ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
*呼称について
ザボエラ……主人公の事です。
真ザボエラ……現在、ガルヴァスの肉体を乗っ取った、本物のザボエラの事です。
昨年、デルムリン島でグラコスと戦った際に、苦戦した事を教訓にして、
今回は戦力を充実させるために、ギュータへ立ち寄った。
クロコダインとロン・ベルク殿を誘うためである。
残念ながら声をかけようと思っていたクロコダインは留守だった。
ロン・ベルク殿が作った新しい鎧が完成したらしい。
喜び勇んでガルーダを呼び、ロモスのブロキーナ老師の下へ、
修行に行ってしまったということだ。
我々はロン・ベルク殿の工房を訪ねた。
一仕事終えたロン・ベルク殿が、ギュータの鍛冶の達人たちと酒宴を開いていたので、
事情を説明したところ、顔色を変えて同行すると申し出てくれる。
星皇剣を腰に下げ、コップの水をピシャリと顔にぶちまけて、
"酔いは冷ました"と言い、我々の方に歩いてくるロン・ベルク殿。
「オレは完成した武具を献上しただけだからな。
第七宮廷という、客を招くための荘厳な御殿しか知らん」
「研究施設は第四宮廷です。そこまでは私が
疲労でふら付くザムザを竜水晶が支える。
心配げに見つめるボリクスと、
そんなザムザに優しい言葉をかけてくれるロン・ベルク殿。
「無理はするなよ若いの。ザボエラの息子に死なれては困る」
困惑しつつも素直に頷くザムザ。
我々は彼の
ザムザには内部の構造を聞いておいたので、そのまますぐ竜水晶に頼んで、
ヨミカイン魔導図書館へ戻ってもらう。
ザムザは既に竜水晶に肩を借りており、
竜水晶が"話は手短にしろ"という無言の圧力を放っている。
「父上、お気をつけて……」
「お前はヨミカイン魔導図書館で、体を治すことに専念するのじゃ。
竜水晶、頼むぞ」
「うむ、我に任せてくれ」
竜水晶はドラゴンに変じて、ザムザを背に乗せて
気配がするので見てみると、魔界の魔物たちの姿が見える。
「来たぞ。どうやらお出迎えのようだ」
ロン・ベルク殿がそう言って抜刀して、ボリクスと一緒に肩を並べて戦う。
中衛としてグランナードが、二人の邪魔にならないようにサポートや敵の足止め。
私が後衛として、彼らの戦闘範囲外の敵を、呪文で攻撃して削る。
その私をケインがカバーしてゆく。
たったこれだけで第四宮廷の中ほどまで来れたのだが、異変はそこで起こった。
ボリクスとロン・ベルク殿が気分の悪さを訴えたので、
ケインが大気を調べた所、目に見えぬ毒が撒かれていたという。
私は深呼吸して毒を吸い込み、その種類を特定。
特定した毒に対して、耐性を作る薬を調合。
二人にそれを爪で刺し、先へ進んで行く。
「あー、もうなんやアイツ! 叩き潰したるから正面から戦えや!」
「それができんから策を弄するのじゃろうがな……」
道中、ボリクスがガルヴァス=真ザボエラのやり口に文句をつける。
私が気にしているのは、これは時間稼ぎではないかということだ。
そう考えていると、ケインが私に話しかけてきた。
「どうしますか、
もしも、異なる毒を、フロアごとに撒いている場合、先へ進むことは、
ボリクス様とロン・ベルク様にとってリスクが大きいかと存じます」
「確かにそうじゃな……」
マァムがやっていた
本人がその使い手でないと無理だろう。
話を聞いていたロン・ベルク殿がグランナードを見て、一つ提案する。
「……グランナード。お前、この第四宮廷の建物に干渉できるか?」
「いけそうっすけどね……。ちょい、お待ちを、旦那!」
