ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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本年最後の更新になります。
皆様良いお年を。
次回は来年、2025年の1月9日の木曜日23時頃を予定しております。



第六十八話 破壊神を破壊する者たち

 

頭上から降り注ぐ火炎呪文(メラミ)から私を守ってくれたのは、

集束呪文(マホプラウス)を展開した緑色の法衣をまとう大魔導士だった。

 

 

「よぉ、苦戦してるみてぇじゃねぇか」

 

「おお、マトリフ殿。助かりましたぞ!」

 

「パプニカの方にきた悪魔は、魔法兵団でなんとかなりそうだったからな。

あっちはアポロたちに任せて応援に来たぜ」

 

 

そう言いながら、手近な悪魔たちに吸収した火炎呪文(メラミ)をまとめて、

火炎呪文(メラゾーマ)を乗せて炎の壁のように叩きつけるマトリフ殿。

 

 

「いやはや、思ったより、大規模な事になってしまいましたな。

後で各国にお詫びをして回らねばなりませぬ」

 

「気にすんなよ。いままでの貸しを返してもらったと思やいい。

で、だ。おめぇさん、幾つくらいなんだそりゃ?」

 

 

私を怪訝そうに見つめたマトリフ殿はそう尋ねてきた。

 

 

「300歳ほど若返ったという所ですかな」

 

 

マトリフ殿がニヤリと笑い、口笛を吹いて言う。

 

 

「いいじゃねぇか。パプニカの大地の賢者殿に栄光あれってな!」

 

「いやはや。まさか、こうも早く呪いを解くとは思ってませんでしたので……」

 

 

身長が伸びた私に、パプニカの法衣を渡してくれる。

平均的な身長よりやや高めのサイズで、もともとゆったりとしているので、丁度いい。

先ほどまでケインから渡された旅人の服を着ていたので助かる。

私が着替え、話をしている間に、バラン殿やボリクスたちがやってくる。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)なんや、でかくなったやん!」

 

「ご無事でなによりですザボエラ殿」

 

 

二人にねぎらいの言葉をかけたが、シドーの方は大丈夫なのかと確認する。

何をしているのか分からないが、動きを止めて目をつむり、

何かをしているように見える。

 

そこで凄まじい声をあげる破壊神シドー。

攻撃、ではなさそうだが、竜水晶がシドーの行動の意味が分かったようで説明してくれた。

 

 

「いまのシドーの声は、遠くへ散らばった己の眷属を呼び戻す雄叫びのようだ」

 

「ほう……そのような事をしてくるとはのう」

 

 

すると、シドーの周囲にレッサーデーモンやアークデーモン、シルバーデビルなど、

翼を持った悪魔たちが瞬間移動呪文(ルーラ)で戻ってきた。

だが、恐らく総数は100以下で、怪我を負っている者達が多い。

 

それを見た破壊神シドーは怒りの声をあげる。

 

 

「バカなっ!? 魂を刈り取るはずが、人間ごときにこれほどしてやられたというのか!

闇の世界の眷属、悪魔がなんと不甲斐ないことだっ!!」

 

 

なるほど。つまり、ロモス、パプニカ、ベンガーナへ悪魔を差し向けたのは魂を手に入れる為か。

破邪の秘法を使った解呪呪文(シャナク)で呪いを解呪されたせいで、

シドーの魔力源が私から奪った魔力だけになったからだろう。

 

そして、私の魔法力で作られた門は破壊され、

悪魔たちが魂の回収に失敗したという現状は、彼にとってよろしくはない。

シドーはいま持っている手札(まりょく)だけで戦わねばならぬということだ。

 

ならば、冷静さを失わせて、消耗させた上で倒すのが上策だろう。

私はシドーを怒らせるためにあえて挑発的に話しかけてみた。

 

 

「傲慢がいささか度が過ぎましたな、破壊神殿」

 

「……!?」

 

「恐らくはベンガーナやパプニカに向かった悪魔たちでしょうが、

彼の地で手痛いしっぺ返しをくらったのでしょう

あまり人間を無礼(なめ)ぬことです。骨董品と化した古の神シドーよ。」

 

「グォオオオオオオオオオオオァッ!!!

