ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
破壊神シドー。
ドラゴンクエスト2のボス、大神官ハーゴンが呼び出そうとしている邪教の神である。
パッケージでは高笑いするハーゴンと三人の王子・王女が前面で、
背後の石像のシドーはイメージ映像的なものかと思われていたが、
実はラスボスだったという真実は、当時、驚かれていた記憶がある。
ここから、最初に出てくるボスと、そのボスを倒した後、
真の黒幕が登場するというスタイルが、毎度ではないが定着していく。
次のドラクエ3でも魔王バラモスが最初に見える目標=ボスであるが、
本当の黒幕=ラスボスは大魔王ゾーマという事になっていた。
ドラクエシリーズには様々なボスが存在するが、
シドーの姿はその邪悪な存在感が圧倒的としか言い様がない。
眼前のシドーが放つ威圧感は、相対する私の心に、
重苦しい恐怖感を与えてくるのだ。
二本の角。耳まで裂けた口には凶悪な牙が生えている。
巨大な翼はまさしく悪魔のもので、禍々しさを漂わせながら小刻みに動いていた。
鋼鉄の輝きを宿した暗緑色の鱗と、先端に蛇が生えた尻尾。
大人が数人で手を繋いで囲むほど太い腕。
それが四本あり鋭い爪を生やした指を持っている。
腕が四本という所は、仏であるとか阿修羅などを思い起こさせるが、
そういった敬虔な様子は一切ない。
大きさは恐らくは、7・8m級と言ったところか?
二階建ての家屋程度の大きさのように見受けられる。
さて、問題としてはこいつがどの作品のシドーなのか、だ。
FC版のシドーだった場合、強くはあるが倒せなくはないだろう。
まぁ、
問題はジョーカーシリーズや、バトルロードの派手で強力な攻撃をしてくるシドーだ。
ただ、今回のシドーはグレゴリーアが契約した存在で、契約で行動をおこなう辺りは、
悪魔的な側面が強いと言える。
悪魔といえば、本体は悪魔の世界におり、分身を人界に送るようなものたちだ。
眼前のシドーが、悪魔の世界に本体を置き、分身を使わせるタイプだった場合、
多元世界の様々なシドーは側面の一つにすぎず、それらの様々な力を使う事ができたなら……。
恐るべき強敵になるだろう。
「まずはグレゴリーアとの契約に従い、貴様を八つ裂きにするとしようっ!
ザボエラとやら……」
「お待ちを! シドー殿はワシを八つ裂きにすれば、元の世界へ戻られるのですかな?」
質問されると思ってなかったようで、目を見開いてこちらを凝視しているが、
顔が元々凶悪すぎるためか、怒っているのか興味を持っているのか分かりづらい。
「グオオオオオッ! 殺される前に、我に問いを投げかける者がいるとはなっ!
その豪胆さに免じて答えてやろう……」
そして、急に口から生臭い息とともに、紫色の煙を吐く。
毒だったが私は体内で毒素を中和して、何事もなかったように話を待つ。
恐ろしい事にいまの毒を吐いたのは、彼からすれば攻撃ではないのだ。
破壊神シドーの生体のごく自然な活動の一つであり、
人間が呼吸して二酸化炭素を排出するように、毒素を外へ吐き出したのだろう。
「貴様を殺した後、我はこの世界に降臨する。
まずは、貴様を縛っていた強力な呪いを核として、暗黒回廊を開き魔の大軍勢を呼ぶっ!
世界に住む生命を殺しつくし、蹂躙した後に、世界を破壊するっ!!」
さきほどグレゴリーアが言ったとおりだな。
私の呪い自体は、ザムザがアバン殿に伝えてくれただろう。
今頃、アバン殿の破邪の秘法による
しかし、まさかこの世界を破壊しつくそうと考えているとは……。
グレゴリーアも殊更に破壊神などと、契約を結ぶ事はなかっただろうに。
恐らくはいまは亡き真ザボエラが、相当に憎らしかったことと、
結局、冥竜王ヴェルザーに勝てなかった怨嗟から、
そんな世界は滅んでしまえと憎悪したという事だろうか?
迷惑な話ではあるが、最早本人に聞くことはできないので、
グレゴリーアの内面はベールの向こう側だ。
「問答はここまでだっ! 一思いに叩き潰してくれるっ!」
その数百年生きた大木のような腕を振り上げた瞬間、シドーと私が上空からの光に包まれる。
周囲の呪いで編まれた神殿は、毒が光に浄化されるように、
蒸発しながら消え去っていった。
これは恐らく、間に合ってくれたという事だな。
「グオオオオオッ!? な、なんだこれは!!」
「破邪の秘法で極大化した
ワシの息子が外で、仲間たちと段取り通りにしてくれたようじゃ……。
時間稼ぎに付き合っていただき、お礼申し上げますぞ、破壊神シドー殿」
「おのれぇえええええ!! だが、貴様からグレゴリーアが奪い取った
それは我が手にある! それを我が力として世界を滅ぼす!!」
そう宣言したシドーと私は、輪郭が薄くなって行き、幻のように消えていく。
これは、目が醒めるのだろうが……あちらは大丈夫なのだろうか……?