返事をして拳で床石を砕くグランナード。
砕いた破片を眺めたり、齧ったりしてからロン・ベルク殿の方を見て説明を始めた。
「なかなか上質な大理石っすね。あとは、魔鉱石を所々使ってる感じですわ。
十分、オレの手で干渉して、変形できますぜ旦那」
そう言って、床石を変形させて、椅子を作り出すグランナード。
それを見たロン・ベルク殿は、こう注文した。
「奥へ行くまでの間、先行して壁に穴を空けて回ってくれ。
毒が籠らぬようにしてやれば、無力化できるだろう」
「なるほどね! そいじゃ、まずは、いっちょ……やってみますか!」
グランナードが触れた壁に大穴が空き、外の空気が入ってくる。
「やるやんグラン!」
「へへへ、朝飯前って感じだぜ姐さん!」
ケインが毒を感知しながら進み、グランナードが壁に穴を穿ち、空気を換気する。
そしてとうとう、ザムザから聞いていた、秘密の研究室への入り口の隠し扉に辿り着いた。
ここへ来る途中に見たものについて、ボリクスが不愉快さを隠さず、
ガルヴァス=真ザボエラを批判する。
「なんや、アイツ、自分の部下を逃がさへんかったんか……」
「部下ごとワシらを殺せれば、御の字と言ったところかのう」
「胸糞悪いやっちゃな!!」
途中、何体かの魔界の魔物たちが倒れており、彼らはみな毒で死んでいた。
恐らくはガルヴァス=真ザボエラが、魔界の魔物たちが巻き込まれることを意に介さず、
毒をばら撒き、第四宮廷に充満させた結果、このような惨事に至ったのだろう。
気になるのはこれで、我々を倒せると考えてはいないはずということだ。
無論、そこまで判断できないで錯乱し、毒を撒いた可能性もある。
さきほどもそう思ったが、時間稼ぎをしているのではないかと、
私は推測していた。
本来はデルムリン島やパプニカにも寄りたかったのだが、
ギュータへ寄っただけで魔界へ急ぎ突入したのは理由があった。
あまり真ザボエラに時間を与えては何をするか分からないのだ。
実際、このように毒を撒くような策を講じてきている。
"前回の課題をすべてクリアしてはじめて改良という……!"
さきほど出会った時は慎重さが失われていたが、一旦、冷静さを取り戻せば、
悪魔の頭脳を持つ、優れた研究者としての側面が顔を出すのが真ザボエラだ。
そんな男に時間的な猶予を与えるのは危険だ。
少々、無理をしてもここで倒さねばならんだろう。
そう考えながら奥へ進んで行くと、結界で厳重に閉ざされている扉が現れた。
私がザムザに教わった呪法の封印を解除すると、
研究施設の奥深くへ入っていく隠し通路が現れる。
そこは真っ暗な一本の道であり、生々しい血が床を這いずるように滴っていた。
更に進むと、足が転がっている。
恐らくはガルヴァスのものか? 千切れたのか、足を置き去りにして進んだ跡が見える。
顔をしかめたボリクスが、嫌そうに声をあげた。
「うわ、なんやこれ!?」
「ふむ……」
「ロン、汚いで。触んなや」
まったく気にせず、血の様子を眺めているロン・ベルク殿。
振り向いて、私に向かって言う。
「魔族の血であるのは確かだな。
そのガルヴァスという奴が、奥に逃げこんだのは間違いないだろう」
「別の場所に逃げている可能性もありましたからな。
僥倖というべきか……この奥に武器でも隠しておるのか?」
「ええやん。全部、うちらで倒せば話すむで」
気楽に請け負うボリクス。
私はその言葉に頷きながら、
周囲を警戒しながら奥まで進むと、ひと際広い研究室に出た。
2mほどの巨大な水槽が幾つも並ぶ広い部屋に、異形の存在がそこで待ち構えていた。