下等生物ごときが、神に対して無礼千万っ!!

八つ裂きにして魂を地獄の炎にくべてくれるわっ!!!」

 

 

破壊神シドーの言葉に呼応して、悪魔たちが向かってくる。

真の総力戦がここから繰り広げられることになる。

 

 

 

 

 

シドーが吐きつけてくる炎は、その巨大な姿から吐き散らかされるので、

さながら炎の滝のような風情だ。

もっとも、滝は眺めて涼やかであるのに対し、

この炎は危険極まりなく、巻き込まれたら命が危うい。

 

 

防御光膜呪文(フバーハ)!!」

 

 

私が巨大な防御光膜呪文(フバーハ)を展開して、みなを守り炎が途絶えた瞬間、

シドーと彼の率いる悪魔たちとの戦いの火ぶたが切られた。

 

レッサーデーモンたちは普通の強さなのだが、シドーが何分にも強い。

さらに恐ろしい事だが、アークデーモンが極大爆烈呪文(イオナズン)を使ってくるのだ。

 

元来、ドラクエ2ではロンダルキアに登場したアークデーモンが、

極大爆烈呪文(イオナズン)を撃ってくる事に驚いたものだが……。

元々、その高速の動きで命中しないし、命中しても鎧の魔槍が防いでくれるラーハルトが、

アークデーモン達を引き付けて、掻きまわしてくれている。

 

ギガンテスやサイクロプスなどは、アバン殿やロカ殿、マァムたちが真正面から戦っていた。

ロカ殿はギガンテスに正面から当たっても力負けしてないが、マァムは流石に無理かと思いきや、

サイクロプスを力で叩き伏せているので将来有望である。

 

デビルロードの自己犠牲呪文(メガンテ)が非常に危険だったが、

事前にアバン殿に敵で出てくる悪魔たちの能力を教えてあったので、

破邪の秘法で極大化した呪文封じ(マホトーン)をかけて封じてくれていた。

 

流石に発動したら即ゲームオーバーになる自己犠牲呪文(メガンテ)を唱えられては、

どうにもならないのでアバン殿はよくやってくれている。

 

人の姿に戻った竜水晶が、両手を剣にして戦いつつ、

怪我人を治療して回ってサポートに徹していた。

 

しかし、それでもやはり破壊神シドーは恐ろしく強い。

四本の腕でそれぞれ、火炎呪文(メラミ)爆烈呪文(イオラ)氷結呪文(ヒャダルコ)閃熱呪文(ベギラマ)を撃ってきて、

それぞれが極大呪文クラスの威力を誇り、さすがにそれは狡いと思った。

眼光で睨んだ相手をマヒさせたり、恐らく暗黒大呪文(ドルモーア)ではないかと思われる、

真っ黒い闇の呪文を放ち、電撃呪文(デイン)系ではない純粋な雷を操った技も使ってきた。

 

だが、隙を突いてアバン殿とボリクスがアバンストラッシュを叩きこみ、

そこへ、バラン殿が渾身のメラゾーマストラッシュを炸裂させた。

 

 

「グァアアアアアアアアアア!?」

 

「やったか!?」

 

 

いかん。誰か分からないがフラグのような発言をしてしまったがまさか……。

嫌な予感は的中した。

破壊神シドーが回復呪文の光に包まれ、

アバンストラッシュ二発とメラゾーマストラッシュのダメージが綺麗になくなった。

 

 

「おいおい……いまのは回復呪文(ベホマ)じゃねぇのか?」

 

「なんちゅー往生際の悪さや……」

 

 

マトリフ殿のあっけにとられた声と、ボリクスのぼやきが聞こえてきた。

だが、流石に肝が冷えたのか、最初から悪相ではあるが笑っていたはずのシドーが、

怒りに満ちた表情をしていた。

 

 

「おのれ人間共が……っ! 神をも恐れぬその所業、許すまじっ

神域にある魔導の奥義を受けてみるがよいっ!!」

 

 

そうして、四本の手に魔法力を集中し、それを上の二本、下の二本で合わせるという、

恐らくは極大爆烈呪文(イオナズン)を放つときの動きを取った。

今度は極大爆烈呪文(イオナズン)を二発同時に撃ってくるつもりだろうか?

