ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
私はヨミカイン魔導図書館で目を覚ました。
確かデルムリン島でバラン殿と話をしていたはずだが……。
「
「ボリクス落ち着け。ザボエラ、何か温かいものを持ってこよう」
「父上! 仕事を減らしてください!! 働きすぎなのです!」
「せやなぁ。用事あるやつに、来させればええやん!」
「私も手伝いますから、少しでも休んでください父上!」
ボリクスと竜水晶。それにザムザが私をずっと見ていてくれたようだ。
みな口々に私を心配してくれているのだが、後半から怒られてしまっている。
バラン殿は輪の外から見ており、ボリクスたちが一段落したところで私に声をかけてきた。
「ザボエラ殿、心配致しましたぞ」
「もしや、バラン殿がデルムリン島からヨミカインへ、ワシを連れてきてくださったのかな?」
「ご安心を。
バラン殿が
彼が生きている事は、疑われているかもしれないが、
恐らくは魔王軍は知らないはずだから、隠せるなら隠し通したい。
ロカ殿もやってきて、賑やかになってしまった時に、アバン殿と竜水晶がスープを持って現れる。
竜水晶がみなを部屋の外へ出して、アバン殿がスープを渡してくれた。
滋味豊かな味わいが、身体に染み渡っていく。
「ザボエラさん。休みはちゃんと取ってますか?」
「最近忙しかったですからな。そのせいかもしれませぬが」
「魔族は大体、人間の10倍の寿命換算ですが、そう考えるとあなたは80代後半ですからね。
ゆっくり休んでください……と言いたい所ですが、もしや呪いに何かありましたか?」
流石アバン殿、鋭いな。
実はちょっと前から、眠りに就いてグレゴリーアに会おうとすると、
留守で会えない事が多かったのだ。
ただ、これは以前にも、たまにあった事なのだが、
あちらからのリアクションが一切ないので、気になってはいる。
「ワシにも分かりかねますな。ただ、一人でなんとかしようとは考えておりません。
何か行う場合は、みなの力を必ず借りようと思っております」
「必ずそうしてくださいザボエラさん。
確かに破壊神とやらが何者が出てくるか分からないという、未知の戦力への恐怖はあります。
ですが、それよりもあなたを失う事の方が、私たちにとって耐えがたいことですよ」
「マトリフ殿にも、少し前に似たような事を言われましたな」
アバン殿は明るい表情になって、こういった。
「私たちはうぬぼれていいなら、以前とは比較にならないくらいに、
強くなっておりますし、仲間も増えましたよ。
私たちを気遣ってくれているのは分かりますが、
それ以上に我々を信頼して、もっと頼ってくださいザボエラさん」
「まったく……仰る通りです。
一人では抱え込まないで、何かあれば頼りますぞアバン殿」
「大船に乗った気持ちで任せてください。
呪いを解く場合は、すぐに駆け付けてお手伝いさせていただきます」
スープは冷めてしまっていたが、食欲があったので全部飲み干し、
アバン殿と少し話をしてから眠りに就いた。
もう一度、グレゴリーアを訪ねたのだがまた留守で、
何かあったのだろうかと思ったが、私自身も疲労が濃かったので戻った。
それから、一週間ほど休み、体調も戻った頃にリンガイアから客が来ることになる。
バウスン将軍の話では、息子のノヴァが類まれな剣術と闘気の才能を見せているという。
私は原作も知っているので、なるほどと思うだけだったが、
どうやら試合で王に勝ってしまった事で、天狗になってしまっているらしい。
「勝気なのは戦士としては悪いとは思えませぬが、ご相談に来たという事は、
そういうレベルではなく害悪になる様子なのですかな?」
「はい……。たとえば、戦士団の団長の言う事も聞きませんし……。
カール騎士団でも名高い、ホルキンス殿と手合わせしたいと言っておりまして……」
十中八九、ホルキンス殿の方が強いだろうな。
いまのノヴァの強さがどのくらいか分からないが、
原作時点のノヴァであっても、いまのホルキンス殿には勝てないだろう。
ロン・ベルク殿に師事し、彼がホルキンス殿の為に打ってくれた剣まで持っている。
原作より若いノヴァが、心技体が充実したホルキンス殿に勝てるとは思えない……。
そう考えていたが、バウスン将軍の考えは違った。
「もしも、ホルキンス殿に勝ってしまった場合、増長が止められなくなってしまいます。
それに、大怪我を負わせた場合、カールとの国交にも問題が生じるかもしれません……」
「事情はわかりました。では、ボリクスとワシで伺いましょう。