「キィ~ヒッヒッヒ!! よく来たものだ。待っておったぞ。
来なければ、ヨミカインまでまた行かねばならなかったわ」
「なんや……アイツ……!」
「化け物だぜ、ありゃ……」
姿を現したガルヴァス=真ザボエラの姿を見て、異口同音に評するボリクスとグランナード。
ガルヴァス=真ザボエラは、
足を失ったためか、下半身を蜘蛛のモンスターに接合したようだ。
失った右腕をトロルかデーモンか分からないが、ゴツイ形の魔物のものにしている。
そして、ガルヴァス=真ザボエラの背後から、
何体もの超魔生物の出来損ないのような魔物が出てきた。
恐らくはガニラスの甲羅で覆われたトロル。
バピラスの羽根をつけたヒババンゴ。
下半身がキラータイガーのオークキング。
かろうじて元のモンスターが何か分かるのがその範囲だけで、後は複数合成しすぎて、
元の魔物がなんだったかまったく分からない姿をしていた。
それが百体以上姿を現す。
大量の超魔生物を率いた余裕からか、こちらを見下すような表情でいい放つ、
ガルヴァス=真ザボエラ。
「暗黒回廊を起動する鍵を渡せ。そうすれば、命だけは助けてやらんでもないぞ」
そう余裕をもって嘲るガルヴァス=真ザボエラに対して、ロン・ベルク殿が抜刀して言う。
「貴様がいうセリフはそれではないだろ?」
抑制が利かないのか、言葉の間に斬りかかる魔物の攻撃を回避して、
次の瞬間には魔物の横にいて、魔物は血煙をあげて地面に倒れ伏した。
首が落とされ、胴から両断された魔物は、超魔生物らしい回復すらできずに息絶える。
「命だけは助けてくださいと、オレたちに惨めに懇願する立場じゃないのか?」
挑発する為か、血が滴る星皇剣をガルヴァス=真ザボエラに突きつけるロン・ベルク殿。
口笛を吹くボリクスと、あっけにとられるグランナード。
恐らく、ボリクス以外はあの動きがどういったものだったか、見えてないはずだ。
対峙しているガルヴァス=真ザボエラもそうだろう。
「おのれぇ! かまわん、殺せ! 殺してしまえ!!」
「
「任せるぞ!!」
ロン・ベルク殿に魔物が突っ込むたびに、血煙をあげて倒れ伏す謎の現象に、
超魔生物と化した彼らですら慄き足が止まる。
超スピードの斬撃を二刀流で行っているだけらしいが、
剣閃が視認できないと、何もしていないのに、
バタバタと魔物たちが倒れているように見えるからだ。
そこにボリクスが剣を構えて突っ込んでいく。
グランナードが、ボリクスのカバーをしながら地面の石畳を制御。
ボリクスが囲まれすぎないように、絶妙な障壁を作り上げている。
私は
ザムザから聞いていた暗黒回廊の場所へ飛んでいく。
ガルヴァス=真ザボエラは勿論止めようとしたが、グランナードが大理石をコントロールし、
地面から無数の石の槍を突き出させて、ガルヴァス=真ザボエラの動きを止めた。
「てめぇの相手はオレだぜ、化け物」
「ただの魔物ごときが、このワシを阻むかぁ!!」
ガルヴァス=真ザボエラの
石の壁を作り出して防ぎ、腕を蛇腹の剣に変えて攻撃するグランナード。
「そんなんじゃ効かねぇよ、なぁ化け物?」
「ワシを見下すな! 貴様風情が!」
その声を背後にして、奥の部屋までたどり着き、
暗黒回廊を発生させている装置までたどり着く。
ザムザからの話では、キーを差して停止した状態で破壊しないと、
暗黒回廊が開きっぱなしになってしまうから注意が必要だという事だ。
私は装置にキーを差した所で、傍らに立つ大きな黒魔晶に気づく。
この中に囚われている地球世界の魂たちを解放しないと、極めて危険だ。
人間の神の残留思念にいわれた言葉を思い出す。
