ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
*呼称について
ザボエラ……主人公の事です。
真ザボエラ……現在、ガルヴァスの肉体を乗っ取った、本物のザボエラの事です。
やはり、見間違えではない。
300歳ほど若い、背の高い姿の真ザボエラが立っている。
「成功したわ! ワシは呪いから解放されているぞ!!
キィ~ヒッヒッヒ! 晴やかな気持ちじゃわい!!」
この荒涼とした荒野のような場所は、精神世界的なモノだろう。
二人とも魂の姿で立っているのだろうが、呪いがない真ザボエラは若返り、
呪いを受けている私は年老いた姿のままか……。
「キィ~ヒッヒッヒ! 事前の準備というやつはしておくべきじゃのう!
まさしく功を奏したというものよ!」
「それは、どういうことですかな?
人類の神の残留思念は、あなたは一度しか憑依できぬと言っておりましたぞ。
ガルヴァスの肉体を奪って、それでお終いではなかったのですかな?」
人は自分が知っていて、相手が知らないという事に優越感を示すものだ。
特に知識を多く抱えた者ほど、知らない者に対して、
長々と講釈をしたがるのだが、これは知識階級の悪癖と言ったものだろう。
恐らく自分が有利だと思っているこの状況で、
虚栄心の強い彼ならば、こう問いかければ喋り出すのではと思ったが……?
「貴様はワシに偉そうに命じてきた、人間の神の残留思念に会ったんじゃろう?
まぁ、貴様もその残留思念とやらも、底が浅い。浅すぎるのう!
キィ~ヒッヒッヒ!!」
興が乗ったのか、高笑いしてこちらを指差しながら話を続ける。
「貴様に肉体を奪われてから、5年ほどの歳月があったのじゃ。
状況を考察し他者の肉体を奪えるのは、あと一度だけだと理解できておったわ。
しかし、他人の肉体ならばともかく、自分自身の肉体とは縁がある!」
両腕を広げて誇らしげにいう真ザボエラ。
もっとも、肉体を奪われてとは人聞きが悪い。
自分の実験の失敗を、私のせいにされては困る。
「クックック……。
解決できぬ問題は、己の得意分野で当たるべし。
ワシは自分の体に対して、精神を戻す呪法を完成させておいたのじゃよ」
「つまりあなたが額から放った光こそが、己の肉体に戻るための呪法……
というわけですかな?」
「そういうことじゃ! もっとも誤算があったがのう!
貴様を弾き出せるかと思ったが、図々しく肉体に居座っておったことよ!」
なるほど……。彼は本当に
そんな人物に5年の月日を与えれば、
神すら予想しえぬ呪法を完成させうるとは……。
「いやはや、驚きましたぞ。
人間の神の残留思念話から、このような事は、
ありえぬことと聞いておりましたからな」
「キィ~~ヒッヒッヒ~ッ! ありえぬ、などということはありえぬのだ。
ここが違うのじゃよ、ここがな!!」
自らの頭をコツコツ叩きながら、狂喜する真ザボエラ。
しかし、神の予想すら覆す力があるのなら、
もっとそれを息子の為に使えなかったのか?
私のそんな感想を置き去りにして、真ザボエラの滑らかな弁舌は進んで行く。
「さて、ワシの肉体を返してもらおうか。
グレゴリーアの呪いを肩代わりした貴様が、呪いと共に消え去れば、
300年ほど若返った肉体が戻ってくるわ!」
「それはできかねますな。
私はあなたのわがままでこの肉体に入りました。
その後、多くの人々に出会い、友誼を育み、
地上にも愛着がでましたのでな……お断りしますぞ!」
「盗人猛々しいとはこのことよ!
寄生虫でしかない貴様が何を言おうが、ここで滅ぼしてくれよう!」
「一寸の虫にも五分の魂といいましてな。
手向かいさせていただきましょう……!!」
私より頭二つ分以上背が高く、300歳若い姿の真ザボエラは、
私を嘲りながら吐き捨てた。
紳士的な風貌であるが、嫌らしい笑みを浮かべているので、
威厳のカケラすらない。
仮面をつけていたというが、それは正しい判断だったと言えるだろう。
こうも嫌悪感を催す表情をしていたのでは、この顔を晒している事で、
味方の士気を下げてしまった事だろう。
「この姿のワシが、老いて小さく醜いそんな姿の貴様に……!