いや、もう一人連れて行ってみますかな?」
私が連れて来たグランナードにバウスン将軍は驚いたのだが、
デルムリン島にある神殿に住まう大地の精霊の眷属だと話をすると納得していた。
ボリクスが竜水晶に掴まり、彼女も同行することになる。
「調子は良さそうだが、我が危ういと思ったら連れて帰るぞザボエラ。
アバンから見ておくように言われているからな」
「お前さんたちは連携しておったのか。まぁ、無理はせぬようにしておく」
同行者が増えてしまったが、バウスン将軍は否とは言わなかった。
彼としては頼む立場なので、文句は言えないという事である。
そうして、私の
リンガイアへ到着した途端、騒然としている様子であった。
バウスン将軍が一喝して、話を聞くと、
大変な事が起きてしまっていたのである。
どうやらノヴァが若い戦士たちを連れて、ギルドメイン山脈に攻め込んだという話だった。
バウスン将軍が、ため息と共に怒りの言葉を吐くという、器用な真似をした。
「なんてことだ……! なんという馬鹿な真似を!」
「
「ふむ……そうじゃな……」
リンガイアは復活したギルドメイン帝国の皇帝との戦いで、精鋭を100人も失っており、
その痛手から回復するために10年は必要だと考えられていた。
だが、勇者アバンがリンガイア王テオドル殿から、ガイアの剣を授けられて、
国民やリンガイア戦士団を奮い立たせるような演説を行ったため、
若者が奮起してやる気を出した。
結果、国民側からも戦士団を立て直そうと、商人などが物資を格安で持ち寄り、
前向きな入団希望者が殺到したらしい。
立て直しは上手く行ったものの、ギルドメイン山脈には近寄ることが禁じられていた。
魔王軍の拠点が作られている事は判明していたが、
積極的に攻めてくるのは先の話だろうと思い、手出ししないよう助言しておいたからだ。
私とマトリフ殿が赴いて、何かあったら緊急の連絡が届くようにして、
基本的には監視に留め、無暗に戦わないようにとは話してあったのだが……。
「あの子は以前から、ギルドメイン山脈の魔王軍の拠点を攻めるべしと強弁していました。
私がザボエラ殿の話を持ち出して説明しても、恐れているのかと……」
「ご子息たちが向かった場所に心当たりはありますかな、バウスン殿?」
「あの子が実際に見た拠点は、ギルドメイン山脈東側の滅ぼされた村の辺りです。
他の場所は知らないですし、
私はバウスン将軍を連れて行き、もしもの場合のノヴァの説得役を買って出てもらう事にした。
バウスン殿がノヴァを抑えきれないのは確かだが、私を含めて誰も彼と会った事がない。
初対面の魔族の言う事を、彼が聞かない可能性が高いからだ。
さらに、リンガイアの戦士団にも出撃準備を整えてもらった。
ノヴァ達を連れ帰る時に敵が追ってきた場合、逆撃して追い返すか撃退するためだ。
ドラゴンになった竜水晶が我々を乗せて、高速で空を飛行している。
バウスン将軍に場所を指示してもらいながら飛んでいると、
目的地が見えてきた。
高空から眺めていると、目的地の村の跡地の辺りで、
呪文が飛び交い、魔物に追われている集団が確認できる。
「
「うむ、任せたぞ。バウスン殿とワシは、怪我人を助ける」
「グラン! うちが斬り込むから、お前はガキ共守ったれや!」
「ああ、お安い御用だぜ。じゃ、先に行ってますぜ旦那方!」
ボリクスが
斜めにすさまじい速さで戦場の真ん中に突き刺さる。
魔物に追いつかれ爪で切り裂かれそうな少年の背を、
石の壁を出して守り、走って逃げるように言うグランナード。
リンガイアの若者たちを追ってきている魔物たちには、
ボリクスが巨大な
「こっから先は行き止まりや! 通りたけりゃ、命置いてけや!」
魔物たちは返事の代わりに、
グランナードが両手を地面に突っ込んで、石の障壁をそこかしこに展開。
私が順番に
魔物たちの
グランナードやバウスン将軍が怪我人を背負って後ろに連れて来た。
「……しょ、将軍……」
「ザボエラ殿、助けてやってください!」
「お任せあれ。
回復呪文に掛かりきりの私に、ひとくいサーベルが飛んでくる。
回転しながら突っ込んでくるもの、直線的に飛んでくるものと様々にいるが、
竜水晶のブレスで迎撃し、ケインが爪を伸ばしてそれを容易く真っ二つにしている。
私が怪我人を治していく内に、少しずつ話を聞いていると、最初は上手く行っていたようだ。
だが魔物の拠点を二つ潰した所で、見たことがない魔物が現れ一気に蹴散らされたらしい。
特にヤギのような下半身で赤い肌。
側頭部から角を生やした髭モジャの魔物が強かったようだ。
アンクルホーンかブルデビルだろうか?
