナードは柔軟に学んでおります。
岩を使った様々な攻撃と防御を行って器用に戦いますな」
バラン殿からも高評価を得ているようだ。
よかったなグランナードよ。
「攻撃手段が多彩なので、ダイの訓練相手として、理想的です。
このままデルムリン島にいて欲しいくらいですよ」
「ふむ。なんなら、ワシがたまに連れて参りましょうかのう」
「ご負担でなければお願いしたい。
地上の要のようなあなたに用事を増やして申し訳ないのだが……」
随分と評価されているなと思いながら、私はグランナードに声をかけた。
そろそろお暇してヨミカイン魔導図書館へ向かおう、と。
「ダイ、ちょっと待ってくれよ。オレの迎えが来ちまったみたいだぜ」
「グランナード行っちゃうのか。
おれの方が負けてるから、勝ちたかったのになぁ……」
負けん気が強いのか懐いたのか、ダイが残念そうにグランナードに話しかける。
「なに、すぐ帰らずともよいじゃろう。少し逗留させてもらおうかのう」
「え、いいのか、ザボエラの爺ちゃん!!」
嬉しそうなダイ以上に嬉しそうなグランナードは良かったのだが、
模擬戦に集中しすぎていたせいで、レオナ姫が来ている事に気づいていなかった。
その事にムクれているレオナ姫を相手に、ダイが謝っているのを姿を見て、
グランナードはゴメちゃんと一緒に大笑いしていた。
そのグランナードには、かつての凶暴さの影は見受けられない。
ただ、一応、後で明らかになるよりも、先に話しておくべきだろうと思い、
ネイル村でレイラ殿に事情を説明しようと言った時のグランナードは、
まるで小石かのように小さくなってしまっていた。
心配したダイが一緒についていって、おれも謝るよと訳も分からず言ってくれたので、
グランナードは勇気を振り絞ることになることだろうが……。
こうして、ヨミカイン魔導図書館に、新しい住人が増える事となった。