"異世界の所属である魂が、元の世界に戻ろうとして空間に作用し始める。
その戻ろうとする力は空間を締め上げ、いずれ空間が断裂し世界に亀裂が走り始めるだろう。
そうなれば──空間の断裂は全世界規模に及び、
この世界それ自体が引き裂かれ滅んでしまう……"
私は眼鏡に魔法力を集中して、部屋の周囲を見渡す。
この黒魔晶を中心に、世界に亀裂が入っている事が確認できる。
急いで黒魔晶に囚われた、異世界の魂を解放せねばならない。
しかし、
膨大な魂を取り込み大量の魔力を蓄えた黒魔晶の扱いは慎重にせねば。
私は
慎重に丁寧に亀裂を入れる。
黒魔晶を扱うのは初めてだが、いままで多数の魔法玉を加工してきている。
その経験から手を入れたのだが、上手くいったようだ。
青白いエネルギー体──恐らくは魂──が、暗黒回廊へ雪崩を打って飛翔していく。
彼らは恐らく、地球世界へ帰ってゆくのだろう。
最後の魂が暗黒回廊へ去ったのを確認し、キーを回して装置を止め
空間に入ったヒビのようなものは塞がっていないが、流石にこれはどうしようもない。
人間の神の残留思念が、なんとかしてくれるのを祈るほかはなかろう。
後はガルヴァス=真ザボエラを倒せば、人間の神の残留思念との約束も終わると思った瞬間、
ボリクスの危機を告げる大声が私の耳に届いた。
「
ガルヴァスの頭だけが飛んでった!!」
「なにっ!?」
そのトンデモない内容に、一瞬混乱してしまったが、耳の部分からコウモリの羽根を生やした、
ガルヴァス=真ザボエラの首は、こちらへ超スピードで飛来した。
頭から突き出た二本の角で、私を串刺しにするつもりだったようだが、
グランナードが地面から出現させた大理石の壁に激突した。
「ヒューッ! アブねぇな!」
「グランナードやるやん!」
「このくらいなら軽いもんだぜ姐さん!」
超魔生物たちがまだいるので、みなの援護はこれ以上期待できない。
私がガルヴァス=真ザボエラのとどめを刺さねばならんだろう。
私はケインを掲げ、いつでも呪文を撃てるようにしながら近寄る。
すると、潜んでいた超魔生物がその爪で襲い掛かってきたので、
ケインが爪を広げて攻撃を防ぎ、私に声をかける。
「
「すまぬ! 頼むぞケインよ!!」
私はガルヴァス=真ザボエラのもとへ向かう。
大理石の壁を迂回して、異形の首の様子を見ると意識がない。
近づきすぎて奇襲を受けては危険なので、距離をとって有無を言わせず
だが、その瞬間、
焼けこげた悪魔の目玉がそこに現れた。
「こ、これは……ッ!?」
してやられたと思った瞬間、天井に張り付いていたのか、
急に上から現れたガルヴァスの頭が突撃してくる。
ガルヴァス=真ザボエラの額にある水晶から光が発せられたのと、
私が
「
「
ケインとボリクスの絶叫を聞きながら、私は意識が遠くなっていくのを止められない。
そのもどかしさに歯噛みしていたが、すぐに抵抗ができなくなってしまった……。
意識が戻った時、私は遮る木々などもない、無人の荒野にいた。
敢えて例えるなら、魔王ハドラーとアバン殿が戦った、パプニカのウロド平原に似ているか……。
魔界ではない事は確かだが、一体ここはどこなのか、誰かいないだろうかと周囲を見渡す。
すると、300年前の姿の真ザボエラが同じように周囲を見回しており、
私の姿を確認した後、下卑た笑顔を浮かべて笑い出した。
独自設定
大魔王城(バーンキャスル)
魔界の宮廷の名が無いので、第八宮廷までは確実にあるということですから、
かなり巨大な居城が気づかれているのだと思って名称を設定しました。
以前も書きましたが、
もう一度書いておきました。