負けることはありえぬ!!」
「さて、あなたの思う通りにはなりますまいぞ」
「ほざけ、偽物めが!!」
絶大な魔法力をたぎらせる真ザボエラ。
己の両肩に二つの魔法陣を作り出し、その魔法陣から各々、
三発ずつ
私は
閃熱エネルギーを加えて増幅した
はじき返された
両肩の魔法陣から
極大呪文級に膨れ上がった
「ワシの作り出した
だがなぁ……作り出したという事は弱点も知っているという事じゃよ!!」
左右の魔法陣に
そして、
反射された
呪文を吸収して蓄積するはずの力場が貫通され、
最初の一撃に肩口から左腕を焼かれた。
「ぐうっ!? これは一体……」
痛みで思わず声が漏れるが、すぐに二撃目がくるので痛がっている暇がない。
咄嗟に右腕で
急いで
一度反射された呪文を
「覚えておけ。
その状況下では同じ
「なるほど……!
マホ系は効果が重複せず、最初の効果が優先されると。
勉強になる話ですな」
「呑気な事を言っておる場合かな? ワシは貴様の死刑宣告をしておるのじゃよ!」
同じように私の左右を囲むように飛翔する魔法陣に
真ザボエラ本人は
どんどん逃げ道を制限されてゆく。
既に逃げ道は後方しかないので、
実は真ザボエラの罠だった。
ほぼ同時に
「ぐはっ!」
「キィ~ヒッヒッヒ! 長い脚は気分がいいのう!!」
今度は拳が飛んでくるが、私もクロコダインやボリクスの動きを、
横で眺めていただけではない。
魔族の強力な身体能力に任せた、技術も何もない拳など、
避けるのに大した労力は要らず、調合していた麻痺毒を伸び切った腕に突き刺した。
「ぬう!?
毒も使いこなしておるのか……だが、解毒なぞワシにもできるわ!!」
「
私の
お互いが魂だけであるこの状況で、私を倒せば真ザボエラは、
私が修行して強くした肉体を手に入れる事が出来る。
ハドラーの心象はともかく、妖魔士団長にも楽々と就任できるだろう。
さらに、喋れば別人とバレそうだが、大魔王バーンからも評価されて、
六大団長での立場も良いものになるかもしれないが……。
気になるのは、私が若返った時の方が、魔法力が上だった印象がある。
恐らくだが、私は修行して極大呪文が使えるまで魔法力を高めた上で、
呪いを一旦止めて若返ったから、高めた分+かつての魔法力ということになったのだろう。
さきほど放たれた
高い魔法力から放たれているので、ほぼ極大呪文の威力に近い……。
私が真ザボエラの呪文を迎撃したとしても、
あちらの方が魔法力が高いから、いずれ撃ち負けてしまう。
「そろそろ、己の負けを悟ったかのう? 焼き尽くしてくれようか!」
真ザボエラの左右にある魔法陣に
その炎が消え去り、同時に魔法陣も忽然と消滅してしまう。
「なっ!? これは、どういうことじゃ! 何が起こっておる!!!」
もしかして、私の精神世界に来て、私を追い出そうとしているから、
グレゴリーアの呪いの影響下に置くことができたのか……?
そう考えた瞬間、世界が灰色に染まった。
"……聞こえる? 聞こえるかい、ザボエラ?"
"グレゴリーア。もしやお前さんが何か手助けをしてくれたのかね?"
"アンタに死なれると困るからね。アイツもこの肉体にいるし、魂の状態だから、
やはりそうだったか。
急に魔法陣が消えたのでどういうことかと思ったが……。
"さっきまでよりマシな魔法力差になったろうけど、
それでも、いまのあんたよりちょっと魔法力が強いはずさ。
気を抜くんじゃないよ"
"なに、この状況であれば、対処方法は幾らでもあるものじゃよ"
私の言葉を聞いて、軽く笑ってグレゴリーアは話を続ける。
"この世界でアイツを殺せば、今度こそいい加減死ぬだろうさ"
"しかし、お前さんがこれほど積極的に助けてくれるとはのう"
"……ザムザを助けてくれたろ?
アンタは約束を守った。それにアタシは応えただけさ……"
グレゴリーアの声が聞こえなくなり、世界に色が戻った。
私は
「
魔法陣が使えずとも、若返ったワシの魔法力の方が絶大に決まっておる!
貴様程度アリを踏みつぶす様に叩き潰してくれるわ!」
威力の小さな呪文なので、反射されても
さて、これからの作戦は真ザボエラから冷静さを失わせることだ。
もっと怒らせて冷静な判断力を失わせる必要があるな。
こざかしい私の小技を、真正面から叩き潰したくなるように……。
「そんな呪文しか使えぬとは、哀れな偽物がぁ!