そう考えていた所、すぐに答えが明らかになった。
ライノソルジャー、ビビンバー、ジャイアントバット、ひとくいサーベルを引き連れた、
アンクルホーンが片手で軽々とノヴァを引きずりながら姿を現す。
「ノヴァ!!」
「バウスン殿。必ず助けますので落ち着いてくだされ」
抜刀して走り出そうとするバウスン将軍を抑えて話しかける。
私はグランナードに、土槍をアンクルホーンの下に仕掛けるハンドサインを出す。
グランナードは目立たぬよう、ただししっかりとサムズアップして答えてくれた。
「貴様らはこの小僧の仲間か? 何人もオレの部下を殺してくれたわ!」
「その通りじゃ。そちらの若者を渡して貰えぬかな?
さすれば我々は大人しく去るし、お前さんも死なずにすむぞ。良い話じゃと思うがな?」
私の言葉にアンクルホーンは大笑いして、その後、激怒してこう言い放った。
「オレを馬鹿にするなジジイめ!
その年までなんとか長生きしただろうに、死にたいようだ──」
私はアンクルホーンの言葉を遮る。
「もう話はよい。準備が整ったのでな。グランナード!」
私の声と共に、アンクルホーンと彼の率いた部隊の地面から、
幾つもの土の槍がノヴァをきちんと避けて噴出する。
アンクルホーンはノヴァを投げ捨てて、地面から突き出る土の槍を避けて、
剣を掲げて斬りかかるボリクスに
ボリクスは
海破斬でアンクルホーンにダメージを与える。
「ぐわっ!! お、おのれぃ!!
ひとくいサーベルども! まとまって切り刻め!」
アンクルホーンの命令でひとくいサーベルが、並んで猛烈な勢いでボリクスに突進していく。
微動だにしないボリクスは、"
それを剣に宿し地面に突き立てると、無数の氷の刃がひとくいサーベル達を撃墜していった。
「次は自分の番やで!」
「くうッ! 集まれ! あのガキを全員でかかって倒すぞ!」
「バカやなぁ! 集まったのを倒すのが、けっこー得意なんやで!