 

バラン殿が竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を全開にして電撃呪文(ギガデイン)を、

真魔剛竜剣に宿し、焦った表情でボリクスに叫んだ。

 

 

「ボリクス、私はギガブレイクで迎撃する。お前は全力でライデインストラッシュを使うのだ!」

 

「わかったで! 多分、この剣が消滅しちまうやろけどなー!!」

 

「お二人にも極大呪文をお願いしたい。

あのシドーの動き……いままでで最大の攻撃がくる予感がします」

 

 

マトリフ殿がその言葉を受けて、生真面目に返答する。

 

 

「バランの旦那の予感は無視できねぇな。

オレは極大爆烈呪文(イオナズン)を撃つ。

おめぇは極大閃熱呪文(ベギラゴン)を頼むぜザボエラよ」

 

 

私がその言葉に頷いたと同時に、二人が飛翔呪文(トベルーラ)で飛び上がり、

剣を構えたが破壊神シドーは予想外の動きに出た。

四本の手を前面に突き出し、手に集中した爆烈エネルギーを合わせるように繰り出す。

 

 

神域爆烈呪文(イオグランデ)──!」

 

 

私は極大閃熱呪文(ベギラゴン)を、マトリフ殿は極大爆烈呪文(イオナズン)を撃ち、

バラン殿とボリクスの攻撃に合わせて神域爆烈呪文(イオグランデ)を迎え撃った。

 

ヨミカイン魔導図書館があるホルキア大陸は、ヨミカイン遺跡とかつての地底魔城、

そしてさらに東に行ってパプニカが存在している。

大陸の周囲は山脈に囲まれているので、山が途切れている場所が港となり、

他の大陸との交易をおこなう場所になっているので、自然王都のパプニカにも港がある。

 

逆にヨミカイン魔導図書館があるヨミカイン古代遺跡がある地方は、山脈に囲まれた場所なので、

港など作れようはずもなかったのだが、いま、山三つばかり神域爆烈呪文(イオグランデ)で消し飛んだ。

 

その凄まじい爆烈エネルギーの奔流は、容易く山を吹っ飛ばしたのだ。

最後まで確認してはいないが、飛翔呪文(トベルーラ)で見た感じでは、

海を割いてある程度まで神域爆烈呪文(イオグランデ)の爆烈エネルギーは飛翔し、

遥か遠くで海面に当たったのか凄まじい水しぶきをあげながら大爆発を起こした。

 

私とマトリフ殿の極大呪文。バラン殿とボリクスの魔法剣。

その攻撃で減衰して、なおそこまでの威力か神域爆烈呪文(イオグランデ)……。

 

ボリクスがすっ飛んできて、私に慌てた様子で話しかけてくる。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)なんやあれ!? 極大爆烈呪文(イオナズン)の上とかあったんか!!」

 

「うむ……名前だけは知っておったがな。

まさか、あれが神域爆烈呪文(イオグランデ)……」

 

「さすがやなザボ爺(ざぼじい)、物知りやで!」

 

 

震える手で冷や汗を拭いながら、ひきつった苦笑を張り付けたマトリフ殿が私にこう言った。

 

 

「ザボエラよ。こんな状況だが、オレはワクワクしちまってるぜ。

それと同時に、がっかりした部分もあるけどな」

 

 

なんとなく言いたいことが分かったが、私はマトリフ殿に言葉の続きを促す。

 

 

「極大呪文の上は、腕が四本必要かよ……ってな。

なるほど、こいつぁ神でもなきゃできねぇぜ」

 

「確かに。ですが──」

 

「こうなれば、私が竜魔人と化してあの破壊神と戦いましょう」

 

 

私は慌ててバラン殿を止めた。

いまの一撃でヨミカイン遺跡も少し吹っ飛んだし、ホルキア大陸の山も三つほど消滅したのだ。

竜闘気砲呪文(ドルオーラ)など撃たれでもしたら、ヨミカイン魔導図書館も危うい。

 