そう外界の様子を心配したが、そこで意識が途切れてしまった。
「
「……おお……ケイン……か?」
ケインが私を守っていてくれたようで、
油断なく爪を展開して周囲を窺いながら声をかけてくれる。
「はい! ロカ殿、ボリクス様に伝えてください!
「おう!! ボリクース!! ザボさん目が醒めたぞー!!!」
大音声で遠くのボリクスに呼びかけるロカ殿。
こちらを見る余裕がないのか、左手でサムズアップして答えるボリクス。
……竜水晶がドラゴン化して、その上に乗って戦っているようだが、一体なにと……。
すると巨大なコウモリのような魔物が、こちらに向かって攻撃をしかけてくる。
10体あまりおり、赤い皮膚と悪魔の羽根。
こいつらはレッサーデーモンか。
面長の顔には嘲るような笑みが刻まれており、口々に
「合わせろマァム! 一人も通すなよ!」
「分かってる、父さん!」
「「カール騎士団正統! 初撃!! 豪破一刀!!!」」
迫る火球の群れをロカ殿とマァムが放つ豪破一刀が打ち破り、
剣圧がレッサーデーモンの何体かを真っ二つにし、羽根を切り落とす。
地面に降りて来たデーモンたちと、二人が白兵戦を展開しているが……。
500mほど先に、悪夢の産物のような破壊神シドーの姿が見える。
しかしでかい……。なんという大きさだ。
精神世界では二階建ての家程度の大きさだったが、
恐らくは五階建てのビルほどもある大きさだ。
20mくらいあるだろう。
ボリクスやバラン殿が戦ってくれている姿が見える……。
上からバラン殿がギガブレイクを叩きこみ、
下からボリクスがライデインストラッシュをお見舞いする。
鋼鉄の皮膚を鱗をまき散らしながら切り裂くものの、
青白い
ケインが悔しそうに私に状況を説明してくれる。
「また
アバン殿が破邪の秘法で
「ほう、効いたのか。流石、破邪の秘法という所かのう」
「ですが、シドー自身が光を放ち
現状の如く傷を負うと
「なんと厄介な。しかし、光……まさか、光の波動か……?」
光の波動というのは、凍てつく波動の親戚のような技で、
凍てつく波動が他者のバフを強制解除するものだとすると、
光の波動は己へのデバフを解除する技だ。
しかし、そんなものを、シドーが使えたというのは聞いたことがない。
「なるほど。本来、この世界には出現するはずのない破壊神。
何を手札として持っているか、分からぬという事もあるかのう……」
例えばこの世界に適応して、新たな技や呪文を修得している可能性もある。
そうなってくると厄介ではあるが……。
戦いを見てみるとシドーが四本の腕の指先全てから、
それが、四本の腕の四つの手の指、つまり合計12の指から放たれるのは脅威というほかはない。
的が小さいバラン殿やボリクスを狙っているのだろうが、
流石に二人は
更にラーハルトがその素早い動きと真空波、アバン殿が呪文や剣技で援護しているようだ。
しかし、あのような事をされては、近づくのも危うい。
すると、シドーの四本の腕が奇妙な動きをする。
上の二本の腕から放たれた魔法力がアーチを描き、
下の二本の腕は掌にスパークする魔法力を集めている。
いや、まて、その動きはまさか……!?
四本の腕で
流石に予備動作が分かりやすかったためか、みな巻き込まれてはいないが、
極大呪文を二種類同時に撃ってくるアドバンテージは恐ろしいものがある。
当たりはしなかったが、森を大幅に削り取り、地面に大穴を穿っている。
通常の極大呪文を遥かに超える威力だ……。
このまま事態に流されていてはいかんな。
まずはケインに私が意識を失っていた間の状況を聞こう。
ロカ殿やマァムがギガンテスやサイクロプスと戦っているので、
私とケインは援護しながら話をした。
「ケインよ。ワシは何分ほど意識を失っておったのか?」
「10分ほどです。その間に、ヨミカイン魔導図書館の外に、あの化け物が姿を現しました。
バラン様、アバン様、ラーハルト様、ボリクス様、竜水晶が迎撃に出ております」
「オレとマァムはここで守ってる所だ。
あの化け物のせいで、最近大人しかったヨミカイン遺跡周辺の、
バーサーカーやらゾンビマスターが邪気で凶暴化して──」
「父さんまた来たよ!」
「おしゃべりは後だ!」
目を赤く光らせたバーサーカーたちの群れや、
ゾンビマスターをロカ殿とマァムが迎え撃っている。
大体、理解した。現在の状況はそうなっているのか。
事前にシドーの情報は共有して、
まさか破壊神が光の波動を使うとは思っていなかった。
無茶な特攻や全力攻撃で疲弊せぬようには言っておいたから、
まだ余裕はありそうではあるが……。
各国への影響については、予測もつかないので、事前に手を回してはいる。
クロコダインとロン・ベルク殿にはベンガーナ軍と、
カール騎士団の精鋭を率いたホルキンス殿が陣取り、
ベンガーナ南端で待機しているはずだ。
マトリフ殿にはパプニカで魔法兵団の指揮を取ってもらっている。
ロモス王国はレイラ殿とサポートにグランナードとノヴァを送り、ブロキーナ老師にも声をかけ、
大地の精霊も守護に赴いている手はずだ。
「敵兵力はどの程度かのう?