4mほどの
アンクルホーンと集まった魔物たちはみな両断されて倒れた。
「ハハ、いつもながらすげぇなぁ、姐さんはよぉ~!」
「お……教えてくれ。
あの子の技……
腰を抜かして驚いているノヴァがグランナードに質問をしている。
「あれでも手加減してるぜ。じゃないと、ボリクスの姐さんの闘気は強すぎてよ。
剣を何本もオシャカにしちまってるんだ」
「すごい……。上には上がいる……ってことか……」
グランナードはノヴァの質問に気さくに答えた。
ノヴァは己の強さに自信があったようだが、今回の敗北と自分と同じ系統で、
さらに強い力を持ったボリクスの存在に衝撃を受けたようだ。
グランナードが土を操作して巨大なカゴを作り、怪我人を収容した。
ドラゴン化した竜水晶がそれを吊るし、そのままリンガイアへ帰還する。
この一件の後、ノヴァから謝罪の手紙が届いて、
ボリクスに
「うちは別にいいんやけど、
「ワシは構わんよ。あの一件で懲りておるじゃろうからな。
あまり、厳しくしないでやってくれんかのう」
「
めっちゃ厳しくやったろうと思ってたんやけど」
そういうと部屋を出て、ボリクスが
更に一週間後、
マァムと並んで剣を振るうノヴァの姿を見かけるようになった。
この件はこれで済んだのだが、やはりグレゴリーアと連絡が取れない事がおかしいと思い、
私はアバン殿に状況を説明して協力を求めた。
バラン殿とラーハルトを伴っており、マトリフやクロコダインにも連絡が行っている。
ザムザと一緒にグレゴリーアの精神を確保できる魔法玉を用意して、
私の中にある呪いに強引に入り込むことにした。
「父上、これは一体……!?」
ザムザの驚きの言葉は当然で、私も目の前の風景に言葉もなかった。
怪しげな森と毒の沼が広がり、こじんまりとした魔女の家がある世界だったのに、
薄暗く紫色の光がほのかに灯る神殿とでもいうべき建物に変わっていた。
分かりやすい言葉で表現するなら、ラスボスがいる迷宮という風情だ。
「ザムザよ。グレゴリーアを発見したら、ワシの事は構わずに、
魔法玉で連れてこの世界から脱出するのじゃ」
「父上、何を言っているんです! 私も共に戦います!」
「この世界に来た目的は、母を連れ出すことではないのかザムザ?
やるべきことを間違えてはならんぞ!」
通路を進む間、
呪文が使える事をしっかり確認しておく。
10分ほど進んだ後、恐らく最深部の円柱が立ち並ぶ部屋の中心に、
グレゴリーアが囚われていた。
私が周囲を警戒しながら、ザムザに促して先行して駆け寄ったザムザが話しかける。
「母上! 助けに参りました!」
「……馬鹿……なんで来たんだい……」
驚いたような嬉しいような、複雑な表情のグレゴリーアは我々を見てそう言った。
「何があったのじゃグレゴリーアよ?」
「ミストバーンだったっけ? アイツと戦った時、アンタをちょっと若返らせただろ?
あの時、実は4分経ってたんだよ。でも、アタシは30年しか寿命を徴収しなかったのさ」
「もしやそのペナルティかね。しかし……なぜそのような事を?」
問い質そうとしたら、薄紫の灯りが消え、
「40年徴収したらアンタが寿命で死んじまうからさ」
そういうことだったのか……。
「呪いが破壊神との契約を履行しようとしてたのさ。
この所、逃げ回ってなんとか連絡を取ろうと思ったけど、このザマだよ」
奥からサイクロプス、ギガンテス、アークデーモン、シルバーデビル、
デビルロード、ブリザードとロンダルキアの魔物が続々と現れてくる。
「ザムザ、グレゴリーアを連れて逃げるのじゃ。ここはワシが時間を稼ぐ!」
「バカな事を言うんじゃないよ!」
「父上……!」
私は
「問答している暇はない! グレゴリーアよ。
破壊神の契約が発動する事と、破邪の秘法を用いた
呪いを解除するのとどちらがよいかね?」
「呪いのエネルギーを核にして、闇の世界から異世界の大魔神は軍勢を率いてくるはずさ。
解呪しちまった方が、破壊神にとっては痛手になるだろうよ」
「なるほど……分かった。
ザムザよ、アバン殿に破邪の秘法で呪いを解くよう言ってくれ!」
「……父上……。ご武運を……ッ!!」
手に持った魔法玉にグレゴリーアを封じ、
私は右手から
奥から現れる魔物が途絶えたと思った時、闇よりも深い、暗い暗い奥底から響く声がした。
「我の邪魔をするのは……貴様かっ?」
「どなたかね? 想像はつくが、御名を伺いたい」
「グオオオオオオオッ! 我こそは闇の世界の主。異界の大魔神。
魔女グレゴリーアとの契約を果たし、この世界を破壊せんとする破壊神シドーであるっ──」
私の身長より遥か高い所に、おぞましい赤色で輝く双眸は、
こちらを
独自設定
破壊神シドー
ドラクエの小説で、魔界の大魔神という肩書を持っていたのでアレンジして使いました。
口調はドラクエ2の小説を参考にしていきます。
現在のボリクス
外見は16歳くらいで身長は162cmです。
【挿絵表示】