それに、流石に竜魔人が戦うと、大魔王バーンがバラン殿を狙う可能性もある。

彼が眠りに陥らざるを得なかった原因として、竜魔人化したバラン殿のギガブレイクを、

鬼眼に受けて大ダメージを被ってしまったからだ。

 

つまり、大魔王バーンに重傷を与えられる"敵"であるという認識があるだろう。

その竜魔人の姿を見せてしまっては、いらぬ警戒を呼ぶ可能性が高い。

実は事前に話してあったのだが、ギリギリまで竜魔人化は避けて欲しいと話してある。

 

魔王軍の偵察については、マトリフ殿が来た辺りで魔物探索呪文(レミウーク)を使ったところ、

現時点では悪魔の目玉の気配は周囲には無い。

最初期に悪魔の目玉がいたのだが、それどころではなかったので放っておいた。

どうやら、激しい戦闘の余波に巻き込まれ、死んでしまった可能性があるだろう……。

 

ここで、ボリクスが珍しく自信なさげに一つの提案をしてきた。

 

 

「一つ手ぇあんねんけども……。この体だと初めて使うんよ。

前に話した、極大電撃呪文(ジゴデイン)を使うてみたいんやけど!」

 

極大電撃呪文(ジゴデイン)だって……!? 伝説の電撃呪文(デイン)系極大呪文かよ!!」

 

ザボ爺(ざぼじい)とクロコに前話してんけど、天候操作呪文(ラナリオン)で1km四方に、

雨雲作っておかなあかんのや」

 

「迷ってる時間はねぇぞ。シドーの手下もウロウロしてるからな」

 

 

マトリフ殿の言葉で、我々は各々のやるべき事を分担した。

私は天候操作呪文(ラナリオン)で雨雲を作り上げる。

ボリクスは予備の剣を引き抜き、バラン殿は爆烈呪文(イオラ)の魔法剣で、ビッグバンなどを繰り出す。

マトリフ殿は二人を呪文で援護して、傷を負った場合は回復呪文で治癒させている。

 

シドーはあまり活発に動く方ではなく、激しい火炎を吐いたり、

呪文を小出しに撃ってくる戦法を取っていた。

だとしても、小技のように極大呪文を放ってくるので、

攻撃範囲が非常に広いため危険ではある。

 

ラーハルト、アバン殿、竜水晶や、ザムザ、

ロカ殿、マァムは地上でシドー配下の悪魔たちと戦ってくれていた。

私はケインに守られながら、天候操作呪文(ラナリオン)で作り上げる雨雲の範囲を広げていたが、

シドーが急にこちらを見た。

 

いかん! 気づかれたかと思った瞬間、シドーが凄まじい叫び声をあげた。

まともに食らったボリクス、バラン殿が叩き落されてしまう。

距離を置いていたマトリフ殿が二人を回復させているが、二人の顔が青いので、

まさか竜の(ドラゴン)騎士に効果があるレベルの毒を使ってきたのか……。

いまの技は破壊神の叫びか!? と思ったが、

天候操作呪文(ラナリオン)を維持し、拡張している私には何もできない。

 

シドーがニヤリと嫌らしい笑みを浮かべたら、四本の腕に魔法力を集め、

頭上に閃熱エネルギーのアーチを作るあれはまさか……!?

極大閃熱呪文(ベギラゴン)二つということは、神域閃熱呪文(ギラグレイド)ということか。

みな手いっぱいであれは邪魔できん。

 

ここまでかと思ったところ、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「そこまでだ破壊神とやら!」

 

 

高速で飛来するガルーダに上半身裸のクロコダインが吊るされており、

落下と同時に白銀に輝く見事な斧を手に取る。

まるでアバンストラッシュのように構えて、闘気を高めながらクロコダインが放った技は……!