何やら精神世界で話した時、軍勢を呼ぶと言うておったが?」
「さきほどのレッサーデーモンを含め、シルバーデビル、デビルロード、ギガンテス、
サイクロプス、アークデーモンが主戦力です。
パプニカ方面にも散ってゆきました。
最初に出現した悪魔どもは、およそ500体あまりでございます」
なに!? 500体も現れたのか……。
シドーが出現した際に、呼び出すのなら悪魔だろうし、
悪魔は羽根が生えて飛べるものが多いはずだ。
ならば、海を越えてロモス・ベンガーナ。
同じ大陸のパプニカに累が及ぶだろうと、
先に注意しておいて、準備していたのが功を奏したか。
いや、待て。ケインはいま、最初と言ったか?
最初とはどういう意味だろうか。
「ケインよ。最初とはどういうことじゃ? 続々と悪魔が出てきておるのか?」
「続々というほどではありませんが、現在もあの破壊神の背後にある球体から、
時折、悪魔が出現しております」
破壊神シドーは呪いを力の源とするという話ではなかったのか?
それは、破邪の秘法で極大化した
いや、そうか……!
どうもまだ混乱しているようだ。
先ほど聞いたばかりの話を失念しているとは……。
"だが、貴様からグレゴリーアが奪い取った
それは我が手にある! それを我が力として世界を滅ぼす!!"
シドーはそう言っていたな。
つまり、あの球体に私の
私が行って吸収できないものだろうか?
そう考えていた私の頭の中に、
グレゴリーアの声が聞こえた。
"ザボエラ、聞こえるかい? 聞こえてるかい?
時間がないから用件だけ言うけど、500体の悪魔ってのは運がいいよ"
「ほう。
あまり意味が無かったのかと肩を落としていた所じゃよ」
"本来だったら、5000体以上の悪魔が出現したところさ。"
その数を聞いて、私は絶句した。
シドーの世界を破壊するというのは随分と大言壮語だと思っていたが、
それだけの悪魔が出現したら、流石に不可能ではないだろう。
「アバン殿に頼んで、呪い自体は解呪してもらってよかったのう……」
"
怪訝な感じで見てくるケインに、グレゴリーアから思念で話しかけられている事を伝え、
周囲を警戒して守ってもらう。
話している最中に、バーサーカーだのが来ても、対応できないからだ。
「質問があるのじゃが。ワシから奪った
球体の門を作り、そこから悪魔が時折出てくるのじゃよ。
かつてのワシの魔法力を、いまのワシが吸収することは可能かね?」
"残念だけど、破壊するしかないね。
元がアンタの魔法力やらでも、既に破壊神が自分の力に加工しちまってる"
「そういえば、ワシは狙われておらぬようだが、どういうことかのう?
呪いとセットになった契約で、ワシを殺すことが最優先では……」
とそこまで言って気づいた。
破邪の秘法で極大化した
私を殺すという契約自体がなくなってしまったのだろう。
ただ、シドー自体は帰らず暴れ回っている。
「もしや、最初からシドーの計画に利用されていたのかのうグレゴリーアは?」
"そうなるだろうね。破壊神シドーは破壊するべき世界を探してた。
グレゴリーアは絶望して、あんたの殺害を願って呪いを掛けた。
シドーは甘言を弄して、死に瀕したグレゴリーアと契約をしたってことさ。
呪いの成就の後は、シドーは好き勝手にその世界を破壊するって話さね"
「呪いが解呪されても帰ってはくれぬのか……迷惑極まりないのう」
悪魔という存在との契約というのは、相手に利用される危険性をはらんでいる。
それは、ドラゴンクエスト世界だけでなく、民話や伝承でも伝えられている話だ。
私はため息をつき横を見ると、私の元に走ってくる人影が見えた。
ヨミカイン魔導図書館からザムザが手を振り、私の方へ駆け寄ってきたのだ。
「母上の精神は肉体へ移しました。
既に安定しております。ご安心ください父上」
「うむ、よくやったぞザムザ。
ところで、あの破壊神の背後にある球体、ワシから吸い取られた魔力らしい」
「なんと……!?