若返ったワシの力を見せてくれるわーッ!!」
そして、
私は
岩蛇に乗って空を飛びながら、真ザボエラへ向かう。
「な、なんじゃその呪文は!?」
「勉強不足ですなぁ、ザボエラ殿。魔界では昼寝でもされてましたかな?」
「おのれェッ! そんなデクの坊、ワシの呪文で破壊してやるわ!
私は
真ザボエラは、
多少破壊された程度では、魔法力を注げばすぐに復元させることができる。
「ふざけおって! こいつで滅ぼしてくれるわ!
流石に
だが、別に
さきほどばら撒いた
「こんな三流の呪文が二度も三度も通じるものか!」
地面から突き出る岩の柱を、
それでいい。わざわざ、分かりやすくばら撒いたのだから。
こざかしく、こざかしく、真ザボエラが怒り狂ってしまい、
冷静な判断ができぬよう嫌がらせの攻撃をしてやろう。
「
「ええいっ!! こざかしい! ならば全方位吹き飛ばしてくれるわ!
息を切らしているが、猛烈な爆風で既に
私は
嫌味たっぷりに真ザボエラに話しかける。
「私より外見的には若いのに、もうお疲れですかな?」
「そこにおったか! 貴様風情が高みからワシを見下ろすなッ!!
引きずりおろしてくれる!
「
「なに!?」
私が両手で異なる呪文を、同時に使った事に驚く真ザボエラ。
「小器用な真似をしおって、
「
真ザボエラは魔法力を貯めて
逸らし損ねた右肩に氷片が突き刺さっている。
「ぐあああっ! お、おのれぇ!!」
私は
一個の呪文しか使えない真ザボエラを掻きまわす。
ただし、わざと様々な場所に、
「ちょこまかとふざけおって! ならば、極大じゅも──」
「
私の呪文が直撃しそうになったので、
こちらを憎悪の目で睨みつけ、歯ぎしりをして怒りを露わにする。
「タイミングを考えず、極大呪文を使うのは感心しませんな。
どうしても魔法力のタメが隙となりますが、ご存じありませんでしたかな?」
「貴様にそんなことを講釈されるまでもないわ!」
確かに真ザボエラは強力な魔法使いではあるが、
彼に出来ない事を私は沢山持っているのだ。
この五年間、私が身に着けてきた呪文を使うためのスキルは、彼にはない。
この五年間、私は激戦を潜り抜けてきたという自負があるが、彼にはない。
呪文を使いこなすスキルと、仲間たちと共にくぐりぬけた、
戦闘経験の差で彼を上回ってみせる。
真ザボエラは怒り心頭に発しているようだ。
既に、呪文の攻撃もいい加減になってきている。
機は熟した。
冷静さを失った彼に見せつけるように、
最後の仕上げとして、
私は
それを合わせて異なるエネルギーで作り上げられた弓を出現させる。
「さて、あなたは私のこの呪文と、真っ向から勝負する気構えがありますかな?」
「バカにするな!
若返ったワシの絶大な魔法力で貴様の小技など叩き潰してくれるわ!」
掲げられた真ザボエラの両手に、
極大呪文の準備が整った。
「キィ~ヒッヒッヒ!
ワシに猶予を与えたことを後悔するがよい!
「さて、どうですかな?
「そんな木っ端呪文が通じるわけがあ──」
真ザボエラはその言葉を最後まで続けられなかった。
私が放った
ボッ! という鈍い音とともに真ザボエラを貫通した。
両手を中心に胸から腹の部分が、ぽっかり消滅する。
鎖骨から上が前に転がり、腰から下が後ろへ倒れた。
恐らくは冷静な彼なら、私の
その魔法力を察知して、効果が分からずとも警戒しただろう。
こんな真っ向勝負を受けてくれるはずはなかったのだ。
だが、怒り狂い冷静さを失った彼は、こざかしい私の呪文を、
真正面から叩き潰さずにはいられなかった……。
「ぐぎゃあああああっ……!!!」
絶叫する真ザボエラに対して、ゆっくり移動する。
真ザボエラの近くにある、
「この呪文は
異なるエネルギーをまったく同量で合わせるため、繊細な技巧が必要とされる呪文なのですよ」
「はっ、謀ったな貴様ぁ!!」
「それではお別れです」
「まっ……待ってくれェッ──」
私が手をかざした先には、先ほど撃った
その魔法力を正確に読み取って、
消滅エネルギーの球体は真ザボエラを包み込み、後には欠片一つ残さなかった。
多少の情けをかけて、"最後に残す言葉は?"であるとか"ザムザに謝るつもりはないのか?"