 

 

「待たせたなっ、ザボエラ! アバンストラッシュ!!」

 

 

クロコダインが斧でアバンストラッシュを繰り出し、シドーの上腕左腕を切り落とす。

上の腕の呪文は消滅したが、下の腕の呪文は生きている。

破壊神シドーは、極大閃熱呪文(ベギラゴン)に切り替え、私に呪文を叩きつけてくるが……。

 

 

 

「させんぞ! 竜闘気盾(ドラゴニック・シールド)……ッ!!」

 

 

私の前に立ちふさがったバラン殿が、竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を全開にして、

盾を作り上げて展開した。

ボリクスの竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)を参考にして、

バラン殿が守るために作り上げた竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を活用した技である。

 

高い防御力で、シドーの極大閃熱呪文(ベギラゴン)を防ぎきってくれた。

盾の範囲外100mほどの地面がえぐられてしまったが、

私は傷一つなくバラン殿に感謝の言葉を伝える。

 

よし、これで、雨雲は1kmを超えた。あとは、維持するだけだ。

だが、往生際悪く、シドーが火炎を吐こうとした所、

マトリフ殿が魔法力を込めた重圧呪文(ベタン)を繰り出して、

シドーを地面に叩きつけて動きを封じる。

 

 

「こいつはデカブツほど効果がでるんだぜ!」

 

 

私はその姿を見て、声の限りにボリクスに合図した。

 

 

「ボリクス、いまじゃ! トドメを食らわせてやるのじゃ!!」

 

 

既に竜水晶が背中に乗せ、シドーの眼前に立ちはだかるボリクスが、

剣を掲げて声の限り叫んだ。

 

 

「天空を舞う猛き精霊よ! 天なる轟きを我が敵に叩きつけよ!

極大電撃呪文(ジゴデイ~~ン)~~~~ッ!!!」

 

 

分厚い雨雲を突き抜け、斜めに幾条もの強力な雷撃が降り注ぎ、

地面に大穴を穿つその雷の洗礼がシドーの体を穿つ。

 

 

「グアアアアアアアアアアっ! 貴様ら風情が……この破壊神に──」

 

 

破壊神シドーはその言葉を続けられなかった。

雷撃の第二陣が降り注ぎ、そして、ひと際巨大な雷がシドーを刺し貫く。

鋼鉄を遥かに超える強度の鱗が飛び散り、大木のような腕も吹き飛び、

巨大な肉体は轟音と共に倒れ、その衝撃で周囲の木々も吹き飛んだ。

 

ボリクスは力尽きたのか、ドラゴンと化した竜水晶の背中でへたり込んでいる。

私も通常より10倍以上の規模で天候操作呪文(ラナリオン)を使ったので、

魔法力がほとんどなくなってしまっている。

更にあれだけ魔法力を費やして集めた雨雲も完全に四散しており、

極大電撃呪文(ジゴデイン)は連続使用もできないし、使用するにあたっての課題が多いなと感じた。

 

あまりの疲労感からぼんやりと考えていると、周囲から称え合う声が聞こえた。

みなの勝どきの声や、喜ぶ声が聞こえる中、身体中に巨大な穴が空き、

既に消し炭のシドーが動き、その巨大な(あぎと)でボリクスに襲い掛かった。

 

 

「させるか! アバン流斧殺法、地動撃!!!」

 

 

クロコダインがアバン流斧殺法の大地の技で、シドーの首を落とす。

血反吐を吐きながら、破壊神の首は勢いよくヨミカイン遺跡の方に飛んで行った。

 

その直後、ロモスからはレイラ殿やグランナードがキメラの翼でやってきて、

パプニカからはレオナ姫がアポロと一緒に瞬間移動呪文(ルーラ)で飛んできた。

残っていた悪魔たちは全て討ち取られて、怪我人の救護作業が続く中、

マトリフ殿が置き極大消滅呪文(メドローア)でシドーの巨体を消滅させる。

 

 

「破壊神の肉体なんざ、残しておいてどんな悪影響があるかわからねぇ。

消し去っちまうのが一番さ」

 

 

私は天候操作呪文(ラナリオン)で魔法力を使い果たしていたので、

マトリフ殿の極大消滅呪文(メドローア)は助かった。

 

なんとも大事件になってしまったが、私の呪いは解け、

魔女グレゴリーアの置き土産……にしては危険極まりなかったが、

破壊神シドーは倒すことに成功したので、当面の危機は去ったと言っていいだろう。

 

 

 

 

 

事後処理や延焼した森の消火活動はパプニカ魔法兵団が行ってくれて、

元々、ヨミカイン遺跡自体が人里離れた場所なので、被害が出なかったことは助かった。

 