ですが、現状、破壊神の背後で別世界と繋がる門となっております」
「そうじゃろうな。これから破壊すると決めておるよ。
いまは、少数の悪魔を出してくるだけじゃが、何かで活性化したら危険ゆえな」
私は立ち上がるが、なにやらそこで違和感を覚える。
いままで、ザムザを見上げていたはずなのに、目線がザムザと同じくらいなのだ。
「……ザムザよ。もしかして、ワシは若返っておるのか?」
「若くはありません。
600歳中盤から700歳くらいの魔族に見えます、父上」
「ふむ……そうかね。
ワシはいまからあの球体を破壊しに行く。同行して欲しいのだが」
ちょっとズレたザムザの返答に苦笑しながら、私は当面の行動方針を説明した。
その瞬間にも、5体のレッサーデーモンが姿を現したので、
ザムザが
「では、参りましょう。私もお供致します、父上」
「うむ。ロカ殿、マァム。
この場はお願いいたしますぞ!」
「おう、任せてくれ! ヨミカイン魔導図書館には一歩たりとも入れさせねぇぜ!」
「行ってらっしゃい、ザボエラさん!」
ケインが私の身長にあわせて長くなり、私は彼を掴んで
私とザムザは並んで
ザムザは訓練を積み、様々な呪文に習熟し、流石に
前から飛んでくるシルバーデビルの呪文を
デビルロードの炎を
私はその隙に、
すると、こちらへ向けられたシドーの手から、雨のように
私とザムザは
逸らすのが精一杯で、シドーに叩き返すことが難しい。
「父上。ボリクスたちに話しに行って、あの破壊神の注意を引いてきます。
このままでは、シドーの妨害で門までたどり着けません!」
「うむ。無理はせぬようにな。それこそ、数分気を散らすだけで良いぞ」
「分かりました。ご武運を、父上!」
そう言うと
ザムザが二人に何か言ったのか、竜水晶も含めてシドーへの攻撃が苛烈になってゆく。
ボリクスとバラン殿が、
その隙に、私の魔力を核として作られた門の前まで来た。
真正面に立つと、中が良く見える。
すると、門の奥に影が幾つか立っているのが確認できた。
その姿はアークデーモンやギガンテスのように見え、これ以上敵を増やしては危険だと、
私は
高出力の閃熱エネルギーを込めた
出てこようとした悪魔たちは霧散するが、門自体はびくともしない。
いかん。手を間違えたかもしれない。
そこですっかり忘れていた事を思い出す。
この姿なら、魔法陣を展開してそこから呪文を撃つことができたはずだ……と。
念じると直径30cmほどの青白く光る魔法陣が、私の肩の辺りに一個ずつ展開する。
そこから
シドーが恐らくは闇の属性で作り上げた、暗黒回廊のようなものなのだな、この門は。
ならば、天敵は
私は魔法陣から
両手から
ケインが爪を展開して、飛んでくる破片などを切り刻んでくれるが、
爆発の爆風は凄まじく、私は吹き飛ばされて近くの大木に叩きつけられてしまった。
「
「ゴホッ……爆発するとはのう……失敗したわい」
自分で
意外にダメージが大きく、回復呪文に集中していた。
そして、最悪な事に私をめがけて、破壊神シドーから全方位に放たれた
流星雨のように降り注いできているのを愕然として眺める他なかった……。
独自設定
門
ドラクエ2の小説でシドーはハーゴンが作った暗黒回廊を通り、闇の世界から出現しました。
本来、ハーゴンは王子たちを生贄にしようとしていましたが、
最終的にハーゴンは自分を生贄にすることで、破壊神シドーを呼び出します。
今回呼び出されたシドーは、暗黒回廊から数百・数千の悪魔たちを、
世界に進軍させようという計画を企てておりました。
その為のパワーソースにしようとしていたグレゴリーアの呪いを、
アバン先生が外から破邪の秘法で拡大した
そのせいで暗黒回廊の規模が小さくなってしまい、
破壊神シドーが呼ぼうとしていた数千の悪魔は全て通ることができなくなりました。
おかげで悪魔の軍勢は、大分、規模を縮小して地上に出現しましたが、
規模を小さくしても大変な軍勢で、準備していなかったら各国に甚大な被害がでたことでしょう。
極大呪文の同時使用
腕が四本のキャラにやらせたかったのですが、
格的に簡単にやらせるわけにもいかずシドーが行う事になりました。