などと尋ねても良かったが、真ザボエラが改心することはありえないのだ。
それは、原作を読めばわかる。
これで人間の神の残留思念に頼まれた事は終わったと思った瞬間、
真っ黒い渦を身にまとった人影が現れた。
なんとなく想像はつくが、尋ねてみよう。
「あなたは地球の神ですかな?」
「その通りだ。よくやってくれた。
先ほどお前が黒魔晶から逃がした魂は、地球世界の冥界へ送り届けておいた」
良かった。
取り合えず解き放ったが、魂たちがちゃんと元の世界へ帰れるかどうか気になっていたのだ。
真ザボエラについてはどうなるのか聞いてみるとしよう。
「神々の法廷に連れてゆく。その場で裁き、かの者には罪を償わせる」
「なるほど。そのようになりましたか……」
「お前には済まないと思っている。本来、私の世界の住人であるというのに」
顔が分からないので表情も不明だし、声も抑揚がないので分かりづらいが、
言葉と物腰から済まなさそうにしているのは分かる。
「なに、得難い経験をさせてもらっております。
あまり、お気になさらぬように地球の神よ」
「私は特にお前に何かできるわけではないが……。
参考になるか分からぬが一つ告げておこう」
神からの忠告か。ないがしろにはできないな。
相変わらず表情も分からないし、声質は抑揚がないが、
丁寧に喋ろうとしてくれるのは伝わってくる。
「暗黒回廊が開き黒魔晶内で、膨大な数の地球世界の魂たちが、
真ザボエラの魔力源にされていた。これだけで世界に亀裂が入っていた」
「なんと……既にヒビを超えて、亀裂が……。この世界は大丈夫なのですかな?」
「案ずることはない。
亀裂は観測できるものをすべて、塞いでおいた」
地球の神は静かに頷き話を続けた。
「まだ、あちらこちらにヒビが入っているだろうが、
それはいずれ傷が塞がり癒える様に消え去る。
だが……」
「何か問題が起こりましたかな地球の神よ?」
これは何かあるかなと思い、尋ねてみる。
それに対して地球の神はこちらを見て、一瞬の逡巡の後、私の問いに答えた。
「大魔王バーンが気づいた。
大魔王は異世界の存在を知り、その知識を得たことで、
別の世界への興味が増している」
「ほう……。何事もなければ、彼にとって六大軍団も余興ですからな。
具体的には何をしているのですかな?」
さきほど黒魔晶の所で確認したが、世界のヒビを地球の神が明確に視覚化してくれた。
確かに少しずつヒビが収まっているように見えるが……。
それを見ながら、地球の神は言葉を続ける。
「世界のヒビに敏感な存在がいる。不死鳥だ。癒そうと飛来するだろう。
次の来訪は数百年後のはずだったが、
近いうちにこの世界へやってくる可能性が高まっている」
「まさか大魔王バーンはそれを……」
「察知するだろうな。そして、己が手中にせんと欲するだろう。
不死鳥を世界を渡るための重要な要素と考えている」
「それは聞き捨てなりませんな。よい事を伺いました」
地球の神は私への感謝として、頭を下げた。
そして、この場を去る時にこう言った。
「もう、人間の神の残留思念からの依頼は終わった。
自分の事を第一に考えてもよいのだぞ」
「私は……もはやこの世界に
いまの立場と仲間や関わった人々を守るために、全力を尽くすつもりでおります」
「難儀なたちだな。何も私にはできぬが、お前の道行きが豊かな事を願おう……」
そう言って、地球の神は風のように去っていった。
荒野のようだった世界が、少しずつ消えてゆく。
私は重荷を下ろした気持ちになりかけていたが、
更なる問題を託されたかのようで、あまり晴れやかな気持ちにはならなかった……。
目を覚ました時、私は竜になった竜水晶の背に乗っていた。
周囲を見渡すと、既に陰鬱な魔界の空ではなく、
美しい青空と眩しい太陽を頂く地上に戻っていた。
横にいるグランナードとボリクスが、心配げな顔から喜色満面に変わる。
ロン・ベルク殿とケインや竜水晶からお小言を受けたが、
ガルヴァスをちゃんと倒したことを告げた。
こうして、私が人間の神の残留思念から受けた、真ザボエラを抹殺する依頼は終わった。
だが、大魔王バーンが別の世界への興味を強めており、
不死鳥……つまりラーミアの何かを狙っている。
地球の神のその言葉は、私の胸にこだましていた……。
独自設定
地球の神
最初、アイテム物語に登場した主神ミトラを登場させようかと思いましたが、
彼はアレフガルドの神だったので、オリジナルの神になりました。
不死鳥
大魔王バーンの野望→地上を破壊して魔界に太陽を齎す→天界へ攻め入る→???
天界へ攻め入った後の目的ができました。