ゆっくり休んだ翌日、タイミングよく来てくれたクロコダインに、

色々と話を聞いたら、それは偶然の産物だったようだ。

 

ベンガーナ方面に飛来した悪魔は、150体あまりで、

クロコダインとロン・ベルク殿、ホルキンス殿が、ものの10分で片付いてしまったらしい。

ベンガーナ戦士団と砲兵隊も気が抜けていた所、ギルドメイン山脈方面から、

破壊神シドーの邪気に当てられたのか、大量のモンスターが攻め寄せてきたそうだ。

 

その対処をしていたが、ロン・ベルク殿がクロコダインに、

ヨミカイン魔導図書館の方へ助勢に行き、

邪気の元凶を倒さないとキリがないと言ってくれたかららしい。

 

 

「鎧を着たままだと速度が出ないからな。

鳳凰の戦斧だけ持って、ガルーダに飛ばしてもらったのだ」

 

「いやはや助かったぞ。あの時、流石にワシもダメかと思ったからのう」

 

 

鎧分軽くなっていても、クロコダインを掴んでヨミカイン魔導図書館まで、

通常の三倍の速度で無理をしてガルーダは飛びきってくれた。

さすがに、疲労困憊でそれから三日ほど休んでしまう事になる。

 

私は迷惑をかけた各国に詫びてこようと思ったのだが、

パプニカは問題ないと言ってくれているようだし、

ベンガーナとロモスには私の代わりにマトリフ殿が向かって、後日状況を説明してくれるという。

 

 

「言ったじゃねぇか。お前さんには恩を売っておくべきだってな?」

 

 

申し訳なさそうに礼を言う私に対して、

わざとらしく人の悪い表情を作ったマトリフ殿がそう私に言った。

グレゴリーアの精神は肉体とちゃんと適合してくれたが、

流石にすぐ動けるようにはならないらしい。

もう少し回復液の中で浮いている生活が続くそうだ。

 

万事丸く収まって、良い事だらけのように見えるが、

クロコダインが斬り飛ばした破壊神シドーの首が、

ヨミカイン遺跡を探し回っても見つからなかったという。

 

流石に首だけでなにができるとは思えないが、

気がかりではあるのでヨミカイン遺跡を50の区画に区切り、

一か所ずつ丁寧に探して回った。

 

しかし、破壊神の最後の意地か分からないが、

その後一カ月の探索の末にシドーの首は発見できなかった……。





独自設定
竜闘気盾(ドラゴニック・シールド)
ボリクスの竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)に着想を得た防御の技。
原作でのバランの死因がダイを庇っての事だったので、
何か防御技を得ておいた方がいいだろうと、
ザボエラがアドバイスして、ボリクスに闘気の剣(オーラブレード)のやり方を習いつつ形にしたもの。
通常、全方向に噴出する竜闘気(ドラゴニック・オーラ)の防御を、
前面一方向だけに展開するのでまさしく鉄壁の防御を誇る。

鳳凰の戦斧(ほうおうのせんぶ)
真空の斧の魔法石を流用し、オリハルコンで作り上げた斧です。
「唸れ」の言葉で真空呪文(バギ)系の呪文が使えるのはそのまま、
「戻れ」の言葉で真空呪文(バギ)系呪文が発動し、クロコダインの手元に戻ってきます。
更に不死鳥の炎で鍛え上げているので、粉々に砕けても再生する能力を持っています。

地動撃
アバン流斧殺法、大地の技です。
多分、勇者アバンと獄炎の魔王で半年以内位に出ると思いますので、
正しいアバン流斧殺法名が判明したら差し替えます。


If展開 死滅の極光
グレゴリーアの呪いがあれば、
悪魔軍団5000を呼び出して地上の人間を殺しつくした後、
その魂を食らってドラクエ10のイベントでは実現しなかった、
世界を滅ぼす死滅の極光を放つ予定でした。

余談ですが、もしも、本作で最初の破邪の洞窟でシドーを呼び出していたら、
確実に世界の終わりだったので、人間の神の残留思念は慌てて止めてました。

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